20 / 27
セレスト12歳。
19 それは間違いなく彼であった
しおりを挟む
「血縁関係については、不明…」
情佐に手渡されたセレストについての情報がまとめられた紙を捲り、蒼は小さくため息を吐いた。
「孤児院前に捨てられてたんならそれをやった親はいるはずだが、それが何処の誰かも分からないんじゃあそりゃあそうなるよな…」
蒼の方には立派な両親がいる訳だからそこから辿れるかと思ったのだがそう簡単には行かなかったらしい。
情佐もあまりの手がかりの無さに「もうここまで来るとセレストくんが突然この世界に発生したとしか思えないよ」と降参の構えだった。
情佐ですら分からないのならきっともう自分が個人的に調べるだけ無駄だろう。
その行動の理由としてはセレストは親友と血が繋がった親戚か何かで、見た目が似ているのはそのせいで性格がそっくりなのはただの偶然なんじゃないかと言う可能性を考えての事だった。
彼はセレストであって蒼じゃない。それは分かっているつもりだったが、もしかすると自分は未だに彼に蒼を重ねてセレスト本人が見れていないのではないかと…そもそも生まれ変わりなんてのもこちらの理想の押しつけであってそんなものじゃあないのかもしれないという不安がぬぐえなかった。
だったらいっそ、ただの別人だと証明できてしまえば落ち着くかと思ったんだが…結局答えは宙ぶらりんのままだ。
(でも、俺が今アイツの親だってことには変わりがないから…)
せめて自分の意思で全てを決められるようになるまでは、一人で生きていけるようになるまでは…
側にいても、いいだろうか。
□□□□□□□□□□
「また、夢の中…」
セレストはあれからも、変わらず毎日夢を見ていた。
そうして最近では明晰夢のように夢の中で意識をはっきりと持つことができるようになり、同時にだんだん見える映像も増えていった。
今日の夢は…なんだか見覚えがある王宮の庭。そこで視点の主はたくさんの訓練兵たちと共に整列している様子だった。しかし、直近の記憶にある王宮の庭の様子とは少し見た目が違っているような気もする。
明確に何が違うのかが分からずもやもやとしていると、また無情にも場面は移りかわった。
目の前には、快活な笑みを浮かべこちらに手を伸ばしてくる若葉色の髪の少年。その瞳は、空を映したようなスカイブルーに輝いていた。自身の手はその伸ばされた手を掴んで立ち上がり、何かの会話を交わす。残念ながら音声は相変わらず聞こえなかったが、セレストはその姿を見てある種の確信を抱いていた。
その今のセレストと同じくらいの年齢であろう少年の姿はどう見ても、セレストの現在の養い親であり命の恩人である蒼の見た目そのものだったからだ。
そうして、目は覚める。
(……あ。違和感あると思ったら…あの庭の木、全部今より成長してなかったんだ)
情佐に手渡されたセレストについての情報がまとめられた紙を捲り、蒼は小さくため息を吐いた。
「孤児院前に捨てられてたんならそれをやった親はいるはずだが、それが何処の誰かも分からないんじゃあそりゃあそうなるよな…」
蒼の方には立派な両親がいる訳だからそこから辿れるかと思ったのだがそう簡単には行かなかったらしい。
情佐もあまりの手がかりの無さに「もうここまで来るとセレストくんが突然この世界に発生したとしか思えないよ」と降参の構えだった。
情佐ですら分からないのならきっともう自分が個人的に調べるだけ無駄だろう。
その行動の理由としてはセレストは親友と血が繋がった親戚か何かで、見た目が似ているのはそのせいで性格がそっくりなのはただの偶然なんじゃないかと言う可能性を考えての事だった。
彼はセレストであって蒼じゃない。それは分かっているつもりだったが、もしかすると自分は未だに彼に蒼を重ねてセレスト本人が見れていないのではないかと…そもそも生まれ変わりなんてのもこちらの理想の押しつけであってそんなものじゃあないのかもしれないという不安がぬぐえなかった。
だったらいっそ、ただの別人だと証明できてしまえば落ち着くかと思ったんだが…結局答えは宙ぶらりんのままだ。
(でも、俺が今アイツの親だってことには変わりがないから…)
せめて自分の意思で全てを決められるようになるまでは、一人で生きていけるようになるまでは…
側にいても、いいだろうか。
□□□□□□□□□□
「また、夢の中…」
セレストはあれからも、変わらず毎日夢を見ていた。
そうして最近では明晰夢のように夢の中で意識をはっきりと持つことができるようになり、同時にだんだん見える映像も増えていった。
今日の夢は…なんだか見覚えがある王宮の庭。そこで視点の主はたくさんの訓練兵たちと共に整列している様子だった。しかし、直近の記憶にある王宮の庭の様子とは少し見た目が違っているような気もする。
明確に何が違うのかが分からずもやもやとしていると、また無情にも場面は移りかわった。
目の前には、快活な笑みを浮かべこちらに手を伸ばしてくる若葉色の髪の少年。その瞳は、空を映したようなスカイブルーに輝いていた。自身の手はその伸ばされた手を掴んで立ち上がり、何かの会話を交わす。残念ながら音声は相変わらず聞こえなかったが、セレストはその姿を見てある種の確信を抱いていた。
その今のセレストと同じくらいの年齢であろう少年の姿はどう見ても、セレストの現在の養い親であり命の恩人である蒼の見た目そのものだったからだ。
そうして、目は覚める。
(……あ。違和感あると思ったら…あの庭の木、全部今より成長してなかったんだ)
0
お気に入りに追加
34
あなたにおすすめの小説

