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やっとのことでクリスの研究室に辿り着いた。
しかし、ここで悲劇が起こった。
やっと辿り着いた研究室の扉にメモが貼ってあったのだ。
そこには今朝から明日にかけて外出しており不在というメモが。
彼は自分の研究室に余計な人材を置いていない。全て一人きりでこなしている。
「くそ・・・っ」
俺は扉の前に膝から崩れ落ちた。
どうする?
俺は自分の胸元を握りしめた。
このまま薬が切れるまで耐え忍ぶか。幸い、ここには誰もいない。ここで夜を明かすか。
相変わらずゼーゼーと息は上がったまま。さっきよりも苦しくなってきた気がする。動悸も酷い。
仕方がない。恥を忍んで医務室に行くか―――。
覚悟を決めて立ち上がった時、ふっと一人の老人の顔が浮かんだ。
「そうだ・・・! ザガリー氏・・・」
彼を頼ろう! クリスの師匠であるザガリー。クリスよりもずっと腕の良い一級呪術師だ。
引退後は、城下で若手の呪術師を数名育てている。彼なら媚薬の解毒なんて一発だ!
俺は研究室そばの出口から外に出ると、使用人用の馬屋に忍び込んだ。しかし、肝心な馬がいない。すべて出払っているようだ。なんてことだ! どこまでついていないんだ!
俺はその場にあったみすぼらしい麻のコートを見つけると、それを羽織り、裏門に向かった。
裏門に来ると、城に野菜を卸しに来ていた業者の荷馬車が目に入った。
丁度いい。この体調で歩いて城下に向かうのは無理だ。
俺は周りを見渡し、誰にも気づかれないようにこっそり荷台に潜り込んだ。
☆彡
誰にも気づかれることなく荷馬車は無事に城を出た。
業者の男は初老の男二人だ。ベラベラとくだらないお喋りを楽しみながらゆっくりゆっくり馬車を走らせる。
気が急いている俺は内心イライラしたが、どうしようもない。
安全運転のお陰で、返って振動がないことをありがたいと思うことにした。
無事に城下町まで辿り着くと、タイミングを見計らい、荷馬車から抜け出した。
歩き出した途端、眩暈に襲われる。
荷馬車の中で横になっていた間は少し楽だったので、多少薬の効き目が落ちて来たのかと期待したが、そんなことはないようだ。
歩いていると、さっきよりも息苦しくなり、動悸も酷くなった。更にクラクラと眩暈までする。少し吐き気までしてきた。
本当に媚薬か・・・?
城でミランダに襲われかけた時は、確かに欲情した。体中が火照り、疼きを抑えるのに必死だった。しかし、今は逆に体の温度が下がっているようだ。少し寒気がするほどだ。それに、街中を行き交う若い女性を見ても、近くをすれ違っても、何とも思わない。この苦しさは媚薬の後遺症なのか?
足取りも段々おぼつかなくなってきた。だが、必死に自分に鞭を打って足を動かす。
ザガリーの家は以前に行ったことがあるので知っている。もう少しだ。
俺の異様な歩き方に、すれ違う人はチラリと横目で見てくる。しかし、そんなことに構っている余裕などない。歩くことに必死だ。
後、少し・・・。あの角を曲がれば・・・。
曲がってまっすぐ突き当りを右に・・・。
角を曲がり細い道に入る。途端に薄暗くなり、人通りが無くなった。
人の目を気にしなくて良くなったことに気が抜けてしまったのだろうか。更に眩暈が酷くなった。
あと少しだ・・・、あと少し・・・。
視界がどんどん歪んでくる。足は鉛のように重い。
歯を喰いしばり、必死に歩いていたが、とうとう限界に達したようだ。足がもつれ、地面に倒れ込んでしまった。
立ち上がろうとしたが、全然力が入らない。
俺はそのまま意識を手放した。
一瞬、ぼんやりとエリーゼの顔が見えた気がした。
「大丈夫ですか、殿下?」
「エリーゼ・・・? 何でお前がここに・・・?」
そんな呟きが口をついたかどうか。
それすらも分からないほど、俺はすぐに意識が無くなった。
しかし、ここで悲劇が起こった。
やっと辿り着いた研究室の扉にメモが貼ってあったのだ。
そこには今朝から明日にかけて外出しており不在というメモが。
彼は自分の研究室に余計な人材を置いていない。全て一人きりでこなしている。
「くそ・・・っ」
俺は扉の前に膝から崩れ落ちた。
どうする?
