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第二章:暗がりのアルバム
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「何話してたんだ?」
「神隠しの事」
「それって颯羊が神隠しにあったかもってこと?」
「その可能性もあんのかなって思ったけど、その人物の事を忘れるって言うのは無いらしい。ていうか知らないらしい」
「じゃあ神隠しにあった訳でもなさそうだね」
「あっ!」
石階段を下り切ったその時。突然、莉緒がそんな声を上げた。
「どうしたの? 何か予定でもあった?」
「いや、そうじゃねーけど。思い出した」
「何を?」
莉緒は答える前に石階段を振り返った。
「子どもの頃にここで遊んだ時。確か、遅れて誰か来てたよな?」
鳥居を見上げる莉緒を真似るように俺と夕晴も後ろを振り返ってみた。そこには真っすぐ伸びる石階段でじゃんけんして遊ぶ昔の俺らの姿。すると下の方から子どもが一人階段を上がってきた。背を向けたその子どもは俺らへ親し気に声を掛けると楽しそうに話しを始めた。
「思い出した」
「ハッキリとは思い出せないけど、あれって颯羊?」
「んー。どうだろーなぁ。男だったとは思うけどなぁ。違う気もするし。ダメだ。思い出せん」
「でも神主さんは三人しか見てないって言ってたし……」
「別の日とか?」
「だけどこの神社なんて一~二回しか来てないくないか?」
「あっ。僕、思ったんだけど」
その言葉が俺と莉緒の視線を夕晴へ集めた。
「もしかしたら忘れてるって可能性無い? 僕らみたいにさ」
「颯羊だけの記憶が全員から消えてるってことか?」
「そう」
「そんな。映画じゃあるめーし。本気で言ってんのか?」
「うん」
夕晴のそう答える表情は言葉通り冗談を言っているものではなかった。
「だとしたら何で俺らだけ思い出してんだ?」
「それに何でそんなSFみたいな事が起きてんだよ?」
「知らないよ。それに答えられたらもう解決してるって」
「そりゃ、そうか」
「でももしそうだとしたら今、颯羊はどこに?」
「んー。分かんない。だってこんなの非現実的だし」
「もしかしたら宇宙人だったりして」
冗談のつもりで莉緒は言ったようだが俺と夕晴はあまりそれを笑い飛ばしはしなかった。何故ならもし本当にそんな奇妙な事が起きてれば宇宙人だって否定は出来ない。それにそもそも俺は宇宙人がいる可能性はあると思ってる人間だから。
「あれ? お前ら――まじ?」
「僕は突然、関わった全ての人の記憶が無くなってなかった事にされるより宇宙人に攫われたって方が信じられるけどね」
「とんでもなく広い宇宙にとんでもない数の惑星があんなら俺らみたいなのがいてもおかしくねーと思うけど」
「とにかく、今は可能性の話しか出来ないし他の場所も回ってみようか。一回だけ行った場所とかね」
そして歩き出した俺と夕晴に少し遅れて莉緒は追い付いてきた。
「え? お前らってそんな感じなの? てっきり宇宙人なんているかよ。バカかよってタイプかと思ってたわ」
「蓮も言ってたけど宇宙って広いんだし、どっかにはいるでしょ。宇宙人」
「じゃあじゃあ! 幽霊とか妖怪は?」
「少なくともこの地球にはいない。それっぽいのがもしかしたらその宇宙人かもしんねーけど」
宇宙人肯定派だったのがそんなに意外だったのかそれから少しの間、莉緒は俺らを質問攻めにした。
それからもよく覚えてる場所から記憶の山から引きずり出したような場所まで子どもの頃の想い出を巡っては、懐古しつつも颯羊の事を思い出せないかと記憶も巡らせた。だが少しぐらい思い出せど何かこの件が進むような事は思い出せなかった。
「神隠しの事」
「それって颯羊が神隠しにあったかもってこと?」
「その可能性もあんのかなって思ったけど、その人物の事を忘れるって言うのは無いらしい。ていうか知らないらしい」
「じゃあ神隠しにあった訳でもなさそうだね」
「あっ!」
石階段を下り切ったその時。突然、莉緒がそんな声を上げた。
「どうしたの? 何か予定でもあった?」
「いや、そうじゃねーけど。思い出した」
「何を?」
莉緒は答える前に石階段を振り返った。
「子どもの頃にここで遊んだ時。確か、遅れて誰か来てたよな?」
鳥居を見上げる莉緒を真似るように俺と夕晴も後ろを振り返ってみた。そこには真っすぐ伸びる石階段でじゃんけんして遊ぶ昔の俺らの姿。すると下の方から子どもが一人階段を上がってきた。背を向けたその子どもは俺らへ親し気に声を掛けると楽しそうに話しを始めた。
「思い出した」
「ハッキリとは思い出せないけど、あれって颯羊?」
「んー。どうだろーなぁ。男だったとは思うけどなぁ。違う気もするし。ダメだ。思い出せん」
「でも神主さんは三人しか見てないって言ってたし……」
「別の日とか?」
「だけどこの神社なんて一~二回しか来てないくないか?」
「あっ。僕、思ったんだけど」
その言葉が俺と莉緒の視線を夕晴へ集めた。
「もしかしたら忘れてるって可能性無い? 僕らみたいにさ」
「颯羊だけの記憶が全員から消えてるってことか?」
「そう」
「そんな。映画じゃあるめーし。本気で言ってんのか?」
「うん」
夕晴のそう答える表情は言葉通り冗談を言っているものではなかった。
「だとしたら何で俺らだけ思い出してんだ?」
「それに何でそんなSFみたいな事が起きてんだよ?」
「知らないよ。それに答えられたらもう解決してるって」
「そりゃ、そうか」
「でももしそうだとしたら今、颯羊はどこに?」
「んー。分かんない。だってこんなの非現実的だし」
「もしかしたら宇宙人だったりして」
冗談のつもりで莉緒は言ったようだが俺と夕晴はあまりそれを笑い飛ばしはしなかった。何故ならもし本当にそんな奇妙な事が起きてれば宇宙人だって否定は出来ない。それにそもそも俺は宇宙人がいる可能性はあると思ってる人間だから。
「あれ? お前ら――まじ?」
「僕は突然、関わった全ての人の記憶が無くなってなかった事にされるより宇宙人に攫われたって方が信じられるけどね」
「とんでもなく広い宇宙にとんでもない数の惑星があんなら俺らみたいなのがいてもおかしくねーと思うけど」
「とにかく、今は可能性の話しか出来ないし他の場所も回ってみようか。一回だけ行った場所とかね」
そして歩き出した俺と夕晴に少し遅れて莉緒は追い付いてきた。
「え? お前らってそんな感じなの? てっきり宇宙人なんているかよ。バカかよってタイプかと思ってたわ」
「蓮も言ってたけど宇宙って広いんだし、どっかにはいるでしょ。宇宙人」
「じゃあじゃあ! 幽霊とか妖怪は?」
「少なくともこの地球にはいない。それっぽいのがもしかしたらその宇宙人かもしんねーけど」
宇宙人肯定派だったのがそんなに意外だったのかそれから少しの間、莉緒は俺らを質問攻めにした。
それからもよく覚えてる場所から記憶の山から引きずり出したような場所まで子どもの頃の想い出を巡っては、懐古しつつも颯羊の事を思い出せないかと記憶も巡らせた。だが少しぐらい思い出せど何かこの件が進むような事は思い出せなかった。
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