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第5話 クソガキのお守ですわ。
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「サフィア、訓練場で先に待っていてくれ」
その日は朝から騎士団見習いの訓練生達の相手を任せれました。
クソガキに会うの嫌だなーと思いながら鉄扉を開けると、モスクが華奢な身体で素振りの練習をしていました。
「あら、早いのね」
「ああ、他の奴らより早く訓練して、立派な騎士になんなきゃいけないしな」
ふーん意外に真面目な所もあるのね。
「なにしにきたの、ちっぱいは」
「ちっぱいじゃなくて、サフィアお姉さんよ!」
「じゃあブス姉」
殺すなら今ね、と頭で悪魔が囁きました。
でもこの子が死んだらアルガス様が悲しむのか……と思って思いとどまりました。
「もうちょっとで他の奴らくるから、そこに座ってちょっと待ってろよ」
とモスクが指を差す。
あら、意外に気が利くのね。
「その石の蓋がしてある所あるだろ。そこの蓋を開けると空洞になってヒンヤリして気持ちいいから、そこで休んでろよ」
「ええ、解ったわ」
意外に可愛い所もあるんじゃないの、そう微笑ましく思ってモスクの指示通り、蓋を外して座る。
はぁーたしかにヒンヤリするわ、でも何か液体っていうか、くさっ!
「マジウケる、この女。そこ便所だよw」
「キィーッ、あんたハメたわね!?」
「はめたも何も普通気づくだろw」
すぅーっと深く深呼吸をしてから詠唱を始める。
「悪しき群れのなす場所に一筋の光差しこまん、汝の願いが絶たれる事なく汝の願いが形となりて――」
胸の前で手を組み天に掲げる。
「ビーストソング」
くきゃっ、と少し頼りなさそうな声が聞こえてくる。
「うわっ、コブリンじゃん」
そこには3体の子供のゴブリン、通称コブリンが出現したのです。
魔物の襲来に見せかけて、モスクを暗殺する計画だったのですが期待外れでした。
ですがコブリンと言えどもゴブリンの子供、その鋭い牙や爪には殺傷能力が備わっているはず。
さぁ、モスクどうするのかしら?
命乞いしたら助けてあげても良くってよw
「お前さー、変なの呼び寄せんなよ。本当疫病神みてぇーな女」
くきゃっ、とコブリンがモスクに向かって突進する。
素早い跳躍でそれを避けたモスクは、空ちゅうで回転しながらコブリンの背中を蹴る。
ギャギャギャッと声を上げてバランスを崩したコブリンが顔面から転倒する。
事の成り行きを見守っていた両脇のコブリン達が心配そうに転倒したコブリンを起こす。
モスクは模造の剣をコブリン達に突きつけると
「命までは取らねえよ! それが俺のルールなんでね。その代わり早く目の前から消えろ!」
そう言って、ゴブリンの鼻先をかすめるように模造の剣をふるう。
コブリン達は両手を合わせて『助けて!』と言わんばかりのポーズをする。
「だから命はとらねぇよ。お前らも子供だろ、親の元に帰りな」
コブリン達はありがとうとでも言うかのように頭を下げると、一目散に逃げていく。
突如歓声と共に手を叩く音が聞こえてくる。
「大したもんだなモスク偉いぞ! そして……どういう事か説明してもらおうかサフィアよ」
そこには嬉しそうな表情をしつつも、目だけでわたくしを睨んでいるアルガス様がいたのです。
¥
「なるほど」
アルガス様が腕を組みながらモスクから事情を聴いている。
「何故急にモンスターを呼び寄せたのだサフィアよ」
「団長、まぁ許してやってくれよ。ちっぱいは恐らく俺を殺す為にモンスターを呼びよせたんだと思うんだ。わざとだし嫌な女だけど、そういう性格だから仕方ないよw」
全部事実でした。
ぐうの音も出ないわたくしは項垂れました。
婚約破棄という言葉が脳裏をちらつきました。
「恐ろしい女だな……」
アルガス様が呟く。
あー、わたくしの人生積んだ。
ゲームオーバーでーす、と思った矢先
「サフィアが聖女ではなく悪女だという事は良く解った。けれど、その特異な性質が我が騎士団にとっては得難いものでもあるのだ」
「……それはどういう事でしょう。騎士団を壊滅に追い込む要素満載ですが……」
もう自暴自棄でした。
夢破れ状態でした。
「その魔物呼び寄せの力で、我が愛する騎士団員達に安全な環境で実戦経験を積ませたい。わたしがそなたをスカウトしたのもそういった理由からなのだ」
「あ、ほーなのでふかー」
完全にキャラ崩壊したわたくしは、耳から通り抜ける言葉を正しく認識出来ていませんでした。
「ただ、必ず私がいる場所でその力を使ってくれ。かけがえのない団員達を危険な目に合わせたくないからな。これからもよろしく頼むぞ!」
『ただ、その力は私だけの為に使ってくれ、かけがえのないサフィアを危険な目に遭わせたくないんだ。これからもよろしく頼むぞ!(サフィアの脳内変換)』
「は、ははははは、はいー! かしこまりました! アルガス様!!」
サフィア大復活です!
