48 / 61
47
しおりを挟む
「パトゥール夫人。その・・・レオナルド殿下は? 殿下は新しい婚約者を決めることになるのでしょう?」
「そうそう! そこ! 新しい婚約者はどなたになるのかしら? 気になるわ!」
「以前のお話ではウィンター家のご令嬢とクロウ家のご令嬢が殿下のお気に入りというお話でしたわよね? きっとこのお二人を側妃に迎えるだろうって」
「まあ、では、どちらかのご令嬢が婚約者候補に? どちらも伯爵家でしたわよね?」
「侯爵家よりは見劣りするかもしれないけれど、かなりのお力をお持ちの家だっていうお話でしたわよね? パトゥール夫人?」
「どちらが正妃でどちらが側妃になるのかしら?! バトルが起きそうですわね!」
ご婦人方はキャイキャイ捲し立てている。とっても楽しそうだ。人のゴシップって見知らぬ人をここまで楽しませるものなのね。ある意味、社会的に貢献しているのかも。
レオナルドにケーキを食べさせながら、耳をひたすら大きくさせて会話に聞き入った。
その合間に自分もケーキを口にする。お勧めと言うだけあって、なかなか美味。
「それが、皆様! 大変な事が起こりましたのよ!!」
パトゥール子爵夫人の声のトーンが一段と高くなった。
しかし、次には少し前屈みになり、内緒話でもするかのように声のボリュームを落とした。
「実は、その殿下のお気に入りである二人のご令嬢の内のお一人、ウィンター伯爵家のミランダ様が失脚されましたの」
来た! ミランダネタ!
「え?!」
「嘘?!」
「何故!?」
ご婦人方も驚きを隠せない。
「何とも汚らわしい理由で・・・。このような所で話すお話ではないのですけれど・・・。彼女、殿下以外にも御執心だった殿方がいたようで、その殿方と仲睦まじくしている姿を多くの人に見られてしまいましたのよ」
「仲睦まじく・・・?」
「ええ。しかも宮殿の客間で事に及んで・・・」
パトゥール夫人の声が更に小さくなる。私はさらに耳をそばだてた。
「人に見つかっても気が付かないほど夢中だったとか・・・。それどころか、数人がかりで引き離さないといけないほど、その殿方を求めていたって」
「んま!! 信じられない!」
「なんて破廉恥な!」
「とんだ尻軽女でしたのね、そのご令嬢!」
ご婦人方は各々怒りの声を上げる。
〔引き離さないといけないほどって、どれだけ・・・? 危ないところでしたわね、殿下〕
〔・・・〕
レオナルドを見ると血の気が引いている。
「そんな身持ちの悪い女が殿下の正妃になれるわけがございませんでしょう? だからと言って、側妃にというわけにもいかないでしょう。いくら殿下の一番のお気に入りだったとしても。それにレオナルド殿下だって、彼女に裏切られて、それはそれは大変にお怒りだというお話ですわ」
〔はあぁぁあ? むぐっ・・・〕
〔お静かに〕
奇声を上げかけたレオナルドの口をナプキンで塞ぐ。
「そうなると、新たな婚約者の第一候補はクロウ伯爵家のレベッカ様でしょうね。でも、分かりませんわよ? 殿下のお気に入りのご令嬢は他にもおりますもの。ハサウェイ家のアニエス様でしょう、それにマーロウ家のロザリー様。後はコクトー家のクリスタ様、ロワール家のリリアナ様・・・他には・・・」
〔ま~、そんなにたくさん? すごいですわね、殿下〕
〔誰だ、そいつら・・・? 俺は知らんぞ・・・〕
「そんなにたくさんの女性が?」
「だって、レオナルド殿下はとても美しいですもの! ご身分だけでなく、そのご容姿からだって、相手は選り取り見取りですわぁ!」
〔ふっ・・・。うぐ・・・〕
〔失礼、お口にチョコレートが〕
ご婦人方に容姿を褒められて、満更でもなさそうに前髪をいじる仕草に、猛烈にイラッとくる。つい、乱暴にレオナルドの口元をナプキンで拭いた。
「でもね、皆様。わたくしはね、実のところ、レベッカ様ではなくて、コクトー家のクリスタ様が殿下の婚約者の第一候補になるのではないかと睨んでおりますのよ」
パトゥール夫人は大きな秘密でも教えるかのように、前のめりになった。
「そうそう! そこ! 新しい婚約者はどなたになるのかしら? 気になるわ!」
「以前のお話ではウィンター家のご令嬢とクロウ家のご令嬢が殿下のお気に入りというお話でしたわよね? きっとこのお二人を側妃に迎えるだろうって」
「まあ、では、どちらかのご令嬢が婚約者候補に? どちらも伯爵家でしたわよね?」
「侯爵家よりは見劣りするかもしれないけれど、かなりのお力をお持ちの家だっていうお話でしたわよね? パトゥール夫人?」
「どちらが正妃でどちらが側妃になるのかしら?! バトルが起きそうですわね!」
ご婦人方はキャイキャイ捲し立てている。とっても楽しそうだ。人のゴシップって見知らぬ人をここまで楽しませるものなのね。ある意味、社会的に貢献しているのかも。
レオナルドにケーキを食べさせながら、耳をひたすら大きくさせて会話に聞き入った。
その合間に自分もケーキを口にする。お勧めと言うだけあって、なかなか美味。
「それが、皆様! 大変な事が起こりましたのよ!!」
パトゥール子爵夫人の声のトーンが一段と高くなった。
しかし、次には少し前屈みになり、内緒話でもするかのように声のボリュームを落とした。
「実は、その殿下のお気に入りである二人のご令嬢の内のお一人、ウィンター伯爵家のミランダ様が失脚されましたの」
来た! ミランダネタ!
