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60.帰還

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リード伯爵はランドルフ領の自衛団によって、王都に護送された。

リード伯を拘束する少し前、彼によって作られた武器密輸組織は速やかに解体された。

祖父の言っていた通り、小さな組織で田舎の片隅にアジトを構えており、そこに武器や弾薬が隠されていた。
夜中に、ランドルフ領の自衛団ではない、我が家が私的に雇った敏腕傭兵達と共にアジトに忍び込んだ。証人として出来るだけ生け捕りにするつもりだったが、残念ながら、その場でほぼ全員片付けてしまい、生き残ったのは詳しいことは何も知らない下っ端が二人。

結果、証拠は武器だけ。置いてあった全ての武器を押収し、こちらも王都に護送した。

もちろん、武器はある程度流れていることは想像できる。
リード伯爵領の屋敷にも王都の彼の屋敷にも保管されているだろう。
それは後々押収することになる。

どうせ、彼の処刑は免れない。
彼は公爵令息の殺人未遂事件を起こしたのだ。爵位剥奪はもちろんの事、終身刑になる可能性が高く、家は王室預かりとなり、資産は全て没収されるからだ。

それでも武器密輸の罪よりは軽いのだ。
この罪は公にはされることは無い。しかし、表向きの罪状より、真の罪状で裁かれることはいずれ本人も分かることだろう。

それにしても、アジトの襲撃を祖父に任せなくて良かった。
彼はアジトごと弾薬でぶっ飛ばし、派手に潰そうとしていたようだ。
そんなことしたら大騒ぎな上に、証拠の武器も消えてしまうじゃないか!
本当に困った爺さんだ。





結局、僕が王都にある邸に帰って来るまで、一ヶ月近く掛かってしまった。
偽の賭博場の準備に時間を要してしまったのが痛かったな。

家に帰り、母親からの熱烈な歓迎を受けた後、自室に入るとベッドにダイブした。

「疲れた~。あ~、早くクラウディアに会いたい~」

「早速、明日学院でお会いできるではないですか。あ、明日は日曜日でしたね。学院は休みで会えませんね」

荷物を運んできたジョセフがシレっと残酷なことを言う。

「月曜日でも会えるか分からないよ・・・。明日、今回の事件の真相を事細かに宰相に説明するように言われてるし。きっと、その後のリード伯の事情聴取についても同席を求められるだろうし・・・。一週間で解放されるかどうか・・・」

僕は枕に顔を埋めた。

「クラウディア様はこの一ヶ月、お元気に過ごされていましたよ」

「そう、元気なら良かった」

「はい。普通に元気いっぱいでした。カイル様がいらっしゃらなくても」

・・・。
ちょっと引っかかるのは気のせいかな?

「私も、毎日の送り迎えの馬車でのおしゃべりはとても楽しかったですよ。ははは。確かにクラウディア様は以前よりもずっと美しくなられましたね!」

・・・。
なんか軽く殺意が沸いてるんだけど、これも気のせいかな?

「でも、ご安心ください。クラウディア様に特別な好意を持って近寄るような男子生徒はおりませんでしたよ。これは影からも報告を受けております」

「そう・・・」

「流石に婚約者がいる令嬢に言い寄る男はいないでしょう。ましてやお相手がカイル様なのに」

「まあね・・・」

「それに、いくら美しく成長したからと言って、横恋慕したいほど綺麗かと言うと、それはまた別問題で・・・」

「ジョセフ・・・、それ以上言うとお前の口を縫うよ・・・」

「あ! いや! その、クラウディア様はお美しくなられましたけど、カイル様の心配には及びませんと申し上げているんです! はい!」

あのね、全然上手くないから。その言い訳。

「それに、馬車でのおしゃべりの内容はほとんどカイル様の事ばかりでしたよ! あそこまでカイル様に夢中の姿を見せられて近寄る男などいるわけないでしょう!?」

・・・。
なら、いいか・・・。


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