爺さんチートでチートいい気分

猫野御飯

文字の大きさ
上 下
24 / 25
第二章 ククル奪還編

チャプター11 真夜中の決断

しおりを挟む

「起きるんじゃ! サルエル! ミカエル!」

 気持ち良さそうに鼾をかいて寝ているミカエルと、相変わらず言い訳めいた寝言を言っているサルエルを起こす。

「ふぁー、どうされました石頭さん。なんだか私、まだ寝足りない気がするのですが」

「そりゃそうじゃ、今は夜中じゃ」

「夜中!? どうされたんですかこんな夜更けに……」

 と、ミカエルが眠そうに目をこすっておる。
 サルエルはというと、さっさとベッドから出て立ち上がり、真剣な表情で何事かと成り行きを見守っておる。

「サフィアが帰ってこないんじゃ! アルガスの話だと何か事件に巻き込まれたのではないかという話なんじゃ!」

 ワシは興奮気味に言う。

「それは大変です! さっ、行きますよサルエル。あれ?」

 しかしミカエルの視線の先には、サルエルの姿はない。サルエルは既に身支度を済ませ、部屋の入り口で待機しておったのじゃった。

 ☆☆☆

「皆さん、こんな夜更けに申し訳ありません」

 アルガスが集まったワシ等に頭を下げる。
 あれから、支度を終えてアルガスの部屋に集合したワシ等じゃったが、そこには既に神渡の姿があったのじゃった。

「なんだか、眠れなくてな。城の中をうろついてたらアルガスと偶然会ったんだ。事情はアルガスから聞いた」

 神渡は何処か落ち着いた声でそう言ったのじゃった。
 
「ワシも事情はアルガスから聞いておる」

「わたしも先ほど石頭さんから伺いました。これからサフィアさん救出作戦という手はずでよろしいんでしょうか。サルエルも異論はないですね」

「勿論です」

「ご協力感謝致します」
 
 アルガスが再び頭を下げる。

「宛てはあるのか? 探すって言っても、無鉄砲に探しても見つからないだろ」

「はい、手立てはあります。バークルーパーおいで」

「はいはいアルガス様、お呼びでー」

 愛嬌のある声が天井から聞こえてきたかと思うと、ストンッと音を立てて着地する。
 そこには、モコモコとした羊のような被毛に、長い鼻。手にはタコの吸盤のようなものをつけた動物が二本足で直立しておったのじゃった。

「この子は神獣のパークルーパーです。この子のスキル【吸臭きゅうしゅう】は時間があまり経過していない新しい匂いを辿る事が出来ます。いなくなったばかりのサフィアの匂いならこの子の力で辿れます」

「パークルーパーです。皆さんよろしくお願いします! あ……」

 パークルーパーはちょこんと頭を下げると、ミカエルを見て短い声を出す。

「ミカエルさんお久しぶりです!」

「どうも、お久しぶりですね」

 ミカエルが笑顔で答える。

「ミカエル殿、パークルーパーと知り合いなのですか!」

「え、ええ。まぁ知り合いというか、生みの親といいますか」

「それは凄い! ミカエル殿は交友関係が広いのですね!」

 アルガスがミカエルをベタ褒めしよる。

「はいはい茶番はそこまで、さっさと行くぞ。サフィアに危険が迫ってる」

 神渡が鋭い目つきで牽制するのじゃった。

 ☆☆☆

「パークルーパー、これをお食べ」

 アルガスがパークルーパーの鼻先に、赤い木の実を乗せた手を添える。
 パークルーパーが木の実を長い鼻で巻き取り口に入れる。

「やっぱりテコの実は美味しいなー。アルガス様ありがとう! 吸臭!」

 パークルーパーの鼻が光輝く。


「パークルーパーちゃんは好物を食べる事でスキルを発動するようですね」

 と、ミカエルがパークルーパーのスキルの補足をする。

「パークルーパーこの匂いを辿って欲しいのだ」

 アルガスが紅玉のついた首飾りをパークルーパーの鼻先に突き出す。あれはサフィアの所持品じゃろうか?

