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第二章:暗がりのアルバム
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次の日、俺は秘密基地に居た。この日も颯羊の事を調べようとしていたのだが何をすればいいか案は無く、とりあえずでこの場所へ来ていた。
「そういや、莉緒は?」
「デート。昨日言ってたじゃん」
グループラインか。後半は見てない。
「そだったな」
「見てないでしょ。まぁ別にいいけど」
俺は(座りスマホに顔を落としたままの)夕晴の見透かした言葉を聞きながら基地内を見回した。記憶を巡れば、莉緒がいて、夕晴がいて、俺が居て、そして颯羊の姿もある。相変わらずその顔までは思い出せない。でもゲームしたり、話をしたり、ごっこ遊びをしたり。色々な遊びを一緒に楽しんでいる。よく考えればあの頃はほぼ毎日この場所にいた。第二の家と言っても過言じゃないぐらい。子ども時代の大半の想い出はここに詰まってる。
するとこの場所を見回しているとある記憶が蘇ってきた。何故それを思い出したのかは分からないが、思い出と言うのは結構そういうもんだ。
そしてその事を思い出しながら俺は正面の夕晴へ目をやった。少ししてずっとスマホに落ちていた顔が上がり俺を見返す。
「何?」
その一言に俺は頭の中にあるそれを口に出した。
「お前、女装したことあるよな?」
「え? 何、急に?」
唐突にそんな事を言われ一瞬、一驚に喫する夕晴だったがすぐにそれは消えていった。
「――でもまぁ、あるよ。学祭でうちのクラスが喫茶店やったんだけど、その時にメイド服着せられたかな。二日目なんてメイクもさせられてずっと店に出されてたし。あっ、その時さ。朝陽ちゃんは逆に男装させられてたんだけど、それがすっごいカッコ良かったんだよね。それで僕と朝陽ちゃんとで二日目はずっと店にいたんだけど、評判は凄い良かったよ。特に僕は男子生徒に、朝陽ちゃんは女子生徒からね。もう性別なんてどーでもいいとか言われてさ。もしかしたら何人かには新たな自分を見つけさせてしまったかも」
夕晴は割と満足そうな表情を浮かべていた。きっとその姿でも十分と人を弄んだんだろう。
「そう言えば、あの時って蓮来てた? 莉緒は見たっていうか接客したけど蓮は覚えてないかも」
「サボってた」
「あぁ、だから全然見なかったんだ」
「というか俺が言ってるのはそれじゃない」
「え? だってそれ以外で女装なんてしてないけど? 別に目覚めた訳でもないし」
「ここで子どもの頃にしてなかったか?」
「ここで?」
夕晴は首を傾げながら記憶を辿り始めたのか基地内を見回した。その間、若干の沈黙が俺らを包み込む。
「あっ!」
するとその沈黙を破る夕晴の声が基地内に響いた。
「あった! 確かワンピース着た覚えがある。あれっ? でも何でそうなったんだっけ? ていうかあれって誰のだっけ?」
夕晴が同時に口にした疑問に俺はあの時の事をより詳細に思い出してみるが、何故かその答えは見つからなかった。
「覚えてない。だけど、確か颯羊もいたよな?」
「んー、多分。僕と蓮と莉緒とがいた気もする。でも誰の?」
「お前の姉貴のとか?」
「それは無いよ。だってあの頃も僕の方が小さかったからサイズ違うし」
「子どもの頃のとか」
「んー。わざわざ仕舞われてるの引っ張り出した覚えないし――分かんない。子どもの頃の記憶って結構断片的だよね。瞬間とか一定のシーンは覚えてるけどそれ以外は全然。それに記憶って都合よく書き換えられるって言うじゃん」
「だけど一人の人物を丸々忘れて、突然思い出すのは違うだろ」
「それは流石にね。でもさ。逆って可能性はない?」
「逆?」
俺は夕晴が何を言っているのか全く分からずオウム返しした。
「そう。忘れたんじゃなくて、本当にいなかったって可能性」
それを聞いて夕晴の言いたいことは理解できた。だがそれをすんなり呑み込むには引っ掛かる疑問がいくつかあった。
「でも突然、俺とお前と莉緒だって思い出しただろ?」
「まぁ、そうだね……。でもそれはあの夢を見たからかも。だから記憶が颯羊って子が居たっていう風に変わっちゃったのかも」
「その夢を見たのは俺が言ったからか。しかも変な事の後に」
「そう言う事。でも別に責めてるんじゃないからね」
「分かってる。だけど同時にだぞ? お前と莉緒は夢を。そして俺ら三人が颯羊の事を。同時に思い出した」
