親友のフリして生きていたらその親友が転生してきたので自分の手で育てることにしました

冷涼スグリ

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セレスト15歳。

25 復讐のパーティー【前編】

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「もう彼も若手だといえなくなりましたね。すっかり立派になって。」
「それにセレストも副隊長かぁ…すっかり僕らの仲間入りだ」

王様から十二騎士団の副隊長のバッチを授かる姿を聴衆と共に見守る白辺と潜良はすっかり成長した二人の姿に感嘆の息を吐いた。

□□□□□

見習い期間の三年を経て正式に十二騎士団、暗殺部隊の副隊長として認められたセレストは今まで以上に重い責任の任務を任せられるようになったが、本人はそれでより蒼の力になれると喜んで任務に勤しんでいた。

隊長である蒼、そして副隊長のセレスト。二人は暗殺部隊のツートップとして今日も元気に国に仕えていた。

そんな時だった。職務室の扉が大きな音を立てて開く。驚いてそちらを見ると、慌てた様子の部下が「ジョウサ様から至急会議室へと!!」と伝言を伝えながら部屋に飛び込んできた。

「ジョウサから呼び出し?珍しい。定例会議の時期でもないのに」
「なんでだろうね。たしかに朝から情報室がだいぶ慌ただしい様子だったけど……」

そうしてやりかけの仕事を放り出し、急いで二人で会議室へ向かうとそこにはもう既に大半の隊長たちが揃っており、情佐が厳しい表情で手元の資料を見つめていた。

「みんな、突然呼び出してすまないね。重大な情報が入った。」

普段よりも固いその声に、張り詰めたような緊張感に会議室が包まれる。

「15年前の大戦。あれ以降動きのなかったカーマインから宣戦布告の気配をつかんだ。そして……また前と同じ手法だ。調べたところ、既にスパイが複数人送られている。」

その言葉にザワつく室内。それを見兼ねた王が咳払いをして場を鎮めた。

「…それで、我々は如何のようにすればよいのですかな?」

外交部隊の隊長である 凱古ガイコがモノクルをカチャリと鳴らしながらそう尋ねる。

そうして王がその口を重々しく開いた。

「…もちろんかつての悲劇を再び巻き起こすことは絶対に避けねばならない。全ての勢力を持って、その計画を破綻させるのだ。……まずは、自国のスパイをどうにかするのが先だな」

それから話された内容は、あれから数十年にかけて潜伏していたスパイ達はかなり国の上層部に巣食っているということだった。
そのため、重役が集まるパーティーにて、ターゲットを連れ出し始末するしかないというもの。

しかしたかがパーティーに常に王の傍から離れることのない十二騎士団のひとりが単独で参加するのはどう考えても不自然。
変装することも考えたが、それよりももっといい方法があるのだという。

ジョウサは人差し指を立てて笑みを浮かべる。

王を主役としたパーティーを開き、そこにスパイ疑惑のある人間たちを皆招待する。

王にはその護衛として隊長格を四人つけることで不意打ちを対策。戦闘に備えてセンゴク、蒼のサポートのためセンラ、大臣たちとの話し合い兼毒味役としてガイコ、そして裏で暗殺の任務を担うアオ

「それで、アオくんには出来れば動きやすいように単独で行動してもらいたいんだけどね…」
️「でもそれってさ、警戒されちゃうんじゃないの?さすがに暗殺で名の知れてる蒼が一人で離れたりしちゃうと何かあるって言ってるようなものだよ」

白辺が資料の男の「警戒心が高い」という一文をバシバシと叩く。

となると、さてどうしようと皆悩み始める。そのうち、何か思うところがある様子で顎に手を当てている潜良へと無意識のうちに皆の視線が集まった。

その視線を受けた潜良は、おずおずと口を開く。

「…アオに実は隠していたパートナー…つまり恋人が居るのだと偽って、誰か部下の1人を女装させて連れて行くというのはいかがでしょう。パーティーならば婚約者同士で来ること自体は何もおかしいことでは無いでしょうし、ターゲットは少なくとも複数。それに表立って行動できないのであれば二人で外に出たように見せかけてそれぞれでターゲットを始末出来れば良いかと思ったのですが……」
「えー、でもそんな……パーティーに連れて行けるような教養のある一般兵なんてそうそういないんじゃ……」

そう言って周りをぐるりと見渡していた白辺の視線が、ある一点で止まる。

「あ、いるじゃん」

そうして指さした先に視線が集中する。指を刺された本人であるセレストはぽかんとした様子で呟いた。

「僕、ですか」
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