いくら政略結婚だからって、そこまで嫌わなくてもいいんじゃないですか?いい加減、腹が立ってきたんですけど!

夢呼

文字の大きさ
上 下
9 / 62

9.後悔?

しおりを挟む
一緒の食事を止めた途端、毎日花が届くようになった。

もちろん一切受け取る気は無い。
毎回問答無用で突き返した。突き返す相手がメアリーだから気の毒だが。
本人が届ける勇気が無いのか遠慮しているのかは分からない。ただ、自分で直接私に手渡す気はないのは確かなようだ。

そんな日が続いたある日のこと。

「奥様。旦那様がお呼びでございます」

マイクは私の部屋まで来ると恭しく頭を下げた。

「何の用かしら?」

私は素っ気なく答えた。

「内容までは言付かっておりません。書斎までお越し頂きたいとの事でございます」

てめーが来いや!

つい口走りそうになり、慌てて両手で口を押えた。

何よ、毎回花束を突き返していたことへの苦情? まったく、器の小せー男だな・・・。

「分かりました。参りましょう」

私はイライラする気持ちを無理やり抑え、マイクの言う通り書斎に向かった。





「やっと、来たか・・・」

部屋に入るとアーサーが私を見て呟くように言った。

「久しぶりに貴女に会うな。同じ邸に住んでいるというのに・・・」

「ご用件は?」

「・・・」

「まさかそんな嫌味を言うためだけにお呼びになりました?」

「・・・いや・・・」

私が睨みをきかすと、フイっと顔を背け、机の上の手紙を一つ拾って見せた。

「ラッセン侯爵家から子息の誕生パーティーの招待状が来ている」

「そうですか」

「三日後だ」

「そうですか。それは急ですこと」

「伝えたくても、食事を共にしないからな。機会がなかった」

「それは大変失礼いたしました。では、その日、私は体調不良という事で、侯爵様お一人でご参加くださいませ」

「しかし・・・」

「体調不良というのでは理由が弱いとおっしゃるのでしたら、その日に合わせて怪我でもしますわ。階段から落ちれば捻挫ぐらいするでしょう」

「な、何を言っている!」

「歩けなければ仕方がありませんものね」

「ロ、ローゼ!」

わあ! 何? 今度は名前呼んだ! もしかして、初めて名前呼んだ?
いや、そんなことないか・・・。婚約時代に数回呼ばれたことがあったかなぁ・・・?

「とにかく、私は参りません。お話がこれだけなら失礼します」

「待って、待ってくれ! ローゼ!」

アーサーは焦ったように立ち上がった。

「貴女の怒りが収まっていないことは分かっている。だが、我が家と非常に懇意にしているラッセン家の誘いは無下にできない」

知らんがな・・・、そんなこと・・・。

「ですから、参加なさればよろしいでしょう? 侯爵様お一人で」

「夫婦での出席を望まれている。特に、夫人は貴女に会いたいと・・・」

何を今さら体裁なんか気にしているんだか・・・。
私は深く溜息を付いた。

「分かりました」

アーサーはホッとした顔をする。

「お話はそれだけですか? では失礼します」

私はにべもなくそう答えると、踵を返し、サッサとアーサーの書斎を後にした。

あー、面倒臭い。
イライラしながら自分の部屋に向かって歩く。荒れた気持ちが歩き方にも出てしまい、ドスドスと歩いてしまう。

確かに、ラッセン侯爵家とは懇意にしているようだ。侯爵家の過去の交流履歴からしてもそれは伺える。レイモンド侯爵夫人としては、ここは礼儀を持って答えるのは筋なのは分かるのだが・・・。だが、どうにも気が乗らない。

「それにしても、嫌いな女を無理に伴ってまで招待を応じなければならないなんて、侯爵様もお気の毒な事で」

そんなことをブツブツ呟きながら歩いた。

しかし、アーサーも気の毒だが、私だって可哀そうだ。
嫌われていると分かっているのに、寄り添わなければならなくて、寄り添えば明らかに嫌な顔をされるのだ。そんな態度を受けるこっちは腹立たしいし、なによりみじめだ。周りの目線も痛い。

出来る事なら行きたくない。
やっぱり、当日に合わせて怪我でもしようかな・・・。





パーティーの前夜。
侍女のメアリーが他のメイドを伴って部屋に持ってやって来た。

「旦那様からの贈り物でございます」

嬉しそうにそう言うと、私の前にドレスを広げた。

驚いた・・・。
ドレスなんて初めてもらった。一体、いつ用意したのだろう?
話を聞いたの一昨日だ。そんな期間で用意できるわけがない。

そして、試着をしてみてさらに驚いた。

「可愛い~!!」

色はホワイトと淡いピンクや黄色などパステルカラーで可愛らしく、裾もふわりと広がり、とても柔らかい雰囲気だ。

私は今まで、凛としたアーサーに似合うようにシンプルな形のものを選んでいた。色も彼の目の色に遭わせたブルーを基調にし、シックで大人っぽくまとめていたのだ。
たが、実際の私はまだ19歳。そして、どちらかと言うとラブリーなものが趣味。