「え?!」
「嘘?!」
「何故!?」
ご婦人方も驚きを隠せない。
「何とも汚らわしい理由で・・・。このような所で話すお話ではないのですけれど・・・。彼女、殿下以外にも御執心だった殿方がいたようで、その殿方と仲睦まじくしている姿を多くの人に見られてしまいましたのよ」
「仲睦まじく・・・?」
「ええ。しかも宮殿の客間で事に及んで・・・」
パトゥール夫人の声が更に小さくなる。私はさらに耳をそばだてた。
「人に見つかっても気が付かないほど夢中だったとか・・・。それどころか、数人がかりで引き離さないといけないほど、その殿方を求めていたって」
「んま!! 信じられない!」
「なんて破廉恥な!」
「とんだ尻軽女でしたのね、そのご令嬢!」
ご婦人方は各々怒りの声を上げる。
〔引き離さないといけないほどって、どれだけ・・・? 危ないところでしたわね、殿下〕
〔・・・〕
レオナルドを見ると血の気が引いている。
「そんな身持ちの悪い女が殿下の正妃になれるわけがございませんでしょう? だからと言って、側妃にというわけにもいかないでしょう。いくら殿下の一番のお気に入りだったとしても。それにレオナルド殿下だって、彼女に裏切られて、それはそれは大変にお怒りだというお話ですわ」
〔はあぁぁあ? むぐっ・・・〕
〔お静かに〕
奇声を上げかけたレオナルドの口をナプキンで塞ぐ。
「そうなると、新たな婚約者の第一候補はクロウ伯爵家のレベッカ様でしょうね。でも、分かりませんわよ? 殿下のお気に入りのご令嬢は他にもおりますもの。ハサウェイ家のアニエス様でしょう、それにマーロウ家のロザリー様。後はコクトー家のクリスタ様、ロワール家のリリアナ様・・・他には・・・」
〔ま~、そんなにたくさん? すごいですわね、殿下〕
〔誰だ、そいつら・・・? 俺は知らんぞ・・・〕
「そんなにたくさんの女性が?」
「だって、レオナルド殿下はとても美しいですもの! ご身分だけでなく、そのご容姿からだって、相手は選り取り見取りですわぁ!」
〔ふっ・・・。うぐ・・・〕
〔失礼、お口にチョコレートが〕
ご婦人方に容姿を褒められて、満更でもなさそうに前髪をいじる仕草に、猛烈にイラッとくる。つい、乱暴にレオナルドの口元をナプキンで拭いた。
「でもね、皆様。わたくしはね、実のところ、レベッカ様ではなくて、コクトー家のクリスタ様が殿下の婚約者の第一候補になるのではないかと睨んでおりますのよ」
パトゥール夫人は大きな秘密でも教えるかのように、前のめりになった。
24
お気に入りに追加
57
あなたにおすすめの小説
公爵令嬢の立場を捨てたお姫様
羽衣 狐火
恋愛
公爵令嬢は暇なんてないわ
舞踏会
お茶会
正妃になるための勉強
…何もかもうんざりですわ!もう公爵令嬢の立場なんか捨ててやる!
王子なんか知りませんわ!
田舎でのんびり暮らします!
婚約者が私以外の人と勝手に結婚したので黙って逃げてやりました〜某国の王子と珍獣ミミルキーを愛でます〜
平川
恋愛
侯爵家の莫大な借金を黒字に塗り替え事業を成功させ続ける才女コリーン。
だが愛する婚約者の為にと寝る間を惜しむほど侯爵家を支えてきたのにも関わらず知らぬ間に裏切られた彼女は一人、誰にも何も告げずに屋敷を飛び出した。
流れ流れて辿り着いたのは獣人が治めるバムダ王国。珍獣ミミルキーが生息するマサラヤマン島でこの国の第一王子ウィンダムに偶然出会い、強引に王宮に連れ去られミミルキーの生態調査に参加する事に!?
魔法使いのウィンロードである王子に溺愛され珍獣に癒されたコリーンは少しずつ自分を取り戻していく。
そして追い掛けて来た元婚約者に対して少女であった彼女が最後に出した答えとは…?
