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46.美化委員
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結局、1回目の休み時間はセオドアと話すことは出来なかった。
次の休み時間に接触を試みようとするも、またもやセオドアの周りには人だかり。
次の休み時間も、次の休み時間も・・・。オフィーリアの入り込む余地がない。
気が付いたらお昼休みになっていた。
(柳様って方は人気があるのね・・・)
オフィーリアは軽く溜息を付いて、自分の席で母親が作ってくれたお弁当を広げた。
もう休み時間にセオドアを捕まえるのは諦めた。どのみち休み時間なんて10分しかない。そんな短い時間で話せる内容でもないので、学校が終わった放課後にでもゆっくり話すとしよう。
そうして、五時限目、六時限目と過ぎ、無事にホームルームを終えた。
これでやっと家に帰れる。帰りに何とかセオドアを捕まえなければ。
今度こそセオドアと話そうと、オフィーリアは気合を入れて彼の席に近づいた。
しかし、その時、
「おい、山田。ちょっといいか?」
担任の竹田が教壇から降りてこちらに向かって来た。
「あのな、山田。お前は美化委員に所属しているんだ。それでな、今日の放課後、美化委員の活動がある。先生が委員会の場所まで案内してやるから」
竹田がオフィーリアに話しかけている横で、例の三人組はセオドアのもとに群がった。
「柳ぃ! 遊び行こうぜい!」
「快気祝いー! ゲーセン行こー!」
「たこ焼き食おーぜ! おごってやるしぃ」
三人はまだ椅子に座っているセオドアにワイワイと話しかけている。セオドアは困ったような顔で三人を見上げた。
「いや・・・、俺は・・・」
「おい、お前ら! お前らは帰さんぞ! お前らも美化委員の仕事を手伝え!」
セオドアの返事に被せるように竹田が割り込んできた。オフィーリアと向き合ったまま、顔だけ振り向いて、男子生徒達を指差した。
「お前ら4人、山田の美化委員の仕事を手伝え! 事故を起こした罰。奉仕活動しなさい!」
「え~~~! 嘘ぉ?!」
「マジでか?!」
「んでだよっ!?」
三人は一斉に竹田に食って掛かる。だが、竹田はズイッと三人のもとに近寄ると、腰に両手を当てて睨みつけた。
「なんだ? 反省文の方がいいか?」
「・・・」
三人はグッと言葉を飲んだ。
「本当なら反省文プラスアルファ奉仕活動ってところなんだぞ! 人を階段から落としておいて!」
「・・・」
「どうなんだ!?」
「へーい・・・」
「やります・・・」
「サーセン・・・」
三人は反省半分悔しさ半分という顔をしながら俯いた。
「よし、じゃあ行くぞ」
竹田はそう言って廊下に出た。オフィーリアは急いで追いかけた。
オフィーリアは竹田と並んで歩きながら、チラリと後ろを振り向いた。
四人は素直に二人の後を付いて来る。なんだかんだ言っても三人の男子はおしゃべりをしながら楽しそうに歩いている。セオドアはその一人に肩を組まれ、若干引きずられるように歩いていた。その顔はもはや悟りの境地を開いたような諦めきった表情。
(セオドア様・・・)
大丈夫か?
何とも言えない表情のセオドアに同情するが、三人は本当にセオドアに親しみを持っているようなので止めようもない。しかし、オフィーリアにとってもこの親密さは少々厄介だ。
(こんな調子でセオドア様と話せる機会なんてあるのかしら・・・?)
