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第七章(最終章) 王子様の寵姫の座に収まっています

7-4 おかしくなっちゃう……! ※

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 ディアルムドはバーベナを寝台に下ろすと、間を置かずに覆い被さった。
 待ちきれないといわんばかりに首の付け根にキスをしながら、荒々しい手つきで服を脱がしにかかる。
 ときどきチリッと肌が痛むのは、そこに情熱の証が刻まれているから。
 すっかり薄くなったところに、さらに上書きするように痕をつけられる。
 肩口にも、鎖骨にも、胸にも。
 王城にやってきてからというもの、オフショルダーのドレスが着られなくなったのはディアルムドのせいだ。

「少し待ってくださいね」

 ディアルムドはバーベナから服を剥ぎ取ると、今度は自分の上着に手をかけた。
 それほど時間もかからずに、戦場に立つにふさわしい引き締まった体が現れる。

「バーベナ、触ってください」

 大きな手に導かれて、バーベナはおそるおそるディアルムドの股間から突き出たものに触れた。

「すごく長くて太いのね……それに熱い」

 こんなものが今まで自分の中に入っていたのが信じられない。

 ――ここだけ、別の生き物みたいにビクビクしてる……。

 内側は芯でも入っているかのように硬いのに、その外側は絹のように柔らかいのも不思議だ。
 つつ……となぞると、ディアルムドが息を漏らすように呻いた。
 いつも瞳をきらめかせ、豪胆な彼が頬を赤く染めている。
 先ほど驚かせたときの表情にも似ているかもしれない。
 けれどそこに色めいた感じが加わったことで、何か、胸に疼くものがあった。

「痛かったですか?」
「いいえ、違います。お願いですから、焦らさないでください。包み込むように持って……上下に動かして」
「……こう?」

 指で輪を作るようにして、優しく扱いてみる。
 すると、ディアルムドの纏った色気がより濃くなり、バーベナの鼓動が大きく跳ねた。

「そうです。もっと上のほう……くびれているところを擦られるといいです」
「そ、そうなの……ここが気持ちがいいってこと?」

 ――やだ。私ったら、変なスイッチ入っちゃいそう。

 張りつめた雄の先端から露が一つ二つ……気づけばいくつも滴っていた。
 それを潤滑油代わりにして指に絡めれば、ディアルムドの呼気が上がる。
 触っているのは自分のほうなのに、次第にもどかしさが募っていくのはどうしてなのか。
 我知らず、バーベナの下腹部が熱くなっていった。

「もっと気持ちよくなってください、ディアルムド様」

 ディアルムドの腰が揺れていることに気をよくしたバーベナは、束の間、恥ずかしさを忘れて手を動かした。
 ここがいいと言われた箇所を重点的に扱く。

「駄目です。そんなに早く動かしたから……」
「え?」

 不意に、手の中で彼のものが痙攣し、ビュッビュッ、と白濁の潮が噴出する。

 ――いっぱい出てくる……!

 だが呆気に取られている場合ではなかった。

「汚してしまいましたね。すみません」

 息をついたディアルムドがバーベナの手を綺麗に拭って、すぐさま、仕切り直しです、と上から伸しかかってきたからだ。

「ええ?」
「先ほどちょっと胸を弄っただけなのに、もうこんなに濡れて……まさか俺のものを握りながら感じていたんですか?」
「そ、そんな……ああっ」

 羞恥心を煽られて、バーベナはとっさに目を瞑る。
 だけど、違う、とは完全に否定できなかった。
 両脚を大きく開いて、濡れそぼった割れ目を撫でられると、ほらね、といった具合に淫靡な水音が立つ。
 さらに秘裂に指を沈められると、バーベナの体に小さな悦びが広がった。

「……っあ!」

 バーベナは身を捩りながら、はしたない声を上げる。

「次はあなたが気持ちよくなる番です」

 そう言って、ディアルムドは腿の間に頭を押しつけた。
 何をしようとしているのか悟ったバーベナは、慌てて目を開けて制止を呼びかける。

「ディアルムド様! そんなところ……舐めちゃ駄目です!」
「ですが、たくさん蜜が溢れてきますよ。ここも、美味しそうに俺の指を食い締めて離そうとしない」

 ディアルムドは押しのけようとするバーベナの手を取って握り返すと、舌で柔襞をゆっくりとなぞり、中から溢れてくる蜜をずるずると啜った。
 彼を愛おしいと思うからこそ、不浄の場所など舐められたくない。
 そう思うのに、先ほどとは比べものにならないほどの愉悦に襲われて、バーベナは目に涙を浮かべた。

「やあ、んっ、ああ……」

 硬い指がバーベナのいいところを擦る。
 同時に、敏感な粒を舌で転がし、突かれると、鳥肌が立つほど気持ちよくなった。
 ディアルムドの口の中で、粒が熱く、硬くなっていく。

「やっ、そんな……っ、んあっ」

 ――おかしくなっちゃう……!