完結済全6話
俺の婚約者は地味で陰気臭い女なはずだが、どうも違うらしい。
ミミリン
恋愛
ある世界の貴族である俺。婚約者のアリスはいつもボサボサの髪の毛とぶかぶかの制服を着ていて陰気な女だ。幼馴染のアンジェリカからは良くない話も聞いている。
俺と婚約していても話は続かないし、婚約者としての役目も担う気はないようだ。
そんな婚約者のアリスがある日、俺のメイドがふるまった紅茶を俺の目の前でわざとこぼし続けた。
こんな女とは婚約解消だ。
この日から俺とアリスの関係が少しずつ変わっていく。
それでも、私は幸せです~二番目にすらなれない妖精姫の結婚~
柵空いとま
恋愛
家族のために、婚約者である第二王子のために。政治的な理由で選ばれただけだと、ちゃんとわかっている。
大好きな人達に恥をかかせないために、侯爵令嬢シエラは幼い頃からひたすら努力した。六年間も苦手な妃教育、周りからの心無い言葉に耐えた結果、いよいよ来月、婚約者と結婚する……はずだった。そんな彼女を待ち受けたのは他の女性と仲睦まじく歩いている婚約者の姿と一方的な婚約解消。それだけではなく、シエラの新しい嫁ぎ先が既に決まったという事実も告げられた。その相手は、悪名高い隣国の英雄であるが――。
これは、どんなに頑張っても大好きな人の一番目どころか二番目にすらなれなかった少女が自分の「幸せ」の形を見つめ直す物語。
※他のサイトにも投稿しています
「婚約破棄するぞ」が口癖の婚約者に見切りをつけ、素敵な旦那さまと幸せになります
葵 すみれ
恋愛
ミレーヌの婚約者である伯爵令息は、ことあるごとに「婚約破棄するぞ」と脅して抑え付けてくる。
格下の家柄で、家が支援を受けている身では、言い返すこともままならない。
本当に興味のあったことを学ぶことも許されず、ミレーヌは言いなりのまま生きる。
婚約者が堂々と浮気をしても、もはや心は動かない。
ところがあるとき、ミレーヌは自分を認め、尊重してくれる相手と出会う。
そして何度目かわからない婚約破棄宣言を、ミレーヌはとうとう受け入れることとなる。
※小説家になろうにも掲載しています
側妃を迎えたいと言ったので、了承したら溺愛されました
ひとみん
恋愛
タイトル変更しました!旧「国王陛下の長い一日」です。書いているうちに、何かあわないな・・・と。
内容そのまんまのタイトルです(笑
「側妃を迎えたいと思うのだが」国王が言った。
「了承しました。では今この時から夫婦関係は終了という事でいいですね?」王妃が言った。
「え?」困惑する国王に彼女は一言。「結婚の条件に書いていますわよ」と誓約書を見せる。
其処には確かに書いていた。王妃が恋人を作る事も了承すると。
そして今更ながら国王は気付く。王妃を愛していると。
困惑する王妃の心を射止めるために頑張るヘタレ国王のお話しです。
ご都合主義のゆるゆる設定です。
1度だけだ。これ以上、閨をともにするつもりは無いと旦那さまに告げられました。
尾道小町
恋愛
登場人物紹介
ヴィヴィアン・ジュード伯爵令嬢
17歳、長女で爵位はシェーンより低が、ジュード伯爵家には莫大な資産があった。
ドン・ジュード伯爵令息15歳姉であるヴィヴィアンが大好きだ。
シェーン・ロングベルク公爵 25歳
結婚しろと回りは五月蝿いので大富豪、伯爵令嬢と結婚した。
ユリシリーズ・グレープ補佐官23歳
優秀でシェーンに、こき使われている。
コクロイ・ルビーブル伯爵令息18歳
ヴィヴィアンの幼馴染み。
アンジェイ・ドルバン伯爵令息18歳
シェーンの元婚約者。
ルーク・ダルシュール侯爵25歳
嫁の父親が行方不明でシェーン公爵に相談する。
ミランダ・ダルシュール侯爵夫人20歳、父親が行方不明。
ダン・ドリンク侯爵37歳行方不明。
この国のデビット王太子殿下23歳、婚約者ジュリアン・スチール公爵令嬢が居るのにヴィヴィアンの従妹に興味があるようだ。
ジュリアン・スチール公爵令嬢18歳デビット王太子殿下の婚約者。
ヴィヴィアンの従兄弟ヨシアン・スプラット伯爵令息19歳
私と旦那様は婚約前1度お会いしただけで、結婚式は私と旦那様と出席者は無しで式は10分程で終わり今は2人の寝室?のベッドに座っております、旦那様が仰いました。
一度だけだ其れ以上閨を共にするつもりは無いと旦那様に宣言されました。
正直まだ愛情とか、ありませんが旦那様である、この方の言い分は最低ですよね?
さよなら 大好きな人
小夏 礼
恋愛
女神の娘かもしれない紫の瞳を持つアーリアは、第2王子の婚約者だった。
政略結婚だが、それでもアーリアは第2王子のことが好きだった。
彼にふさわしい女性になるために努力するほど。
しかし、アーリアのそんな気持ちは、
ある日、第2王子によって踏み躙られることになる……
※本編は悲恋です。
※裏話や番外編を読むと本編のイメージが変わりますので、悲恋のままが良い方はご注意ください。
※本編2(+0.5)、裏話1、番外編2の計5(+0.5)話です。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる