爺さんチートでチートいい気分

猫野御飯

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第一章 爺さん旅立ち編

チャプター13 新たな仲間

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 ボクは暗がりの中をとっとこと走っていた。
 チッコがしたくなる時いつも思うのは、生まれ変わったら錬金術師になりたいなーという事だ。
 だって、チッコをお金に変身させられるかも知れないんだ。だから凄い錬金術師になりたいと思うんだよね。

 とっとこ走っていると、細い暗がりの道の先に明かりが灯っているのが見えた。

 ――あそこがチッコスポットだ!

 ボクは確信してとっとこ走る。
 冷んやりとしている洞窟内の硬い土に肉球が触れている、その感覚が病みつきになりそうだ。
 漏れるー、と尻尾を股に挟んで爆走している矢先、明かりの中に人影らしきものが見えたんだ。

「おっほう、後一歩で漏れる所だったぜ」

「おい! ぼやっとしてんなよ!!」

 白い覆面をつけた屈強な男2人がチッコスポットから出てきた。
 ボクはハッとして立ち止まる、今にも漏れそうだ。

 ――あの人達はまさか……、ボクにお金をくれる為に出待ちしている人達!?

 ボクは確信していた、お金の使者だ間違いない。

「おっ! あれは神ッ……」 

「馬鹿! 大声出すな!!」

 片方の覆面男が、もう片方の覆面男の頭をポカッと叩く。

 ――どうしたんだろう? 喧嘩?

 ボクはそろり、そろりと近寄っていく。
 覆面男2人が「へへへへ」と笑いながら、おいでおいでする。

「初めましてククルでっス!」

 くるくるっと一回転して、尻尾をプリンっと降る。
 パチパチと拍手が返ってくる。

「おぉー可愛いねぇー、芸まで出来て。こりゃー芸達者で金に……」

「こら!」

 ――金? 今お金って聞こえたヨ?

「あの、お金がどうかしたんですか? ボクお金大好きだヨ!」

 ボクは嬉しさのあまり尻尾を左右に振る。お金の話で興奮しているようだ。

「ほぅ、坊主お金が好きなのか。だったら俺たちに付いてくれば、たんまりとお金が貰えるぜ。ゴールデンシティを知ってるか?」

 ポカッと子分らしき覆面男を叩いていた、親分覆面男が野太い声で言い放つ。

「ゴ、ゴ、ゴールデンシティ!? し、知らないよぅ。でも凄いお金が盛り沢山なお名前だね! ボクをそこに連れて行ってくれるのカイ?」

 ボクは期待で胸が膨らみまくっていた。
 そんなお金が盛り沢山な場所があるなら、そこで暮らしたいとさえ思った。

「へへへへへ、可愛いお返事だねぇ。じゃあ坊や、この汚れた道具袋の中でお昼寝でもしてな。目が覚めたらゴールデンシティに着いてるぜ」

「うん! わかったヨ!」

 元気にお返事して、ボクは汚れた道具袋の中にスポンッと入る。
 使い古されていて少し臭いけど我慢だ。
 袋の中は真っ暗でお昼寝が進みそうだ。


                    ★★★


「ククル、遅いのぅ」

 神渡とミカエルの取っ組み合いを眺めながら、ククルがとっとこ走っていった暗がりを見やる。

「神渡さん、ギブ! ごめんなさい間もなく首折れます……」

「折れたら折れたですぐに蘇生出来るだろう、持ち前のゴッドハンドでな!」

「いや、それが……今は諸事情があって蘇生系のスキルも使えないのですよ」

「マ、マジか!」

 神渡がヘッドロックしていた腕を離すと、ミカエルがその場に崩れ落ちる。

「神を殺したなんて噂が経ったら大変だからな。ここら辺にしといてやる」

「はぁ、はぁ、あ、有難う御座います……。でも神渡さんならマジで簡単に神殺し出来そうですよね。プププッ」

「てんめぇー!」

 地獄の追いかけっこが再開しそうな時、事件は起こったのじゃった。
 壁に何かがコツンとぶつかる音がしてハっと我に返る。
 何やら丸められた紙のような物が目に入る。
 ヨロヨロと近づいてみるとやはり丸められた紙じゃった。
 ワシは何気なく紙を開いてみる。
 そして驚愕するのじゃった。

 ――神獣は頂いた。神獣さらいのゴレム――

 そう簡潔に書かれておったのじゃった。

「た、大変じゃ! ク、クククが……」

 餅が喉に詰まったかのように動揺してしまう。
 孫がさらわれて身代金を要求されても、ここまでは動揺せんと思うぐらいの動揺ぶりじゃった。

「なんだよ。爺さんどうした?」

 ミカエルを追いかけ回していた神渡が、ワシの動揺した様子に気づき声をかけてくる。

「クククが、さわられたんじゃ!」

「あんだって、さわられた? 爺さん痴漢にでもあったのか?」

 ――くっ、なんてデリカシーのない女なんじゃ!