そして、このドレスは正に私の好みにピッタリ、ど真ん中だ。
でも、これではあまりにも可愛らしくて幼く見えないだろうか。
そんな思いも過るが、それ以上に気持ちは高揚した。

「まあ! お似合いですわ! 奥様! なんて可愛らしい!!」

メアリーと他のメイドたちがパチパチと手を叩きながら褒め称える。
おだて上手な彼女たちに乗せられ、益々気持ちに拍車がかかる。
鏡の前でくるくる回ったり、色んな角度からドレスを見たりしているうちに、明日の夜会が楽しみになってきた。

「明日が楽しみですわ、奥様! 髪型もドレスに合わせて可愛らしくしましょう。腕が鳴ります!」

「ふふふ、期待しているわ、メアリー」

私は鏡越しにメアリー達に微笑んだ。

しおりを挟む
感想 8

あなたにおすすめの小説

私の頑張りは、とんだ無駄骨だったようです

風見ゆうみ
恋愛
私、リディア・トゥーラル男爵令嬢にはジッシー・アンダーソンという婚約者がいた。ある日、学園の中庭で彼が女子生徒に告白され、その生徒と抱き合っているシーンを大勢の生徒と一緒に見てしまった上に、その場で婚約破棄を要求されてしまう。 婚約破棄を要求されてすぐに、ミラン・ミーグス公爵令息から求婚され、ひそかに彼に思いを寄せていた私は、彼の申し出を受けるか迷ったけれど、彼の両親から身を引く様にお願いされ、ミランを諦める事に決める。 そんな私は、学園を辞めて遠くの街に引っ越し、平民として新しい生活を始めてみたんだけど、ん? 誰かからストーカーされてる? それだけじゃなく、ミランが私を見つけ出してしまい…!? え、これじゃあ、私、何のために引っ越したの!? ※恋愛メインで書くつもりですが、ざまぁ必要のご意見があれば、微々たるものになりますが、ざまぁを入れるつもりです。 ※ざまぁ希望をいただきましたので、タグを「ざまぁ」に変更いたしました。 ※史実とは関係ない異世界の世界観であり、設定も緩くご都合主義です。魔法も存在します。作者の都合の良い世界観や設定であるとご了承いただいた上でお読み下さいませ。

酷いことをしたのはあなたの方です

風見ゆうみ
恋愛
※「謝られたって、私は高みの見物しかしませんよ?」の続編です。 あれから約1年後、私、エアリス・ノラベルはエドワード・カイジス公爵の婚約者となり、結婚も控え、幸せな生活を送っていた。 ある日、親友のビアラから、ロンバートが出所したこと、オルザベート達が軟禁していた家から引っ越す事になったという話を聞く。 聞いた時には深く考えていなかった私だったけれど、オルザベートが私を諦めていないことを思い知らされる事になる。 ※細かい設定が気になられる方は前作をお読みいただいた方が良いかと思われます。 ※恋愛ものですので甘い展開もありますが、サスペンス色も多いのでご注意下さい。ざまぁも必要以上に過激ではありません。 ※史実とは関係ない、独特の世界観であり、設定はゆるゆるで、ご都合主義です。魔法が存在する世界です。

その発言、後悔しないで下さいね?

風見ゆうみ
恋愛
「君を愛する事は出来ない」「いちいちそんな宣言をしていただかなくても結構ですよ?」結婚式後、私、エレノアと旦那様であるシークス・クロフォード公爵が交わした会話は要約すると、そんな感じで、第1印象はお互いに良くありませんでした。 一緒に住んでいる義父母は優しいのですが、義妹はものすごく意地悪です。でも、そんな事を気にして、泣き寝入りする性格でもありません。 結婚式の次の日、旦那様にお話したい事があった私は、旦那様の執務室に行き、必要な話を終えた後に帰ろうとしますが、何もないところで躓いてしまいます。 一瞬、私の腕に何かが触れた気がしたのですが、そのまま私は転んでしまいました。 「大丈夫か?」と聞かれ、振り返ると、そこには長い白と黒の毛を持った大きな犬が! でも、話しかけてきた声は旦那様らしきものでしたのに、旦那様の姿がどこにも見当たりません! 「犬が喋りました! あの、よろしければ教えていただきたいのですが、旦那様を知りませんか?」「ここにいる!」「ですから旦那様はどこに?」「俺だ!」「あなたは、わんちゃんです! 旦那様ではありません!」 ※カクヨムさんで加筆修正版を投稿しています。 ※史実とは関係ない異世界の世界観であり、設定も緩くご都合主義です。魔法や呪いも存在します。作者の都合の良い世界観や設定であるとご了承いただいた上でお読み下さいませ。 ※クズがいますので、ご注意下さい。 ※ざまぁは過度なものではありません。