「はーい」

パークルーパーはその首飾りの匂いクンクンとしばらく嗅いで、今ワシらがおる路地裏の酒場付近の煉瓦道の匂いをクンクンと嗅ぐと

「この首飾りの匂いに、お酒の匂いが混ざった匂いがします。この匂いを辿れば探している方の元へたどり着けるのではないでしょうか」

 パークルーパーは鼻を空に向かってピンと伸ばすと、スゥーっと音を立てて吸い込む。

「ここから北西に10キロ当たりに砂漠はありませんか、砂の匂いとさっきの匂いが混ざった匂いがします」

「スハラ砂漠か! でかしたパークルーパー」

 アルガスがパークルーパーのモコモコの頭を撫でる。

「ほ、褒めてもらえました!」

 嬉しそうにそう言うと、パークルーパーが牙を出して笑う。

「すぐに馬を出します。城に戻りましょう!」

 アルガスの提案に満場一致で頷くワシ等じゃった。
しおりを挟む
感想 1

あなたにおすすめの小説

システムバグで輪廻の輪から外れましたが、便利グッズ詰め合わせ付きで他の星に転生しました。

大国 鹿児
ファンタジー
輪廻転生のシステムのバグで輪廻の輪から外れちゃった! でも神様から便利なチートグッズ(笑)の詰め合わせをもらって、 他の星に転生しました!特に使命も無いなら自由気ままに生きてみよう! 主人公はチート無双するのか!? それともハーレムか!? はたまた、壮大なファンタジーが始まるのか!? いえ、実は単なる趣味全開の主人公です。 色々な秘密がだんだん明らかになりますので、ゆっくりとお楽しみください。 *** 作品について *** この作品は、真面目なチート物ではありません。 コメディーやギャグ要素やネタの多い作品となっております 重厚な世界観や派手な戦闘描写、ざまあ展開などをお求めの方は、 この作品をスルーして下さい。 *カクヨム様,小説家になろう様でも、別PNで先行して投稿しております。

どうしよう私、弟にお腹を大きくさせられちゃった!~弟大好きお姉ちゃんの秘密の悩み~

さいとう みさき
恋愛
「ま、まさか!?」 あたし三鷹優美(みたかゆうみ)高校一年生。 弟の晴仁(はると)が大好きな普通のお姉ちゃん。 弟とは凄く仲が良いの! それはそれはものすごく‥‥‥ 「あん、晴仁いきなりそんなのお口に入らないよぉ~♡」 そんな関係のあたしたち。 でもある日トイレであたしはアレが来そうなのになかなか来ないのも気にもせずスカートのファスナーを上げると‥‥‥ 「うそっ! お腹が出て来てる!?」 お姉ちゃんの秘密の悩みです。

巻き込まれ召喚されたおっさん、無能だと追放され冒険者として無双する

高鉢 健太
ファンタジー
とある県立高校の最寄り駅で勇者召喚に巻き込まれたおっさん。 手違い鑑定でスキルを間違われて無能と追放されたが冒険者ギルドで間違いに気付いて無双を始める。

