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第壱幕:人と御伽
【24滴】ウェアウルフと吸血鬼
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「おーい、起きろー。朝だぞー」
レイの声に起こされ目を覚また優也だったがまだ眠り足りなかった。
「レイ? おはよう。もうそんな時間?」
「はい、おはよう。ただいま朝の五時だ」
「え? じゃあもうちょっと寝かせて」
現在時刻を聞きベッドに潜り込む優也。
「却下しまーす」
だがレイは覆い被さる羽毛布団を剥ぎ取った。
そして無理やり起こされた優也はまだ開ききってない目を擦りながらもレイに連れられ、いつも食事をしている部屋へ。ドアを開くとテーブルの上には既に朝食が並んでいた。どれも湯気が立ち昇る出来立てで、朝から食欲がそそられる良い匂いが部屋中には広がっている。
そんなお出迎えを受け騒ぎ始める腹の虫。お腹で騒ぐのを感じながら席に座ると、丁度のタイミングでアモが別のドアから部屋へと入って来た。
「おはようございます」
テーブルまで歩いてきたアモは椅子に座るレイと優也に向け会釈をした。
「おはよう」
「おはようございます」
「レイ様、お願いされたモノです」
二人からの返事をしっかりと受け取った後にアモは言葉と共に手に持っていた二本のスクイズボトルをテーブルに置いた。
「ありがとうアモさん」
「いえ、それではごゆっくりどうぞ」
もう一度会釈をすると入ってきたドアから消えていった。
「一体何をするの?」
眠気を吹き飛ばし無理やり起こされたことなど気にならないくらい美味しい朝食をゆっくりと口に運びながら、優也は叩き起こされた理由を尋ねた。
「あとで説明するって」
だがそう言われてしまい仕方なくそれ以上は訊かずに朝食を食べ続ける。
そして朝食を食べ終えた後は、スクイズボトルを持ったレイについて行き部屋を移動した。廊下をしばらく歩き、着いたのは数ある書庫のひとつで三方向が床から天井まで続く本棚で囲まれた書庫。
中に入るとレイは正面奥側の大きめのデスクの後ろにある本棚まで足を進めた。そして目線の高さの段に並べられた本の右から四冊目を手に取り、その右横の三冊を左にずらし、空いたスペースに最初の本を入れた。次はその上の段の右から五冊目の本を取り、左横の二冊を右にずらし空いたスペースに本を戻す。
すると、カチャと開錠音がしたかと思うと本棚がゆっくりと動き出し左右へと開き始めた。その本棚の向こうに現れたのは下へ続く階段だった。
「おぉー! 映画みたい」
それは映画などに出て来る秘密基地のようで、そういうものへの憧憬の念が優也の双眸を子どもののように煌々とさせた。
「行くぞ」
だが初見ではないのかあっさりとした態度のレイは先に階段を下りてしまう。そんな彼より少し遅れ後に続き下りていくと、そこには真っ白で近未来的な自動ドアが一枚。そのドアがレイに反応して開くと向こう側には何も無いただの白い部屋が広がっていた。
優也は一歩足を踏み入れると部屋を見回す。一方レイは端にスクイズボトルを置いていた。そしてスクイズボトルを置いたレイは壁から離れ、広いスペースまで移動すると優也に向け手招きをする。
それを見て近づく優也だったが目の前まで行くと突然、何の前触れもなく顔目掛け飛んできた拳に思いっきり殴り飛ばされてしまった。自分の身に起きた事を理解するよりも先に、入り口付近の壁まで飛ばされ背中を強打するとそのまま滑るように地面へ落下。お尻に更なるダメージを受けると壁に体を預けながら殴られた方の頬に手を当てる。そのまま刺すような痛みを感じる口元へ指を滑らせてみると、指先は濡れた感触に触れ視線を落としてみると血が付いていた。
