18 / 98
第一章
17.出会い
しおりを挟む
鋭い目つき、口からはみ出した牙、指には鷲のような鋭く太い爪、頭には角が生え、全身は強固な鱗のような皮膚で覆われ、背中には大きな翼を携えている。そんな伝説の生き物がさくらの前に佇み、じっと様子を伺っていた。
さくらの方といえば、黒い影の正体がドラゴンと分かったからといって恐怖が薄れるわけではなかった。それどころか、返って恐怖心が倍増した。ドラゴンはじりじりとさくらに近寄ってくる。さくらは尻もちを付いた状態で、そのままどんどん後ずさりしていった。そして―――。
バシャンッ―――!
大きな水しぶきと共に、さくらはドラゴンの前から姿を消した。
池の中に沈んださくらは必死になってもがき、一度水面に顔が出た。しかしさくらは泳げない。またすぐに水の中に沈んでしまう。完全にパニックに陥って、口を開けてしまい、一瞬にして水が口の中に流れ込んだ。
すべてを諦めかけたその時、真上から何かがさくらの胴体をグッと掴み、そのまま上に引き上げた。池から出だかと思うと、ドサッと地面に放り投げだされた。その衝撃で、さくらは口から水を吐き出し、ゲホゲホと大きく咳き込んだ。
暫く息を整えるのに必死で、何が起こったのか忘れかけた。口からも鼻からも水が出るし、目も涙で霞んでよく見えない。
顔を上げると何かがじっとこちらの様子を伺っているのがぼんやりと見えた。視野が合ってくると、それがドラゴンだと分かり一瞬にして我に返った。ドラゴンと目が合うと再び恐怖で固まり動けなくなってしまった。
しかし、ドラゴンはふっと目をそらすと、どこかへ行ってしまった。それを見て、さくらは気が抜け、崩れるように横になった。
(死ぬかと思った・・・)
ホッとしたのもつかの間、今度は寒さでガタガタ震え始めた。池の水はとても冷たかったし、温かくなり始めたといえ、まだ六月だ。寒いに決まっている。早く帰って体を温めないと風を引いてしまうだろう。
そう思いながらも、まだ動けずに横になって震えていると、またもやズシンという地響きが聞こえた。さくらはゾッとし、寒さではない震えが増すのを感じた。
恐る恐る顔を上げると、すぐ目の前にドラゴンは立っていた。
(ひっ・・・!)
さくらは驚きと恐怖で息が止まりそうになり、目ギュッとを瞑った。そんなさくらの目の前に、何やらにバラバラと物を落とす音が聞こえ、それが地面から跳ね上がり、顔や体に当たった。しかし、さくらは恐ろしくて目を開けることができない。
地面に何かが落ちる音が止むと、今度はドラゴンが何処かに立ち去る足音が聞こえた。
(行ったかな・・・?)
さくらはゆっくり目を開け、ドラゴンがいなくなったことを確かめると、自分の体に当たったものを拾ってみた。それは枯れ枝だった。そして目の前には小さな枯れ枝の山ができていた。
不思議に思っていると、すぐにまたドラゴンが現われた。不器用に前足で枯れ枝の束を抱え、ゆっくりと近づいてくる。ドラゴンは怯えて硬直しているさくらを尻目に、持ってきた枯れ枝を、乱暴に放った。そして枯れ枝の山が一通り大きくなると、ドラゴンは大きく口を開けた。次の瞬間、口の奥の方からゴォーという鈍い音がしたかと思うと、オレンジの光がパッと弾け、熱風と共に飛び出した。
「ひぃぃっ・・・!」
さくらは悲鳴をあげ、後ろに仰け反った。
一瞬にして目の前には焚き火が出来上がり、パチパチと音を立てて勢いよく炎が揺れていた。
さくらは尻もちを付いた状態で、その揺らめく炎越しにじっとこちらを見下ろしているドラゴンを、ただただ呆然と見つめた。
さくらの方といえば、黒い影の正体がドラゴンと分かったからといって恐怖が薄れるわけではなかった。それどころか、返って恐怖心が倍増した。ドラゴンはじりじりとさくらに近寄ってくる。さくらは尻もちを付いた状態で、そのままどんどん後ずさりしていった。そして―――。
バシャンッ―――!
大きな水しぶきと共に、さくらはドラゴンの前から姿を消した。
池の中に沈んださくらは必死になってもがき、一度水面に顔が出た。しかしさくらは泳げない。またすぐに水の中に沈んでしまう。完全にパニックに陥って、口を開けてしまい、一瞬にして水が口の中に流れ込んだ。
すべてを諦めかけたその時、真上から何かがさくらの胴体をグッと掴み、そのまま上に引き上げた。池から出だかと思うと、ドサッと地面に放り投げだされた。その衝撃で、さくらは口から水を吐き出し、ゲホゲホと大きく咳き込んだ。
暫く息を整えるのに必死で、何が起こったのか忘れかけた。口からも鼻からも水が出るし、目も涙で霞んでよく見えない。
顔を上げると何かがじっとこちらの様子を伺っているのがぼんやりと見えた。視野が合ってくると、それがドラゴンだと分かり一瞬にして我に返った。ドラゴンと目が合うと再び恐怖で固まり動けなくなってしまった。
しかし、ドラゴンはふっと目をそらすと、どこかへ行ってしまった。それを見て、さくらは気が抜け、崩れるように横になった。
(死ぬかと思った・・・)
ホッとしたのもつかの間、今度は寒さでガタガタ震え始めた。池の水はとても冷たかったし、温かくなり始めたといえ、まだ六月だ。寒いに決まっている。早く帰って体を温めないと風を引いてしまうだろう。
そう思いながらも、まだ動けずに横になって震えていると、またもやズシンという地響きが聞こえた。さくらはゾッとし、寒さではない震えが増すのを感じた。
恐る恐る顔を上げると、すぐ目の前にドラゴンは立っていた。
(ひっ・・・!)
さくらは驚きと恐怖で息が止まりそうになり、目ギュッとを瞑った。そんなさくらの目の前に、何やらにバラバラと物を落とす音が聞こえ、それが地面から跳ね上がり、顔や体に当たった。しかし、さくらは恐ろしくて目を開けることができない。
地面に何かが落ちる音が止むと、今度はドラゴンが何処かに立ち去る足音が聞こえた。
(行ったかな・・・?)
さくらはゆっくり目を開け、ドラゴンがいなくなったことを確かめると、自分の体に当たったものを拾ってみた。それは枯れ枝だった。そして目の前には小さな枯れ枝の山ができていた。
不思議に思っていると、すぐにまたドラゴンが現われた。不器用に前足で枯れ枝の束を抱え、ゆっくりと近づいてくる。ドラゴンは怯えて硬直しているさくらを尻目に、持ってきた枯れ枝を、乱暴に放った。そして枯れ枝の山が一通り大きくなると、ドラゴンは大きく口を開けた。次の瞬間、口の奥の方からゴォーという鈍い音がしたかと思うと、オレンジの光がパッと弾け、熱風と共に飛び出した。
「ひぃぃっ・・・!」
さくらは悲鳴をあげ、後ろに仰け反った。
一瞬にして目の前には焚き火が出来上がり、パチパチと音を立てて勢いよく炎が揺れていた。
さくらは尻もちを付いた状態で、その揺らめく炎越しにじっとこちらを見下ろしているドラゴンを、ただただ呆然と見つめた。
11
お気に入りに追加
40
あなたにおすすめの小説
猫に転生したらご主人様に溺愛されるようになりました
あべ鈴峰
恋愛
気がつけば 異世界転生。
どんな風に生まれ変わったのかと期待したのに なぜか猫に転生。 人間でなかったのは残念だが、それでも構わないと気持ちを切り替えて猫ライフを満喫しようとした。しかし、転生先は森の中、食べ物も満足に食べてず、寂しさと飢えでなげやりに なって居るところに 物音が。
元天才貴族、今やリモートで最強冒険者!
しらかめこう
ファンタジー
魔法技術が発展した異世界。
そんな世界にあるシャルトルーズ王国という国に冒険者ギルドがあった。
強者ぞろいの冒険者が数多く所属するそのギルドで現在唯一、最高ランクであるSSランクに到達している冒険者がいた。
───彼の名は「オルタナ」
漆黒のコートに仮面をつけた謎多き冒険者である。彼の素顔を見た者は誰もおらず、どういった人物なのかも知る者は少ない。
だがしかし彼は誰もが認める圧倒的な力を有しており、冒険者になって僅か4年で勇者や英雄レベルのSSランクに到達していた。
そんな彼だが、実は・・・
『前世の知識を持っている元貴族だった?!」
とある事情で貴族の地位を失い、母親とともに命を狙われることとなった彼。そんな彼は生活費と魔法の研究開発資金を稼ぐため冒険者をしようとするが、自分の正体が周囲に知られてはいけないので自身で開発した特殊な遠隔操作が出来るゴーレムを使って自宅からリモートで冒険者をすることに!
そんな最強リモート冒険者が行く、異世界でのリモート冒険物語!!
毎日20時30分更新予定です!!