オフィーリアは前を向くと軽く溜息を付いた。
☆彡
連れて来られたのは校庭の隅にある倉庫の前だった。
用務員の初老の男性一人と生徒が十人ほど集まっていた。
「斉藤さん。お疲れ様です」
竹田は用務員の男性に挨拶をすると、引き連れてきた男子生徒を自分の前に次々に並べた。
「斉藤さん、人手足りないでしょう? この子たち使ってください。助っ人です」
「これはこれは! 助かりますよ、先生。ありがとう、君たち!」
「うぃ~す・・・」
満面な笑みを湛え喜ぶおじさんを前に、三人は文句も言えず、小さく会釈をした。
「ちなみにお前ら、持ち場は別々な。一緒だったらふざけてサボりそうだから。先生が決める」
「はあ?」
「なんでだよ?」
「んなことねーって!」
「じゃあ、反省文にするか? 原稿用紙五枚」
「・・・なんでもありません」
「・・・さーせん」
「・・・決めていいっす」
こうして彼らの持ち場が決まった。
「柳、お前は山田を手伝ってやれ。斉藤さん、よろしくお願いします」
最後に竹田はそう言うと、自分が顧問として受け持つ部活動に行ってしまった。
お陰でやっとオフィーリアはセオドアと話す時間を持つことが出来た。
次の休み時間に接触を試みようとするも、またもやセオドアの周りには人だかり。
次の休み時間も、次の休み時間も・・・。オフィーリアの入り込む余地がない。
気が付いたらお昼休みになっていた。
(柳様って方は人気があるのね・・・)
オフィーリアは軽く溜息を付いて、自分の席で母親が作ってくれたお弁当を広げた。
もう休み時間にセオドアを捕まえるのは諦めた。どのみち休み時間なんて10分しかない。そんな短い時間で話せる内容でもないので、学校が終わった放課後にでもゆっくり話すとしよう。
そうして、五時限目、六時限目と過ぎ、無事にホームルームを終えた。
これでやっと家に帰れる。帰りに何とかセオドアを捕まえなければ。
今度こそセオドアと話そうと、オフィーリアは気合を入れて彼の席に近づいた。
しかし、その時、
「おい、山田。ちょっといいか?」
担任の竹田が教壇から降りてこちらに向かって来た。
「あのな、山田。お前は美化委員に所属しているんだ。それでな、今日の放課後、美化委員の活動がある。先生が委員会の場所まで案内してやるから」
竹田がオフィーリアに話しかけている横で、例の三人組はセオドアのもとに群がった。
「柳ぃ! 遊び行こうぜい!」
「快気祝いー! ゲーセン行こー!」
「たこ焼き食おーぜ! おごってやるしぃ」
三人はまだ椅子に座っているセオドアにワイワイと話しかけている。セオドアは困ったような顔で三人を見上げた。
「いや・・・、俺は・・・」
「おい、お前ら! お前らは帰さんぞ! お前らも美化委員の仕事を手伝え!」
セオドアの返事に被せるように竹田が割り込んできた。オフィーリアと向き合ったまま、顔だけ振り向いて、男子生徒達を指差した。
「お前ら4人、山田の美化委員の仕事を手伝え! 事故を起こした罰。奉仕活動しなさい!」
「え~~~! 嘘ぉ?!」
「マジでか?!」
「んでだよっ!?」
三人は一斉に竹田に食って掛かる。だが、竹田はズイッと三人のもとに近寄ると、腰に両手を当てて睨みつけた。
「なんだ? 反省文の方がいいか?」
「・・・」
三人はグッと言葉を飲んだ。
「本当なら反省文プラスアルファ奉仕活動ってところなんだぞ! 人を階段から落としておいて!」
「・・・」
「どうなんだ!?」
「へーい・・・」
「やります・・・」
「サーセン・・・」
三人は反省半分悔しさ半分という顔をしながら俯いた。
「よし、じゃあ行くぞ」
竹田はそう言って廊下に出た。オフィーリアは急いで追いかけた。
オフィーリアは竹田と並んで歩きながら、チラリと後ろを振り向いた。
四人は素直に二人の後を付いて来る。なんだかんだ言っても三人の男子はおしゃべりをしながら楽しそうに歩いている。セオドアはその一人に肩を組まれ、若干引きずられるように歩いていた。その顔はもはや悟りの境地を開いたような諦めきった表情。
(セオドア様・・・)
大丈夫か?
何とも言えない表情のセオドアに同情するが、三人は本当にセオドアに親しみを持っているようなので止めようもない。しかし、オフィーリアにとってもこの親密さは少々厄介だ。
(こんな調子でセオドア様と話せる機会なんてあるのかしら・・・?)
オフィーリアは前を向くと軽く溜息を付いた。
☆彡
連れて来られたのは校庭の隅にある倉庫の前だった。
用務員の初老の男性一人と生徒が十人ほど集まっていた。
「斉藤さん。お疲れ様です」
竹田は用務員の男性に挨拶をすると、引き連れてきた男子生徒を自分の前に次々に並べた。
「斉藤さん、人手足りないでしょう? この子たち使ってください。助っ人です」
「これはこれは! 助かりますよ、先生。ありがとう、君たち!」
「うぃ~す・・・」
満面な笑みを湛え喜ぶおじさんを前に、三人は文句も言えず、小さく会釈をした。
「ちなみにお前ら、持ち場は別々な。一緒だったらふざけてサボりそうだから。先生が決める」
「はあ?」
「なんでだよ?」
「んなことねーって!」
「じゃあ、反省文にするか? 原稿用紙五枚」
「・・・なんでもありません」
「・・・さーせん」
「・・・決めていいっす」
こうして彼らの持ち場が決まった。
「柳、お前は山田を手伝ってやれ。斉藤さん、よろしくお願いします」
最後に竹田はそう言うと、自分が顧問として受け持つ部活動に行ってしまった。
お陰でやっとオフィーリアはセオドアと話す時間を持つことが出来た。
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