親友のフリして生きていたらその親友が転生してきたので自分の手で育てることにしました

冷涼スグリ

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セレスト12歳。

19 それは間違いなく彼であった

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「血縁関係については、不明…」

情佐に手渡されたセレストについての情報がまとめられた紙を捲り、蒼は小さくため息を吐いた。

「孤児院前に捨てられてたんならそれをやった親はいるはずだが、それが何処の誰かも分からないんじゃあそりゃあそうなるよな…」

しんゆうの方には立派な両親がいる訳だからそこから辿れるかと思ったのだがそう簡単には行かなかったらしい。
情佐もあまりの手がかりの無さに「もうここまで来るとセレストくんが突然この世界に発生したとしか思えないよ」と降参の構えだった。
情佐ですら分からないのならきっともう自分が個人的に調べるだけ無駄だろう。

その行動の理由としてはセレストは親友と血が繋がった親戚か何かで、見た目が似ているのはそのせいで性格がそっくりなのはただの偶然なんじゃないかと言う可能性を考えての事だった。

彼はセレストであって蒼じゃない。それは分かっているつもりだったが、もしかすると自分は未だに彼に蒼を重ねてセレスト本人が見れていないのではないかと…そもそも生まれ変わりなんてのもこちらの理想の押しつけであってそんなものじゃあないのかもしれないという不安がぬぐえなかった。
だったらいっそ、ただの別人だと証明できてしまえば落ち着くかと思ったんだが…結局答えは宙ぶらりんのままだ。

(でも、俺が今アイツの親だってことには変わりがないから…)

せめて自分の意思で全てを決められるようになるまでは、一人で生きていけるようになるまでは…

側にいても、いいだろうか。

□□□□□□□□□□

「また、夢の中…」

セレストはあれからも、変わらず毎日夢を見ていた。
そうして最近では明晰夢のように夢の中で意識をはっきりと持つことができるようになり、同時にだんだん見える映像も増えていった。

今日の夢は…なんだか見覚えがある王宮の庭。そこで視点の主はたくさんの訓練兵たちと共に整列している様子だった。しかし、直近の記憶にある王宮の庭の様子とは少し見た目が違っているような気もする。

明確に何が違うのかが分からずもやもやとしていると、また無情にも場面は移りかわった。

目の前には、快活な笑みを浮かべこちらに手を伸ばしてくる若葉色の髪の少年。その瞳は、空を映したようなスカイブルーに輝いていた。自身の手はその伸ばされた手を掴んで立ち上がり、何かの会話を交わす。残念ながら音声は相変わらず聞こえなかったが、セレストはその姿を見てある種の確信を抱いていた。
その今のセレストと同じくらいの年齢であろう少年の姿はどう見ても、セレストの現在の養い親であり命の恩人である蒼の見た目そのものだったからだ。


そうして、目は覚める。


(……あ。違和感あると思ったら…あの庭の木、全部今より成長してなかったんだ)
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