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99.ぼっち飯再び
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お昼休みに入ると、椿はいつものように校舎隅の階段へ向かった。そして、いつもの指定席の一番上の階段に腰を降ろすと、膝の上にお弁当を広げた。
やはりここは静かでいい。誰にも邪魔されない一人の空間。とても贅沢なひと時だ。
そう思う。確かにそう思っている・・・。
それなのに、どこか寂しいと思うのはなぜだろう? ここ数日、そんな感情に包まれる。
椿はスプーンで海苔弁を掬って口に運んだ。
今までだったら、ほんのりと醤油の味が沁みた海苔の付いたご飯が五臓六腑に染み渡り、すぐにほんわかと幸せな気持ちになるのに、なぜかとても味気ない。
(一人って、こんなに寂しかったっけ・・・?)
短い間ったけど、向こうの世界では常に柳と一緒で、最後の方はダリアとクラリスとアニーと一緒だったランチタイム。自分はほぼ聞き役だったが、今思い返すと、友達としてみんなと過ごした時間はとても楽しいものだった。コミュ障の自分が、あの賑やかな時間をそんな風に思う時がくるとは。
『わたくしの自慢のお友達ですのよ』
オフィーリアの言葉を思い出す。
(うん。本当に素敵な人たちだったな・・・)
一人感傷に浸りながら弁当を食べていると、
「やっぱ、ここにいた、山田!」
廊下を掛けてくる足音が聞こえたと思ったら、頭上で声がした。
「や・・・なぎ君・・・?」
椿は卵焼きを頬張ったまま、自分を見下ろしている柳を瞬きして見上げた。
「ど、ど、どうしたのですか? ケホッ・・・」
ゴクンと無理やり卵焼きを飲み込こんだせいで咽てしまった。慌てて水筒のお茶を口にした。
「教室にいねーから、ここかなと思ったら、やっぱそうだった!」
椿の質問が聞こえなかったのか、それには答えず、ストンッと隣に腰を下ろすと、
「ずっと山田と話したかったのにさー、アイツら離してくれねーんだもん。気になってたんだよ、こないだから」
柳は話しながら椿と同じように膝の上に弁当を広げ出した。
「え・・・? 柳君・・・、ここで食べるんですか・・・?」
「おう。んで、どうだった? あれからオフィーリアと話せたのか?」
目をパチクリさせて自分を見ている椿などお構いなしに、柳はモグモグと弁当を食べ始めた。
「あ、えっと、それがですね・・・」
今のこの状況に頭の中は混乱しつつも、柳への報告内容を必死にまとめた。
椿の拙い説明も、セオドアだった時と同じようにフンフンと耳を傾けてくれる。そんな柳に椿は胸がじんわりと温かくなった。
「そっかぁ~、やっぱ、話せなかったのか~。もしかして無理だったんじゃねーかなとは思ってたんだけどさ。やっぱ、あのミサンガが繋いでたんだな、きっと」
柳は椿の話を聞いて肩を落とした。
「残念だったなぁ、あの後の二人の様子を知りたかったのになぁ~」
「そうですね。山田も二人のその後が気になります」
二人の仲が良くなったであろうことは想像できる。きっと断罪は免れるだろう。しかし、オリビアの存在がある以上、二人の仲が進展するかは謎のままだ。果たして、セオドアはオリビアと別れてまでオフィーリアを選ぶだろうか?
「山田はオフィーリア様推しなので、オフィーリア様の冤罪が解けて二人には幸せになって欲しいとは思うのですが。でもそうなるとヒロインは捨てられてしまうわけで・・・。それはそれでオリビア様が気の毒ですよね」
「んー、そうかぁ?」
柳は紙パックの野菜ジュースにストローを突き刺してジュ~ッと吸った。
「だって、そうなるとオリビア様は何もしていなのにただ虐められて終るという、かなり可哀そうなキャラになってしまいますよ?」
「ん~~、そうでもねーんじゃねーかなぁ・・・」
柳はストローをくわえながら首を傾げた。
「??? どういう事ですか??」
「全然可哀そうじゃねーってこと、オリビアなんて。つか、あの女、ヒロインでもなんでもねーよ、きっと」
やはりここは静かでいい。誰にも邪魔されない一人の空間。とても贅沢なひと時だ。
そう思う。確かにそう思っている・・・。
それなのに、どこか寂しいと思うのはなぜだろう? ここ数日、そんな感情に包まれる。
椿はスプーンで海苔弁を掬って口に運んだ。
今までだったら、ほんのりと醤油の味が沁みた海苔の付いたご飯が五臓六腑に染み渡り、すぐにほんわかと幸せな気持ちになるのに、なぜかとても味気ない。
(一人って、こんなに寂しかったっけ・・・?)
