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ブランコ効果は大いにあったようだ。
その後のレオナルドの機嫌は非常に良くなった。邸内に帰る道も軽い足取りで歩き、部屋に戻ってからもご機嫌だった。夕食時も、やたらと構いたがる母の相手を、嫌な顔をせず、二歳児らしく対応していた。
お風呂も(いつもよりは)大人しく入り、いつものようにネグリジェを着せている時、扉をノックする音が聞こえた。返事をすると、パトリシアが入ってきた。
「お嬢様。お手紙が届きました」
その言葉に、レオナルドはピョンッと飛び上がった。
「ありがとう」
私はパトリシアから手紙を受け取ると、差出人を見た。やはりアランだ。
「お嬢様。昨日のお手紙の方と同じですよね? 例の騎士様ですか?」
少しウキウキした顔で尋ねてきた。
「そうね。何か情報を掴んだのかもしれないわ」
「お返事は如何されますか? 使いの者は待たせておりますが」
それを聞いてチラリとレオナルドを見た。レオナルドは小さく頷く。私は封を切って手紙を取り出した。
それを広げながらベビーベッドに近づくと、レオナルドを抱き上げ、一緒に手紙を覗いた。
そこには、明日、直接会って報告したい旨が書かれており、時間と場所も明記されていた。
「すぐ返事を書くから、ちょっと待って」
私はレオナルドを抱いたまま椅子に座ると、机に向かいペンを取った。
『親愛なるアラ・・・』と書き始めたところで、レオナルドの手が伸び、便箋を奪われた。
〔なぜ奪うのです!? 普通じゃないですか!?〕
グチャグチャと紙を丸めるレオナルドにイラッとして小声で尋ねる。レオナルドはプイッと顔を逸らすと、ポイッと丸めた紙を床に捨てた。
「こらこら、ダメでちゅよ~、お嬢様の邪魔をしちゃ~~。こちらにいらっしゃい」
パトリシアがヒョイッとレオナルドを持ち上げた。レオナルドは放せとばかりに両手と両足をバタつかせる。
「いいわ、大丈夫よ、パット」
私は軽く溜息をつくと、パトリシアに向かって両手を差し出した。パトリシアは、悪戯しちゃダメでちゅよ~と言いながらレオナルドを私に戻した。
私はレオナルドが見守る中、便箋に『承知しました』と一言だけ書いた。
〔これでよろしい?〕
そう尋ねる。レオナルドはフンッと満足そうに鼻を鳴らす。そして、自らその小さい手で便箋を折って封筒に入れた。
「まったく・・・」
私は得意顔のレオナルドを軽く睨むと、封筒を受け取り、そのままパトリシアに渡した。
☆彡
アランが指定した時間は午前中だったので、私は朝食を済ませるとすぐに出かける準備をした。
「お嬢様。本当にお供をしなくてよろしいのですか?」
馬車まで見送りに来たパトリシアは、不安と不満が入り混じった顔で私とレオナルドを見た。
「ええ。大丈夫よ。トミーもいるし」
「でも、御者だけじゃ、心配です・・・」
「会うのは騎士様なのよ? 万が一、何かあっても守ってくれるのだから、こんなに心強いことはないでしょう?」
「そりゃ、お会いしている間は安心ですけど・・・」
パトリシアは納得がいかないように口を尖らせた。まあ、納得するには無理があることはこちらも承知。でも、彼女を連れて行くわけにはいかない。
「それに、パット。貴女は私の恋路を応援してくれているのではなくて?」
私は可愛らしくパチンと片目を閉じてみせた。
「え?」
「つまり、これはデートも兼ねているってことよ。付いて来るなんて無粋じゃない?」
〔はああ!?〕
私の足元でレオナルドが小さく奇声を上げて、ドレスのスカートをグイッと引っ張ったが、当然、無視。
「な~る!! それは失礼いたしました! お嬢様!」
パトリシアはパンッと嬉しそうに両手を叩くと、
「なら、ミランダちゃんもお邪魔ですよね! お嬢様が帰ってくるまで、私が面倒をみておりますね!」
そう言って、レオナルドを抱き上げた。
え、待って! それは、まずい!
