19 / 22
第三章:危険な遊び
3
しおりを挟む
「――呪文が必要なタイプとそうじゃないやつ。ですか?」
『大体正解だね。正確には、特定の条件がいるタイプと誰彼構わず襲い掛かるタイプ。もちろん例外もあるけど。例えば今回の話は前者で、後者は幽霊スポットとか足を踏み入れた人間を誰彼構わず呪ったり怪我をさせたり最悪の場合は殺してしまったりするタイプだ。でもどうしてこの二つに分かれているのかは分からない。君たちも今まで色々と怖い話や都市伝説なんかを聞いた事あると思うけど、今回みたいに呼び出す方法があるのと単にあそこに行ったらヤバイみたいなのがあったと思うだ』
確かに今までそう言う類の話を(主に夕晴から)聞いた事があるが大体その二種類だ。
『まぁこういうのは大抵は誰かが作ったものだし、より相手を怖がらせる為に近づかない方がいいタイプにしてるかちょっと興味を引くためにそう言う儀式系にしてるかだと思うんだけどね。でも本物と言われる類でもその二種類に分かれるのは確かなんだ。ここで話が戻るけど、儀式系の話っていうのは儀式の部分が割と簡略化された場合が殆どで、特徴的な部分が残るのが多い。でも実は霊っていうのは総じてこの世とあの世の狭間の存在。だから共通する部分も多いんだ。霊を呼ぶにあたっての基本知識とでも言えば分かりやすいかな。世に出回る話は大抵その部分が削られてるんだよね』
「えーっと。つまり?」
『つまり最初の質問に戻ると、もしあの話の通りに儀式をしたとしても肝心の削られた部分が満たされてなければ何も起こらない。偶然その部分が満たされてれば何かが起こる可能性があるって感じかな。だからあの話通りに川子ちゃんを呼び出そうと儀式をしたら八対二の割合で何かが起こるはず。もちろん二が起こる可能性ね。あの話自体あまり確証的じゃないから確率的にはこれぐらいの数字になると思うよ』
「なるほど。あの、それでその基本知識っていうのは?」
『それは簡単。時刻は丑三つ時つまり午前二時から午前二時三十分の間。満月か新月の日。曇りの日、特に月は顔を出していて辺りが曇ってるなんてのは最高だね。あとは供物の方向やお祈りをする方向などは全て鬼門つまり北東へ向ける。全ての条件を満たしてる必要は無いけど、満たしてる方がより好条件って感じだね』
俺はそれを聞きながらもし霊に連れて行かれたらどうなるのか、連れ戻せるのかという疑問が思い浮かび夕晴に訊いてもらう事にした。自分で訊いても良かったのだが、夕晴以外はずっと黙ったままだったからここで急に声を出すのはどこか嫌だった。
「それじゃあ、この川子ちゃんの話だと呼び出したら復讐を手伝うか出来なかったら川に引きずり込まれるってあるんですけど、もし引きずり込まれたらどうなるんですか? もしそうなったらその人って助けられますか?」
『どうなるか、かぁ。基本的にはその霊と同じように狭間に連れてかれると思うよ。でもその霊は死んでて引きずり込まれた人間は生きてる。そこが問題だよね。これに関しては色々と意見はあるんだ。その時点で死んでしまい同じように狭間の霊になるとかしばらくは生きて生気を吸われるとか。色々とね。だから、正直に言ってどうなるかは分からない。神のみぞ知るって感じかな。そして、その人を助けられるかって事だけど。答えはこれも分からない、だ。引きずり込まれた者がどうなるか分からない以上、その後の救出に関しても分からない。死んでたら助けられないし、まぁ成仏を助けるとするなら出来るかもしれないけど、今はそう言う意味では言ってないと思うから助けられないし、生きてたとしても狭間からこちら側へどう連れ戻すか確実な方法はないからね。それに仮に生きてたとしても生気を吸われてたら制限時間があるだろうし、とにかく分からないことだらけだ。でも逆に言えば分からないからこそ可能性はあるとも言えるよね』
「じゃあ――」
夕晴がそう言葉を挟もうとしたが荒川さんの言葉はそれを突っ切った。