過食症の僕なんかが異世界に行ったって……
おがとま
BL
過食症の受け「春」は自身の醜さに苦しんでいた。そこに強い光が差し込み異世界に…?!
ではなく、神様の私欲の巻き添えをくらい、雑に異世界に飛ばされてしまった。まあそこでなんやかんやあって攻め「ギル」に出会う。ギルは街1番の鍛冶屋、真面目で筋肉ムキムキ。
凸凹な2人がお互いを意識し、尊敬し、愛し合う物語。
夢では溺愛騎士、現実ではただのクラスメイト
春音優月
BL
真面目でおとなしい性格の藤村歩夢は、武士と呼ばれているクラスメイトの大谷虎太郎に密かに片想いしている。
クラスではほとんど会話も交わさないのに、なぜか毎晩歩夢の夢に出てくる虎太郎。しかも夢の中での虎太郎は、歩夢を守る騎士で恋人だった。
夢では溺愛騎士、現実ではただのクラスメイト。夢と現実が交錯する片想いの行方は――。
2024.02.23〜02.27
イラスト:かもねさま

王子様と魔法は取り扱いが難しい
南方まいこ
BL
とある舞踏会に出席したレジェ、そこで幼馴染に出会い、挨拶を交わしたのが運の尽き、おかしな魔道具が陳列する室内へと潜入し、うっかり触れた魔具の魔法が発動してしまう。
特殊な魔法がかかったレジェは、みるみるうちに体が縮み、十歳前後の身体になってしまい、元に戻る方法を探し始めるが、ちょっとした誤解から、幼馴染の行動がおかしな方向へ、更には過保護な執事も加わり、色々と面倒なことに――。
※濃縮版

別れようと彼氏に言ったら泣いて懇願された挙げ句めっちゃ尽くされた
翡翠飾
BL
「い、いやだ、いや……。捨てないでっ、お願いぃ……。な、何でも!何でもするっ!金なら出すしっ、えっと、あ、ぱ、パシリになるから!」
そう言って涙を流しながら足元にすがり付くαである彼氏、霜月慧弥。ノリで告白されノリで了承したこの付き合いに、βである榊原伊織は頃合いかと別れを切り出したが、慧弥は何故か未練があるらしい。
チャライケメンα(尽くし体質)×物静かβ(尽くされ体質)の話。

前世が俺の友人で、いまだに俺のことが好きだって本当ですか
Bee
BL
半年前に別れた元恋人だった男の結婚式で、ユウジはそこではじめて二股をかけられていたことを知る。8年も一緒にいた相手に裏切られていたことを知り、ショックを受けたユウジは式場を飛び出してしまう。
無我夢中で車を走らせて、気がつくとユウジは見知らぬ場所にいることに気がつく。そこはまるで天国のようで、そばには7年前に死んだ友人の黒木が。黒木はユウジのことが好きだったと言い出して――
最初は主人公が別れた男の結婚式に参加しているところから始まります。
死んだ友人との再会と、その友人の生まれ変わりと思われる青年との出会いへと話が続きます。
生まれ変わり(?)21歳大学生×きれいめな48歳おっさんの話です。
※軽い性的表現あり
短編から長編に変更しています

ある日、木から落ちたらしい。どういう状況だったのだろうか。
水鳴諒
BL
目を覚ますとズキリと頭部が痛んだ俺は、自分が記憶喪失だと気づいた。そして風紀委員長に面倒を見てもらうことになった。(風紀委員長攻めです)


ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる