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第四章:黯の中
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それが俺の記憶の中のものだという事はすぐに気が付いた。事実、眼前の光景は何も変わらず実際に少女が居た訳じゃない。夕晴の言う通りこの家に来た時の事を思い出したのだ。
「あの子って、もしかして……」
「夢の女の子?」
「いや、分からない。そうな気もするけどそうじゃない気もする。どっちとも断言は出来ない。でも何故か……」
「懐かしい感じがする」
俺は心を読まれた気分だった。まさにそう思っていた事を言い当てられ、思わず夕晴の方を向く。そこでは待ち構えてたかのように夕晴のこっちを見る視線があった。
「僕も同じこと感じてた。でもさ。なんか怖くない?」
「怖いって?」
「不気味っていうか何て言うか……」
もう一度、部屋の中を見てみるがそんな感じはしなかった。
「いや。大丈夫だろ」
俺はそう言って部屋へ上がろうとした。
だが夕晴が腕を掴みそれを止めた。
「やっぱ止めようよ。お願いだから」
顔を向けてみると何かに怯えたというよりは嫌悪感のような表情を浮かべていた夕晴が俺を真っすぐ見ていた。いつもと違い冗談などではなく真剣だという事を語るその顔を少しだけ見つめてから、俺はその言葉に従う事を決めた。この先に何かしらのヒントや答えがあるかもしれないが、普段と違う夕晴を無視するのは気が引ける。それに別に今じゃないといけない理由はない。
「分かった。出よう」
最後に部屋へ目をやってから振り返りドアを開けた。そして周りに誰もいない事を確認して素早く外へ。
「夕晴。頼んだ」
「おっけ」
俺に続いて出て来た夕晴は最初と同じように道具で鍵穴を弄ると、開けた時同様(もしかしたらそれより早く)あっという間に鍵を閉めてしまった。
* * * * *
「それで? そのアパートに不法侵入したってわけか?」
腕を組んだ制服姿の莉緒は目を瞑り微かに眉間へ皺を寄せると少し黙り続けた。
そして目を開くと同時に腕組みを解除し言葉にジェスチャーを添えた。
「何やってんだよ?」
「空き部屋だし大丈夫だろ」
「そーだけど。誰かに見られたら最悪通報だぞ? しかもまた行くつもりって……はぁ」
「別に強制じゃない」
溜息と共に顔を俯かせてた莉緒は、俺の言葉の後にゆっくりとその顔を上げた。
「――お前少しこだわり過ぎじゃないのか?」
「そりゃこだわるだろ。あの少年も――颯羊も思い出したし、それに少女の事も。もしかしたら俺らが忘れてるだけで今もどこかにいるのかしれねーんだぞ?」
「でもいないかもしれないだろ? そんな分からない事でまたあの時みたいに命の危険に陥るかもしれないだぞ? 今度は死ぬかもしんねーし」
あの時の恐怖の所為だろう。莉緒の口調は少し強く、声も大きくなっていた。
「確かにお前があんな目にあったのは悪かったと思ってる――でも止めるつもりはない」
そこに嘘はない。あの時の事は俺も後悔してる。ちゃんと集中してればって。だけど、もしあの時と同じ事が起こる可能性があってもやっぱり俺は確かめたい。本当の事を。長宅颯羊が何故いなくなったのか。あの少女は誰でどんな関係があって、今はどうなってるのか。知りたい。
「いつからかは覚えてないが、昔から何度も夢を見てた。お前らに話した夢だ。変な夢だとは思ってたがただの夢だとも思ってた。だけどあの夢の少年が長宅颯羊という俺らの知ってる、それどころか一緒に遊んでた子だと分かって――実在した人物だと分かってからは、少し見方が変わったんだ。そうかもしれないし、そうじゃないかもしれないが、俺には忘れるなって自分を探してくれって言ってる気がする。いや、俺が自分に言ってる気がする。もしかしたらあの頃の俺が言ってるのかも。だから危険だとしても可能性があるなら、俺はやる。あの夢の少年と少女が何者でどうなったのか、今どうしてるのかを知るまでは。そして忘れてしまった理由を知るまでは」
莉緒はまた溜息をひとつ零した。