取り巻き令嬢Aは覚醒いたしましたので

モンドール
恋愛
揶揄うような微笑みで少女を見つめる貴公子。それに向き合うのは、可憐さの中に少々気の強さを秘めた美少女。 貴公子の周りに集う取り巻きの令嬢たち。 ──まるでロマンス小説のワンシーンのようだわ。 ……え、もしかして、わたくしはかませ犬にもなれない取り巻き!? 公爵令嬢アリシアは、初恋の人の取り巻きA卒業を決意した。 (『小説家になろう』にも同一名義で投稿しています。)

【完結】不誠実な旦那様、目が覚めたのでさよならです。

完菜
恋愛
 王都の端にある森の中に、ひっそりと誰かから隠れるようにしてログハウスが建っていた。 そこには素朴な雰囲気を持つ女性リリーと、金髪で天使のように愛らしい子供、そして中年の女性の三人が暮らしている。この三人どうやら訳ありだ。  ある日リリーは、ケガをした男性を森で見つける。本当は困るのだが、見捨てることもできずに手当をするために自分の家に連れて行くことに……。  その日を境に、何も変わらない日常に少しの変化が生まれる。その森で暮らしていたリリーには、大好きな人から言われる「愛している」という言葉が全てだった。  しかし、あることがきっかけで一瞬にしてその言葉が恐ろしいものに変わってしまう。人を愛するって何なのか? 愛されるって何なのか? リリーが紆余曲折を経て辿り着く愛の形。(全50話)

私を運命の相手とプロポーズしておきながら、可哀そうな幼馴染の方が大切なのですね! 幼馴染と幸せにお過ごしください

迷い人
恋愛
王国の特殊爵位『フラワーズ』を頂いたその日。 アシャール王国でも美貌と名高いディディエ・オラール様から婚姻の申し込みを受けた。 断るに断れない状況での婚姻の申し込み。 仕事の邪魔はしないと言う約束のもと、私はその婚姻の申し出を承諾する。 優しい人。 貞節と名高い人。 一目惚れだと、運命の相手だと、彼は言った。 細やかな気遣いと、距離を保った愛情表現。 私も愛しております。 そう告げようとした日、彼は私にこうつげたのです。 「子を事故で亡くした幼馴染が、心をすり減らして戻ってきたんだ。 私はしばらく彼女についていてあげたい」 そう言って私の物を、つぎつぎ幼馴染に与えていく。 優しかったアナタは幻ですか? どうぞ、幼馴染とお幸せに、請求書はそちらに回しておきます。

王女を好きだと思ったら

夏笆(なつは)
恋愛
 「王子より王子らしい」と言われる公爵家嫡男、エヴァリスト・デュルフェを婚約者にもつバルゲリー伯爵家長女のピエレット。  デビュタントの折に突撃するようにダンスを申し込まれ、望まれて婚約をしたピエレットだが、ある日ふと気づく。 「エヴァリスト様って、ルシール王女殿下のお話ししかなさらないのでは?」   エヴァリストとルシールはいとこ同士であり、幼い頃より親交があることはピエレットも知っている。  だがしかし度を越している、と、大事にしているぬいぐるみのぴぃちゃんに語りかけるピエレット。 「でもね、ぴぃちゃん。私、エヴァリスト様に恋をしてしまったの。だから、頑張るわね」  ピエレットは、そう言って、胸の前で小さく拳を握り、決意を込めた。  ルシール王女殿下の好きな場所、好きな物、好みの装い。  と多くの場所へピエレットを連れて行き、食べさせ、贈ってくれるエヴァリスト。 「あのね、ぴぃちゃん!エヴァリスト様がね・・・・・!」  そして、ピエレットは今日も、エヴァリストが贈ってくれた特注のぬいぐるみ、孔雀のぴぃちゃんを相手にエヴァリストへの想いを語る。 小説家になろうにも、掲載しています。  

第一王子は私(醜女姫)と婚姻解消したいらしい

麻竹
恋愛
第一王子は病に倒れた父王の命令で、隣国の第一王女と結婚させられることになっていた。 しかし第一王子には、幼馴染で将来を誓い合った恋人である侯爵令嬢がいた。 しかし父親である国王は、王子に「侯爵令嬢と、どうしても結婚したければ側妃にしろ」と突っぱねられてしまう。 第一王子は渋々この婚姻を承諾するのだが……しかし隣国から来た王女は、そんな王子の決断を後悔させるほどの人物だった。

処理中です...