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26.口づけと・・・
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熱い瞳に捉えられて、私の鼓動が一気に早くなった。
吸い寄せられるように彼の瞳に見入る。
お互い無言で見つめ合っていたが、アーサーが我に返ったようにハッと小さく息をして目を逸らした。
「い、いや・・・、その、今は昼間だし、その上、新月で・・・、理性の方が勝っているから、その、耐えられるのではと・・・」
顔を逸らして慌てていい訳を始めた。
湯気が出そうなほど顔を真っ赤にしている。
「いや・・・、すまない。聞き流してくれ・・・」
片手で顔を覆うと、私から離れようとした。私は逃げようとする彼の腕をしっかりと捕まえた。
驚いたようにこちらを振り向いたアーサーに手を伸ばして両頬を包んだ。そして、そのままそっと引き寄せ、唇を合わせた。
目を開けてアーサーを見ると、彼は両目をまん丸に開いたまま固まっていた。
私はにっこりと微笑むと、もう一度そっと口づけをした。
二度目のキスでやっと我に返ったアーサーは、グイっと私を引き寄せると、奪うように口づけてきた。
わずかの隙間も許さないように強く押し付けてくる口づけから私への募る思いが伝わり、胸も瞳も熱くなる。
さらに今までの想いをぶつけるように、口づけがどんどん深くなっていく。口内に彼の吐息と熱を感じ、それに必死に応えているうちに自分の体の奥がじりじりと熱くなってきた。
そんな私の熱を感じ取ったかのように、腰に添えていたはずのアーサーの手が撫でるように私の体を伝い、大きな手のひらが私の胸を包んだ。
優しい刺激に思わず吐息が漏れる。それに煽られるようにアーサーの口づけは激しくなり、胸を触る力も強くなる。
「ん、あ・・・ん・・・、ちょ・・・、ちょっと、まって・・・」
快楽に流されそうになる自分に鞭を打って、アーサーの胸を押し返した。
流石に外じゃ・・・。
「!!」
アーサーはバッと私を放すと、腕で口元を押さえ、数歩さがった。
「す、すまない・・・っ!」
「違うんです! 違うんです! 嫌なわけではないんです!」
私は慌てて、顔に熱は孕んだまま申し訳なさそうに顔を伏せているアーサーに近づくと、手を取った。
「ここは外ですので・・・、その・・・もし誰かが来たら・・・」
「すまなかった、歯止めが効かず・・・! もう戻ろう。ローゼ」
アーサーは必死に私を見ないようにしている。
「お仕事に? 嫌ですわ、まだ二人きりでいたいです!」
「っ!」
アーサーは目を丸めてこちらを見た。そして困った顔して、
「これ以上は・・・、私の忍耐が・・・」
そう呟くが、私はそれを無視するように、彼の両手を私の腰へ添えさせ、自分の両手を彼の首に回した。
「!!!」
アーサーはさらに驚愕したように私を見ている。
私はにっこりと彼に微笑んだ。
「私の血への欲求はありました? 吸いたいと思いましたか?」
彼は小さく頷いた。
「でも、大丈夫でしたわね?」
「・・・別の欲求の方が強かったから・・・」
「そちらの欲求は我慢する必要はありませんのよ?」
「でも・・・」
困惑気味に私を見る。私に拒否されたことの意味が分かっていないらしい。
「場所を移せばいいでしょう? 人目のない場所に・・・二人きりになれる場所に」
「な・・・っ」
見る見る真っ赤になるアーサー。
「はしたない女って呆れていらっしゃる? でも今だと思うのです。だって、好条件がそろっているではないですか? 今日は新月でしょう? そして昼間は血への欲求は夜よりずっと弱い」
「そうだが・・・」
「情事が夜のものって誰が決めたのですか?」
「!!」
「今、私を抱かなかったら、いつまで経っても私を抱けませんわよ、きっと」
「~~~っ」
アーサーは耐えられないとばかりに私の肩に顔を埋めた。
「貴女って人は・・・」
「ふふ、呆れてますね?」
私はそっとアーサーの頭を撫でた。
アーサーは私の腰に添えていた手を背中に回し、ギュッと私を抱きしめた。
「貴女が欲しい。喉から手が出るほど。でも、不安が拭えない。この香りが甘過ぎて・・・。我を忘れてしまいそうで」
「では、もし貴方が私の血を吸いそうになったら、そうですわね。思いっきり突き飛ばして差し上げますわ、今度は私が」
アーサーはバッと顔を上げた。
「あ、あれは! あの時は本当にすまなかった! あの夜は・・・」
「満月でしたわね。今なら理解できます」
真っ赤な顔から一転して真っ青になっているアーサーに私は吹き出しそうになるのを抑えて、彼の鼻先にチュッとキスをした。途端に真っ赤に戻る。
アーサーは、はあ~~~と長い溜息を付くと、再び私の肩に顔を埋めた。
「貴女には格好悪い姿ばかり見られているな・・・」
ボソボソと呟くアーサーの頭をよしよしと撫でる。
だが、次の瞬間、フワリと体が浮いた。横抱きに抱き上げられたのだ。
