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第壱幕:人と御伽
【28+滴】Who are you?2
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「勝ったつもりか? バカが! 死ねぇぇ」
そう叫ぶと爆音と共にゆうやの上半身は激しい爆発に包まれた。
「がはっはっは! この奥の手を使わせたことは褒めてやる。それに少しはやるようだが、俺様の敵じゃないな。これで俺様も昇進だ!」
完全に勝ちを確信し高笑いするジェイクだったが、煙が晴れるとその笑い声は途絶え額に冷や汗を流しながら表情は驚愕に固まった。
「う、うそだろ……」
爆煙から姿を現したゆうやは、怪我はおろか傷一つ無かった。
「それで終り?」
それはいつもの話し声よりも少し低くめな声。
そして先ほどよりもよりハッキリと青く光る瞳がジェイクを見下ろしていた。それはまるでゴミでも見るような冷酷な視線。
「嘘だ! ありえねぇ! これは装甲車さえ吹っ飛ばす代物だぞ」
ジェイクは眼前に広がる圧倒的な現実を受け止められられないと言った様子だった。
だがゆうやはそんなジェイクを他所に、右足をゆっくりと上げると左二の腕へ体重を乗せながら勢いよく突き出した。その足裏は義手を突き破りいとも簡単に後ろの壁へとヒビを入れてしまう。その瞬間ジェイクは痛みに染まった悲鳴を上げ、残った部分をもう片義手で押さえた。
「何だ。案外脆いじゃん」
依然として無表情のまま壁から離した足をもう一度構える。
だがジェイクは再び突き出された足を命からがらと言った様子で横へ倒れながら避けた。そんなジェイクをゆうやは壁に足を減り込ませながら顔だけで追う。二人の目が合うとジェイクは一瞬にして表情を恐怖一色にし、慌てて地を這いながら逃げ出した。
「な、なんだアレ。本物の化物じゃねーか! こ、殺される」
その震えた声を耳に入れながら視線を減り込んだ足へ向けると、壁から抜き再び顔だけで立ち上がって逃げて行くジェイクを追う。それは選択肢を逃走の一点に絞った必死の走りだったが、途中に一度だけ(確認の為だろう)ゆうやの方を振り向いた。
その直後、何を思ったのかジェイクは隅に座るノアの方へと舵を切り始める。それが最悪の選択をしたとも知らずに。
そして進路を変えノアまであと少しという所まで迫ったジェイクだったが、その斜前へはゆうやが瞬間移動でもしたのかと言うほど突然に姿を現した。ゆうやは勢いそのまま横を通り過ぎようとする彼の口元を右手で鷲掴みにするとそのまま地面に叩きつけた。それからそのまま馬乗りになり左膝で右義肢を抑え右手は口を塞ぎ続ける。
「今……。何しようとした?」
ゆうやはゆっくりとした口調で言葉を並べた。その声を聞いているのかそうでないのか汗だくで息の荒れたジェイクは、最初とは全く別人のような雰囲気のゆうやにまるで小動物のように怯えていた。
だがそれは彼の変ってしまった雰囲気だけが原因ではなく、冷酷な青く光る双眸が逸らせば殺されてしまいそうな目つきで睨むように見つめていたことも関係しているのだろう。更にゆうやからは生半可な決意など容易く壊してしまいそうなほど熟練されれた殺気が溢れ出していた。
「もしかして……ノアを……殺そうとした?」
その言葉に反応するように口を塞ぐ手へ少し力が入った。そのまま殺されてしまうと思ったのか、ジェイクは必死に首を横に振りそうでないことを訴える。
「じゃあ、人質にしようとした?」
手に遮られ伝わらないがもごもごと言い訳を言っているようだった。
「ふーん。――僕はね、別にお前を殺そうとは思ってないんだよ」
その声は相変わらず冷静だったが、心の動きを代わって表すかのように左膝には徐々に力が加わっていく。
「だけど、僕の大事な人を傷つけようとするなら……」