「――それなんだよね。自分でも可能性があまりにも低すぎるって思うのは」
夕晴はそう言うと溜息を零した。
「そういや、莉緒は?」
「デート。昨日言ってたじゃん」
グループラインか。後半は見てない。
「そだったな」
「見てないでしょ。まぁ別にいいけど」
俺は(座りスマホに顔を落としたままの)夕晴の見透かした言葉を聞きながら基地内を見回した。記憶を巡れば、莉緒がいて、夕晴がいて、俺が居て、そして颯羊の姿もある。相変わらずその顔までは思い出せない。でもゲームしたり、話をしたり、ごっこ遊びをしたり。色々な遊びを一緒に楽しんでいる。よく考えればあの頃はほぼ毎日この場所にいた。第二の家と言っても過言じゃないぐらい。子ども時代の大半の想い出はここに詰まってる。
するとこの場所を見回しているとある記憶が蘇ってきた。何故それを思い出したのかは分からないが、思い出と言うのは結構そういうもんだ。
そしてその事を思い出しながら俺は正面の夕晴へ目をやった。少ししてずっとスマホに落ちていた顔が上がり俺を見返す。
「何?」
その一言に俺は頭の中にあるそれを口に出した。
「お前、女装したことあるよな?」
「え? 何、急に?」
唐突にそんな事を言われ一瞬、一驚に喫する夕晴だったがすぐにそれは消えていった。
「――でもまぁ、あるよ。学祭でうちのクラスが喫茶店やったんだけど、その時にメイド服着せられたかな。二日目なんてメイクもさせられてずっと店に出されてたし。あっ、その時さ。朝陽ちゃんは逆に男装させられてたんだけど、それがすっごいカッコ良かったんだよね。それで僕と朝陽ちゃんとで二日目はずっと店にいたんだけど、評判は凄い良かったよ。特に僕は男子生徒に、朝陽ちゃんは女子生徒からね。もう性別なんてどーでもいいとか言われてさ。もしかしたら何人かには新たな自分を見つけさせてしまったかも」
夕晴は割と満足そうな表情を浮かべていた。きっとその姿でも十分と人を弄んだんだろう。
「そう言えば、あの時って蓮来てた? 莉緒は見たっていうか接客したけど蓮は覚えてないかも」
「サボってた」
「あぁ、だから全然見なかったんだ」
「というか俺が言ってるのはそれじゃない」
「え? だってそれ以外で女装なんてしてないけど? 別に目覚めた訳でもないし」
「ここで子どもの頃にしてなかったか?」
「ここで?」
夕晴は首を傾げながら記憶を辿り始めたのか基地内を見回した。その間、若干の沈黙が俺らを包み込む。
「あっ!」
するとその沈黙を破る夕晴の声が基地内に響いた。
「あった! 確かワンピース着た覚えがある。あれっ? でも何でそうなったんだっけ? ていうかあれって誰のだっけ?」
夕晴が同時に口にした疑問に俺はあの時の事をより詳細に思い出してみるが、何故かその答えは見つからなかった。
「覚えてない。だけど、確か颯羊もいたよな?」
「んー、多分。僕と蓮と莉緒とがいた気もする。でも誰の?」
「お前の姉貴のとか?」
「それは無いよ。だってあの頃も僕の方が小さかったからサイズ違うし」
「子どもの頃のとか」
「んー。わざわざ仕舞われてるの引っ張り出した覚えないし――分かんない。子どもの頃の記憶って結構断片的だよね。瞬間とか一定のシーンは覚えてるけどそれ以外は全然。それに記憶って都合よく書き換えられるって言うじゃん」
「だけど一人の人物を丸々忘れて、突然思い出すのは違うだろ」
「それは流石にね。でもさ。逆って可能性はない?」
「逆?」
俺は夕晴が何を言っているのか全く分からずオウム返しした。
「そう。忘れたんじゃなくて、本当にいなかったって可能性」
それを聞いて夕晴の言いたいことは理解できた。だがそれをすんなり呑み込むには引っ掛かる疑問がいくつかあった。
「でも突然、俺とお前と莉緒だって思い出しただろ?」
「まぁ、そうだね……。でもそれはあの夢を見たからかも。だから記憶が颯羊って子が居たっていう風に変わっちゃったのかも」
「その夢を見たのは俺が言ったからか。しかも変な事の後に」
「そう言う事。でも別に責めてるんじゃないからね」
「分かってる。だけど同時にだぞ? お前と莉緒は夢を。そして俺ら三人が颯羊の事を。同時に思い出した」
「――それなんだよね。自分でも可能性があまりにも低すぎるって思うのは」
夕晴はそう言うと溜息を零した。
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