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第一章:記憶の友達
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「あっ! ねぇねぇ。二人共、見てあれ? 何か覚えてる?」
すると突然、夕晴がそんな風に声を出しながら奥の方を指差した。それに釣られるように俺と莉緒の視線が指の先へ向く。
そこに隠されるように置いてあったのは、小さな缶ケース。錆びて何の箱かも分からないそれに思い当たる節は無かった。
「何だこれ?」
「あぁー。これあれだろ。あれ」
「なんだよあれって」
「ほんとは分かってないんじゃないの?」
「ちげーよ。ほら! タイムカプセル的な」
そう言いながら莉緒はその缶を手に取ると中央のテーブル(らしきやつ)の上に置いた。
「確かこの中に色々入れたんだよ」
説明しながら缶の蓋を開こうとするが錆びている所為か中々開かない。
「もう貸して」
見かねた夕晴が横から缶を取り蓋に力を籠めるとさっきまでの莉緒が演技のようにあっさりと開いた。あまりにも悠々と開けて見せた夕晴へ瞠目した莉緒の視線が缶とを行き来する。
「お前の父ちゃんすっごいごついもんな。見た目は母ちゃんそっくりだけど確実に受け継いでるじゃん。もう今度からか弱い演技すんなよ」
「僕が凄いんじゃなくて単に莉緒がヘボいだけでしょ?」
「くそっ! だけどこればかりは何を言われても仕方ない。力じゃお前に敵わない訳だしな」
「どーでもいいけど、中見ていいか?」
俺はそんな二人を他所に缶を取ると緩くなった蓋を開けた。中に入っていたのは色々な物。カードやビー玉、変な石など。莉緒の言う通りそこには思い思いの物が入れられていた。
「うわー! これオレが見つけた変な形の石じゃん!」
「あー! これ僕の切り札カード!」
缶を覗き込んだ莉緒と夕晴はそれぞれ自分が入れた物を手に取った。
そして俺も記憶にあるビー玉へ手を伸ばした。その他にも色々な物が入っていて俺らは次々と懐旧の情に駆られながらそれを取り出していった。
「ん? これ誰のだ?」
そんな中、缶の底に残った小さな懐中時計を俺は手に取った。針は十一時二十分で止まりもう時間は刻んでいない。遅れて二人の視線もそれに向く。
「僕のじゃないよ。蓮のじゃなかったっけ?」
「オレのでもねーな。やっぱ蓮のじゃね?」
「いや。俺、こんなの持ってた覚えないし」
三人して首を傾げながらその謎に満ちた懐中時計を眺めていた。全く知らないはずなのにどこか懐かしい気もする。
するとその時。突然、耳鳴りのような頭痛が走った。
「っつ!」
咄嗟に目を瞑り頭へ手をやった頃には、既に痛みは余韻へと変わり、その痛みとすれ違うように覚えのない記憶が頭に流れ始める。
『おぉー! カッケー! 何だよこれ』
『おじいちゃんが残してくれた物なの』
『すっごー! え? でもこれ入れるの?』
『流石にこれは勿体なくないか?』
『でももう壊れてるし。それにここには自分の大切な物を入れるんでしょ?』
『そうだけど』
『でも壊れてるんならね。それにこれは想いを運ぶ方舟なんだから』
『大人に成った時にまたみんなでここに戻って来て開けるんだよな! 今から楽しみだぜ』
子どもの俺と莉緒と夕晴と話しをする名前の知らない少年。
「おい。蓮、大丈夫か?」
その声に呼び戻されるように俺は我に返った。目を開けてみると莉緒と夕晴が心配そうに俺を見つめている。
だけど俺は真っ先にその少年が座っていた場所を見遣った。
「どうしたの?」
「誰かいた」
端的なその言葉に莉緒と夕晴は一度顔を見合わせた。
すると突然、夕晴がそんな風に声を出しながら奥の方を指差した。それに釣られるように俺と莉緒の視線が指の先へ向く。
そこに隠されるように置いてあったのは、小さな缶ケース。錆びて何の箱かも分からないそれに思い当たる節は無かった。
「何だこれ?」
「あぁー。これあれだろ。あれ」
「なんだよあれって」
「ほんとは分かってないんじゃないの?」
「ちげーよ。ほら! タイムカプセル的な」
そう言いながら莉緒はその缶を手に取ると中央のテーブル(らしきやつ)の上に置いた。
「確かこの中に色々入れたんだよ」
説明しながら缶の蓋を開こうとするが錆びている所為か中々開かない。
「もう貸して」
見かねた夕晴が横から缶を取り蓋に力を籠めるとさっきまでの莉緒が演技のようにあっさりと開いた。あまりにも悠々と開けて見せた夕晴へ瞠目した莉緒の視線が缶とを行き来する。
「お前の父ちゃんすっごいごついもんな。見た目は母ちゃんそっくりだけど確実に受け継いでるじゃん。もう今度からか弱い演技すんなよ」
「僕が凄いんじゃなくて単に莉緒がヘボいだけでしょ?」
「くそっ! だけどこればかりは何を言われても仕方ない。力じゃお前に敵わない訳だしな」
「どーでもいいけど、中見ていいか?」
俺はそんな二人を他所に缶を取ると緩くなった蓋を開けた。中に入っていたのは色々な物。カードやビー玉、変な石など。莉緒の言う通りそこには思い思いの物が入れられていた。
「うわー! これオレが見つけた変な形の石じゃん!」
「あー! これ僕の切り札カード!」
缶を覗き込んだ莉緒と夕晴はそれぞれ自分が入れた物を手に取った。
そして俺も記憶にあるビー玉へ手を伸ばした。その他にも色々な物が入っていて俺らは次々と懐旧の情に駆られながらそれを取り出していった。
「ん? これ誰のだ?」
そんな中、缶の底に残った小さな懐中時計を俺は手に取った。針は十一時二十分で止まりもう時間は刻んでいない。遅れて二人の視線もそれに向く。
「僕のじゃないよ。蓮のじゃなかったっけ?」
「オレのでもねーな。やっぱ蓮のじゃね?」
「いや。俺、こんなの持ってた覚えないし」
三人して首を傾げながらその謎に満ちた懐中時計を眺めていた。全く知らないはずなのにどこか懐かしい気もする。
するとその時。突然、耳鳴りのような頭痛が走った。
「っつ!」
咄嗟に目を瞑り頭へ手をやった頃には、既に痛みは余韻へと変わり、その痛みとすれ違うように覚えのない記憶が頭に流れ始める。
『おぉー! カッケー! 何だよこれ』
『おじいちゃんが残してくれた物なの』
『すっごー! え? でもこれ入れるの?』
『流石にこれは勿体なくないか?』
『でももう壊れてるし。それにここには自分の大切な物を入れるんでしょ?』
『そうだけど』
『でも壊れてるんならね。それにこれは想いを運ぶ方舟なんだから』
『大人に成った時にまたみんなでここに戻って来て開けるんだよな! 今から楽しみだぜ』
子どもの俺と莉緒と夕晴と話しをする名前の知らない少年。
「おい。蓮、大丈夫か?」
その声に呼び戻されるように俺は我に返った。目を開けてみると莉緒と夕晴が心配そうに俺を見つめている。
だけど俺は真っ先にその少年が座っていた場所を見遣った。
「どうしたの?」
「誰かいた」
端的なその言葉に莉緒と夕晴は一度顔を見合わせた。
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