言葉が進むにつれ更に左膝へ力が加わっていく。それに連れ右義肢へはヒビが入り――そしてついには押しつぶされ体から切り離されてしまった。それと同時に塞がれた手の中には悲鳴が充満する。
「俺も全力で守らないといけないんだ」
だが悲鳴にもジェイクにも無関心だと言うようにゆうやは表情を変えぬまま人差し指を口元で立てた。それを見たジェイクは何度も頷く。
そしてゆっくりと口を覆っていた手は離れていき、痛みの所為か恐怖の所為かその両方か、少し荒れた呼吸音は解放された。
「分かるかい?」
「あぁ」
ジェイクはすぐさま小さく返事をしながら何度も頷いた。何度も。何度も。
「本当に?」
そう問いかけながらゆうやは胸へ心臓を囲うように五本の指先を着けた。
すると腕から各指へ血管をなぞるように赤い線が走り、それが指先に達するとゆっくりゆうやの血液がジェイクの体内へ侵入していく。そのまま心臓の近くまで流れた血は手の形を形成すると心臓を優しく添えるように握った。
「文字通りお前の心臓は俺の手の中だ」
「や、止めてくれ」
その血の手の中で心臓は更に活発化し鼓動を早めた。
「どうしてだい? 俺を殺そうとしてたなら殺される覚悟もあっただろう?」
「嫌だ! まだ、死にたくねーんだ」
「そうだよな。誰だって死にたくない。分かった。しょうがないなぁ」
ユうやの表情が微笑みに変わり頷くのを見たジェイクは助かったと言いたげに安堵の溜息をついた。
だがその直後、微笑みは歯をギラリと光らせる気味な笑みに変わる。
「嘘だけどね」
「え?」
それは一度希望を持たせそこから一気に絶望へと突き落とすようなタイミングだった。そして期待通り見事に突き変面のように表情を変えたジェイクの思考が止まったのと同時にユうやの右手に力が入っていく。心臓へ触れた指へ力が加わっていき、それは鼓動を押さえ付けるように強くなってく。
だがこのまま握りつぶされるかと思ったその時、胸が少し痛くなる程度のところで手は止まった。しかしながらジェイクは心臓から伝わる死の感覚に双眸を見開いたまま固まっている。
一方で笑みの消えた優也は眉間に皺を寄せながら目を瞑っていた。その間もずっと心臓を握られていたジェイクは半開きの口で息をしながら生きた心地がしていないことを語る表情で優也をじっと見続ける。まるで時が止まったようなその時間の流れが過ぎていくと、状況を進ませるようにゆっくりと瞼が上がった。その双眸はさっきまでの色とは打って変わりいつもの深紅色。
そして優也が胸に着けた手をそっと離すと体内の血の手は跡形も無く消えた。その後、疲労のような重さを感じながら立ち上がるとノアの方を向きジェイクには背を向けた。
「もう何もしないから行っていいよ」
優也の背中を脅えた表情で見つめていたジェイクだったが、その言葉を信じ切れなかったのかすぐには動かなった。だが一瞬間を置くと優也を警戒しながら慌てて逃げていった。
ジェイクが走り去ると先程まで戦闘が行われていたとは思えない程の静寂を取り戻した室内。そんな部屋の隅に――ノアの前に立っていた優也は立ちくらみで壁に手を着くともう片方の手で顔を覆う。
「何だったんだろう、さっきの」
自問するように呟くが答えが見つかるはずも無く、また教えてくれる人もいない。ただ自覚出来ていたのは途中から無意識というよりは自分の体を別の誰かが操作しそれを一人称視点で見ているというような感覚と最後の方は完全に意識はなく気が付けばジェイクを殺そうとしていたということだけ。
すると答えの見つけられない迷宮に迷い込んでいた優也へ耳に付けていた通信機から声が聞こえてきた。
「優也さん? 聞こえますか?」
「はぃ。聞こえます」
その声に疲れ切った声で返事をする優也。
「良かった。申し訳ありません。少々トラブルがありまして……。大丈夫ですか?」
「はい。大丈夫です」
