親友のフリして生きていたらその親友が転生してきたので自分の手で育てることにしました

冷涼スグリ

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セレスト8歳。

12 一緒に料理を作ろう

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「セレストー、そっちの砂糖取ってくれ」
「わかった!」
「ふふ、お前が手伝ってくれるおかげで美味しいオムレツができるぞ」
「オムレツ!僕アオの料理ならなんでも好きだけど、オムレツは一番好きー!」
「そうかそうか!」

(…やっぱ好みって変わらないもんなのかね)

かつての親友がオムレツを頬いっぱいに頬張って幸せそうな顔をしていた情景が頭に浮かぶ。それを俺はよく「子供っぽい」とからかっていたが、その時から実は蒼に食べさせたくてこっそり裏で練習していた。結局本人に振舞ったことはなかったが、こうして成果が出ていつの間にか一番の得意料理になっていた。

(ちゃんとお前に振る舞うことが出来るなんてな)

蒼はもはや確信に近い気持ちを抱いていた。きっと、このセレストという少年は蒼の生まれ変わりであろうと。今まで決して転生なんていう概念を信じていないわけではなかったが、ここまで見た目も立ち振る舞いも似ている人間が他人の空似でそうそういるはずもない。
そして、何よりそう。蒼が死んで八年がたったいま、八歳のセレストがここにいる。蒼はこれを偶然だとは思えなかった。

「セレスト、それで次はそこのーーー」

そうしてお皿を取ってもらおうと声をかけたところで、扉が不意に開いた。

「あれ、蒼にセレストじゃん!」

「ーーーお皿を取ってくれないかい?セレスト。」
「え、う、うん!わかったよ!」

白辺が入ってきたのを見た瞬間、突然口調を穏やかなものに変えた蒼に対して一瞬戸惑うセレストだったが、すぐに言われた通りに食器棚の方へ駆け寄った。蒼はフライパンを持ち上げたままシラべの方に顔だけ向ける。

「シラべ、どうしたの?ここに来るなんて珍しいね」
「朝からいい匂いがするからさあ。共用キッチン使うなんて珍しーやつもいると思って来てみたら二人が居たんだよね~。なにそれオムレツ?美味しそー!」

蒼の背後から覗き込むようにフライパンの中で綺麗に整えられたオムレツを見る。

「すごーい、前から思ってたけど料理作るの上手いよねアオ。こんなの見たらオムレツ食べたくなっちゃうなあ~」
「あー、シラべ。ごめんね、これ二人分しか作ってないんだよ……」

申し訳なさそうにする蒼にシラべは焦ったように手を顔の前で振った。

「いやいや違うって!さすがにボクも親子の食卓邪魔しようとか思ってないから!ここに来たのだってただちょうど通り過ぎる時に見てやれ~って思ってきただけだし。」
「そうだったんだ」
「でも今日のお昼ご飯は外食でオムレツ頼んじゃおっかな~!」

わくわく、と笑みを浮かべる白辺に蒼もつられて柔らかく笑みを浮かべる。

「機会があったら、シラべにも今度作ってあげるよ」
「ホント!?やったー!アオの手料理食べたらみんなに自慢しちゃおーっと。」

そうして心躍らせる様子を微笑ましく見つめていると、ふと白辺が壁にかけてある時計をみて何かを思い出したかのように声を上げた。

「あ!やば、もうこんな時間じゃん。あいつ怒らせるとうるさいんだよな…じゃあボクはそろそろ行くね。セレストもまたね~」
「バイバイ!シラべおにいちゃん!」

入ってきた方向とは反対にある扉を潜りながら「かわい~」と頬を緩ませて消えていく白辺をセレストは見届けて、蒼に目を移した。
ほっ、と息を吐いてる蒼を見ながら首を傾げる。

「危なかったぁ…」

蒼が無意識といったように出したそのか細い声を聞いてセレストは小さく呟いた。

「…べつに、みんな受け入れてくれると思うんだけどなあ」

「ん?セレスト、今何か言った?」
「ううん!何も。それより早く食べようよ。お皿持ってきたよ!」
「おっ、頼んでなくてもスプーンまで持ってきてくれてるじゃないか。セレストは優秀なやつだなあ」
「ほんと?やったあ」

セレストは、ニコニコと笑みを浮かべたまま、考える。蒼が自分の前以外で己を偽っていることにはなにかきっと深い理由があるのだろう。それを理解しつつも、しかしみんなきっと素の蒼のことも受け入れてくれるだろうにとは思わずにはいられなかった。

(多分アオが思ってるより、ここの人達はみんなアオのことが好きだと思うんだけどなあ)
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