「――分かった。でもその前にひとつ教えといてやるよ。オレ――」
「僕も思い出したんだよ」
すると突然、莉緒の言葉を夕晴が遮った。割って入るように若干ながら勢いよく
「あの子って、もしかして……」
「夢の女の子?」
「いや、分からない。そうな気もするけどそうじゃない気もする。どっちとも断言は出来ない。でも何故か……」
「懐かしい感じがする」
俺は心を読まれた気分だった。まさにそう思っていた事を言い当てられ、思わず夕晴の方を向く。そこでは待ち構えてたかのように夕晴のこっちを見る視線があった。
「僕も同じこと感じてた。でもさ。なんか怖くない?」
「怖いって?」
「不気味っていうか何て言うか……」
もう一度、部屋の中を見てみるがそんな感じはしなかった。
「いや。大丈夫だろ」
俺はそう言って部屋へ上がろうとした。
だが夕晴が腕を掴みそれを止めた。
「やっぱ止めようよ。お願いだから」
顔を向けてみると何かに怯えたというよりは嫌悪感のような表情を浮かべていた夕晴が俺を真っすぐ見ていた。いつもと違い冗談などではなく真剣だという事を語るその顔を少しだけ見つめてから、俺はその言葉に従う事を決めた。この先に何かしらのヒントや答えがあるかもしれないが、普段と違う夕晴を無視するのは気が引ける。それに別に今じゃないといけない理由はない。
「分かった。出よう」
最後に部屋へ目をやってから振り返りドアを開けた。そして周りに誰もいない事を確認して素早く外へ。
「夕晴。頼んだ」
「おっけ」
俺に続いて出て来た夕晴は最初と同じように道具で鍵穴を弄ると、開けた時同様(もしかしたらそれより早く)あっという間に鍵を閉めてしまった。
* * * * *
「それで? そのアパートに不法侵入したってわけか?」
腕を組んだ制服姿の莉緒は目を瞑り微かに眉間へ皺を寄せると少し黙り続けた。
そして目を開くと同時に腕組みを解除し言葉にジェスチャーを添えた。
「何やってんだよ?」
「空き部屋だし大丈夫だろ」
「そーだけど。誰かに見られたら最悪通報だぞ? しかもまた行くつもりって……はぁ」
「別に強制じゃない」
溜息と共に顔を俯かせてた莉緒は、俺の言葉の後にゆっくりとその顔を上げた。
「――お前少しこだわり過ぎじゃないのか?」
「そりゃこだわるだろ。あの少年も――颯羊も思い出したし、それに少女の事も。もしかしたら俺らが忘れてるだけで今もどこかにいるのかしれねーんだぞ?」
「でもいないかもしれないだろ? そんな分からない事でまたあの時みたいに命の危険に陥るかもしれないだぞ? 今度は死ぬかもしんねーし」
あの時の恐怖の所為だろう。莉緒の口調は少し強く、声も大きくなっていた。
「確かにお前があんな目にあったのは悪かったと思ってる――でも止めるつもりはない」
そこに嘘はない。あの時の事は俺も後悔してる。ちゃんと集中してればって。だけど、もしあの時と同じ事が起こる可能性があってもやっぱり俺は確かめたい。本当の事を。長宅颯羊が何故いなくなったのか。あの少女は誰でどんな関係があって、今はどうなってるのか。知りたい。
「いつからかは覚えてないが、昔から何度も夢を見てた。お前らに話した夢だ。変な夢だとは思ってたがただの夢だとも思ってた。だけどあの夢の少年が長宅颯羊という俺らの知ってる、それどころか一緒に遊んでた子だと分かって――実在した人物だと分かってからは、少し見方が変わったんだ。そうかもしれないし、そうじゃないかもしれないが、俺には忘れるなって自分を探してくれって言ってる気がする。いや、俺が自分に言ってる気がする。もしかしたらあの頃の俺が言ってるのかも。だから危険だとしても可能性があるなら、俺はやる。あの夢の少年と少女が何者でどうなったのか、今どうしてるのかを知るまでは。そして忘れてしまった理由を知るまでは」
莉緒はまた溜息をひとつ零した。
「――分かった。でもその前にひとつ教えといてやるよ。オレ――」
「僕も思い出したんだよ」
すると突然、莉緒の言葉を夕晴が遮った。割って入るように若干ながら勢いよく
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