魔喰のゴブリン~最弱から始まる復讐譚~

岡本剛也
ファンタジー
駆け出しの冒険者であるシルヴァ・ベルハイスは、ダンジョン都市フェルミでダンジョン攻略を生業としていた。 順風満帆とはいかないものの、着実に力をつけてシルバーランク昇格。 そしてついに一つの壁とも言われる十階層の突破を成し遂げた。 仲間との絆も深まり、ここから冒険者としての明るい未来が待っていると確信した矢先——とある依頼が舞い込んできた。 その依頼とは勇者パーティの荷物持ちの依頼。 勇者の戦闘を近くで見られることができ、高い報酬ということもあって引き受けたのだが、この一回の依頼がシルヴァを地獄の底に叩き落されることとなった。 ダンジョン内で勇者達からゴミのような扱いを受け、信頼していた仲間にからも見放され……ダンジョンの奥地に放置されたシルヴァは、匂いに釣られてやってきた魔物に襲われた。 魔物に食われながら、シルヴァが心の底から願ったのは勇者への復讐。 そんな願いが叶ったのか、それとも叶わなかったのか。 事実のほどは神のみぞ知るが、シルヴァは記憶を持ったままとある魔物に転生した。 その魔物とは、最弱と名高いゴブリン。 追い打ちをかけるような最悪な状況に常人なら心が折れてもおかしくない中、シルヴァは折れることなく勇者への復讐を掲げた。 これは最弱のゴブリンに転生したシルヴァが、最強である勇者への復讐を果たす物語。

異世界転生したら何でも出来る天才だった。

桂木 鏡夜
ファンタジー
高校入学早々に大型トラックに跳ねられ死ぬが気がつけば自分は3歳の可愛いらしい幼児に転生していた。 だが等本人は前世で特に興味がある事もなく、それは異世界に来ても同じだった。 そんな主人公アルスが何故俺が異世界?と自分の存在意義を見いだせずにいるが、10歳になり必ず受けなければならない学校の入学テストで思わぬ自分の才能に気づくのであった。 =========================== 始めから強い設定ですが、徐々に強くなっていく感じになっております。

特殊部隊の俺が転生すると、目の前で絶世の美人母娘が犯されそうで助けたら、とんでもないヤンデレ貴族だった

なるとし
ファンタジー
 鷹取晴翔(たかとりはると)は陸上自衛隊のとある特殊部隊に所属している。だが、ある日、訓練の途中、不慮の事故に遭い、異世界に転生することとなる。  特殊部隊で使っていた武器や防具などを召喚できる特殊能力を謎の存在から授かり、目を開けたら、絶世の美女とも呼ばれる母娘が男たちによって犯されそうになっていた。  武装状態の鷹取晴翔は、持ち前の優秀な身体能力と武器を使い、その母娘と敷地にいる使用人たちを救う。  だけど、その母と娘二人は、    とおおおおんでもないヤンデレだった…… 第3回次世代ファンタジーカップに出すために一部を修正して投稿したものです。

魔力∞を魔力0と勘違いされて追放されました

紗南
ファンタジー
異世界に神の加護をもらって転生した。5歳で前世の記憶を取り戻して洗礼をしたら魔力が∞と記載されてた。異世界にはない記号のためか魔力0と判断され公爵家を追放される。 国2つ跨いだところで冒険者登録して成り上がっていくお話です 更新は1週間に1度くらいのペースになります。 何度か確認はしてますが誤字脱字があるかと思います。 自己満足作品ですので技量は全くありません。その辺り覚悟してお読みくださいm(*_ _)m

ド田舎からやってきた少年、初めての大都会で無双する~今まで遊び場にしていたダンジョンは、攻略不可能の規格外ダンジョンだったみたい〜

むらくも航
ファンタジー
ド田舎の村で育った『エアル』は、この日旅立つ。 幼少の頃、おじいちゃんから聞いた話に憧れ、大都会で立派な『探索者』になりたいと思ったからだ。 そんなエアルがこれまでにしてきたことは、たった一つ。 故郷にあるダンジョンで体を動かしてきたことだ。 自然と共に生き、魔物たちとも触れ合ってきた。 だが、エアルは知らない。 ただの“遊び場”と化していたダンジョンは、攻略不可能のSSSランクであることを。 遊び相手たちは、全て最低でもAランクオーバーの凶暴な魔物たちであることを。 これは、故郷のダンジョンで力をつけすぎた少年エアルが、大都会で無自覚に無双し、羽ばたいていく物語──。

処理中です...