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「ミランダ様はどちらの薬も媚薬と信じていらしたのではありませんか? だって、お二人揃ってこんなお子ちゃまになったところで、何のメリットがあるのです?」
「ああ。俺もそう思う・・・。それに、ミランダ嬢の方は本当の媚薬だったかもしれないな・・・」
私の問いに、レオナルドは顔を曇らせたまま頷いた。
「それにしても、とんでもない物を入手したものですわね、彼女ったら。一体どこから手に入れたのかしら?」
「恐らく、父親のウィンター伯爵だろう・・・。アイツが図ったに違いない」
え? 父親? 彼女の意思ではなくて?
「ウィンターの奴・・・、きっと情を交わした程度では、俺がそうそう簡単に折れないと分かっていたんだろう」
目を丸めている私に構わず、レオナルドは続けた。
「娘との婚約を強いるために監禁でもするつもりだったのか・・・、だが、それは相当のリスクが伴う。それも覚悟の上だったのか・・・」
「監禁って・・・」
穏やかでない言葉に、思わず眉間に皺を寄せた。
「いくらなんでも王族に対してそんな野蛮な事・・・。反逆罪ではございませんか。相当のリスクどころか、死罪もまぬがれませんわよ? 安易過ぎませんか?」
「まあな。どんな勝算があったのか知らんが、そこまでしても俺と娘を婚約させたかったんだろう」
婚約ねぇ。
レオナルドと婚約するために父娘共々ここまでするとは。私は破棄したい一心でしたけど。
「でも、殿下。ミランダ様と言ったら、殿下のお気に入りのご令嬢ではございませんか? なにがご不満でしたの? あんなに仲良くされていたお方でしたのに」
私の質問にレオナルドの顔がサッと曇った。
「一昨日の夜会でもエスコートなさっていたではないですか。婚約者であったわたくしではなくて」
「あ、あれは・・・」
「ああ、でも、他にもお傍にご令嬢がいらしたわね。反対側にもクロウ伯爵家のレベッカ様がしっかりとくっ付いていらしていたわ。あれは、わたくしにではなくミランダ様に牽制していたのでしょうね」
「・・・だから、あれは・・・」
「ミランダ様よりレベッカ様の方がよろしいのですか? わたくしから見たらどっちもどっちですけど。まあ、強いて言えば、レベッカ様の方が可憐かしら?」
「違っ・・・」
「それでウィンター親子は焦ったのかしら? だから強硬手段に走った?」
「だから、違うっ!!」
レオナルドは大声で叫んだ。
「俺は彼女たちに興味はない!」
「は?」
「彼女たちに興味なんかない! ただ傍にいるのを許していただけだ!」
はあ?!
あんた、サラッと何言ってんの?
最低なこと言っているって自覚あるのか? この男。
☆彡
私は呆れてアングリ開いてしまった口を、両手を使ってグッと元に戻す。そして、これでもかと思うほど目を細めてレオナルドを見た。
「あのぅ、殿下・・・。不敬を承知で申し上げますけれど、今、サラリとクズ発言しているという自覚ございます? あれだけ人前でイチャつきながら彼女たちに興味が無いって、一体どのお口がおっしゃっておりますの?」
「な、何だ!? その目つきは!」
「流石のわたくしも呆れ切って言葉が出てきません・・・」
私は、はぁぁ~~~っと今まで生きてきた中で一番と思われるほど長い溜息を付いた。
「な、何だ! その溜息! 言っておくが、傍にいることを許していたのには理由がある! 彼女たちが意図的に近づいてきたのは分かっていて、敢えて傍に置いていたんだ!」
「来るもの拒まずっていう最低な理由では?」
「違うっ!」
レオナルドは苛立たし気に地団駄を踏む。
「相手はウィンター家とクロウ家の娘だ! あいつ等は同じ派閥だ! お互い競い合ってはいるがな。それでも抱いている野望は同じだ!」
「娘を殿下に嫁がせるという野望? 王家と婚姻関係を持ちたいという野望ならどの家にもございますわよ?」
私は首を竦めてみせた。
「ふんっ! ただの婚姻関係ならどの家も欲しいだろうさ。それはお前の家、ミレー家も同じだろう?」
「はい。おっしゃる通り」
「でも、ミレー家はそれ以上望んでこない。何故なら、既に縁戚関係のバロン侯爵家の令嬢が兄上の婚約者だから」
レイチェルお姉様のことだ。
「だが、あいつ等は違う。ウィンターとクロウの両家は」
「はい? 殿下との婚姻関係を望んでいるのではないのですか?」
「ああ。この俺とのな。この俺に嫁がせたがっている」
「はあ・・・?」
ちょっと話が見えないんですけれど・・・。
私は首を傾げた。
レオナルドの目は怒りに満ちている。でも、その怒りはどうやら私に向けられているわけではないように見える。さっきまで私に怒っていたけれど、矛先が変わったようだ。
「あいつ等は自分の娘を王太子妃にしたいのだ。王太子に娘を嫁がせたいんだ」
はい?
レオナルドは第三王子ですけど?
あ・・・。
もしかして・・・、私、今、聞いちゃいけないこと聞いちゃった・・・?
「ああ。俺もそう思う・・・。それに、ミランダ嬢の方は本当の媚薬だったかもしれないな・・・」
私の問いに、レオナルドは顔を曇らせたまま頷いた。
「それにしても、とんでもない物を入手したものですわね、彼女ったら。一体どこから手に入れたのかしら?」
「恐らく、父親のウィンター伯爵だろう・・・。アイツが図ったに違いない」
え? 父親? 彼女の意思ではなくて?
「ウィンターの奴・・・、きっと情を交わした程度では、俺がそうそう簡単に折れないと分かっていたんだろう」
目を丸めている私に構わず、レオナルドは続けた。
「娘との婚約を強いるために監禁でもするつもりだったのか・・・、だが、それは相当のリスクが伴う。それも覚悟の上だったのか・・・」
「監禁って・・・」
穏やかでない言葉に、思わず眉間に皺を寄せた。
「いくらなんでも王族に対してそんな野蛮な事・・・。反逆罪ではございませんか。相当のリスクどころか、死罪もまぬがれませんわよ? 安易過ぎませんか?」
「まあな。どんな勝算があったのか知らんが、そこまでしても俺と娘を婚約させたかったんだろう」
婚約ねぇ。
レオナルドと婚約するために父娘共々ここまでするとは。私は破棄したい一心でしたけど。
「でも、殿下。ミランダ様と言ったら、殿下のお気に入りのご令嬢ではございませんか? なにがご不満でしたの? あんなに仲良くされていたお方でしたのに」
私の質問にレオナルドの顔がサッと曇った。
「一昨日の夜会でもエスコートなさっていたではないですか。婚約者であったわたくしではなくて」
「あ、あれは・・・」
「ああ、でも、他にもお傍にご令嬢がいらしたわね。反対側にもクロウ伯爵家のレベッカ様がしっかりとくっ付いていらしていたわ。あれは、わたくしにではなくミランダ様に牽制していたのでしょうね」
「・・・だから、あれは・・・」
「ミランダ様よりレベッカ様の方がよろしいのですか? わたくしから見たらどっちもどっちですけど。まあ、強いて言えば、レベッカ様の方が可憐かしら?」
「違っ・・・」
「それでウィンター親子は焦ったのかしら? だから強硬手段に走った?」
「だから、違うっ!!」
レオナルドは大声で叫んだ。
「俺は彼女たちに興味はない!」
「は?」
「彼女たちに興味なんかない! ただ傍にいるのを許していただけだ!」
はあ?!
あんた、サラッと何言ってんの?
最低なこと言っているって自覚あるのか? この男。
☆彡
私は呆れてアングリ開いてしまった口を、両手を使ってグッと元に戻す。そして、これでもかと思うほど目を細めてレオナルドを見た。
「あのぅ、殿下・・・。不敬を承知で申し上げますけれど、今、サラリとクズ発言しているという自覚ございます? あれだけ人前でイチャつきながら彼女たちに興味が無いって、一体どのお口がおっしゃっておりますの?」
「な、何だ!? その目つきは!」
「流石のわたくしも呆れ切って言葉が出てきません・・・」
私は、はぁぁ~~~っと今まで生きてきた中で一番と思われるほど長い溜息を付いた。
「な、何だ! その溜息! 言っておくが、傍にいることを許していたのには理由がある! 彼女たちが意図的に近づいてきたのは分かっていて、敢えて傍に置いていたんだ!」
「来るもの拒まずっていう最低な理由では?」
「違うっ!」
レオナルドは苛立たし気に地団駄を踏む。
「相手はウィンター家とクロウ家の娘だ! あいつ等は同じ派閥だ! お互い競い合ってはいるがな。それでも抱いている野望は同じだ!」
「娘を殿下に嫁がせるという野望? 王家と婚姻関係を持ちたいという野望ならどの家にもございますわよ?」
私は首を竦めてみせた。
「ふんっ! ただの婚姻関係ならどの家も欲しいだろうさ。それはお前の家、ミレー家も同じだろう?」
「はい。おっしゃる通り」
「でも、ミレー家はそれ以上望んでこない。何故なら、既に縁戚関係のバロン侯爵家の令嬢が兄上の婚約者だから」
レイチェルお姉様のことだ。
「だが、あいつ等は違う。ウィンターとクロウの両家は」
「はい? 殿下との婚姻関係を望んでいるのではないのですか?」
「ああ。この俺とのな。この俺に嫁がせたがっている」
「はあ・・・?」
ちょっと話が見えないんですけれど・・・。
私は首を傾げた。
レオナルドの目は怒りに満ちている。でも、その怒りはどうやら私に向けられているわけではないように見える。さっきまで私に怒っていたけれど、矛先が変わったようだ。
「あいつ等は自分の娘を王太子妃にしたいのだ。王太子に娘を嫁がせたいんだ」
はい?
レオナルドは第三王子ですけど?
あ・・・。
もしかして・・・、私、今、聞いちゃいけないこと聞いちゃった・・・?
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