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31.対策
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あれからクラウディアとヒロイン―――セシリアについて話し合った。
恐らく彼女はディアの言う転生者と言うものに間違いないだろう。
そして、彼女は僕らによって歪んでしまったこの物語のシナリオを必死に元に戻そうと足掻いているようだ。
それなら、彼女が執拗に僕に執着するのも頷けるし、自分に恋をすると知っているから、あれだけ馴れ馴れしくしても嫌われるはずがないと信じて疑っていないのだろう。全く迷惑な話だ。何で入学を許したんだろう、僕のアホ・・・。
「ディア。今、彼女は無理やり軌道修正を試みている最中だ。僕がいつまで経っても親しくならないから、自ら生徒会に乗り込んできたように、これからも力業で物語通りに事を運ぼうと頑張るだろう」
帰りの馬車の中で、クラウディアはコクコクと真剣な表情で頷く。
「いい? ディアは極力彼女と接点を持たないように。親しくなったら駄目だよ。それと、この先何か目ぼしい出来事ってあるかな? ヒロインと僕がより親しくなるような。多分、彼女はそこを突いて来ると思うんだ」
うーんと、クラウディアは首を捻って考える。
少しすると彼女はポンと手を叩いた。
「そうだわ、もうすぐ一年生全員で登山する行事がありますわね? その時、転んで足を捻ったヒロインをカイル様が背負って頂上まで登りますわ」
・・・。
救護小屋に連れて行くとかじゃないの? せめて下山でしょ、そこ。なぜ登る?
もはや罰ゲームだよね、それ。
「『君にも頂上からの景色を見せてあげたい』とかおっしゃって・・・」
・・・僕が言うの? そんなセリフ?
「それから、学院際の時は・・・夜の舞踏会でファーストダンスをヒロインと踊りますわ・・・」
はあ? ファーストダンスを?
ファーストダンスは婚約者がいるものは婚約者と踊るのが一般常識だ! そんなこと子供でも知っている! それをセシリアと?!
「これはクラウディアが・・・、私が悪いのです。不安と嫉妬からカイル様を試すような真似をしてしまって・・・。カイル様はちゃんと私を誘ってくれるのですが、私は一度振ってしまうのです。もう一度誘ってくれることを期待して・・・。でも・・・カイル様はセシリア様を誘ってしまうのです・・・。」
うわぁ、僕って何やってんの?
「後は、学院の男子生徒全員参加の武道大会」
まだある?
「剣術の試合に出るカイル様にヒロインが祝福のハンカチをこっそり渡すのです。でも、私はそれを偶然見てしまって。嫉妬から、そのハンカチを・・・、誰も見てない隙を狙ってメッタメタに切り刻んでしまうの・・・」
・・・まず、祝福のハンカチを受け取る時点でアウトだよね。
だって、それは婚約者や恋人から貰うものだから。
「そして、私はそっと自分のハンカチをカイル様のポケットに忍ばせるのです」
「そこは、ディアは僕に手渡してくれないんだ・・・?」
「いいえ、渡しましたわ。でも身に付けてくれなかったの・・・。そこら辺にポイって捨て置いてあって・・・」
最低! 最低だよ! 僕!
「結局、カイル様が優勝するのですが・・・、最後の試合が終わって、カイル様はみんなが見ている前でハンカチを取出し、顔を拭います。その時にヒロインは自分が渡したハンカチではないことにショックを受けて、逆にクラウディア・・・私は周りの人にあれは自分の私はハンカチだと吹聴し、ほくそ笑むのです・・・」
クラウディアは顔を覆った。
「本当に最低なんです! 物語の私って! これじゃ、カイル様に嫌われて当然だわ!」
いやいやいや、最低なのは僕じゃないの? それって・・・。
ディアは単純に二人の仲を嫉妬して悪役令嬢になるって言っていたけど、そんな軽いものじゃないよね、これって。僕自身が焚き付けているじゃないか。100%僕のせいじゃないのか?
「・・・いい? ディア」
僕はクラウディアの顔を覆っている手をそっと取ると、顔から離した。
涙をにじませて、不安そうにしている顔が覗く。
「現実の僕は、君の物語の僕のように愚か者でないことを証明して見せるから!」
「愚か者だなんて・・・! カイル様が愚か者だなんて! そんなこと!」
クラウディアは全力で否定してくれる。
ううん。どう考えても物語の僕は愚かでしょ。こんなに愚かじゃ、ランドルフ家の子息としても務まらないよ。
「とにかく、彼女に近寄っちゃいけないよ。僕もなるべく接点は持たないように気を付けるから」
僕はコクンと頷くクラウディアの頭を撫でた。
物語の僕の愚劣ぶりは聞くに堪えなかったが、ここは貴重な情報としてしっかり覚えておこう。おそらく彼女もこの行事の成り行きは知っているはずだ。
でも、これらの行事のポイントは、既に親しく無ければ起こりえない出来事だということ。
だからこそ、それまでに今までより増して、あの手この手で僕に近づこうとするだろう。
さらに、クラウディアとの仲を裂こうとして、彼女の悪い噂を流す可能性もある。
既にこれは前科があるからね。ポイ捨て男を使って。なので可能性はかなり高い。
しっかりと注視しないと。
ロワール男爵家の周辺も改めて洗い出すか。
恐らく彼女はディアの言う転生者と言うものに間違いないだろう。
そして、彼女は僕らによって歪んでしまったこの物語のシナリオを必死に元に戻そうと足掻いているようだ。
それなら、彼女が執拗に僕に執着するのも頷けるし、自分に恋をすると知っているから、あれだけ馴れ馴れしくしても嫌われるはずがないと信じて疑っていないのだろう。全く迷惑な話だ。何で入学を許したんだろう、僕のアホ・・・。
「ディア。今、彼女は無理やり軌道修正を試みている最中だ。僕がいつまで経っても親しくならないから、自ら生徒会に乗り込んできたように、これからも力業で物語通りに事を運ぼうと頑張るだろう」
帰りの馬車の中で、クラウディアはコクコクと真剣な表情で頷く。
「いい? ディアは極力彼女と接点を持たないように。親しくなったら駄目だよ。それと、この先何か目ぼしい出来事ってあるかな? ヒロインと僕がより親しくなるような。多分、彼女はそこを突いて来ると思うんだ」
うーんと、クラウディアは首を捻って考える。
少しすると彼女はポンと手を叩いた。
「そうだわ、もうすぐ一年生全員で登山する行事がありますわね? その時、転んで足を捻ったヒロインをカイル様が背負って頂上まで登りますわ」
・・・。
救護小屋に連れて行くとかじゃないの? せめて下山でしょ、そこ。なぜ登る?
もはや罰ゲームだよね、それ。
「『君にも頂上からの景色を見せてあげたい』とかおっしゃって・・・」
・・・僕が言うの? そんなセリフ?
「それから、学院際の時は・・・夜の舞踏会でファーストダンスをヒロインと踊りますわ・・・」
はあ? ファーストダンスを?
ファーストダンスは婚約者がいるものは婚約者と踊るのが一般常識だ! そんなこと子供でも知っている! それをセシリアと?!
「これはクラウディアが・・・、私が悪いのです。不安と嫉妬からカイル様を試すような真似をしてしまって・・・。カイル様はちゃんと私を誘ってくれるのですが、私は一度振ってしまうのです。もう一度誘ってくれることを期待して・・・。でも・・・カイル様はセシリア様を誘ってしまうのです・・・。」
うわぁ、僕って何やってんの?
「後は、学院の男子生徒全員参加の武道大会」
まだある?
「剣術の試合に出るカイル様にヒロインが祝福のハンカチをこっそり渡すのです。でも、私はそれを偶然見てしまって。嫉妬から、そのハンカチを・・・、誰も見てない隙を狙ってメッタメタに切り刻んでしまうの・・・」
・・・まず、祝福のハンカチを受け取る時点でアウトだよね。
だって、それは婚約者や恋人から貰うものだから。
「そして、私はそっと自分のハンカチをカイル様のポケットに忍ばせるのです」
「そこは、ディアは僕に手渡してくれないんだ・・・?」
「いいえ、渡しましたわ。でも身に付けてくれなかったの・・・。そこら辺にポイって捨て置いてあって・・・」
最低! 最低だよ! 僕!
「結局、カイル様が優勝するのですが・・・、最後の試合が終わって、カイル様はみんなが見ている前でハンカチを取出し、顔を拭います。その時にヒロインは自分が渡したハンカチではないことにショックを受けて、逆にクラウディア・・・私は周りの人にあれは自分の私はハンカチだと吹聴し、ほくそ笑むのです・・・」
クラウディアは顔を覆った。
「本当に最低なんです! 物語の私って! これじゃ、カイル様に嫌われて当然だわ!」
いやいやいや、最低なのは僕じゃないの? それって・・・。
ディアは単純に二人の仲を嫉妬して悪役令嬢になるって言っていたけど、そんな軽いものじゃないよね、これって。僕自身が焚き付けているじゃないか。100%僕のせいじゃないのか?
「・・・いい? ディア」
僕はクラウディアの顔を覆っている手をそっと取ると、顔から離した。
涙をにじませて、不安そうにしている顔が覗く。
「現実の僕は、君の物語の僕のように愚か者でないことを証明して見せるから!」
「愚か者だなんて・・・! カイル様が愚か者だなんて! そんなこと!」
クラウディアは全力で否定してくれる。
ううん。どう考えても物語の僕は愚かでしょ。こんなに愚かじゃ、ランドルフ家の子息としても務まらないよ。
「とにかく、彼女に近寄っちゃいけないよ。僕もなるべく接点は持たないように気を付けるから」
僕はコクンと頷くクラウディアの頭を撫でた。
物語の僕の愚劣ぶりは聞くに堪えなかったが、ここは貴重な情報としてしっかり覚えておこう。おそらく彼女もこの行事の成り行きは知っているはずだ。
でも、これらの行事のポイントは、既に親しく無ければ起こりえない出来事だということ。
だからこそ、それまでに今までより増して、あの手この手で僕に近づこうとするだろう。
さらに、クラウディアとの仲を裂こうとして、彼女の悪い噂を流す可能性もある。
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