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第五章 王子様と初夜を迎えます

5ー4 そうだったら、いいな…… ※

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 強請るように銀色の髪に指を滑らせる。

 ――すごい……サラサラ……。

 今度は首筋を、肩を、背中を羽根のように軽く撫でると、ディアルムドの体温がブワリと上がった。

 ――筋肉って硬いと思ってたけど、柔らかくて弾力があるのね……。

 感心したが、すぐに別のことに意識を持っていかれる。
 太く長い指が亀裂をゆるゆると愛撫し始め、バーベナは息を荒げた。
 胸よりも刺激が強い。
 指が上へ下へと動くたびに、くちゅくちゅと粘膜を擦るいやらしい音がした。
 バーベナは満足げに睫毛を伏せ、与えられる快楽に打ち震える。

「ああっ!」

 ある一点に触れられたときには、口から嬌声が迸るように飛び出た。
 敏感な突起を摘んで、転がし、捏ねられる。
 ピリピリと痺れるような快感に、我知らず腰を浮かしながら、指を誘い込むようにして左右に揺らす。
 だが予想に反して欲求が解消されることはなく、激しく募っていく一方だった。
 お腹の奥が切ない。
 ディアルムドが下のほうに身をずらしたので、なおさらその思いが強くなる。
 縋るように上へ手を差し伸ばせば、ぎゅ、と優しく握り込まれた。

「あっ……」

 指は蜜壺の中にまで入っていった。
 手のひらで花芽を包み込むようにして一本、二本、三本と埋められ、バーベナのいいところを探っている。
 急がず、焦らず、ゆっくりと。
 驚いたことに、痛みや異物感はなく、ただただ気持ちがよかった。

「あ……んっ、それ……っ」

 おまけに浅い部分、お腹の裏側を指の腹で軽く叩かれると、追いつめられたような気分になる。
 自分でも何に追われているのかわからない。

「私……なんだか、おかし……」

 バーベナが荒い息で訴えると、ディアルムドが優しく諭すように言った。

「いいですよ、達してください」
「ん、……っく」

 ――達する?

 言葉の意味を理解できないまま、バーベナは快楽の頂点を極めた。
 小さな爆発でも起こったかのように目の前で火花が散った。
 身悶えしながらディアルムドの指を食い締め、腿をきつく閉じ合わせる。

「すごく気持ちよかったみたいですね」

 ディアルムドの言葉に、バーベナはこくりと素直に頷いた。
 いつの間にか恥じらいが消え、代わりに陶然とした思いでディアルムドを見下ろす。

 ――もっと……もっと……。

 その思いに気づいたのか、ディアルムドが脚の間に膝を突いた。

「今からあなたの中に俺のものを挿れます。もしかしたら痛いかもしれませんが、途中で辞めることはできません。諦めて、俺のものになってください」

 ディアルムドは申し訳なさそうにしていたかと思えば、急に偉そうな口振りでそんなことを言った。
 残念なことに、怒りまでは湧かなかった。
 相変わらず可愛いところもあるなと思っただけ。
 バーベナは同意するようにディアルムドの腰に両脚を巻きつけた。

「……っ」

 ディアルムドは喉仏を上下に動かした。ややあって、みずからの怒張を秘所にあてがいながらバーベナの名を繰り返し囁く。

「あっ……大き……っ」

 彼の大きさに慄いた。
 それでも愛撫のおかげか、はたまたゆっくりと腰を押し進めてくれているおかげか、想像していたよりも圧迫感や痛みは感じなかった。
 少し痛くて苦しいものの、我慢できる。
 それも次第に減り、今度は小波さざなみのような快感が生まれる。
 熱くて、むずむずして、痛みよりもどちらかというこちらのほうが耐えられないかもしれない。
 暴いたばかりのいいところを擦るようにしてディアルムドがバーベナの奥のほうまで突き進んでいく。

「こんな……深くまで、あっ」

 やがて互いの恥毛が触れ合い、ディアルムドが最後まで入ってきたことがわかった。

「ディアルムド様……」

 しばらく繋がり合ったままじっとする。
 どれくらい時間がたっただろうか。先に音を上げたのはバーベナだった。
 結合部からヒップにかけて幾筋も蜜が伝い、シーツを濡らしている。
 何もせずともお腹の奥が物欲しげに窄まり、なんだか焦らされているような気分になった。

「痛くないですか?」

 心配そうに尋ねてくるディアルムドに、バーベナはふたたびこくこくと頷いた。
 だがバーベナの思いとは裏腹に、彼は両手の指を絡めて手を握ると、宥めるようなキスをしてくる。
 どうやら必死な様子がかえって痛がっているように見えたらしい。

「ディアルムド様、もっと……して……ください……」

 仕方なく、消え入りそうな声で頼み込んだ。
 ついでにみずから腰を前後に揺すぶり、彼のものを軽く扱いてみる。
 顔はこれ以上ないほど真っ赤だったが、それどころではなかった。
 大きな手を強く握り返しながらディアルムドを見上げる。

 ――自分じゃ……どうにもならない……。

「可愛いですね、もちろんですよ」

 ディアルムドは意外そうに目を瞠ったが、すぐに相好を崩して頷いた。
 一見して余裕そうだが、彼の頬もまた紅潮し、興奮を抑えきれない。バーベナ同様、汗もぐっしょりかいている。

「すみませんが、俺も我慢できなくなりました」

 ディアルムドは舌舐めずりをすると、腰を押さえながらギリギリまで熱杭を引き抜いた。そして勢いよく最奥に押し込む。

「んあっ、ああっ……」

 さっきまでの慎重さが嘘のようだった。
 遠慮なく激しい快楽を叩き込まれ、ひっきりなしに喘ぎ声を上げる。
 柔襞をぞりぞりと削がれ、反対にぐりぐりと抉られる。と思ったら、ずんと深いところを突かれる。
 息を継ぐ間もなかった。
 結合部から漏れる滑った音と、肌と肌がぶつかる乾いた音も合わさって、よりいっそう淫らになった音が静かな寝室に響き渡る。

「バーベナ」

「可愛い」と譫言のように囁かれているうちに、わずかに残っていた痛みも完全に消えてなくなっていた。
 あられもなく腰を振りながら、今はこのまま快楽に呑まれてもみくちゃにされたい。
 体も視界もガクガクと揺れている。

「っ、ああーーっ」

 気づけば、狂おしいほどの絶頂感に全身を貫かれ、頭が真っ白になっていた。
 数瞬して、体を激しく波打たせる。同時にお腹の収縮も最高潮に達した。
 ディアルムドが中の締めつけに耐えるように、きゅ、と眉を寄せる。

「早く俺に惚れてください、バーベナ」

 続け様に、ディアルムドは低く呻いた。

 ――私、ディアルムド様のこと、好きみたいです……。

 快感の頂に押し上げられ意識朦朧としているバーベナは、そんなふうに思った。
 いくら扉のためとはいえ、生まれたままの恥ずかしい姿で抱き合っていることがまったく不快ではなかった。
 それどころか温もりに包まれて、さっきよりも好きという気持ちが増したような気がする。

「明日でも大丈夫です。明日が駄目なら、その次の日でもいい」

 優しく懇願しながらも、ディアルムドは快楽に震えるバーベナの指を搦め捕ったまま離さない。
『惚れている』と言った通り、彼は本当にバーベナを思ってくれているのかもしれない。

 ――そうだったら、いいな……。

 ディアルムドがただの取引相手ではなく、正真正銘の妃としてバーベナを望んでくれるなら、分不相応だとみずからを卑下して彼から離れようとするのではなく、ちゃんと彼と向き合いたい。
 彼を笑顔にしてあげたい。
 そのために自分にできることを考えたい。

 そう願うとともに、恥骨をぐりぐりと押され、お腹の奥深くに熱いものを注がれた。
 どうやらディアルムドも登りつめたようだった。
 その量はかなりのもので、下腹部に間歇的かんけつてきに広がり、バーベナは満たされた気分で体を震わせる。
 直後、自分のものではない魔力が混ざる気配を感じて、あまりの心地よさになんだか頭のほうまでクラクラした。

「疲れたでしょうから、もう休みましょう」

 ディアルムドは繋がったままバーベナを隙間もないほどきつく抱きしめる。
 今さらながら疲れがドッと押し寄せてきた。

 ――明日から……頑張ろう……。

 そう思いながら、バーベナは目を閉じた。
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