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第二章
30.かけられた魔術
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上空で、ドラゴンはさくらたちを何処でも好きな場所で降ろすと言ってくれた。イルハンは船が隠れている入り江を教えると、ドラゴンはその入江に向かって一直線に飛んで行った。
小舟では三人の兵士が、今か今かとノアたちの帰りを待っていた。そこに巨大なドラゴンが現れ、慌てふためいた。それぞれ武器を取り出したが、足元に人影らしいものに気が付き、それがノアたちと分かると青ざめた。
ドラゴンはゆっくり入江に近づくと、砂の上に三人を放った。相変わらず容赦のない放り方だ。さくらはすでに痛めていた左足首から着地してしまい、とうとう自力では立てないほど痛めてしまった。
ノアはすぐにさくらのもとに駆け寄ると、上半身を抱き起した。さくらは激痛で顔面蒼白だった。それでも、何とかドラゴンの方に体を向けると、深々と頭を下げた。
「助かりました・・・。本当にありがとうございました」
イルハンもそれに習い、共に頭を下げた。すると、それを見た兵士たちは慌てて武器を置いた。しかし、ノアだけは納得がいかにようにドラゴンを見つめていた。
「あの・・・、でも、何で助けてくれたんですか?」
さくらはドラゴンに尋ねた。
「子供のためだ」
ドラゴンはそう答えた。さくらは首をかしげると
「あの子は温泉をすっかり気に入った。お前のことも気に入ったようだ。泣いていたお前を気にしていた」
そう溜息をついた。
「仕方なくお前を探していたら、悲鳴が聞こえた。だから助けた」
さくらは感動した。山ではすっかり見放されたと思ったのにそんなことはなかったのだ。やはりドラゴンだって善意は持っているのだとさくらは思った。
「もういいだろう」
ノアは話を遮り、さくらを横に抱きかかえるとサッと立ち上がった。あまりにも自然に自分を抱きかかえたノアにさくらは目を丸くした。
ノアは無言で踵を返し船に向かおうとしたが、思いとどまって、ドラゴンに振り向いた。
「俺からも礼を言う」
そう言い、イルハンと共に船に戻ろうとすると、ドラゴンがノアに声をかけた。
「おまえだけ残れ。話がある」
ノアはドラゴンに振り返ると、さくらをイルハンの腕に預けた。そして二人だけ先に船に戻らせた。
☆彡
「おまえ、魔術がかけられているな」
ノアと二人きりになると、ドラゴンは切り出した。ノアは頷いた。
「誰にかけられた?」
「自国の・・・ローランドの精霊山にいるドラゴンだ」
ノアが答えると、ドラゴンは呆れたように、
「それはとんでもない奴に術をかけられたな」
と呟いた。そして改めてノアを見据え、
「気付いていると思うが、術は半分以上解けているぞ。もう勝手にドラゴンに変化することはないだろう。だが気を付けろ。もし怒りなどで我を忘れた時、また体に残っている術が噴出し、再びドラゴンに変化するだろう。そうなったら、もはや朔の夜であろうとも、人の姿に戻れないと覚えておけ」
そう忠告すると、翼を広げ、一気に空へ舞い上がった。そして、挨拶のようにその場で一度旋回すると、飛び去って行った。
さくらは小舟から飛び立ったドラゴンにありがとうと叫び、姿が見えなくなるまで手を振っていた。
小舟では三人の兵士が、今か今かとノアたちの帰りを待っていた。そこに巨大なドラゴンが現れ、慌てふためいた。それぞれ武器を取り出したが、足元に人影らしいものに気が付き、それがノアたちと分かると青ざめた。
ドラゴンはゆっくり入江に近づくと、砂の上に三人を放った。相変わらず容赦のない放り方だ。さくらはすでに痛めていた左足首から着地してしまい、とうとう自力では立てないほど痛めてしまった。
ノアはすぐにさくらのもとに駆け寄ると、上半身を抱き起した。さくらは激痛で顔面蒼白だった。それでも、何とかドラゴンの方に体を向けると、深々と頭を下げた。
「助かりました・・・。本当にありがとうございました」
イルハンもそれに習い、共に頭を下げた。すると、それを見た兵士たちは慌てて武器を置いた。しかし、ノアだけは納得がいかにようにドラゴンを見つめていた。
「あの・・・、でも、何で助けてくれたんですか?」
さくらはドラゴンに尋ねた。
「子供のためだ」
ドラゴンはそう答えた。さくらは首をかしげると
「あの子は温泉をすっかり気に入った。お前のことも気に入ったようだ。泣いていたお前を気にしていた」
そう溜息をついた。
「仕方なくお前を探していたら、悲鳴が聞こえた。だから助けた」
さくらは感動した。山ではすっかり見放されたと思ったのにそんなことはなかったのだ。やはりドラゴンだって善意は持っているのだとさくらは思った。
「もういいだろう」
ノアは話を遮り、さくらを横に抱きかかえるとサッと立ち上がった。あまりにも自然に自分を抱きかかえたノアにさくらは目を丸くした。
ノアは無言で踵を返し船に向かおうとしたが、思いとどまって、ドラゴンに振り向いた。
「俺からも礼を言う」
そう言い、イルハンと共に船に戻ろうとすると、ドラゴンがノアに声をかけた。
「おまえだけ残れ。話がある」
ノアはドラゴンに振り返ると、さくらをイルハンの腕に預けた。そして二人だけ先に船に戻らせた。
☆彡
「おまえ、魔術がかけられているな」
ノアと二人きりになると、ドラゴンは切り出した。ノアは頷いた。
「誰にかけられた?」
「自国の・・・ローランドの精霊山にいるドラゴンだ」
ノアが答えると、ドラゴンは呆れたように、
「それはとんでもない奴に術をかけられたな」
と呟いた。そして改めてノアを見据え、
「気付いていると思うが、術は半分以上解けているぞ。もう勝手にドラゴンに変化することはないだろう。だが気を付けろ。もし怒りなどで我を忘れた時、また体に残っている術が噴出し、再びドラゴンに変化するだろう。そうなったら、もはや朔の夜であろうとも、人の姿に戻れないと覚えておけ」
そう忠告すると、翼を広げ、一気に空へ舞い上がった。そして、挨拶のようにその場で一度旋回すると、飛び去って行った。
さくらは小舟から飛び立ったドラゴンにありがとうと叫び、姿が見えなくなるまで手を振っていた。
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