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27.信じてください
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「な、泣かないで下さい。オフィーリア様!」
「な、泣いてなんて・・・!」
オフィーリアはクイっと涙を拭いて、プイっとそっぽを向いた。
「オフィーリア様。セオドア様に本当の事を伝えた方がいいと思います。こちらの世界のセオドア様は柳君だから・・・、彼はオフィーリア様のお友達の事を信じてまして、オリビア様と距離を置いています。でも、本当のセオドア様が信じてくれないと意味はないです」
椿はグッと拳を握った。
「きっと山田達はすぐ元に戻れると思うんです! その時に疑われていたままだと、セオドア様はまたオリビア様のもとに戻ってしまいますよ!」
「戻るも何も・・・。セオドア様はわたくしのもとにいてくれたことなど一度もありませんわ・・・」
オフィーリアはそっぽを向きながら答えた。
「セオドア様は最初からオリビア様のもとにいらっしゃるの・・・。ずっと前から今でも・・・そしてこの先も・・・。わたくしのことなど見て下さることなどないわ」
「そんな・・・」
オフィーリアは椿に振り返ると少し寂しそうに微笑んだ。そして、
「わたくしの顔でそんな悲しそうにしないで、椿様。わたくしはもう諦めていますの。でも、これは家同士が決めた婚約ですから、愛されないと分かっていても嫁ぐしかありません」
鏡越しに切なそうな顔をしている自分の顔の額をチョンと突いた。
そんなオフィーリアの態度に今度は椿の方が俯いた。
「でも、オフィーリア様・・・。とっても言い辛いのですが・・・」
椿は俯いたまま唇を噛んだ。
言ってしまっていいのだろうか? この先の事を・・・。やはり言わない方がいいのか・・・?
いや! ここまで話しているのだ。全て正直に話そう!
「このままでは、オフィーリア様はセオドア様に婚約破棄されてしまいます!」
「は?」
「オリビア様を虐めたことを罪に問われて、セオドア様が破棄を言い渡すのです。卒業パーティーの時に!」
「な、何ですって・・・?」
「本当なんです! その部屋に・・・山田の部屋に一つの小説があります! その小説、『麗しのオリビア』と言う名前の小説、それこそがオフィーリア様の世界なんです!」
「は? 一体何をおっしゃっているの? 椿様・・・」
オフィーリアは理解できないとばかりに眉を寄せた。
「信じられないですか? 信じられないですよね? 分かってます、でも本当なんです! その本を読んでもらうのが一番確実なんです! オフィーリア様! 文字読めますか? 文字! そっちの世界の文字!!」
「え、ええ。な、何故か不思議と読めますわ。とても助かってます・・・」
「では、是非読んでください! お願い、読んで! 読んでくれたらきっと分かります。お話の内容に納得は出来ないと思いますが、山田が言っていることが分かると思います!!」
立場逆転と言わんばかりに、今まで大人しかった椿に勢いよく捲し立てられ、オフィーリアの方が引き気味になった。
「山田の学生カバンに入っているかもしれません! 階段から落ちた時に持っていたから、山田の私物だと分かれば誰かがカバンにしまってくれたでしょうから! ほら! 机の横にかかってる黒いカバン! あれ!」
椿は鏡越しに自分の部屋の自分の机を指差した。オフィーリアは釣られて後ろを振り向いた。
「え? え? あ、学生カバンね? ちょっと待ってちょうだい!」
そして机からカバンを引ったくるように持ってくると、椿の前でカバンの中に手を突っ込んだ。そして一冊の文庫本を手に取った。
「これね! 『麗しのオリビア』!」
その時だ。またもや鏡の画面が歪んだ。タイムアップのようだ。
椿は鏡に飛び付いた。
「それです! オフィーリア様! 心して読んでください! でも絶望しないで! 希望を持って!」
「分かりましたわ」
小さくオフィーリアの返事が聞こえたと同時に鏡はいつもの鏡に戻っていた。
☆彡
翌朝は昨日のような失態は起こさなかった。いつものように早めに寮を出て校舎の裏庭に向かった。
一人、花壇の世話をしながら柳を待とうと思っていたら、なんとその柳が先に来ていた。
「柳君! おはようございます! 早いですね、先に来ているなんて!」
椿は柳の傍に駆け寄った。
「良かったです。昨日の事を報告したかったので!」
にっこりと柳を見ると、柳はとても複雑そうな顔で椿を見た。
「マジかぁ!? 山田は昨日オフィーリアと話せたのか? いいなあ! 俺、無理だったぁ! 悲しー!」
そう叫ぶと頭を抱えて蹲った。
「え? え? や、柳君はセオドア様と話せなかったのですか?」
椿はオロオロと落ち込む柳に声を掛けた。
「おー、無理だったぁ。ずっと鏡の前で待ってたんだぜ~。お陰でまともに寝てねーんだけどぉ~」
「そ、それはお気の毒と言いましょうか・・・、セオドア様が鏡を覗かなかったのかもしれませんよ? それとも・・・」
「それとも?」
「うーん、もともと柳君とセオドア様は繋がらないとか・・・」
椿は首を捻る。
「え~~~、本人同士なのに~~? 山田とオフィーリアは繋がるのに~~?」
「す、すいません」
「別に山田が謝る事じゃねーけどよ~~」
柳は乙女の様に両手で顔を覆った。
「く~~、ガッカリ感半端ね~~!」
「あ、明日! 明日は話せるかもしれませんよ! ね? 元気出しましょう! 柳君!」
