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第壱幕:人と御伽
【23+滴】協力者2
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二人が会話している時も優也の目線はずっとレイの頭へ向いていた。そのじぃーっと見つめる視線にむず痒さでも感じたのか、レイは顔を優也の方へと向けた。
「んだよ?」
「いや、あの……」
「なんだよ? 言ってみろよ」
「気分を悪くしたらごめんなさい」
もしかしたら失礼になるかもしれないと思いつつも勇気を振り己の欲望を口にした。
「頭、撫でてもいいですか?」
優也は大の動物好きだったのだ。特に動物の耳が昔から好きだった。
「はぁ?」
予想をしていなかった言葉に開いた口が塞がらないといったレイ。一方でマーリンはお腹を抱えて笑っていた。
「頭を……」
「ダメだ」
「なによいいじゃないそんなケチケチしないでも」
まだ笑いの余韻を表情に残しながらもマーリンはレイの後ろへ瞬時に移動すると頭を撫で始めた。
「ほ~ら、よしよーし」
だがレイはすぐさまその手を払った。
「あー! もう止めろよ」
「おぉ~こわっ!」
手を払われたマーリンは茶化しながらも満足気な表情を浮かべソファに戻った。
「とにかくダメだからな!」
「はぃ」
もしかしたらという気持ちが無いわけではなかったが、故に少し残念な気持ちのまま返事をした優也にマーリンが耳打ちする。
「本当は撫でられるの嫌いじゃないのよ」
「そうなんですか」
「また変なこと言ってるんじゃねーだろうな」
レイがマーリンを指差しながらそう言ってるとそこへ紅茶を持ったアモが入ってきた。
「あら、戻ったのね」
「はい。先ほど戻りました」
「お邪魔してます」
座りながらアモに軽く頭を下げる優也。
「いらっしゃいませ」
それに対してアモも会釈をして返す。
「アモさん久しぶり」
頭を上げた後にレイの方を向いたアモは懐古の情に駆られた表情を浮かべた。
「これはレイ様。お久しぶりでございます」
それに手を軽く挙げるレイに対しアモは深く頭を下げた。
「また、一段と凛々しくなられましたね」
「おっ! そうか! いやぁ~、アモさんは分かってるねー」
レイは照れながら頭を掻いた。
「気づきなさいよ、お世辞よ」
それに対しマーリンは呆れるように言った。
「うるせぇ」
「相変わらず仲がよろしいようでなりよりです」
二人のやりとりを聞きながらもアモは紅茶を淹れ始めた。
「俺はもうちょっと人をおちょくるところをどうにかしたらいいと思うんだけどな」
「何言ってるのよ。人の驚いたり困ってる顔を見るのって楽しいじゃない」
そう言うとマーリンは悪い笑みを浮かべていた。
「性格の悪さが出てますよ」
「うるさいわね」
アモの言葉に睨むような視線を向けるマーリンだったが彼は相変わらず紅茶を注ぎ続けた
「だけど俺は、そういう部分を含めてマリねぇが好きだぜ」
「あらそう。好意だけ貰っておくわ」
狙ったように言ったレイだが、マーリンは躱すようにさらっと返す。その間にそれぞれに紅茶を配り終えたアモは会釈を最後に部屋を出て行った。
「そういや、今回の目標は誰なんだ?」
「吸血鬼のあの子よ」
「あぁ。あの噂のヤツか」
レイは何度か軽く頷く。
「レイさんはノアを知ってるんですか?」
「レイでいいぜ。それに敬語も止めてくれ」
「――分かった……よ」
会ったばかりの相手にタメ口で話すことに気が引け少しぎこちない返事になってしまった。
「そうだな。会ったことはないが、噂は聞いたことがある」
「噂?」
「吸血鬼が墓から這い出してきただとか。生き残りがいただとか。そういう類だよ」
「滅んだはずの吸血鬼が現れたら噂ぐらいにはなるわよね」
「そういや。レディの吸血鬼って聞いたんだが本当か?」
「そうよ」
マーリンのその返事を聞いたレイは笑みを浮かべた。
「くぅぅぅ。やる気でるぜ。俺のタイプの子だったらいいんだがな。やっぱピンチにこう颯爽と現れて助けてやるってのがカッコいいよな。もしかしたら惚れられるかも」
その大きすぎる独り言を聞いていた優也は何だか複雑な気持ちになってしまっていた。本人にそのつもりはなかったが、それは表情に出てしまっていたようだ。
「レイ」
そんな優也の顔を見たマーリンは溜息交じりの声で名前を呼んだ。その声で優也を見たレイは瞬時に彼女の言いたいことを悟る。
「じょーだんだっての。今回の王子役はちゃんとお前に譲ってやるからよ。安心しろって」
「え? いや、あの」
「はい! 今日はもう寝ましょうか」
手を叩き無理やり話を終わらせたマーリンは真っ先に立ち上がった。それを見たレイも口を開きながら立ち上がろうとするが。
「それじゃあ、俺はマリねぇと一緒に……」
「部屋はちゃんとあるからアモに案内してもらってね。じゃーおやすみー」
だがマーリンはレイを無視しそれだけを言い残すと部屋を出て行ってしまった。
「ったく、つれねーなぁ」
だけどそんなところも良いと言いた気なレイは途中まで上げた腰を下ろした。
そして言われた通りアモに部屋へと案内された優也とレイは隣同士の部屋でそれぞれ眠りについた。
「んだよ?」
「いや、あの……」
「なんだよ? 言ってみろよ」
「気分を悪くしたらごめんなさい」
もしかしたら失礼になるかもしれないと思いつつも勇気を振り己の欲望を口にした。
「頭、撫でてもいいですか?」
優也は大の動物好きだったのだ。特に動物の耳が昔から好きだった。
「はぁ?」
予想をしていなかった言葉に開いた口が塞がらないといったレイ。一方でマーリンはお腹を抱えて笑っていた。
「頭を……」
「ダメだ」
「なによいいじゃないそんなケチケチしないでも」
まだ笑いの余韻を表情に残しながらもマーリンはレイの後ろへ瞬時に移動すると頭を撫で始めた。
「ほ~ら、よしよーし」
だがレイはすぐさまその手を払った。
「あー! もう止めろよ」
「おぉ~こわっ!」
手を払われたマーリンは茶化しながらも満足気な表情を浮かべソファに戻った。
「とにかくダメだからな!」
「はぃ」
もしかしたらという気持ちが無いわけではなかったが、故に少し残念な気持ちのまま返事をした優也にマーリンが耳打ちする。
「本当は撫でられるの嫌いじゃないのよ」
「そうなんですか」
「また変なこと言ってるんじゃねーだろうな」
レイがマーリンを指差しながらそう言ってるとそこへ紅茶を持ったアモが入ってきた。
「あら、戻ったのね」
「はい。先ほど戻りました」
「お邪魔してます」
座りながらアモに軽く頭を下げる優也。
「いらっしゃいませ」
それに対してアモも会釈をして返す。
「アモさん久しぶり」
頭を上げた後にレイの方を向いたアモは懐古の情に駆られた表情を浮かべた。
「これはレイ様。お久しぶりでございます」
それに手を軽く挙げるレイに対しアモは深く頭を下げた。
「また、一段と凛々しくなられましたね」
「おっ! そうか! いやぁ~、アモさんは分かってるねー」
レイは照れながら頭を掻いた。
「気づきなさいよ、お世辞よ」
それに対しマーリンは呆れるように言った。
「うるせぇ」
「相変わらず仲がよろしいようでなりよりです」
二人のやりとりを聞きながらもアモは紅茶を淹れ始めた。
「俺はもうちょっと人をおちょくるところをどうにかしたらいいと思うんだけどな」
「何言ってるのよ。人の驚いたり困ってる顔を見るのって楽しいじゃない」
そう言うとマーリンは悪い笑みを浮かべていた。
「性格の悪さが出てますよ」
「うるさいわね」
アモの言葉に睨むような視線を向けるマーリンだったが彼は相変わらず紅茶を注ぎ続けた
「だけど俺は、そういう部分を含めてマリねぇが好きだぜ」
「あらそう。好意だけ貰っておくわ」
狙ったように言ったレイだが、マーリンは躱すようにさらっと返す。その間にそれぞれに紅茶を配り終えたアモは会釈を最後に部屋を出て行った。
「そういや、今回の目標は誰なんだ?」
「吸血鬼のあの子よ」
「あぁ。あの噂のヤツか」
レイは何度か軽く頷く。
「レイさんはノアを知ってるんですか?」
「レイでいいぜ。それに敬語も止めてくれ」
「――分かった……よ」
会ったばかりの相手にタメ口で話すことに気が引け少しぎこちない返事になってしまった。
「そうだな。会ったことはないが、噂は聞いたことがある」
「噂?」
「吸血鬼が墓から這い出してきただとか。生き残りがいただとか。そういう類だよ」
「滅んだはずの吸血鬼が現れたら噂ぐらいにはなるわよね」
「そういや。レディの吸血鬼って聞いたんだが本当か?」
「そうよ」
マーリンのその返事を聞いたレイは笑みを浮かべた。
「くぅぅぅ。やる気でるぜ。俺のタイプの子だったらいいんだがな。やっぱピンチにこう颯爽と現れて助けてやるってのがカッコいいよな。もしかしたら惚れられるかも」
その大きすぎる独り言を聞いていた優也は何だか複雑な気持ちになってしまっていた。本人にそのつもりはなかったが、それは表情に出てしまっていたようだ。
「レイ」
そんな優也の顔を見たマーリンは溜息交じりの声で名前を呼んだ。その声で優也を見たレイは瞬時に彼女の言いたいことを悟る。
「じょーだんだっての。今回の王子役はちゃんとお前に譲ってやるからよ。安心しろって」
「え? いや、あの」
「はい! 今日はもう寝ましょうか」
手を叩き無理やり話を終わらせたマーリンは真っ先に立ち上がった。それを見たレイも口を開きながら立ち上がろうとするが。
「それじゃあ、俺はマリねぇと一緒に……」
「部屋はちゃんとあるからアモに案内してもらってね。じゃーおやすみー」
だがマーリンはレイを無視しそれだけを言い残すと部屋を出て行ってしまった。
「ったく、つれねーなぁ」
だけどそんなところも良いと言いた気なレイは途中まで上げた腰を下ろした。
そして言われた通りアモに部屋へと案内された優也とレイは隣同士の部屋でそれぞれ眠りについた。
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