その後、優也は顔を上げ何が何だか分からずただレイを見つめた。
「不意の攻撃にもしっかり反応しないとダメだぜ」
「いきなり何!?」
すっかり頭が真っ白になっていた優也は両手を腰に当てるレイにそう問うしかなかった。
「マリねぇに頼まれたんだよ。お前に戦闘経験を積ませてくれってな」
そう答えながらレイはゆっくり歩みを進めてきた。
「つまり、今日から俺はお前の師匠だ。これから先は油断禁物だぜ」
戦闘経験。それは本来の六条優也という人間が積むはずも無ければ体験するはずもないもの。だが吸血鬼となった今の優也には必要不可欠なものであり、それを決めたあの時から彼自身心のどこかで覚悟は出来ていた。
そして目の前まで来たレイは少し前屈みになりながら手を差し伸べた。
「そういうことは早く言ってよ。――でも、よろしく」
そして動揺が落ち着きを取り戻していく中、その差し出された手を掴むとレイの力も借りて立ち上がろうとした。
だが、手を握っている方の腕にレイのもう片方の手が伸びてき鷹と思うと、そのまま反対側へ背負い投げのように投げられられてしまった。背中から床へと激突し、その痛みに思わず目を瞑る。少しして閉じていた目に光を戻すと、そこに広がっていたのは広大な蒼穹――ではなく当然ながら白い天井。
そこにレイの顔が割り込んできた。
「油断禁物って言っただろ」
笑みを浮かべるレイ。それに釣られるように優也の血が止まった口元が綻ぶ。優也はこの時ようやく特訓はこの部屋に足を踏み入れたその瞬間から始まっていたことを理解した。
そして上半身を起こすと手を軸しにしブレイクダンスのように体を回転させながらレイの足を払おうとした。今度は優也からの先制攻撃。
だがそれは読まれていたのか容易く跳んで躱され逆に顔を蹴り飛ばされた。顔が取れ新しい顔と入れ替わるのではないかと思うほどの衝撃を受け体は再び壁まで飛ばされる。が、今回はすぐさま立ち上がると地面をひと蹴りし、レイの元まで一気に戻った。
レイの声に起こされ目を覚また優也だったがまだ眠り足りなかった。
「レイ? おはよう。もうそんな時間?」
「はい、おはよう。ただいま朝の五時だ」
「え? じゃあもうちょっと寝かせて」
現在時刻を聞きベッドに潜り込む優也。
「却下しまーす」
だがレイは覆い被さる羽毛布団を剥ぎ取った。
そして無理やり起こされた優也はまだ開ききってない目を擦りながらもレイに連れられ、いつも食事をしている部屋へ。ドアを開くとテーブルの上には既に朝食が並んでいた。どれも湯気が立ち昇る出来立てで、朝から食欲がそそられる良い匂いが部屋中には広がっている。
そんなお出迎えを受け騒ぎ始める腹の虫。お腹で騒ぐのを感じながら席に座ると、丁度のタイミングでアモが別のドアから部屋へと入って来た。
「おはようございます」
テーブルまで歩いてきたアモは椅子に座るレイと優也に向け会釈をした。
「おはよう」
「おはようございます」
「レイ様、お願いされたモノです」
二人からの返事をしっかりと受け取った後にアモは言葉と共に手に持っていた二本のスクイズボトルをテーブルに置いた。
「ありがとうアモさん」
「いえ、それではごゆっくりどうぞ」
もう一度会釈をすると入ってきたドアから消えていった。
「一体何をするの?」
眠気を吹き飛ばし無理やり起こされたことなど気にならないくらい美味しい朝食をゆっくりと口に運びながら、優也は叩き起こされた理由を尋ねた。
「あとで説明するって」
だがそう言われてしまい仕方なくそれ以上は訊かずに朝食を食べ続ける。
そして朝食を食べ終えた後は、スクイズボトルを持ったレイについて行き部屋を移動した。廊下をしばらく歩き、着いたのは数ある書庫のひとつで三方向が床から天井まで続く本棚で囲まれた書庫。