椿も柳の前に蹲るように座り、子供の様に拗ねる柳を必死に慰めた。
「な、泣いてなんて・・・!」
オフィーリアはクイっと涙を拭いて、プイっとそっぽを向いた。
「オフィーリア様。セオドア様に本当の事を伝えた方がいいと思います。こちらの世界のセオドア様は柳君だから・・・、彼はオフィーリア様のお友達の事を信じてまして、オリビア様と距離を置いています。でも、本当のセオドア様が信じてくれないと意味はないです」
椿はグッと拳を握った。
「きっと山田達はすぐ元に戻れると思うんです! その時に疑われていたままだと、セオドア様はまたオリビア様のもとに戻ってしまいますよ!」
「戻るも何も・・・。セオドア様はわたくしのもとにいてくれたことなど一度もありませんわ・・・」
オフィーリアはそっぽを向きながら答えた。
「セオドア様は最初からオリビア様のもとにいらっしゃるの・・・。ずっと前から今でも・・・そしてこの先も・・・。わたくしのことなど見て下さることなどないわ」
「そんな・・・」
オフィーリアは椿に振り返ると少し寂しそうに微笑んだ。そして、
「わたくしの顔でそんな悲しそうにしないで、椿様。わたくしはもう諦めていますの。でも、これは家同士が決めた婚約ですから、愛されないと分かっていても嫁ぐしかありません」
鏡越しに切なそうな顔をしている自分の顔の額をチョンと突いた。
そんなオフィーリアの態度に今度は椿の方が俯いた。
「でも、オフィーリア様・・・。とっても言い辛いのですが・・・」
椿は俯いたまま唇を噛んだ。
言ってしまっていいのだろうか? この先の事を・・・。やはり言わない方がいいのか・・・?
いや! ここまで話しているのだ。全て正直に話そう!
「このままでは、オフィーリア様はセオドア様に婚約破棄されてしまいます!」
「は?」
「オリビア様を虐めたことを罪に問われて、セオドア様が破棄を言い渡すのです。卒業パーティーの時に!」
「な、何ですって・・・?」
「本当なんです! その部屋に・・・山田の部屋に一つの小説があります! その小説、『麗しのオリビア』と言う名前の小説、それこそがオフィーリア様の世界なんです!」
「は? 一体何をおっしゃっているの? 椿様・・・」
オフィーリアは理解できないとばかりに眉を寄せた。
「信じられないですか? 信じられないですよね? 分かってます、でも本当なんです! その本を読んでもらうのが一番確実なんです! オフィーリア様! 文字読めますか? 文字! そっちの世界の文字!!」
「え、ええ。な、何故か不思議と読めますわ。とても助かってます・・・」
「では、是非読んでください! お願い、読んで! 読んでくれたらきっと分かります。お話の内容に納得は出来ないと思いますが、山田が言っていることが分かると思います!!」
立場逆転と言わんばかりに、今まで大人しかった椿に勢いよく捲し立てられ、オフィーリアの方が引き気味になった。
「山田の学生カバンに入っているかもしれません! 階段から落ちた時に持っていたから、山田の私物だと分かれば誰かがカバンにしまってくれたでしょうから! ほら! 机の横にかかってる黒いカバン! あれ!」
椿は鏡越しに自分の部屋の自分の机を指差した。オフィーリアは釣られて後ろを振り向いた。
「え? え? あ、学生カバンね? ちょっと待ってちょうだい!」
そして机からカバンを引ったくるように持ってくると、椿の前でカバンの中に手を突っ込んだ。そして一冊の文庫本を手に取った。
「これね! 『麗しのオリビア』!」
その時だ。またもや鏡の画面が歪んだ。タイムアップのようだ。
椿は鏡に飛び付いた。
「それです! オフィーリア様! 心して読んでください! でも絶望しないで! 希望を持って!」
「分かりましたわ」
小さくオフィーリアの返事が聞こえたと同時に鏡はいつもの鏡に戻っていた。
☆彡
翌朝は昨日のような失態は起こさなかった。いつものように早めに寮を出て校舎の裏庭に向かった。
一人、花壇の世話をしながら柳を待とうと思っていたら、なんとその柳が先に来ていた。
「柳君! おはようございます! 早いですね、先に来ているなんて!」
椿は柳の傍に駆け寄った。
「良かったです。昨日の事を報告したかったので!」
にっこりと柳を見ると、柳はとても複雑そうな顔で椿を見た。
「マジかぁ!? 山田は昨日オフィーリアと話せたのか? いいなあ! 俺、無理だったぁ! 悲しー!」
そう叫ぶと頭を抱えて蹲った。
「え? え? や、柳君はセオドア様と話せなかったのですか?」
椿はオロオロと落ち込む柳に声を掛けた。
「おー、無理だったぁ。ずっと鏡の前で待ってたんだぜ~。お陰でまともに寝てねーんだけどぉ~」
「そ、それはお気の毒と言いましょうか・・・、セオドア様が鏡を覗かなかったのかもしれませんよ? それとも・・・」
「それとも?」
「うーん、もともと柳君とセオドア様は繋がらないとか・・・」
椿は首を捻る。
「え~~~、本人同士なのに~~? 山田とオフィーリアは繋がるのに~~?」
「す、すいません」
「別に山田が謝る事じゃねーけどよ~~」
柳は乙女の様に両手で顔を覆った。
「く~~、ガッカリ感半端ね~~!」
「あ、明日! 明日は話せるかもしれませんよ! ね? 元気出しましょう! 柳君!」
椿も柳の前に蹲るように座り、子供の様に拗ねる柳を必死に慰めた。
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