 ワシは動揺のあまり自分の入れ歯が外れていた事に気づかなかったのじゃった。
 入れ歯を嵌めて改めて深呼吸し言い放つ。

「ク、ククルがさらわれたんじゃ!」

 くちゃくちゃになった紙を頭上に掲げ皆に見せ示す。

「な、なんだって!?」

 一番動揺したのが神渡じゃった。
 ミカエルとサルエルはそうですか、といった涼しそうな表情をしよる。

「まぁ、仕方ないですね。また神獣ガチャすればいいでしょう。スーパーレアはなかなか当たりにくいですがね」

「そっすね」

 素気なく答えるミカエルとサルエルの声をかき消すように断末魔が響いたのじゃった。

「ふっざけんなよぉぉぉぉぉー!!!!」

 神渡は叫び終えると、荒い呼吸を整えながら続けざまに

「お前らなんなんだよ!! またガチャればいいとかそういう問題じゃないだろ!? ククルっていうかけがえのない存在になぁ、代わりなんてないんだよっっ!!!」

 感動じゃった、そんなにも神渡がククルの事を思ってくれていたなんて涙がちょちょぎれそうじゃった。

「み、神渡。ありがとうのぅ……」

 声にならない声を絞りだし神渡の手を握り締める。先程まではグローブのように大きく怖いイメージの神渡の手じゃったが、今はとても暖かい手に感じるようじゃった。

「神渡さんどうしたんですかそんな力説して。そもそもククルちゃんとは会ったばかりで、そんな怒る事ではないですよ? ねぇ、サルエル」

「そっすね」

 同意を求められたサルエルも素気なく答えよる。

「まさか神渡さんモフモフ好きだからって、モフモフに意地悪するような人を許せないんですか? 正義の味方的な?」

「ち、ちっげぇよ! そんなんじゃねぇよ」

 神渡が顔を真っ赤にして否定する。

「ただ、弱い者イジメみたいなのが好きじゃないだけだよ」

「えーそれはおかしいですねぇ。私は存分にイジめられてますけどねぇー」

 肩をオーバーにすくめるジェスチャーでミカエルが不満を吐露する。

「おめぇは強ぇだろうが!」

 神渡のツッコミにミカエルが

「以前はね」

 と冷静に答える。

「だー! もうどっちにしても助けるしか選択肢はねぇんだよ! 文句がある奴はあたしがぶちのめす! 異論はないな?」

 周りを鋭い眼光で睨みつける。その迫力に気圧されて押し黙ったワシをよそにミカエルが淡々と答えよる。

「まぁ一度決めたら自分の意志は死んでも貫き通すんでしょうし、仕方ありませんねぇ。でもこのギルドはどうされるんですか? まさか放置とか? そんな無責任な事は出来ないですよねぇ。一応ギルドマスターなんですから」

 ミカエルの嫌味ったらしい物言いに臆する様子もなく、神渡は鼻で笑い飛ばす。

「なんだよそんな心配かよ、女々しいなぁーおめぇは。おい剛子ごうこ! いるか?」

 ぶぁーい。と野太い声が地面の奥から聞こえ、地面が大地震が起きたかのようにグラグラと揺れる。
 ワシはバランスを崩しその場に崩れ落ちる。
 そして、その刹那地割れが起きたのじゃった。
 地割れはみるみるうちに大きくなる。
 ドンッと何かが弾ける音がしたかと思うと、視界が土煙で覆われる。

「な、何が起こったんじゃ!?」

 同様するワシの声をかき消すように野太い声が辺りに響く。

「ぶわぁーあ。おねいぢゃん、あだじの事呼んだぁー」

 ワシは突然の出来事に心臓が跳ね上がった。
 なんと目の前に神渡と全く同じ顔をした女がいたのじゃった。
 そして驚くべきはその大きさじゃった。
 神渡の体格の3倍はある大女が、土にまみれた眠そうな眼をこすっていたのじゃった。

「おお、悪いな剛子。あたしはちょっと旅に出る、このギルドは頼んだぞ」

「もぅ、おねえぢゃんはいづも突然なんだがらー。剛子、お土の中でお昼寝してただけだのにぃー」

 その大女はまるで少女のような口調で抗議する。
 目の前の大女が欠伸をする度に、巨大な掃除機に吸い込まれているかのように大女の方向に吸い込まれそうになり、大女が溜息をつくと、とてつもない暴風に吹き飛ばされそうになるようじゃった。

「悪いな、昼寝の最中に。ああ、そうだ。とりあえずこいつらに自己紹介してくれ」

「ぶわぁーい。皆さん初めまじでぇー。妹の神渡剛子みわたりごうこでぇーず。趣味はお昼寝よろじぐー」

 鼻水をずるずると垂らしながら喋る神渡そっくりの妹、神渡剛子は日本昔話に登場する山姥を連想させる巨大さじゃった。

「まぁまぁ、とても個性的な妹さんで。まるで化け物のようですねぇ」

「もう、ミガエルさんは冗談が上手いんだがらぁー。初めて会うわげじゃねぇでしょーう」

 剛子がミカエルの肩を冗談めかして小突く。
 ひゅんっと空気が震える音がしたかと思うと、ミカエルの姿が見えなくなる。
 次の瞬間ドンッと洞窟の壁から鈍い音がしたかと思うと、壁に亀裂が走り、壁の一部が亀裂ごと凄まじい勢いで崩れ落ちる。
 崩れ落ちた瓦礫の中からやっとの思いで這い出てきたミカエルが言い放つ。

「……剛子ちゃん、手加減は覚えた方がいいですよ。死にますよ?」

「あっはははー。ミガエルさんはユニーグだなぁー」

 剛子はミカエルの惨事を豪快に笑い飛ばしよる。

「まぁ、死んだらその時だよな。わざとじゃないもんな剛子」

 姉である神渡洋子も可笑しそうに笑いながら剛子に言いよる。

「いくつ命があっても足りませんねぇ」

 ミカエルは呆れたように頭をぽりぽりとかくのじゃった。

 ――神渡洋子が仲間に加わりました――
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