10 / 25
第一章 爺さん旅立ち編
チャプター10 ギルドに向かう道の途中
しおりを挟む
「マリアンヌさん、ちょっとよろしいでしょうか」
「あら、お連れのお方。なにかしら?」
旧村長宅から出てきた爺さんとマリアンヌさんに声をかけ微笑みます。
「おぉ、ミカエルどうしたんじゃ?」
不思議そうにしている爺さんをよそに、私はマリアンヌさんに諭すように話しかけます。
「村長会議が長引いてもう夕方近いですし、こんな可憐な乙女が外を歩くには危ない時間です。場所を教えて頂ければギルドまでは私がお連れしますよ」
「まぁ! それは有難いですわ」
マリアンヌさんが頬に手を当て上機嫌で答えます。
――作戦成功ですね。
「そう言えばわたくしギルドのパンフレットを持っていますの。ちょっとお待ち下さいまし」
マリアンヌさんはゴソゴソと緑の布のカバンを漁り、中からパンフレットを取り出し私に差しだします。
≪ようこそギルドへ! ~冒険の手引き~≫と表紙に書かれたパンフレットを微笑みながら受け取ります。
「後ろに地図が乗っていますの。それを参考になさって下さいまし。それでは!」
恐らく喋る事は好きだけど面倒な事は嫌いなのでしょう。
マリアンヌさんは意外にもあっさりとその場を去りました。
「いいんですか? 方向音痴なのに」
サルエルが私の耳元で囁きます。
私は微笑みアイコンタクトで返します。
「まぁ、なるようになりますよ」
そう一人事のように呟くと、爺さんに声をかけます。
「さぁ石頭さん行きましょうか」
★★★
「あっれ~おかしいなぁ。こっちじゃなかったみたいですね~」
「はうぁーっ!?」
吐血をしそうな勢いで爺さんが呻きます。
――フフフフ。面白いですね本当。
「あ、でもやっぱこっちで合ってるかも、ある意味で」
「ほ、本当かのぅ!?」
「あ、でも違うかも」
「はうぁーっ!?」
そんなやり取りを冷めた眼でサルエルが見ていますが、気にしません。
爺さんの体力を考え、休み休み移動します。
獣道を抜けて山を下り、タビダッチの村とは山を挟んで丁度反対側にたどり着こうとしていました。
こんなに村から離れた殺風景な場所にギルドがあるなんて、おかしいと爺さんは疑問に思わないのでしょう。
私の後を杖を突きながら、必死な表情で着いてきます。
マリアンヌさんからもらったパンフレットは、とっくのとうに捨ててあります。
パンフレットの裏に書かれていたギルドまでの地図は単純明快でした。
旧村長宅を南に下り、村の入り口脇の小道を抜けた先を示していました。
――もう、そろそろですね。
私が立ち止まると爺さんとサルエルも立ち止まります。
ここで待っていれば……。
「おぉ、これはいいカモじゃねぇか」
ズリッと分厚いブーツを引きずりながら下品な輩が現れました。
私が待っていたのは勿論、こんな下品な連中ではないのです。
「な、なんじゃお主らは!」
爺さんが驚きの声を上げます。
「野盗ですね。それもかなりの集団の」
「や、やとうじゃと!?」
爺さんが困惑しきった様子で叫びます。
「まぁ、悪いこたぁ言わねぇ。有り金全部置いていきゃあ、命だけは助けてやる」
「な、なんて奴らじゃ。こんな爺さんを相手に。振り込め詐欺より悪質じゃて」
「ケッケッケッケッ。よくわからねぇが、じじいとりあえず有り金全部出しな!」
脅しのつもりでしょうか。野盗が手に持っていた短剣を爺さんの喉元に突きつけます。
「ふぬぬ……」
動けずにいる爺さんをよそに、私は素知らぬ顔をします。
サルエルが痺れを切らした様子で私に囁きます。
「まずいです。ミカエル様どうします」
「勿論どうもしませんよ」
「はぁ?」
呆れた様子でサルエルが顔をしかめます。
そもそも何かしたくても、チート能力のない私達には助ける術等ないのです。
爺さんを信じるしかありません。
「お主ら……」
フルフルと爺さんが震えています。
「ヘッヘッヘッヘッ。どうした、じじい怖くて震えが止まらないのか?」
一番タチの悪そうな顔をした野党が爺さんに言い放ちます。
「怖くて震えてなどいない。ワシは怒っておるんじゃぁ!」
その瞬間でした。
爺さんの身体から眩い光が放たれると、その光は天に向かって伸びます。
瞬く間に爺さんの頭上にドス黒い雲が集まり、ビリリッ、バチバチッという音がして、ドス黒い雲間に雷が激しく蠢いている様子が見えました。
その刹那
「ぎゃぁあああああああああ!!」
激しく叫ぶ野盗の声をかき消すかのように、雷鳴が轟き爺さんの周囲に大地を焦がすような物凄い量の雷が落ちました。
野盗の服は一瞬にして燃え上がり、皮膚の表面は黒く焼け焦げ、その場にいた大勢の野党が次から次に地面に向かって倒れていきました。