「ではモノレールはすぐそこなので、そこへ向かってください」
「分かりました」
優也は指示に従いモノレールへ向かう為、ノアを抱き上げると部屋を後にした。
そう叫ぶと爆音と共にゆうやの上半身は激しい爆発に包まれた。
「がはっはっは! この奥の手を使わせたことは褒めてやる。それに少しはやるようだが、俺様の敵じゃないな。これで俺様も昇進だ!」
完全に勝ちを確信し高笑いするジェイクだったが、煙が晴れるとその笑い声は途絶え額に冷や汗を流しながら表情は驚愕に固まった。
「う、うそだろ……」
爆煙から姿を現したゆうやは、怪我はおろか傷一つ無かった。
「それで終り?」
それはいつもの話し声よりも少し低くめな声。
そして先ほどよりもよりハッキリと青く光る瞳がジェイクを見下ろしていた。それはまるでゴミでも見るような冷酷な視線。
「嘘だ! ありえねぇ! これは装甲車さえ吹っ飛ばす代物だぞ」
ジェイクは眼前に広がる圧倒的な現実を受け止められられないと言った様子だった。
だがゆうやはそんなジェイクを他所に、右足をゆっくりと上げると左二の腕へ体重を乗せながら勢いよく突き出した。その足裏は義手を突き破りいとも簡単に後ろの壁へとヒビを入れてしまう。その瞬間ジェイクは痛みに染まった悲鳴を上げ、残った部分をもう片義手で押さえた。
「何だ。案外脆いじゃん」
依然として無表情のまま壁から離した足をもう一度構える。
だがジェイクは再び突き出された足を命からがらと言った様子で横へ倒れながら避けた。そんなジェイクをゆうやは壁に足を減り込ませながら顔だけで追う。二人の目が合うとジェイクは一瞬にして表情を恐怖一色にし、慌てて地を這いながら逃げ出した。
「な、なんだアレ。本物の化物じゃねーか! こ、殺される」
その震えた声を耳に入れながら視線を減り込んだ足へ向けると、壁から抜き再び顔だけで立ち上がって逃げて行くジェイクを追う。それは選択肢を逃走の一点に絞った必死の走りだったが、途中に一度だけ(確認の為だろう)ゆうやの方を振り向いた。
その直後、何を思ったのかジェイクは隅に座るノアの方へと舵を切り始める。それが最悪の選択をしたとも知らずに。
そして進路を変えノアまであと少しという所まで迫ったジェイクだったが、その斜前へはゆうやが瞬間移動でもしたのかと言うほど突然に姿を現した。ゆうやは勢いそのまま横を通り過ぎようとする彼の口元を右手で鷲掴みにするとそのまま地面に叩きつけた。それからそのまま馬乗りになり左膝で右義肢を抑え右手は口を塞ぎ続ける。
「今……。何しようとした?」
ゆうやはゆっくりとした口調で言葉を並べた。その声を聞いているのかそうでないのか汗だくで息の荒れたジェイクは、最初とは全く別人のような雰囲気のゆうやにまるで小動物のように怯えていた。
だがそれは彼の変ってしまった雰囲気だけが原因ではなく、冷酷な青く光る双眸が逸らせば殺されてしまいそうな目つきで睨むように見つめていたことも関係しているのだろう。更にゆうやからは生半可な決意など容易く壊してしまいそうなほど熟練されれた殺気が溢れ出していた。
「もしかして……ノアを……殺そうとした?」
その言葉に反応するように口を塞ぐ手へ少し力が入った。そのまま殺されてしまうと思ったのか、ジェイクは必死に首を横に振りそうでないことを訴える。
「じゃあ、人質にしようとした?」
手に遮られ伝わらないがもごもごと言い訳を言っているようだった。
「ふーん。――僕はね、別にお前を殺そうとは思ってないんだよ」
その声は相変わらず冷静だったが、心の動きを代わって表すかのように左膝には徐々に力が加わっていく。
「だけど、僕の大事な人を傷つけようとするなら……」
言葉が進むにつれ更に左膝へ力が加わっていく。それに連れ右義肢へはヒビが入り――そしてついには押しつぶされ体から切り離されてしまった。それと同時に塞がれた手の中には悲鳴が充満する。