レオナルドは目を剥いて、両手両足をバタつかせ、大暴れする。何も知らないパトリシアは必死にこの暴れる二歳児を宥めようとした。
「あ、えっと、パット! 平気! 大丈夫よ! この子も連れて行くわ!」
私は慌ててパトリシアに両手を伸ばした。レオナルドも必死に私に手を伸ばす。
「オホホホ! ほら、この子、わたくしにとーっても懐いちゃって、離れたらきっと大暴れしちゃうわ! もし、それで怪我でもしたらお友達に合わす顔がないもの! ほら~~、こっちにいらっしゃ~い!」
半ば無理やりパトリシアからレオナルドを奪う。
「でも、お嬢様! デートにお子様なんて!」
パトリシアはもう一度、私からレオナルドを離そうとした。レオナルドは意地でも離れないとばかりに、ヒシッと私の首に噛り付くように抱き付ついた。
「ホホホ! ほらね? もう、こーんなに懐いちゃって。仕方ないから、このまま行くわね。それじゃ、行ってきます。トミー?」
クルッと向きを変え、トミーを呼ぶ。パトリシアにこれ以上何か言われないうちに、トミーが差し出した手を取り、急いで馬車に乗り込んだ。
その後のレオナルドの機嫌は非常に良くなった。邸内に帰る道も軽い足取りで歩き、部屋に戻ってからもご機嫌だった。夕食時も、やたらと構いたがる母の相手を、嫌な顔をせず、二歳児らしく対応していた。
お風呂も(いつもよりは)大人しく入り、いつものようにネグリジェを着せている時、扉をノックする音が聞こえた。返事をすると、パトリシアが入ってきた。
「お嬢様。お手紙が届きました」
その言葉に、レオナルドはピョンッと飛び上がった。
「ありがとう」
私はパトリシアから手紙を受け取ると、差出人を見た。やはりアランだ。
「お嬢様。昨日のお手紙の方と同じですよね? 例の騎士様ですか?」
少しウキウキした顔で尋ねてきた。
「そうね。何か情報を掴んだのかもしれないわ」
「お返事は如何されますか? 使いの者は待たせておりますが」
それを聞いてチラリとレオナルドを見た。レオナルドは小さく頷く。私は封を切って手紙を取り出した。
それを広げながらベビーベッドに近づくと、レオナルドを抱き上げ、一緒に手紙を覗いた。
そこには、明日、直接会って報告したい旨が書かれており、時間と場所も明記されていた。
「すぐ返事を書くから、ちょっと待って」
私はレオナルドを抱いたまま椅子に座ると、机に向かいペンを取った。
『親愛なるアラ・・・』と書き始めたところで、レオナルドの手が伸び、便箋を奪われた。
〔なぜ奪うのです!? 普通じゃないですか!?〕
グチャグチャと紙を丸めるレオナルドにイラッとして小声で尋ねる。レオナルドはプイッと顔を逸らすと、ポイッと丸めた紙を床に捨てた。
「こらこら、ダメでちゅよ~、お嬢様の邪魔をしちゃ~~。こちらにいらっしゃい」
パトリシアがヒョイッとレオナルドを持ち上げた。レオナルドは放せとばかりに両手と両足をバタつかせる。
「いいわ、大丈夫よ、パット」
私は軽く溜息をつくと、パトリシアに向かって両手を差し出した。パトリシアは、悪戯しちゃダメでちゅよ~と言いながらレオナルドを私に戻した。
私はレオナルドが見守る中、便箋に『承知しました』と一言だけ書いた。
〔これでよろしい?〕
そう尋ねる。レオナルドはフンッと満足そうに鼻を鳴らす。そして、自らその小さい手で便箋を折って封筒に入れた。
「まったく・・・」
私は得意顔のレオナルドを軽く睨むと、封筒を受け取り、そのままパトリシアに渡した。
☆彡
アランが指定した時間は午前中だったので、私は朝食を済ませるとすぐに出かける準備をした。
「お嬢様。本当にお供をしなくてよろしいのですか?」
馬車まで見送りに来たパトリシアは、不安と不満が入り混じった顔で私とレオナルドを見た。
「ええ。大丈夫よ。トミーもいるし」
「でも、御者だけじゃ、心配です・・・」
「会うのは騎士様なのよ? 万が一、何かあっても守ってくれるのだから、こんなに心強いことはないでしょう?」
「そりゃ、お会いしている間は安心ですけど・・・」
パトリシアは納得がいかないように口を尖らせた。まあ、納得するには無理があることはこちらも承知。でも、彼女を連れて行くわけにはいかない。
「それに、パット。貴女は私の恋路を応援してくれているのではなくて?」
私は可愛らしくパチンと片目を閉じてみせた。
「え?」
「つまり、これはデートも兼ねているってことよ。付いて来るなんて無粋じゃない?」
〔はああ!?〕
私の足元でレオナルドが小さく奇声を上げて、ドレスのスカートをグイッと引っ張ったが、当然、無視。
「な~る!! それは失礼いたしました! お嬢様!」
パトリシアはパンッと嬉しそうに両手を叩くと、
「なら、ミランダちゃんもお邪魔ですよね! お嬢様が帰ってくるまで、私が面倒をみておりますね!」
そう言って、レオナルドを抱き上げた。
え、待って! それは、まずい!
レオナルドは目を剥いて、両手両足をバタつかせ、大暴れする。何も知らないパトリシアは必死にこの暴れる二歳児を宥めようとした。
「あ、えっと、パット! 平気! 大丈夫よ! この子も連れて行くわ!」
私は慌ててパトリシアに両手を伸ばした。レオナルドも必死に私に手を伸ばす。
「オホホホ! ほら、この子、わたくしにとーっても懐いちゃって、離れたらきっと大暴れしちゃうわ! もし、それで怪我でもしたらお友達に合わす顔がないもの! ほら~~、こっちにいらっしゃ~い!」
半ば無理やりパトリシアからレオナルドを奪う。
「でも、お嬢様! デートにお子様なんて!」
パトリシアはもう一度、私からレオナルドを離そうとした。レオナルドは意地でも離れないとばかりに、ヒシッと私の首に噛り付くように抱き付ついた。
「ホホホ! ほらね? もう、こーんなに懐いちゃって。仕方ないから、このまま行くわね。それじゃ、行ってきます。トミー?」
クルッと向きを変え、トミーを呼ぶ。パトリシアにこれ以上何か言われないうちに、トミーが差し出した手を取り、急いで馬車に乗り込んだ。
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