短い間ったけど、向こうの世界では常に柳と一緒で、最後の方はダリアとクラリスとアニーと一緒だったランチタイム。自分はほぼ聞き役だったが、今思い返すと、友達としてみんなと過ごした時間はとても楽しいものだった。コミュ障の自分が、あの賑やかな時間をそんな風に思う時がくるとは。
『わたくしの自慢のお友達ですのよ』
オフィーリアの言葉を思い出す。
(うん。本当に素敵な人たちだったな・・・)
一人感傷に浸りながら弁当を食べていると、
「やっぱ、ここにいた、山田!」
廊下を掛けてくる足音が聞こえたと思ったら、頭上で声がした。
「や・・・なぎ君・・・?」
椿は卵焼きを頬張ったまま、自分を見下ろしている柳を瞬きして見上げた。
「ど、ど、どうしたのですか? ケホッ・・・」
ゴクンと無理やり卵焼きを飲み込こんだせいで咽てしまった。慌てて水筒のお茶を口にした。
「教室にいねーから、ここかなと思ったら、やっぱそうだった!」
椿の質問が聞こえなかったのか、それには答えず、ストンッと隣に腰を下ろすと、
「ずっと山田と話したかったのにさー、アイツら離してくれねーんだもん。気になってたんだよ、こないだから」
柳は話しながら椿と同じように膝の上に弁当を広げ出した。
「え・・・? 柳君・・・、ここで食べるんですか・・・?」
「おう。んで、どうだった? あれからオフィーリアと話せたのか?」
目をパチクリさせて自分を見ている椿などお構いなしに、柳はモグモグと弁当を食べ始めた。
「あ、えっと、それがですね・・・」
今のこの状況に頭の中は混乱しつつも、柳への報告内容を必死にまとめた。
椿の拙い説明も、セオドアだった時と同じようにフンフンと耳を傾けてくれる。そんな柳に椿は胸がじんわりと温かくなった。
「そっかぁ~、やっぱ、話せなかったのか~。もしかして無理だったんじゃねーかなとは思ってたんだけどさ。やっぱ、あのミサンガが繋いでたんだな、きっと」
柳は椿の話を聞いて肩を落とした。
「残念だったなぁ、あの後の二人の様子を知りたかったのになぁ~」
「そうですね。山田も二人のその後が気になります」
二人の仲が良くなったであろうことは想像できる。きっと断罪は免れるだろう。しかし、オリビアの存在がある以上、二人の仲が進展するかは謎のままだ。果たして、セオドアはオリビアと別れてまでオフィーリアを選ぶだろうか?
「山田はオフィーリア様推しなので、オフィーリア様の冤罪が解けて二人には幸せになって欲しいとは思うのですが。でもそうなるとヒロインは捨てられてしまうわけで・・・。それはそれでオリビア様が気の毒ですよね」
「んー、そうかぁ?」
柳は紙パックの野菜ジュースにストローを突き刺してジュ~ッと吸った。
「だって、そうなるとオリビア様は何もしていなのにただ虐められて終るという、かなり可哀そうなキャラになってしまいますよ?」
「ん~~、そうでもねーんじゃねーかなぁ・・・」
柳はストローをくわえながら首を傾げた。
「??? どういう事ですか??」
「全然可哀そうじゃねーってこと、オリビアなんて。つか、あの女、ヒロインでもなんでもねーよ、きっと」
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