俺は自分の胸元を握りしめた。
このまま薬が切れるまで耐え忍ぶか。幸い、ここには誰もいない。ここで夜を明かすか。
相変わらずゼーゼーと息は上がったまま。さっきよりも苦しくなってきた気がする。動悸も酷い。
仕方がない。恥を忍んで医務室に行くか―――。
覚悟を決めて立ち上がった時、ふっと一人の老人の顔が浮かんだ。
「そうだ・・・! ザガリー氏・・・」
彼を頼ろう! クリスの師匠であるザガリー。クリスよりもずっと腕の良い一級呪術師だ。
引退後は、城下で若手の呪術師を数名育てている。彼なら媚薬の解毒なんて一発だ!
俺は研究室そばの出口から外に出ると、使用人用の馬屋に忍び込んだ。しかし、肝心な馬がいない。すべて出払っているようだ。なんてことだ! どこまでついていないんだ!
俺はその場にあったみすぼらしい麻のコートを見つけると、それを羽織り、裏門に向かった。
裏門に来ると、城に野菜を卸しに来ていた業者の荷馬車が目に入った。
丁度いい。この体調で歩いて城下に向かうのは無理だ。
俺は周りを見渡し、誰にも気づかれないようにこっそり荷台に潜り込んだ。
☆彡
誰にも気づかれることなく荷馬車は無事に城を出た。
業者の男は初老の男二人だ。ベラベラとくだらないお喋りを楽しみながらゆっくりゆっくり馬車を走らせる。
気が急いている俺は内心イライラしたが、どうしようもない。
安全運転のお陰で、返って振動がないことをありがたいと思うことにした。
無事に城下町まで辿り着くと、タイミングを見計らい、荷馬車から抜け出した。
歩き出した途端、眩暈に襲われる。
荷馬車の中で横になっていた間は少し楽だったので、多少薬の効き目が落ちて来たのかと期待したが、そんなことはないようだ。
歩いていると、さっきよりも息苦しくなり、動悸も酷くなった。更にクラクラと眩暈までする。少し吐き気までしてきた。
本当に媚薬か・・・?
城でミランダに襲われかけた時は、確かに欲情した。体中が火照り、疼きを抑えるのに必死だった。しかし、今は逆に体の温度が下がっているようだ。少し寒気がするほどだ。それに、街中を行き交う若い女性を見ても、近くをすれ違っても、何とも思わない。この苦しさは媚薬の後遺症なのか?
足取りも段々おぼつかなくなってきた。だが、必死に自分に鞭を打って足を動かす。
ザガリーの家は以前に行ったことがあるので知っている。もう少しだ。
俺の異様な歩き方に、すれ違う人はチラリと横目で見てくる。しかし、そんなことに構っている余裕などない。歩くことに必死だ。
後、少し・・・。あの角を曲がれば・・・。
曲がってまっすぐ突き当りを右に・・・。
角を曲がり細い道に入る。途端に薄暗くなり、人通りが無くなった。
人の目を気にしなくて良くなったことに気が抜けてしまったのだろうか。更に眩暈が酷くなった。
あと少しだ・・・、あと少し・・・。
視界がどんどん歪んでくる。足は鉛のように重い。
歯を喰いしばり、必死に歩いていたが、とうとう限界に達したようだ。足がもつれ、地面に倒れ込んでしまった。
立ち上がろうとしたが、全然力が入らない。
俺はそのまま意識を手放した。
一瞬、ぼんやりとエリーゼの顔が見えた気がした。
「大丈夫ですか、殿下?」
「エリーゼ・・・? 何でお前がここに・・・?」
そんな呟きが口をついたかどうか。
それすらも分からないほど、俺はすぐに意識が無くなった。
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