親友のフリして生きていたらその親友が転生してきたので自分の手で育てることにしました

冷涼スグリ

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セレスト12歳。

18 不思議な夢

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「う…」

隣に眠る蒼を起こさないように起き上がり、痛む頭を押さえ息を整える。

「一体、なんなの……この夢は…」

ここ数日、セレストはとある夢に悩まされていた。


□□□□□□□□□

「んー、おはようセレスト…」
「おはよう。今日は僕がご飯用意しといたから、まだゆっくりしてていいよー」
「ほんとうか?もう一人ですっかりこなせてすごいなあ、ありがとう。」

ふにゃりと笑う蒼に頭を撫でられ、それで赤くなった顔を見られたくなくて「僕もそろそろ自立する歳なんだからね。」と言って腕を抜け出して配膳の準備に戻った。


蒼が寝起きに弱いと知ったのはごく最近だ。昔は幼い自分のために無理して朝早く起きて朝の支度をしてくれていたらしい。それを知ってからは蒼の仕事が忙しそうな時は自分が朝食を作ってできるだけ長く寝かせてあげることをするようにしている。自分は幸いにも朝は辛くない方なので負担もないし、朝を作るとその日の夜ご飯は蒼の手料理が食べられるのでセレストにとってはいい事づくめなのだ。

…まあ、今日早く起きてしまったのはそういう理由ではなく、あの夢のせいなのだけど。
セレストは料理を盛り付けながら、脳裏で今日見た夢の内容を思い返していた。

……


いつもその夢を見る時、セレストはいつの間にかシアターの中央の席に座らされていて目の前の大きな画面に投影される映像を眺めていた。
大きなモニターに映し出された映像は、音声も効果音もなかったが、まるでひとつの映画を見ているような感覚になり目を離すことが出来なかった。

内容は、今のところどうやら主人公らしき人間の一人称視点で全て展開されているらしく、最初に見たのは産まれたばかりのふくふくとした己の両手と、それを伸ばした先にいる両親らしき姿。
夢というのは記憶を元に作られるという。しかしセレストは修練にあけくれていたせいで民の娯楽である映画などはあまり見た記憶がなかった。その人物に見覚えはあるだろうかとしっかりと顔を見ようと覗き込んだところで、しかし映像は無慈悲にも次のシーンにうつり変わってしまった。

しかし奇妙なことに、先程までぼんやりとながらもしっかり映っていた映像が激しく乱れ、砂嵐のような画面になってしまう。
そのまま長い間ずっと砂嵐の画面を見続けているといつしか、映画が終わったのだろうか。やがて不意に目が覚めた。

「なんだったんだ、一体……」

そしてその奇妙な夢はもう既に何度も繰り返している。気づいたのは、その夢を見る度に砂嵐の部分がほんの少しずつ形を取り戻して人間の姿や風景が写り始めているということだった。
最後まで見えるようになったら一体何が起こるのか。薄ぼんやりとした不安に襲われるものの特に害がある訳でもなく、悪夢という訳でもない。そんなわけで、セレストはこの夢のことについて誰にも相談できないままでいた。

ぼうっとしたままだったが手は動かしていたのでいつの間にか配膳は終わっていた。そのまま冷める前にと蒼を呼びに行くと、もう目は覚めていたらしく布団の上で腕を伸ばして伸びをしていた。

「…ふぁあ、セレスト。ごめんなあ全部任せて」
「ううん。別にこのくらいなんてことないよ。ゆっくり休めた?」
「うん。お前のおかげでな。」

蒼はまだ寝ぼけているのかそのまま伸びをした腕をこちらに伸ばしてきて、セレストの小さな体に覆い被さるように抱きついてくる。その体格差で少しよろけてしまうが、セレストも最近は鍛えていることもあってそれをさして重いとは思わなくなっていた。そもそも寝起きの蒼は結構こうしてすがりついてくることが多いので、こういう時はそのまま机に移動してしまうとすんなり着席してくれる。

「ほら、アオ。これとか自信あるんだけどどうかな」

今日上手くいったと思った副菜をスプーンにのせて差し出すと、それを一口食べた蒼は目を見開いて感嘆の声を漏らした。

「すごいじゃないかセレスト。めちゃくちゃ美味しい。お店で出てきてもおかしくないぞこれ」
「もう、大袈裟だよ」

それでも褒められて悪い気はしない。脳内で上手くいった料理リストにチェックをつけながら、セレストは朝食を口に運んだ。
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