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33.挑戦
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「ちょっといいかしら? マイク?」
私は執事室のマイクの部屋へ赴き、ノックをすると中に声を掛けた。
「奥様?!」
中から驚いた声がしたと思ったら、すぐに扉が開かれた。
「どうされましたか、こんなところまで?! お呼び下さればお部屋まで伺いましたのに!」
それもそうね。なんか考え事して歩いていたら、ここまで来ちゃった。
「ここで話をしてもいいかしら? お仕事のお邪魔をして申し訳ないけど」
「邪魔なんてとんでもございません。どうぞ、中へ」
マイクは恭しく部屋へ招き入れてくれた。
差し出された椅子に座ると、マイクにも向かいの椅子に座るように勧めた。
「あのね、マイク。この状況って絶対良くないわよね?」
「はあ、どのような状況のことでございますか? 家計のことでございましたら・・・」
「違う! 旦那様の状況よ! 呪いのこと!」
「あ! はい。それはもちろんでございます」
しっかりしてると思っていたけど、意外とボケてんな、この爺さん。
昨日の今日で、それ以外の何を相談すると思ってんのよ?
「ねえ、マイク。この呪いを消す方法ってないのかしら?」
「・・・」
マイクは目を丸めて固まった。
「今のところ月の満ち欠けを目安に呪いを避けているけれど、それだと根本的な解決にはならないでしょう?」
「そうですが・・・」
「それだと結局ずーっと『呪い』と共存するわけよね?」
「はい・・・」
「それって、かなり・・・、なかなか厳しいと思わない? だって月の半分は旦那様は苦しい思いをするのよ? 私が近くに居るだけで吸血したい欲求に苛まれるのだわ」
「はい。その通りでございます」
私は腕を組んでうーんと首を捻った。
「このままだと、別邸を用意して半月は旦那様と別居生活をせざるを得なくなってしまうかも・・・」
「そ、それは旦那様が許可されないかと・・・。いや・・・、むしろ奥様のことを考えてそうなさるかもしれません。それこそ身を切るような思いで勝手に決断されてしまうのでは・・・」
有りうるわ~。
二人してうーんと首を捻る。
「それにしても、そもそも『呪い』ありきで事を進めるのはどうなのかしら? 根本を断った方がいいに決まっているわよね?」
「お言葉でございますが、奥様・・・」
マイクは眉間に手をやりながら少し俯き加減で、
「言うは易し・・・。おっしゃることは簡単でございます。根本を断った方が良いのは当然のこと。それが出来たらとうの昔に成されているでしょう」
ちょっと呆れ気味に言葉を挟んだ。
ええ、ええ、分かってるわよ、そう言うと思いました。
四代も前からの呪いなのだ。先代たちはきっと必死にこの呪いの解決に挑んでいたに違いない。
そうよ、だから・・・。
「私も挑むのよ!」
「はい?」
「この呪いを解くことに人生を掛けてやるっ!!」
私は拳を握りしめ、グッと突き上げた。
「私はね、マイク。この(第二の)人生を謳歌すると、順風満帆に生きると決めているの! 恋に愛に生きるの! 絶対に親孝行をするの! それにはこんな『呪い』なんてものに邪魔されるわけにはいかないのよ!」
そうだ! 短かった前世の人生! その分を今生で生きるのだから!
アーサーと一緒に恋に愛に生きるのだ! 誰にも邪魔させるものか!
「それにね、いつか生まれる私たちの子供に、我が家の伝統よろしく『呪い』を伝えるわけにはいかないわ!」
そうよ! 愛しい我が子にこんな呪いを残すなんて有り得ない!!
こんな呪いなんざ、捻り潰してくれるわ!