「このまま貴女を攫っていいだろうか?」
私はもちろんという返事の代わりに彼の唇にキスを落とした。
吸い寄せられるように彼の瞳に見入る。
お互い無言で見つめ合っていたが、アーサーが我に返ったようにハッと小さく息をして目を逸らした。
「い、いや・・・、その、今は昼間だし、その上、新月で・・・、理性の方が勝っているから、その、耐えられるのではと・・・」
顔を逸らして慌てていい訳を始めた。
湯気が出そうなほど顔を真っ赤にしている。
「いや・・・、すまない。聞き流してくれ・・・」
片手で顔を覆うと、私から離れようとした。私は逃げようとする彼の腕をしっかりと捕まえた。
驚いたようにこちらを振り向いたアーサーに手を伸ばして両頬を包んだ。そして、そのままそっと引き寄せ、唇を合わせた。
目を開けてアーサーを見ると、彼は両目をまん丸に開いたまま固まっていた。
私はにっこりと微笑むと、もう一度そっと口づけをした。
二度目のキスでやっと我に返ったアーサーは、グイっと私を引き寄せると、奪うように口づけてきた。
わずかの隙間も許さないように強く押し付けてくる口づけから私への募る思いが伝わり、胸も瞳も熱くなる。
さらに今までの想いをぶつけるように、口づけがどんどん深くなっていく。口内に彼の吐息と熱を感じ、それに必死に応えているうちに自分の体の奥がじりじりと熱くなってきた。
そんな私の熱を感じ取ったかのように、腰に添えていたはずのアーサーの手が撫でるように私の体を伝い、大きな手のひらが私の胸を包んだ。
優しい刺激に思わず吐息が漏れる。それに煽られるようにアーサーの口づけは激しくなり、胸を触る力も強くなる。
「ん、あ・・・ん・・・、ちょ・・・、ちょっと、まって・・・」
快楽に流されそうになる自分に鞭を打って、アーサーの胸を押し返した。
流石に外じゃ・・・。
「!!」
アーサーはバッと私を放すと、腕で口元を押さえ、数歩さがった。
「す、すまない・・・っ!」
「違うんです! 違うんです! 嫌なわけではないんです!」
私は慌てて、顔に熱は孕んだまま申し訳なさそうに顔を伏せているアーサーに近づくと、手を取った。
「ここは外ですので・・・、その・・・もし誰かが来たら・・・」
「すまなかった、歯止めが効かず・・・! もう戻ろう。ローゼ」
アーサーは必死に私を見ないようにしている。
「お仕事に? 嫌ですわ、まだ二人きりでいたいです!」
「っ!」
アーサーは目を丸めてこちらを見た。そして困った顔して、
「これ以上は・・・、私の忍耐が・・・」
そう呟くが、私はそれを無視するように、彼の両手を私の腰へ添えさせ、自分の両手を彼の首に回した。
「!!!」
アーサーはさらに驚愕したように私を見ている。
私はにっこりと彼に微笑んだ。
「私の血への欲求はありました? 吸いたいと思いましたか?」
彼は小さく頷いた。
「でも、大丈夫でしたわね?」
「・・・別の欲求の方が強かったから・・・」
「そちらの欲求は我慢する必要はありませんのよ?」
「でも・・・」
困惑気味に私を見る。私に拒否されたことの意味が分かっていないらしい。
「場所を移せばいいでしょう? 人目のない場所に・・・二人きりになれる場所に」
「な・・・っ」
見る見る真っ赤になるアーサー。
「はしたない女って呆れていらっしゃる? でも今だと思うのです。だって、好条件がそろっているではないですか? 今日は新月でしょう? そして昼間は血への欲求は夜よりずっと弱い」
「そうだが・・・」
「情事が夜のものって誰が決めたのですか?」
「!!」
「今、私を抱かなかったら、いつまで経っても私を抱けませんわよ、きっと」
「~~~っ」
アーサーは耐えられないとばかりに私の肩に顔を埋めた。
「貴女って人は・・・」
「ふふ、呆れてますね?」
私はそっとアーサーの頭を撫でた。
アーサーは私の腰に添えていた手を背中に回し、ギュッと私を抱きしめた。
「貴女が欲しい。喉から手が出るほど。でも、不安が拭えない。この香りが甘過ぎて・・・。我を忘れてしまいそうで」
「では、もし貴方が私の血を吸いそうになったら、そうですわね。思いっきり突き飛ばして差し上げますわ、今度は私が」
アーサーはバッと顔を上げた。
「あ、あれは! あの時は本当にすまなかった! あの夜は・・・」
「満月でしたわね。今なら理解できます」
真っ赤な顔から一転して真っ青になっているアーサーに私は吹き出しそうになるのを抑えて、彼の鼻先にチュッとキスをした。途端に真っ赤に戻る。
アーサーは、はあ~~~と長い溜息を付くと、再び私の肩に顔を埋めた。
「貴女には格好悪い姿ばかり見られているな・・・」
ボソボソと呟くアーサーの頭をよしよしと撫でる。
だが、次の瞬間、フワリと体が浮いた。横抱きに抱き上げられたのだ。
「このまま貴女を攫っていいだろうか?」
私はもちろんという返事の代わりに彼の唇にキスを落とした。
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