『でももし本当に引きずり込まれたとしたら。まず第一にやるべき事は引きずんだ霊の特定。そして……』
「そして?」
でも今度は珈琲でも飲んでいるのか僅かな間と夕晴が一言挟むだけの余白が開いた。
『大体正解だね。正確には、特定の条件がいるタイプと誰彼構わず襲い掛かるタイプ。もちろん例外もあるけど。例えば今回の話は前者で、後者は幽霊スポットとか足を踏み入れた人間を誰彼構わず呪ったり怪我をさせたり最悪の場合は殺してしまったりするタイプだ。でもどうしてこの二つに分かれているのかは分からない。君たちも今まで色々と怖い話や都市伝説なんかを聞いた事あると思うけど、今回みたいに呼び出す方法があるのと単にあそこに行ったらヤバイみたいなのがあったと思うだ』
確かに今までそう言う類の話を(主に夕晴から)聞いた事があるが大体その二種類だ。
『まぁこういうのは大抵は誰かが作ったものだし、より相手を怖がらせる為に近づかない方がいいタイプにしてるかちょっと興味を引くためにそう言う儀式系にしてるかだと思うんだけどね。でも本物と言われる類でもその二種類に分かれるのは確かなんだ。ここで話が戻るけど、儀式系の話っていうのは儀式の部分が割と簡略化された場合が殆どで、特徴的な部分が残るのが多い。でも実は霊っていうのは総じてこの世とあの世の狭間の存在。だから共通する部分も多いんだ。霊を呼ぶにあたっての基本知識とでも言えば分かりやすいかな。世に出回る話は大抵その部分が削られてるんだよね』
「えーっと。つまり?」
『つまり最初の質問に戻ると、もしあの話の通りに儀式をしたとしても肝心の削られた部分が満たされてなければ何も起こらない。偶然その部分が満たされてれば何かが起こる可能性があるって感じかな。だからあの話通りに川子ちゃんを呼び出そうと儀式をしたら八対二の割合で何かが起こるはず。もちろん二が起こる可能性ね。あの話自体あまり確証的じゃないから確率的にはこれぐらいの数字になると思うよ』
「なるほど。あの、それでその基本知識っていうのは?」
『それは簡単。時刻は丑三つ時つまり午前二時から午前二時三十分の間。満月か新月の日。曇りの日、特に月は顔を出していて辺りが曇ってるなんてのは最高だね。あとは供物の方向やお祈りをする方向などは全て鬼門つまり北東へ向ける。全ての条件を満たしてる必要は無いけど、満たしてる方がより好条件って感じだね』
俺はそれを聞きながらもし霊に連れて行かれたらどうなるのか、連れ戻せるのかという疑問が思い浮かび夕晴に訊いてもらう事にした。自分で訊いても良かったのだが、夕晴以外はずっと黙ったままだったからここで急に声を出すのはどこか嫌だった。
「それじゃあ、この川子ちゃんの話だと呼び出したら復讐を手伝うか出来なかったら川に引きずり込まれるってあるんですけど、もし引きずり込まれたらどうなるんですか? もしそうなったらその人って助けられますか?」
『どうなるか、かぁ。基本的にはその霊と同じように狭間に連れてかれると思うよ。でもその霊は死んでて引きずり込まれた人間は生きてる。そこが問題だよね。これに関しては色々と意見はあるんだ。その時点で死んでしまい同じように狭間の霊になるとかしばらくは生きて生気を吸われるとか。色々とね。だから、正直に言ってどうなるかは分からない。神のみぞ知るって感じかな。そして、その人を助けられるかって事だけど。答えはこれも分からない、だ。引きずり込まれた者がどうなるか分からない以上、その後の救出に関しても分からない。死んでたら助けられないし、まぁ成仏を助けるとするなら出来るかもしれないけど、今はそう言う意味では言ってないと思うから助けられないし、生きてたとしても狭間からこちら側へどう連れ戻すか確実な方法はないからね。それに仮に生きてたとしても生気を吸われてたら制限時間があるだろうし、とにかく分からないことだらけだ。でも逆に言えば分からないからこそ可能性はあるとも言えるよね』