アルガス様は悪女も好き、意外な性癖を知って更に愛がパワーアップですわ。
その日は朝から騎士団見習いの訓練生達の相手を任せれました。
クソガキに会うの嫌だなーと思いながら鉄扉を開けると、モスクが華奢な身体で素振りの練習をしていました。
「あら、早いのね」
「ああ、他の奴らより早く訓練して、立派な騎士になんなきゃいけないしな」
ふーん意外に真面目な所もあるのね。
「なにしにきたの、ちっぱいは」
「ちっぱいじゃなくて、サフィアお姉さんよ!」
「じゃあブス姉」
殺すなら今ね、と頭で悪魔が囁きました。
でもこの子が死んだらアルガス様が悲しむのか……と思って思いとどまりました。
「もうちょっとで他の奴らくるから、そこに座ってちょっと待ってろよ」
とモスクが指を差す。
あら、意外に気が利くのね。
「その石の蓋がしてある所あるだろ。そこの蓋を開けると空洞になってヒンヤリして気持ちいいから、そこで休んでろよ」
「ええ、解ったわ」
意外に可愛い所もあるんじゃないの、そう微笑ましく思ってモスクの指示通り、蓋を外して座る。
はぁーたしかにヒンヤリするわ、でも何か液体っていうか、くさっ!
「マジウケる、この女。そこ便所だよw」
「キィーッ、あんたハメたわね!?」
「はめたも何も普通気づくだろw」
すぅーっと深く深呼吸をしてから詠唱を始める。
「悪しき群れのなす場所に一筋の光差しこまん、汝の願いが絶たれる事なく汝の願いが形となりて――」
胸の前で手を組み天に掲げる。
「ビーストソング」
くきゃっ、と少し頼りなさそうな声が聞こえてくる。
「うわっ、コブリンじゃん」
そこには3体の子供のゴブリン、通称コブリンが出現したのです。
魔物の襲来に見せかけて、モスクを暗殺する計画だったのですが期待外れでした。
ですがコブリンと言えどもゴブリンの子供、その鋭い牙や爪には殺傷能力が備わっているはず。
さぁ、モスクどうするのかしら?
命乞いしたら助けてあげても良くってよw
「お前さー、変なの呼び寄せんなよ。本当疫病神みてぇーな女」
くきゃっ、とコブリンがモスクに向かって突進する。
素早い跳躍でそれを避けたモスクは、空ちゅうで回転しながらコブリンの背中を蹴る。
ギャギャギャッと声を上げてバランスを崩したコブリンが顔面から転倒する。
事の成り行きを見守っていた両脇のコブリン達が心配そうに転倒したコブリンを起こす。
モスクは模造の剣をコブリン達に突きつけると
「命までは取らねえよ! それが俺のルールなんでね。その代わり早く目の前から消えろ!」
そう言って、ゴブリンの鼻先をかすめるように模造の剣をふるう。
コブリン達は両手を合わせて『助けて!』と言わんばかりのポーズをする。
「だから命はとらねぇよ。お前らも子供だろ、親の元に帰りな」
コブリン達はありがとうとでも言うかのように頭を下げると、一目散に逃げていく。
突如歓声と共に手を叩く音が聞こえてくる。
「大したもんだなモスク偉いぞ! そして……どういう事か説明してもらおうかサフィアよ」
そこには嬉しそうな表情をしつつも、目だけでわたくしを睨んでいるアルガス様がいたのです。
¥
「なるほど」
アルガス様が腕を組みながらモスクから事情を聴いている。
「何故急にモンスターを呼び寄せたのだサフィアよ」
「団長、まぁ許してやってくれよ。ちっぱいは恐らく俺を殺す為にモンスターを呼びよせたんだと思うんだ。わざとだし嫌な女だけど、そういう性格だから仕方ないよw」
全部事実でした。
ぐうの音も出ないわたくしは項垂れました。
婚約破棄という言葉が脳裏をちらつきました。
「恐ろしい女だな……」
アルガス様が呟く。
あー、わたくしの人生積んだ。
ゲームオーバーでーす、と思った矢先
「サフィアが聖女ではなく悪女だという事は良く解った。けれど、その特異な性質が我が騎士団にとっては得難いものでもあるのだ」
「……それはどういう事でしょう。騎士団を壊滅に追い込む要素満載ですが……」
もう自暴自棄でした。
夢破れ状態でした。
「その魔物呼び寄せの力で、我が愛する騎士団員達に安全な環境で実戦経験を積ませたい。わたしがそなたをスカウトしたのもそういった理由からなのだ」
「あ、ほーなのでふかー」
完全にキャラ崩壊したわたくしは、耳から通り抜ける言葉を正しく認識出来ていませんでした。
「ただ、必ず私がいる場所でその力を使ってくれ。かけがえのない団員達を危険な目に合わせたくないからな。これからもよろしく頼むぞ!」
『ただ、その力は私だけの為に使ってくれ、かけがえのないサフィアを危険な目に遭わせたくないんだ。これからもよろしく頼むぞ!(サフィアの脳内変換)』
「は、ははははは、はいー! かしこまりました! アルガス様!!」
サフィア大復活です!
アルガス様は悪女も好き、意外な性癖を知って更に愛がパワーアップですわ。
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