私は勢いよく立ち上がった。それを目を丸めてマイクは見つめている。
「マイク、協力してちょうだい! 呪いを潰すの!」
「ど、どうやって・・・?」
「そんなの、これから探すのよ! まずは元凶の地に行くわ!」
「元凶の地?」
「ええ! レイモンド侯爵領! レイモンド侯爵家! 何かヒントがあるかも!」
私は執事室のマイクの部屋へ赴き、ノックをすると中に声を掛けた。
「奥様?!」
中から驚いた声がしたと思ったら、すぐに扉が開かれた。
「どうされましたか、こんなところまで?! お呼び下さればお部屋まで伺いましたのに!」
それもそうね。なんか考え事して歩いていたら、ここまで来ちゃった。
「ここで話をしてもいいかしら? お仕事のお邪魔をして申し訳ないけど」
「邪魔なんてとんでもございません。どうぞ、中へ」
マイクは恭しく部屋へ招き入れてくれた。
差し出された椅子に座ると、マイクにも向かいの椅子に座るように勧めた。
「あのね、マイク。この状況って絶対良くないわよね?」
「はあ、どのような状況のことでございますか? 家計のことでございましたら・・・」
「違う! 旦那様の状況よ! 呪いのこと!」
「あ! はい。それはもちろんでございます」
しっかりしてると思っていたけど、意外とボケてんな、この爺さん。
昨日の今日で、それ以外の何を相談すると思ってんのよ?
「ねえ、マイク。この呪いを消す方法ってないのかしら?」
「・・・」
マイクは目を丸めて固まった。
「今のところ月の満ち欠けを目安に呪いを避けているけれど、それだと根本的な解決にはならないでしょう?」
「そうですが・・・」
「それだと結局ずーっと『呪い』と共存するわけよね?」
「はい・・・」
「それって、かなり・・・、なかなか厳しいと思わない? だって月の半分は旦那様は苦しい思いをするのよ? 私が近くに居るだけで吸血したい欲求に苛まれるのだわ」
「はい。その通りでございます」
私は腕を組んでうーんと首を捻った。
「このままだと、別邸を用意して半月は旦那様と別居生活をせざるを得なくなってしまうかも・・・」
「そ、それは旦那様が許可されないかと・・・。いや・・・、むしろ奥様のことを考えてそうなさるかもしれません。それこそ身を切るような思いで勝手に決断されてしまうのでは・・・」
有りうるわ~。
二人してうーんと首を捻る。
「それにしても、そもそも『呪い』ありきで事を進めるのはどうなのかしら? 根本を断った方がいいに決まっているわよね?」
「お言葉でございますが、奥様・・・」
マイクは眉間に手をやりながら少し俯き加減で、
「言うは易し・・・。おっしゃることは簡単でございます。根本を断った方が良いのは当然のこと。それが出来たらとうの昔に成されているでしょう」
ちょっと呆れ気味に言葉を挟んだ。
ええ、ええ、分かってるわよ、そう言うと思いました。
四代も前からの呪いなのだ。先代たちはきっと必死にこの呪いの解決に挑んでいたに違いない。
そうよ、だから・・・。
「私も挑むのよ!」
「はい?」
「この呪いを解くことに人生を掛けてやるっ!!」
私は拳を握りしめ、グッと突き上げた。
「私はね、マイク。この(第二の)人生を謳歌すると、順風満帆に生きると決めているの! 恋に愛に生きるの! 絶対に親孝行をするの! それにはこんな『呪い』なんてものに邪魔されるわけにはいかないのよ!」
そうだ! 短かった前世の人生! その分を今生で生きるのだから!
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そうよ! 愛しい我が子にこんな呪いを残すなんて有り得ない!!
こんな呪いなんざ、捻り潰してくれるわ!
私は勢いよく立ち上がった。それを目を丸めてマイクは見つめている。
「マイク、協力してちょうだい! 呪いを潰すの!」
「ど、どうやって・・・?」
「そんなの、これから探すのよ! まずは元凶の地に行くわ!」
「元凶の地?」
「ええ! レイモンド侯爵領! レイモンド侯爵家! 何かヒントがあるかも!」
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