「俺も全力で守らないといけないんだ」
だが悲鳴にもジェイクにも無関心だと言うようにゆうやは表情を変えぬまま人差し指を口元で立てた。それを見たジェイクは何度も頷く。
そしてゆっくりと口を覆っていた手は離れていき、痛みの所為か恐怖の所為かその両方か、少し荒れた呼吸音は解放された。
「分かるかい?」
「あぁ」
ジェイクはすぐさま小さく返事をしながら何度も頷いた。何度も。何度も。
「本当に?」
そう問いかけながらゆうやは胸へ心臓を囲うように五本の指先を着けた。
すると腕から各指へ血管をなぞるように赤い線が走り、それが指先に達するとゆっくりゆうやの血液がジェイクの体内へ侵入していく。そのまま心臓の近くまで流れた血は手の形を形成すると心臓を優しく添えるように握った。
「文字通りお前の心臓は俺の手の中だ」
「や、止めてくれ」
その血の手の中で心臓は更に活発化し鼓動を早めた。
「どうしてだい? 俺を殺そうとしてたなら殺される覚悟もあっただろう?」
「嫌だ! まだ、死にたくねーんだ」
「そうだよな。誰だって死にたくない。分かった。しょうがないなぁ」
ユうやの表情が微笑みに変わり頷くのを見たジェイクは助かったと言いたげに安堵の溜息をついた。
だがその直後、微笑みは歯をギラリと光らせる気味な笑みに変わる。
「嘘だけどね」
「え?」
それは一度希望を持たせそこから一気に絶望へと突き落とすようなタイミングだった。そして期待通り見事に突き変面のように表情を変えたジェイクの思考が止まったのと同時にユうやの右手に力が入っていく。心臓へ触れた指へ力が加わっていき、それは鼓動を押さえ付けるように強くなってく。
だがこのまま握りつぶされるかと思ったその時、胸が少し痛くなる程度のところで手は止まった。しかしながらジェイクは心臓から伝わる死の感覚に双眸を見開いたまま固まっている。
一方で笑みの消えた優也は眉間に皺を寄せながら目を瞑っていた。その間もずっと心臓を握られていたジェイクは半開きの口で息をしながら生きた心地がしていないことを語る表情で優也をじっと見続ける。まるで時が止まったようなその時間の流れが過ぎていくと、状況を進ませるようにゆっくりと瞼が上がった。その双眸はさっきまでの色とは打って変わりいつもの深紅色。
そして優也が胸に着けた手をそっと離すと体内の血の手は跡形も無く消えた。その後、疲労のような重さを感じながら立ち上がるとノアの方を向きジェイクには背を向けた。
「もう何もしないから行っていいよ」
優也の背中を脅えた表情で見つめていたジェイクだったが、その言葉を信じ切れなかったのかすぐには動かなった。だが一瞬間を置くと優也を警戒しながら慌てて逃げていった。
ジェイクが走り去ると先程まで戦闘が行われていたとは思えない程の静寂を取り戻した室内。そんな部屋の隅に――ノアの前に立っていた優也は立ちくらみで壁に手を着くともう片方の手で顔を覆う。
「何だったんだろう、さっきの」
自問するように呟くが答えが見つかるはずも無く、また教えてくれる人もいない。ただ自覚出来ていたのは途中から無意識というよりは自分の体を別の誰かが操作しそれを一人称視点で見ているというような感覚と最後の方は完全に意識はなく気が付けばジェイクを殺そうとしていたということだけ。
すると答えの見つけられない迷宮に迷い込んでいた優也へ耳に付けていた通信機から声が聞こえてきた。
「優也さん? 聞こえますか?」
「はぃ。聞こえます」
その声に疲れ切った声で返事をする優也。
「良かった。申し訳ありません。少々トラブルがありまして……。大丈夫ですか?」
「はい。大丈夫です」
「ではモノレールはすぐそこなので、そこへ向かってください」
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