 問答無用で快感の高みに押し上げられ、目の前がチカチカと光った。

「指はもういいですから……」

 ディアルムド様をください、とバーベナは息も絶え絶えになりながら懇願した。
 なんだかんだ言って最後には彼が欲しくなるのだから、自分でも本当に呆れてしまう。
 快楽を覚え込まされた体は、すっかりディアルムドの虜になっている。

「では、あなたの中に入れてください」

 ディアルムドは小さく目を瞠ると、体を繋げる体勢に入った。
 ピタリと蜜口に押し当てられたものは、先ほどと同じくらい熱くて硬い。
 達したあとも、なかなか熱が収まらないのはディアルムドもバーベナと同じなのだ。

「あ……ああ……」

 ゆっくりと、しかし奥深くまで貫かれて、バーベナはそれだけで達してしまいそうだった。
 結合部からどろり蜜が溢れ、もっともっと、と収縮する。

「バーベナの中……久しぶりすぎて、さっき出したばかりなのに、またすぐ果ててしまいそうです……」
「そんな、いやらしいことをサラリと……」
「言うだけでなく、すでにいやらしいことをたくさんしているんですがね」
「わざわざ言わないでください……」

 もう、と顔を背ければ、耳朶じだをしゃぶりながら囁かれた。
 言葉とは裏腹に、お腹の奥は、ぎゅうぎゅう、と窄まる。

「耳は……やっ」
「こうすると、あなたの中がよく締まるんです。一緒に気持ちよくなりたいだけですよ」

 興奮して上擦った声を聞けば、それが本音であることはすぐにわかった。
 ディアルムドは恍惚とした表情でバーベナを見下ろしながら、腰を揺り動かす。

「んっ、ああっ……」

 二人ともすっかり息が上がり、肌も汗でしっとりと湿っている。
 相変わらず不快感はちっとも湧かなかった。
 彼の熱に、呼吸に、匂いに包まれて、むしろ愛おしさは増すばかり。
 きっと互いの想いを確かめ合ったからだろう。体だけではなく、心まで繋がり合っているような気がする。

 ――私たち、一つに溶け合っているみたい……。

「愛しています、ディアルムド様……」

 たくましい背中に腕を回すと、胸が潰れるほどきつく抱きしめ返された。

「俺も愛しています、バーベナ」

 繋がり合ったまま繰り返しキスをする。
 恥ずかしい気持ちは今でも変わらないが、いつの間にか、この行為は愛し合う者同士がする、ごく自然なことだと思えるようになっていた。
 心と体で彼を感じられるのがとても幸せなのだ。

「あっ、ああああ――」
 
 いくらもしないうちに、バーベナの体の中を溜まりに溜まった熱が弾けた。
 腰が砕けそうな快感に総身を震わせながら、何度目かの絶頂に達する。

「バーベナ……バーベナ……」

 ディアルムドが苦しそうに眉を引き絞った。
 しかし本当に苦しんでいるわけではないことを、バーベナはすでに知っている。
 バーベナの目尻に浮かんだ涙が、悲しみからくるものではないのと一緒だ。 
 視界が激しく揺さぶられる。
 すぐに果ててしまいそうだと言った通り、彼は低く呻くのと同時に腰を強く押しつけた。
 いまだひくつく最奥さいおうを突き上げられ、バーベナの中にドクドクと熱いものが注がれる。
 頭がクラクラした。体も甘く痺れてまともに動かせそうにない。
 快楽の余韻に浸りながらそっと上のほうを窺うと、先ほどまでの必死な表情から一転、幸せいっぱいでたまらないといった笑みを浮かべるディアルムドと目が合った。

「…………もう一回いいですか?」
「またですか?」

 バーベナは堪えきれなくなって小さく笑い出した。
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