ドラゴン王の妃~異世界に王妃として召喚されてしまいました~

夢呼

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第二章

9.温泉効果

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 翌朝目を覚ますと、一番に隣で眠っているドラゴンの傷の状態を確認した。傷は一晩しか経っていないとは思えないほど良くなっていた。驚くほどの回復力だ。
 
 さくらはドラゴンを抱えると浴室に連れていった。手当てをしようとした時、微かにドアをノックする音が聞こえた。さくらは慌ててドラゴンを浴室に残し、ベッドにダイブした。もう一度扉をノックする音がすると、遠慮がちにアンナとカンナが入ってきた。
 二人はベッドに近寄ると、そっとさくらに声を掛けた。

「さくら様。朝でございます」

 さくらは、たった今、目を覚ました振りをして、気怠そうにおはようと挨拶をした。

「おはようございます。さくら様。よくお休みになられましたか?」

「はい。よく眠れました」

 さくらがにっこりと答えると、アンナ(もしくはカンナ)が朝の湯浴みを進めた。

「昨日、ご案内できなかったのですが、こちらが浴室とトイレでございます」

 そう言いながら、アンナだかかカンナだかが分からないが、片方が浴室の扉に近づいた。さくらはギョッとして、

「はい、知ってます!」

と大声で叫んだ。
侍女はそうですよねという顔をして、浴室の扉に手を掛けた。

「!!!」

 さくらはベッドから飛び出すと、彼女が扉を開けた瞬間、先に中に飛び込んだ。

「すぐ入りますんで!」

 そう言ってアンナ(もしくはカンナ)の前に立ちふさがった。

 彼女は驚いて一瞬固まったが、では支度をと言いかけると、さくらが目の前で服を脱ぎ始めた。あっという間に下着一枚の姿になったさくらに仰天して、

「失礼しました!」

慌てて浴室の扉を閉めた。

 ふーっと安堵した息を吐くと、さくらはドラゴンを探した。事態に気が付いていたのか、ドラゴンは隅の方に隠れるように小さくなっていた。
 さくらは静かに駆け寄ってドラゴンを抱きかかえようとしたその時、扉の向こうから侍女たちが声を掛けてきた。

「さくら様、お湯加減はいかがでございますか?」

(湯加減って・・・!)

 さくらは急いで浴槽に手を入れて温度を確かめた。

「はい! 問題ないです。調度いいです!」

と叫んだ。すると今度は、

「不自由はございませんか?お手伝いいたしましょうか?」

と言ってきた。

「大丈夫です! お構いなく! お気遣いありがとう!」

 さくらは再度叫んだ。
 自分のためを思って言っていること分かっているが、今のさくらはもう放っておいてほしかった。しかし、二人はまだ続ける。

「そのお湯ですが・・・」

(まだかよっ!!)

「そのお湯は、温泉でございます」

「温泉?! やっぱり?!」

 これにはさくらも食いついた。常に湯が流れ出ている状態からして、もしかしてと思っていたが本当に温泉だとは。なんて贅沢な!

「このお湯は、お城の裏山から湧き出ている温泉を引いております。怪我に良く効くと言われておりますので、お怪我したところも、しっかりと湯に浸かってください」

「わかりましたぁ!」

 なんて好都合な温泉だろう! 昨日この温泉のお湯で体を拭いたのは正解だったのだ。

 さくらは最後の一枚の下着を脱ぎ捨てると、ドラゴンを抱き上げようとした。すると、ドラゴンは慌ててさくらから逃れようとジタバタと暴れ始めた。目をぎゅっとつぶり、必死で首を横に振っている。

(傷に沁みて痛いから嫌だよね・・・)

 必死で抵抗するドラゴンを無理やり抱きしめた。そして昨日、額にキスをしたら大人しくなったことを思い出し、また優しく額に唇を押し当てた。途端にドラゴンはピタッと大人しくなった。

(よし!)

 さくらはドラゴンを抱いたまま、そっと浴槽に入った。自分の傷が湯に沁みる。思わず口元が歪み、ドラゴンを見た。ドラゴンも目をぎゅっと閉じたまま、歯を食いしばっている。相当沁みているようだ。

「痛いね・・・ごめんね。もう少し頑張ろうね」

 さくらは小声でドラゴンに話しかけた。ドラゴンは耳をピクッと動かし、目を開けて一瞬さくらを見たが、また慌てて目を閉じてしまった。

 暫く湯に浸かり体も十分に温まると、さくらは浴槽から上がった。そして清潔な手ぬぐいでドラゴンの体を丁寧に拭いた。その間ドラゴンは、薄目を開けたかと思うと、またぎゅっと瞑ることを繰り返し、まるで一生懸命さくらを見ないようにしているようだった。

 ドラゴンの体を拭き終えると、別の新しい手ぬぐいで体を包み、そっと床に寝かせ、やっと自分の体を拭き始めた。新しい下着とガウンだけが棚にあるのを見つけてそれを身に着けると、ドラゴンを残し、浴室から出た。

 浴室から出た途端、アンナとカンナは待っていました!とばかりにさくらに駆け寄り、急いで長椅子に座らせ、傷の手当てを始めた。湯浴みしている間に、朝食の準備もベッドメイクも終わっていた。
 二人には感謝しつつも、早く帰ってくれたらいいと思いながら、さくらは素直に手当てを受けていた。

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