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87.真犯人
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セオドアの取り出した赤髪のカツラを見て、オリビアの顔はサーっと真っ青になった。
「こ、これは・・・」
「君の言う通り、赤い髪でリボンの色も一致している」
「・・・」
オリビアは絶句していたようだが、軽く頭を振ると、縋るような瞳でセオドアを見つめた。
「じゃあ・・・、犯人はオフィーリア様じゃないの・・・? 誰かが・・・オフィーリア様のフリをして私に嫌がらせをしていたの・・・? 何故、そんな酷いことを・・・」
再び瞳から涙が浮き上がってくる。
可愛らしい瞳が怯えるように揺れ、キラリと涙を浮かべるその姿をセオドアは冷静に見下ろした。
「そうか・・・。もしそうなら、そこまでしても君を傷つけたいと思うほど相手から恨まれていたんだな、オリビアは」
「え・・・?」
「それとも、関係ない君を傷つけてまでオフィーリアを貶めたかったか・・・」
「・・・そ、そうかもしれないわ! 犯人はオフィーリア様に恨みを持っていて、私を利用したのかも!」
セオドアに冷静に見つめられて居心地が悪くなったのか、オリビアはその場の雰囲気を変えようとばかりに声にトーンを高くし、パンッと顔の前で両手を叩いた。
「オフィーリアに恨み・・・?」
「ええ、そうよ! 私もオフィーリア様も、二人とも被害者だったのね!」
「二人とも被害者か・・・」
取り繕うような微笑みを浮かべるオリビアを見て、セオドアの口角が少し上がった。そんなセオドアの微かな笑みにオリビアは彼の意図が読めず、不安になった。
「で、でも、いくら犯人がオフィーリア様に恨みがあったからって、私にこんな事するなんて・・・酷いと思わない? セオドア?」
両手を顔の前で組み、上目遣いで見つめるその瞳はまた潤み始めた。
「そうだな。どういうつもりでこんなことをしたのか、犯人以外分からない」
「そうね・・・。でも、犯人が誰かだなんて分からないわ・・・。それに、もう明日で卒業してしまうのだし、二度と会うことはないでしょう。私はもういいわ。嫌がらせされたことは忘れる!」
オリビアは潤んだ瞳の端を手で拭うと、爽やかに微笑んで見せた。
「そうはいかないだろう? 犯人にはしっかりと謝罪させたい。でも、その前にどうしてこんなことをしたのか理由を聞いてみようじゃないか?」
「え・・・?」
オリビアは目を見張った。
「聞いて・・・みるって・・・?」
「聞いてみるんだよ、本人にね。犯人は捕らえている」
その言葉に、オリビアの顔は見る見る青くなった。そんな彼女の変化に気付いているのかいないのか、セオドアはオリビアの傍を離れると、無言で部屋の扉を開けた。
「失礼しますわ、セオドア様、オリビア様」
そう言って入ってきたのはダリアだった。
「ダリア嬢、すまない。君にとっても今日は最後の日で貴重な時間だったのに」
「いいえ。とんでもございません」
ダリアはそう言うと、後ろを振り向いた。彼女の後ろからまた一人誰かが部屋に入ってきた。
「ジャック・・・」
部屋に入ってきた人物を、オリビアは信じられないように見つめた。
☆彡
「ジャック・・・、どうして・・・」
入ってきたジャックを見てオリビアは目を丸めて呟いた。
「オリビア・・・、君は・・・」
ジャックは苦痛に満ちだ顔でオリビアを見ている。
「俺は・・・、君を信じていたのに・・・」
歯を喰いしばり、悔しそうにオリビアを睨みつける。
「ジャック・・・、何を言って・・・」
オリビアは戸惑いながらベッドから立ち上がると、三人の元に近寄ろうとした。しかし、
「・・・!!」
何かに気が付き、息を呑んだ。
セオドアが視界の邪魔をして見えていなかったのだ。
ジャックは一人の女子生徒の腕を取っていた。
女子生徒は逃げようと暴れた後なのか、髪は酷く乱れ、制服も胸のリボンが外れかけている。しかし、今は諦めたようにガックリを項垂れ、ジャックに腕を掴まれたまま振り解こうともしない。
ジャックは怒りに任せ、その女子生徒を投げるように放った。女子生徒はオリビアの足元に跪くように倒れ込んだ。
「ジャック様、レディに何てことを・・・。まったく、これだから脳筋は・・・」
ダリアは倒れた女子生徒を優しく助け起こした。
「どういうことなんだ!? オリビア!」
ジャックは叫んだ。
「し、知らないわ! 私、この人なんて知らない!」
オリビアは真っ青になって叫んだ。
その言葉に、女子生徒の方も目を丸め、どんどん真っ青になっていく。
「そ、そんな・・・、オリビア様・・・」
女子生徒は体を硬直させ、今にも倒れそうだ。ダリアが支えていなかったら経っていられなかっただろう。
「本当よ! 信じて、セオドア! ジャック! 私はこの人ことを知らない」
「この期に及んで俺にもそんな嘘を言うのか!? 俺にその嘘が通るとでも?」
ジャックは怒りに震えてオリビアを睨みつけた。
「セオドアは知らないかもしれないが、俺はこの女を知ってる! 彼女は君の家の使用人じゃないか! 君の家で何度か見かけてるぞ!」
「・・・!」
オリビアは言葉を失った。
「一介の下女なんか気にも留めていないと思っていたのだろう? 普通はそうだ」
セオドアが静かに言った。
「そこに気を留めているというジャック様って・・・、それもちょっとどうなの?」