中に入るとレイは正面奥側の大きめのデスクの後ろにある本棚まで足を進めた。そして目線の高さの段に並べられた本の右から四冊目を手に取り、その右横の三冊を左にずらし、空いたスペースに最初の本を入れた。次はその上の段の右から五冊目の本を取り、左横の二冊を右にずらし空いたスペースに本を戻す。
すると、カチャと開錠音がしたかと思うと本棚がゆっくりと動き出し左右へと開き始めた。その本棚の向こうに現れたのは下へ続く階段だった。
「おぉー! 映画みたい」
それは映画などに出て来る秘密基地のようで、そういうものへの憧憬の念が優也の双眸を子どもののように煌々とさせた。
「行くぞ」
だが初見ではないのかあっさりとした態度のレイは先に階段を下りてしまう。そんな彼より少し遅れ後に続き下りていくと、そこには真っ白で近未来的な自動ドアが一枚。そのドアがレイに反応して開くと向こう側には何も無いただの白い部屋が広がっていた。
優也は一歩足を踏み入れると部屋を見回す。一方レイは端にスクイズボトルを置いていた。そしてスクイズボトルを置いたレイは壁から離れ、広いスペースまで移動すると優也に向け手招きをする。
それを見て近づく優也だったが目の前まで行くと突然、何の前触れもなく顔目掛け飛んできた拳に思いっきり殴り飛ばされてしまった。自分の身に起きた事を理解するよりも先に、入り口付近の壁まで飛ばされ背中を強打するとそのまま滑るように地面へ落下。お尻に更なるダメージを受けると壁に体を預けながら殴られた方の頬に手を当てる。そのまま刺すような痛みを感じる口元へ指を滑らせてみると、指先は濡れた感触に触れ視線を落としてみると血が付いていた。
その後、優也は顔を上げ何が何だか分からずただレイを見つめた。
「不意の攻撃にもしっかり反応しないとダメだぜ」
「いきなり何!?」
すっかり頭が真っ白になっていた優也は両手を腰に当てるレイにそう問うしかなかった。
「マリねぇに頼まれたんだよ。お前に戦闘経験を積ませてくれってな」
そう答えながらレイはゆっくり歩みを進めてきた。
「つまり、今日から俺はお前の師匠だ。これから先は油断禁物だぜ」
戦闘経験。それは本来の六条優也という人間が積むはずも無ければ体験するはずもないもの。だが吸血鬼となった今の優也には必要不可欠なものであり、それを決めたあの時から彼自身心のどこかで覚悟は出来ていた。
そして目の前まで来たレイは少し前屈みになりながら手を差し伸べた。
「そういうことは早く言ってよ。――でも、よろしく」
そして動揺が落ち着きを取り戻していく中、その差し出された手を掴むとレイの力も借りて立ち上がろうとした。
だが、手を握っている方の腕にレイのもう片方の手が伸びてき鷹と思うと、そのまま反対側へ背負い投げのように投げられられてしまった。背中から床へと激突し、その痛みに思わず目を瞑る。少しして閉じていた目に光を戻すと、そこに広がっていたのは広大な蒼穹――ではなく当然ながら白い天井。
そこにレイの顔が割り込んできた。
「油断禁物って言っただろ」
笑みを浮かべるレイ。それに釣られるように優也の血が止まった口元が綻ぶ。優也はこの時ようやく特訓はこの部屋に足を踏み入れたその瞬間から始まっていたことを理解した。
そして上半身を起こすと手を軸しにしブレイクダンスのように体を回転させながらレイの足を払おうとした。今度は優也からの先制攻撃。
だがそれは読まれていたのか容易く跳んで躱され逆に顔を蹴り飛ばされた。顔が取れ新しい顔と入れ替わるのではないかと思うほどの衝撃を受け体は再び壁まで飛ばされる。が、今回はすぐさま立ち上がると地面をひと蹴りし、レイの元まで一気に戻った。
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