大和型戦艦、異世界に転移する。
焼飯学生
ファンタジー
第二次世界大戦が起きなかった世界。大日本帝国は仮想敵国を定め、軍事力を中心に強化を行っていた。ある日、大日本帝国海軍は、大和型戦艦四隻による大規模な演習と言う名目で、太平洋沖合にて、演習を行うことに決定。大和、武蔵、信濃、紀伊の四隻は、横須賀海軍基地で補給したのち出港。しかし、移動の途中で濃霧が発生し、レーダーやソナーが使えなくなり、更に信濃と紀伊とは通信が途絶してしまう。孤立した大和と武蔵は濃霧を突き進み、太平洋にはないはずの、未知の島に辿り着いた。
※ この作品は私が書きたいと思い、書き進めている作品です。文章がおかしかったり、不明瞭な点、あるいは不快な思いをさせてしまう可能性がございます。できる限りそのような事態が起こらないよう気をつけていますが、何卒ご了承賜りますよう、お願い申し上げます。
異世界から来た娘が、たまらなく可愛いのだが(同感)〜こっちにきてから何故かイケメンに囲まれています〜
京
恋愛
普通の女子高生、朱璃はいつのまにか異世界に迷い込んでいた。
右も左もわからない状態で偶然出会った青年にしがみついた結果、なんとかお世話になることになる。一宿一飯の恩義を返そうと懸命に生きているうちに、国の一大事に巻き込まれたり巻き込んだり。気付くと個性豊かなイケメンたちに大切に大切にされていた。
そんな乙女ゲームのようなお話。
異世界で王城生活~陛下の隣で~
遥
恋愛
女子大生の友梨香はキャンピングカーで一人旅の途中にトラックと衝突して、谷底へ転落し死亡した。けれど、気が付けば異世界に車ごと飛ばされ王城に落ちていた。神様の計らいでキャンピングカーの内部は電気も食料も永久に賄えるられる事になった。
グランティア王国の人達は異世界人の友梨香を客人として迎え入れてくれて。なぜか保護者となった国陛下シリウスはやたらと構ってくる。一度死んだ命だもん、これからは楽しく生きさせて頂きます!
※キャンピングカー、魔石効果などなどご都合主義です。
※のんびり更新。他サイトにも投稿しております。
破滅ルートを全力で回避したら、攻略対象に溺愛されました
平山和人
恋愛
転生したと気付いた時から、乙女ゲームの世界で破滅ルートを回避するために、攻略対象者との接点を全力で避けていた。
王太子の求婚を全力で辞退し、宰相の息子の売り込みを全力で拒否し、騎士団長の威圧を全力で受け流し、攻略対象に顔さえ見せず、隣国に留学した。
ヒロインと王太子が婚約したと聞いた私はすぐさま帰国し、隠居生活を送ろうと心に決めていた。
しかし、そんな私に転生者だったヒロインが接触してくる。逆ハールートを送るためには私が悪役令嬢である必要があるらしい。
ヒロインはあの手この手で私を陥れようとしてくるが、私はそのたびに回避し続ける。私は無事平穏な生活を送れるのだろうか?
魔力無し転生者の最強異世界物語 ~なぜ、こうなる!!~
月見酒
ファンタジー
俺の名前は鬼瓦仁(おにがわらじん)。どこにでもある普通の家庭で育ち、漫画、アニメ、ゲームが大好きな会社員。今年で32歳の俺は交通事故で死んだ。
そして気がつくと白い空間に居た。そこで創造の女神と名乗る女を怒らせてしまうが、どうにか幾つかのスキルを貰う事に成功した。
しかし転生した場所は高原でも野原でも森の中でもなく、なにも無い荒野のど真ん中に異世界転生していた。
「ここはどこだよ!」
夢であった異世界転生。無双してハーレム作って大富豪になって一生遊んで暮らせる!って思っていたのに荒野にとばされる始末。
あげくにステータスを見ると魔力は皆無。
仕方なくアイテムボックスを探ると入っていたのは何故か石ころだけ。
「え、なに、俺の所持品石ころだけなの? てか、なんで石ころ?」
それどころか、創造の女神ののせいで武器すら持てない始末。もうこれ詰んでね?最初からゲームオーバーじゃね?
それから五年後。
どうにか化物たちが群雄割拠する無人島から脱出することに成功した俺だったが、空腹で倒れてしまったところを一人の少女に助けてもらう。
魔力無し、チート能力無し、武器も使えない、だけど最強!!!
見た目は青年、中身はおっさんの自由気ままな物語が今、始まる!
「いや、俺はあの最低女神に直で文句を言いたいだけなんだが……」
================================
月見酒です。
正直、タイトルがこれだ!ってのが思い付きません。なにか良いのがあれば感想に下さい。
神に異世界へ転生させられたので……自由に生きていく
霜月 祈叶 (霜月藍)
ファンタジー
小説漫画アニメではお馴染みの神の失敗で死んだ。
だから異世界で自由に生きていこうと決めた鈴村茉莉。
どう足掻いても異世界のせいかテンプレ発生。ゴブリン、オーク……盗賊。
でも目立ちたくない。目指せフリーダムライフ!
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる