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第二章 ククル奪還編
チャプター11 真夜中の決断
しおりを挟む「起きるんじゃ! サルエル! ミカエル!」
気持ち良さそうに鼾をかいて寝ているミカエルと、相変わらず言い訳めいた寝言を言っているサルエルを起こす。
「ふぁー、どうされました石頭さん。なんだか私、まだ寝足りない気がするのですが」
「そりゃそうじゃ、今は夜中じゃ」
「夜中!? どうされたんですかこんな夜更けに……」
と、ミカエルが眠そうに目をこすっておる。
サルエルはというと、さっさとベッドから出て立ち上がり、真剣な表情で何事かと成り行きを見守っておる。
「サフィアが帰ってこないんじゃ! アルガスの話だと何か事件に巻き込まれたのではないかという話なんじゃ!」
ワシは興奮気味に言う。
「それは大変です! さっ、行きますよサルエル。あれ?」
しかしミカエルの視線の先には、サルエルの姿はない。サルエルは既に身支度を済ませ、部屋の入り口で待機しておったのじゃった。
☆☆☆
「皆さん、こんな夜更けに申し訳ありません」
アルガスが集まったワシ等に頭を下げる。
あれから、支度を終えてアルガスの部屋に集合したワシ等じゃったが、そこには既に神渡の姿があったのじゃった。
「なんだか、眠れなくてな。城の中をうろついてたらアルガスと偶然会ったんだ。事情はアルガスから聞いた」
神渡は何処か落ち着いた声でそう言ったのじゃった。
「ワシも事情はアルガスから聞いておる」
「わたしも先ほど石頭さんから伺いました。これからサフィアさん救出作戦という手はずでよろしいんでしょうか。サルエルも異論はないですね」
「勿論です」
「ご協力感謝致します」
アルガスが再び頭を下げる。
「宛てはあるのか? 探すって言っても、無鉄砲に探しても見つからないだろ」
「はい、手立てはあります。バークルーパーおいで」
「はいはいアルガス様、お呼びでー」
愛嬌のある声が天井から聞こえてきたかと思うと、ストンッと音を立てて着地する。
そこには、モコモコとした羊のような被毛に、長い鼻。手にはタコの吸盤のようなものをつけた動物が二本足で直立しておったのじゃった。
「この子は神獣のパークルーパーです。この子のスキル【吸臭】は時間があまり経過していない新しい匂いを辿る事が出来ます。いなくなったばかりのサフィアの匂いならこの子の力で辿れます」
「パークルーパーです。皆さんよろしくお願いします! あ……」
パークルーパーはちょこんと頭を下げると、ミカエルを見て短い声を出す。
「ミカエルさんお久しぶりです!」
「どうも、お久しぶりですね」
ミカエルが笑顔で答える。
「ミカエル殿、パークルーパーと知り合いなのですか!」
「え、ええ。まぁ知り合いというか、生みの親といいますか」
「それは凄い! ミカエル殿は交友関係が広いのですね!」
アルガスがミカエルをベタ褒めしよる。
「はいはい茶番はそこまで、さっさと行くぞ。サフィアに危険が迫ってる」
神渡が鋭い目つきで牽制するのじゃった。
☆☆☆
「パークルーパー、これをお食べ」
アルガスがパークルーパーの鼻先に、赤い木の実を乗せた手を添える。
パークルーパーが木の実を長い鼻で巻き取り口に入れる。
「やっぱりテコの実は美味しいなー。アルガス様ありがとう! 吸臭!」
パークルーパーの鼻が光輝く。
「パークルーパーちゃんは好物を食べる事でスキルを発動するようですね」
と、ミカエルがパークルーパーのスキルの補足をする。
「パークルーパーこの匂いを辿って欲しいのだ」
アルガスが紅玉のついた首飾りをパークルーパーの鼻先に突き出す。あれはサフィアの所持品じゃろうか?
「はーい」
パークルーパーはその首飾りの匂いクンクンとしばらく嗅いで、今ワシらがおる路地裏の酒場付近の煉瓦道の匂いをクンクンと嗅ぐと
「この首飾りの匂いに、お酒の匂いが混ざった匂いがします。この匂いを辿れば探している方の元へたどり着けるのではないでしょうか」
パークルーパーは鼻を空に向かってピンと伸ばすと、スゥーっと音を立てて吸い込む。
「ここから北西に10キロ当たりに砂漠はありませんか、砂の匂いとさっきの匂いが混ざった匂いがします」
「スハラ砂漠か! でかしたパークルーパー」
アルガスがパークルーパーのモコモコの頭を撫でる。
「ほ、褒めてもらえました!」
嬉しそうにそう言うと、パークルーパーが牙を出して笑う。
「すぐに馬を出します。城に戻りましょう!」
アルガスの提案に満場一致で頷くワシ等じゃった。
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