ダリアが小さく呟くが、怒り心頭のジャックにはもちろん、セオドアにも、そして、見捨てられて放心状態の下女にも聞こえていないようだった。
「こ、これは・・・」
「君の言う通り、赤い髪でリボンの色も一致している」
「・・・」
オリビアは絶句していたようだが、軽く頭を振ると、縋るような瞳でセオドアを見つめた。
「じゃあ・・・、犯人はオフィーリア様じゃないの・・・? 誰かが・・・オフィーリア様のフリをして私に嫌がらせをしていたの・・・? 何故、そんな酷いことを・・・」
再び瞳から涙が浮き上がってくる。
可愛らしい瞳が怯えるように揺れ、キラリと涙を浮かべるその姿をセオドアは冷静に見下ろした。
「そうか・・・。もしそうなら、そこまでしても君を傷つけたいと思うほど相手から恨まれていたんだな、オリビアは」
「え・・・?」
「それとも、関係ない君を傷つけてまでオフィーリアを貶めたかったか・・・」
「・・・そ、そうかもしれないわ! 犯人はオフィーリア様に恨みを持っていて、私を利用したのかも!」
セオドアに冷静に見つめられて居心地が悪くなったのか、オリビアはその場の雰囲気を変えようとばかりに声にトーンを高くし、パンッと顔の前で両手を叩いた。
「オフィーリアに恨み・・・?」
「ええ、そうよ! 私もオフィーリア様も、二人とも被害者だったのね!」
「二人とも被害者か・・・」
取り繕うような微笑みを浮かべるオリビアを見て、セオドアの口角が少し上がった。そんなセオドアの微かな笑みにオリビアは彼の意図が読めず、不安になった。
「で、でも、いくら犯人がオフィーリア様に恨みがあったからって、私にこんな事するなんて・・・酷いと思わない? セオドア?」
両手を顔の前で組み、上目遣いで見つめるその瞳はまた潤み始めた。
「そうだな。どういうつもりでこんなことをしたのか、犯人以外分からない」
「そうね・・・。でも、犯人が誰かだなんて分からないわ・・・。それに、もう明日で卒業してしまうのだし、二度と会うことはないでしょう。私はもういいわ。嫌がらせされたことは忘れる!」
オリビアは潤んだ瞳の端を手で拭うと、爽やかに微笑んで見せた。
「そうはいかないだろう? 犯人にはしっかりと謝罪させたい。でも、その前にどうしてこんなことをしたのか理由を聞いてみようじゃないか?」
「え・・・?」
オリビアは目を見張った。
「聞いて・・・みるって・・・?」
「聞いてみるんだよ、本人にね。犯人は捕らえている」
その言葉に、オリビアの顔は見る見る青くなった。そんな彼女の変化に気付いているのかいないのか、セオドアはオリビアの傍を離れると、無言で部屋の扉を開けた。
「失礼しますわ、セオドア様、オリビア様」
そう言って入ってきたのはダリアだった。
「ダリア嬢、すまない。君にとっても今日は最後の日で貴重な時間だったのに」
「いいえ。とんでもございません」
ダリアはそう言うと、後ろを振り向いた。彼女の後ろからまた一人誰かが部屋に入ってきた。
「ジャック・・・」
部屋に入ってきた人物を、オリビアは信じられないように見つめた。
☆彡
「ジャック・・・、どうして・・・」
入ってきたジャックを見てオリビアは目を丸めて呟いた。
「オリビア・・・、君は・・・」
ジャックは苦痛に満ちだ顔でオリビアを見ている。
「俺は・・・、君を信じていたのに・・・」
歯を喰いしばり、悔しそうにオリビアを睨みつける。
「ジャック・・・、何を言って・・・」
オリビアは戸惑いながらベッドから立ち上がると、三人の元に近寄ろうとした。しかし、
「・・・!!」
何かに気が付き、息を呑んだ。
セオドアが視界の邪魔をして見えていなかったのだ。
ジャックは一人の女子生徒の腕を取っていた。
女子生徒は逃げようと暴れた後なのか、髪は酷く乱れ、制服も胸のリボンが外れかけている。しかし、今は諦めたようにガックリを項垂れ、ジャックに腕を掴まれたまま振り解こうともしない。
ジャックは怒りに任せ、その女子生徒を投げるように放った。女子生徒はオリビアの足元に跪くように倒れ込んだ。
「ジャック様、レディに何てことを・・・。まったく、これだから脳筋は・・・」
ダリアは倒れた女子生徒を優しく助け起こした。
「どういうことなんだ!? オリビア!」
ジャックは叫んだ。
「し、知らないわ! 私、この人なんて知らない!」
オリビアは真っ青になって叫んだ。
その言葉に、女子生徒の方も目を丸め、どんどん真っ青になっていく。
「そ、そんな・・・、オリビア様・・・」
女子生徒は体を硬直させ、今にも倒れそうだ。ダリアが支えていなかったら経っていられなかっただろう。
「本当よ! 信じて、セオドア! ジャック! 私はこの人ことを知らない」
「この期に及んで俺にもそんな嘘を言うのか!? 俺にその嘘が通るとでも?」
ジャックは怒りに震えてオリビアを睨みつけた。
「セオドアは知らないかもしれないが、俺はこの女を知ってる! 彼女は君の家の使用人じゃないか! 君の家で何度か見かけてるぞ!」
「・・・!」
オリビアは言葉を失った。
「一介の下女なんか気にも留めていないと思っていたのだろう? 普通はそうだ」
セオドアが静かに言った。
「そこに気を留めているというジャック様って・・・、それもちょっとどうなの?」
ダリアが小さく呟くが、怒り心頭のジャックにはもちろん、セオドアにも、そして、見捨てられて放心状態の下女にも聞こえていないようだった。
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