「じゃあ――」
夕晴がそう言葉を挟もうとしたが荒川さんの言葉はそれを突っ切った。
『でももし本当に引きずり込まれたとしたら。まず第一にやるべき事は引きずんだ霊の特定。そして……』
「そして?」
でも今度は珈琲でも飲んでいるのか僅かな間と夕晴が一言挟むだけの余白が開いた。
0
お気に入りに追加
0
あなたにおすすめの小説
思い出を売った女
志波 連
ライト文芸
結婚して三年、あれほど愛していると言っていた夫の浮気を知った裕子。
それでもいつかは戻って来ることを信じて耐えることを決意するも、浮気相手からの執拗な嫌がらせに心が折れてしまい、離婚届を置いて姿を消した。
浮気を後悔した孝志は裕子を探すが、痕跡さえ見つけられない。
浮気相手が妊娠し、子供のために再婚したが上手くいくはずもなかった。
全てに疲弊した孝志は故郷に戻る。
ある日、子供を連れて出掛けた海辺の公園でかつての妻に再会する。
あの頃のように明るい笑顔を浮かべる裕子に、孝志は二度目の一目惚れをした。
R15は保険です
他サイトでも公開しています
表紙は写真ACより引用しました
好青年で社内1のイケメン夫と子供を作って幸せな私だったが・・・浮気をしていると電話がかかってきて
白崎アイド
大衆娯楽
社内で1番のイケメン夫の心をつかみ、晴れて結婚した私。
そんな夫が浮気しているとの電話がかかってきた。
浮気相手の女性の名前を聞いた私は、失意のどん底に落とされる。
ずぶ濡れで帰ったら彼氏が浮気してました
宵闇 月
恋愛
突然の雨にずぶ濡れになって帰ったら彼氏が知らない女の子とお風呂に入ってました。
ーーそれではお幸せに。
以前書いていたお話です。
投稿するか悩んでそのままにしていたお話ですが、折角書いたのでやはり投稿しようかと…
十話完結で既に書き終えてます。
【完結】「心に決めた人がいる」と旦那様は言った
ゴールデンフィッシュメダル
恋愛
「俺にはずっと心に決めた人がいる。俺が貴方を愛することはない。貴女はその人を迎え入れることさえ許してくれればそれで良いのです。」
そう言われて愛のない結婚をしたスーザン。
彼女にはかつて愛した人との思い出があった・・・
産業革命後のイギリスをモデルにした架空の国が舞台です。貴族制度など独自の設定があります。
----
初めて書いた小説で初めての投稿で沢山の方に読んでいただき驚いています。
終わり方が納得できない!という方が多かったのでエピローグを追加します。
お読みいただきありがとうございます。
マッサージ師にそれっぽい理由をつけられて、乳首とクリトリスをいっぱい弄られた後、ちゃっかり手マンされていっぱい潮吹きしながらイッちゃう女の子
ちひろ
恋愛
マッサージ師にそれっぽい理由をつけられて、乳首とクリトリスをいっぱい弄られた後、ちゃっかり手マンされていっぱい潮吹きしながらイッちゃう女の子の話。
Fantiaでは他にもえっちなお話を書いてます。よかったら遊びに来てね。
裏切りの代償
志波 連
恋愛
伯爵令嬢であるキャンディは婚約者ニックの浮気を知り、婚約解消を願い出るが1年間の再教育を施すというニックの父親の言葉に願いを取り下げ、家出を決行した。
家庭教師という職を得て充実した日々を送るキャンディの前に父親が現れた。
連れ帰られ無理やりニックと結婚させられたキャンディだったが、子供もできてこれも人生だと思い直し、ニックの妻として人生を全うしようとする。
しかしある日ニックが浮気をしていることをしり、我慢の限界を迎えたキャンディは、友人の手を借りながら人生を切り開いていくのだった。
他サイトでも掲載しています。
R15を保険で追加しました。
表紙は写真AC様よりダウンロードしました。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる