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第1章
#1
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遂に明日には退院だと医者に言われて、私はめでたく芸能界に放り込まれるらしい。あー、憂鬱だ!
「失礼します」
透き通った声が響き、私だけの病室のドアが開く。
「あーや…記憶喪失ってほんとなの?」
心配そうに私を見つめるのは、超絶美人だった。明るい色の長くて軽くウェーブのかかった髪、整った顔、白い肌、ふんわりと色づく頬、私が男なら一目惚れしてたかもしれない。
「すみません、覚えてなくて…」
私の言葉を聞くやいなや、その大きな瞳に涙を貯めていく。
「ううん。でも、心配したよ~!」
ポロッと涙を落として、優しい笑顔になる。どうしよう、可愛い。
彼女は西村 樹奈さんという人で、女優をしているらしい。私とはデビュー時からの親友らしく、湯川さんから連絡を貰ってお見舞いに来てくれたらしい。
「あーや、私のことは樹奈って呼んでたんだよ。湯川マネにも頼まれたし、何か思い出したらすぐ教えてね!」
「うん、ありがとう樹奈。」
こんな親友がいるなら、芸能界でも何とかなりそう。かも?芸能界での基本的なことをいくつか質問して、丁寧に教えて貰った。
まぁ、何とかするしかないんだけど。
「ねぇ、樹奈はこの人達のこと、知ってる?」
勝手に消すのも駄目な気がして、結局放置していた連絡先を見せる。
「知らない人もいるけど、知ってる人はほとんど仕事仲間だね。」
「そうなんだ。」
私は上からスクロールして、ある人のところで手が止まった。
「この人は?」
お気に入りを示す星が付いている人の名前は黒澤 綉と書かれていた。
「…あぁ、彼ね、あーやと凄く仲良しだったんだけど、大喧嘩したみたいで、仲も悪くなっちゃてたと思うよ。あーやの悪口言ってるみたいだし、もう関わるの辞めた方がいいかも。」
大喧嘩って…。私なかなか、すごい生活してたんだな。しかも、今は嫌われてるのか。1度の喧嘩でそこまでなるって何したんだろう。でも、悪口を言うなんて薄情なやつだな。連絡先も消した方がいいのかな。でも、消そうとすれば何故か心がザワつく気がして。記憶が戻るまでは置いておくことにした。
その後はお見舞いで貰ったケーキを2人で食べ、仕事があるらしく、樹奈は帰った。
私は荷物をまとめ、テレビをつけ、ダラダラする。
しばらくすると、ドアが開いて、3人の男の人が入ってきた。
「彩ちゃん、失礼すんね!」
真ん中の1番背の高い人が、笑顔で言う。入る前に言ってほしいよ。うん。
というか、なんなんだ!この美形3人組!!オーラがすごい出てるんだけど!!皆が皆、すらっとしていて、足長っ!顔ちっさ!私、こんな人たちと知り合いなの!?
「彩、まじで僕らの記憶無いの?」
「申し訳ないですが…無いみたいです。」
1番背の低い、優しそうな人に聞かれて答える。
3人とも、驚いているようだ。驚いていてもイケメン。すごいな、巷の女子がキャーキャーヒーヒー言うやつだわ。
彼らは順に自己紹介してくれた。
1番初めに声をかけてくれた、背の高くて、元気で天真爛漫という感じの人が、藤原 魁人さん。私は、藤くんと呼んでいたらしい。
背の低くて、優しげな、不思議で落ち着いた雰囲気の人は沖 真也さん。私は沖さんと呼んでいたらしい。
そして、顔立ちがハッキリしていて、キリッとしている人は戸田 龍志さん。私はリュウと呼んでいたらしい。
なんと、皆さん«Gimmick»という5人組の超人気アイドルグループらしく、私は職業アイドルの人に初めて会ったなと変な興奮に浸っていた。
「オレたち、彩ちゃんに聞きたいことも会ったんだけど、わかんなくなっちゃったね。」
「聞きたいこと?」
よくよく話を聞いてみると、私と«Gimmick»のメンバーは5年ぐらい前からの仲らしく、信頼し合っていた。それなのに、私は記憶喪失になる前、彼らを貶める様な発言を記者に売っただけでなく、問い詰めると「私はこんな奴だよ?」といった風に開き直られ、メンバー内でも混乱し、私を嫌悪しだす人がいたので、真実を聞こうとして、お見舞いにきたらしい。
「…ごめんなさい、私、そんなことを。」
開いた口が塞がらない。なんてことをしているんだ!!私!!過去の自分を殴ってやりたい!普通に考えて嫌悪されて当たり前だよ!そんな奴、私なら絶対に許さない。
「僕らは、彩にも何か事情があったんだと思ってるよ。」
「覚えてねぇこと、謝んねーでいいって。」
イケメンって、心まで綺麗なのか。
芸能人半端ない。って、私も芸能人なのか…。
「覚えてなくても、私がしたことなので!償わせて下さい!」
優しさが心に染みる。こんな人たちに糞みたいなことをしてしまった過去の自分が恥ずかしい。どうか、どうか!パシリにでもなんでもしてください!
「ぷっ、記憶は無くても中身はやっぱり変な彩ちゃんだね!」
「ふふっ、藤ちゃん、失礼じゃない?」
「まぁ、なんか思い出したら、連絡くれ。」
彼らは何重にも優しく、仕事で困ったことがあったら力になるとも言ってくれた。もう聖人なんじゃないかな、あの人たち。
スマホにはバッチリ連絡先が残っていて、後で驚いた。本当に仲が良かったらしい。
「失礼します」
透き通った声が響き、私だけの病室のドアが開く。
「あーや…記憶喪失ってほんとなの?」
心配そうに私を見つめるのは、超絶美人だった。明るい色の長くて軽くウェーブのかかった髪、整った顔、白い肌、ふんわりと色づく頬、私が男なら一目惚れしてたかもしれない。
「すみません、覚えてなくて…」
私の言葉を聞くやいなや、その大きな瞳に涙を貯めていく。
「ううん。でも、心配したよ~!」
ポロッと涙を落として、優しい笑顔になる。どうしよう、可愛い。
彼女は西村 樹奈さんという人で、女優をしているらしい。私とはデビュー時からの親友らしく、湯川さんから連絡を貰ってお見舞いに来てくれたらしい。
「あーや、私のことは樹奈って呼んでたんだよ。湯川マネにも頼まれたし、何か思い出したらすぐ教えてね!」
「うん、ありがとう樹奈。」
こんな親友がいるなら、芸能界でも何とかなりそう。かも?芸能界での基本的なことをいくつか質問して、丁寧に教えて貰った。
まぁ、何とかするしかないんだけど。
「ねぇ、樹奈はこの人達のこと、知ってる?」
勝手に消すのも駄目な気がして、結局放置していた連絡先を見せる。
「知らない人もいるけど、知ってる人はほとんど仕事仲間だね。」
「そうなんだ。」
私は上からスクロールして、ある人のところで手が止まった。
「この人は?」
お気に入りを示す星が付いている人の名前は黒澤 綉と書かれていた。
「…あぁ、彼ね、あーやと凄く仲良しだったんだけど、大喧嘩したみたいで、仲も悪くなっちゃてたと思うよ。あーやの悪口言ってるみたいだし、もう関わるの辞めた方がいいかも。」
大喧嘩って…。私なかなか、すごい生活してたんだな。しかも、今は嫌われてるのか。1度の喧嘩でそこまでなるって何したんだろう。でも、悪口を言うなんて薄情なやつだな。連絡先も消した方がいいのかな。でも、消そうとすれば何故か心がザワつく気がして。記憶が戻るまでは置いておくことにした。
その後はお見舞いで貰ったケーキを2人で食べ、仕事があるらしく、樹奈は帰った。
私は荷物をまとめ、テレビをつけ、ダラダラする。
しばらくすると、ドアが開いて、3人の男の人が入ってきた。
「彩ちゃん、失礼すんね!」
真ん中の1番背の高い人が、笑顔で言う。入る前に言ってほしいよ。うん。
というか、なんなんだ!この美形3人組!!オーラがすごい出てるんだけど!!皆が皆、すらっとしていて、足長っ!顔ちっさ!私、こんな人たちと知り合いなの!?
「彩、まじで僕らの記憶無いの?」
「申し訳ないですが…無いみたいです。」
1番背の低い、優しそうな人に聞かれて答える。
3人とも、驚いているようだ。驚いていてもイケメン。すごいな、巷の女子がキャーキャーヒーヒー言うやつだわ。
彼らは順に自己紹介してくれた。
1番初めに声をかけてくれた、背の高くて、元気で天真爛漫という感じの人が、藤原 魁人さん。私は、藤くんと呼んでいたらしい。
背の低くて、優しげな、不思議で落ち着いた雰囲気の人は沖 真也さん。私は沖さんと呼んでいたらしい。
そして、顔立ちがハッキリしていて、キリッとしている人は戸田 龍志さん。私はリュウと呼んでいたらしい。
なんと、皆さん«Gimmick»という5人組の超人気アイドルグループらしく、私は職業アイドルの人に初めて会ったなと変な興奮に浸っていた。
「オレたち、彩ちゃんに聞きたいことも会ったんだけど、わかんなくなっちゃったね。」
「聞きたいこと?」
よくよく話を聞いてみると、私と«Gimmick»のメンバーは5年ぐらい前からの仲らしく、信頼し合っていた。それなのに、私は記憶喪失になる前、彼らを貶める様な発言を記者に売っただけでなく、問い詰めると「私はこんな奴だよ?」といった風に開き直られ、メンバー内でも混乱し、私を嫌悪しだす人がいたので、真実を聞こうとして、お見舞いにきたらしい。
「…ごめんなさい、私、そんなことを。」
開いた口が塞がらない。なんてことをしているんだ!!私!!過去の自分を殴ってやりたい!普通に考えて嫌悪されて当たり前だよ!そんな奴、私なら絶対に許さない。
「僕らは、彩にも何か事情があったんだと思ってるよ。」
「覚えてねぇこと、謝んねーでいいって。」
イケメンって、心まで綺麗なのか。
芸能人半端ない。って、私も芸能人なのか…。
「覚えてなくても、私がしたことなので!償わせて下さい!」
優しさが心に染みる。こんな人たちに糞みたいなことをしてしまった過去の自分が恥ずかしい。どうか、どうか!パシリにでもなんでもしてください!
「ぷっ、記憶は無くても中身はやっぱり変な彩ちゃんだね!」
「ふふっ、藤ちゃん、失礼じゃない?」
「まぁ、なんか思い出したら、連絡くれ。」
彼らは何重にも優しく、仕事で困ったことがあったら力になるとも言ってくれた。もう聖人なんじゃないかな、あの人たち。
スマホにはバッチリ連絡先が残っていて、後で驚いた。本当に仲が良かったらしい。
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