――裁きの雷ですね。
ミカエルは気づいたようで「あれは、ミノフスのスキルのようですね」と私に呟きます。
ミノフスはまだ子供の天使ですが、母親が雷を守護している神なので雷に関するスキルは突出しています。
「な、なにが起こったんじゃあー!」
地面に倒れている野盗達を揺さぶりながら、爺さんが叫びます。
「スキルですよ。石頭さんの」
「スキル?」
首を傾げ、聞き返す爺さんにやんわりと説明します。
「まぁ、魔法のようなものです」
「ま、魔法じゃと!? ワシは魔法が使えるお爺ちゃんという事か!」
自分でも信じられないといった顔で辺りを見回し、自分の手を不思議そうに見ています。
――スキルの使い方を知られては困るので、これ以上は秘密ですけどね。
意識を失っている野盗が眼を覚まさないうちにその場を去ろう、そう提案をしようとした時後ろの山からゴゴゴゴゴゴ、と地鳴りのような音が聞こえてきました。
後ろを振り返ると山の窪みにはまっている大きな岩が、地鳴りと共に土煙を巻き上げながらゆっくりと横にスライドしているようでした。
「な、なな、なんじゃぁー! 今度は何が起こるんじゃあ!」
夜の冷たい風が吹き抜ける中、慌てふためく爺さんの声が夜空に響き渡ったのです。
「あら、お連れのお方。なにかしら?」
旧村長宅から出てきた爺さんとマリアンヌさんに声をかけ微笑みます。
「おぉ、ミカエルどうしたんじゃ?」
不思議そうにしている爺さんをよそに、私はマリアンヌさんに諭すように話しかけます。
「村長会議が長引いてもう夕方近いですし、こんな可憐な乙女が外を歩くには危ない時間です。場所を教えて頂ければギルドまでは私がお連れしますよ」
「まぁ! それは有難いですわ」
マリアンヌさんが頬に手を当て上機嫌で答えます。
――作戦成功ですね。
「そう言えばわたくしギルドのパンフレットを持っていますの。ちょっとお待ち下さいまし」
マリアンヌさんはゴソゴソと緑の布のカバンを漁り、中からパンフレットを取り出し私に差しだします。
≪ようこそギルドへ! ~冒険の手引き~≫と表紙に書かれたパンフレットを微笑みながら受け取ります。
「後ろに地図が乗っていますの。それを参考になさって下さいまし。それでは!」
恐らく喋る事は好きだけど面倒な事は嫌いなのでしょう。
マリアンヌさんは意外にもあっさりとその場を去りました。
「いいんですか? 方向音痴なのに」
サルエルが私の耳元で囁きます。
私は微笑みアイコンタクトで返します。
「まぁ、なるようになりますよ」
そう一人事のように呟くと、爺さんに声をかけます。
「さぁ石頭さん行きましょうか」
★★★
「あっれ~おかしいなぁ。こっちじゃなかったみたいですね~」
「はうぁーっ!?」
吐血をしそうな勢いで爺さんが呻きます。
――フフフフ。面白いですね本当。
「あ、でもやっぱこっちで合ってるかも、ある意味で」
「ほ、本当かのぅ!?」
「あ、でも違うかも」
「はうぁーっ!?」
そんなやり取りを冷めた眼でサルエルが見ていますが、気にしません。
爺さんの体力を考え、休み休み移動します。
獣道を抜けて山を下り、タビダッチの村とは山を挟んで丁度反対側にたどり着こうとしていました。
こんなに村から離れた殺風景な場所にギルドがあるなんて、おかしいと爺さんは疑問に思わないのでしょう。
私の後を杖を突きながら、必死な表情で着いてきます。
マリアンヌさんからもらったパンフレットは、とっくのとうに捨ててあります。
パンフレットの裏に書かれていたギルドまでの地図は単純明快でした。
旧村長宅を南に下り、村の入り口脇の小道を抜けた先を示していました。
――もう、そろそろですね。
私が立ち止まると爺さんとサルエルも立ち止まります。
ここで待っていれば……。
「おぉ、これはいいカモじゃねぇか」
ズリッと分厚いブーツを引きずりながら下品な輩が現れました。
私が待っていたのは勿論、こんな下品な連中ではないのです。
「な、なんじゃお主らは!」
爺さんが驚きの声を上げます。
「野盗ですね。それもかなりの集団の」
「や、やとうじゃと!?」
爺さんが困惑しきった様子で叫びます。
「まぁ、悪いこたぁ言わねぇ。有り金全部置いていきゃあ、命だけは助けてやる」
「な、なんて奴らじゃ。こんな爺さんを相手に。振り込め詐欺より悪質じゃて」
「ケッケッケッケッ。よくわからねぇが、じじいとりあえず有り金全部出しな!」
脅しのつもりでしょうか。野盗が手に持っていた短剣を爺さんの喉元に突きつけます。
「ふぬぬ……」
動けずにいる爺さんをよそに、私は素知らぬ顔をします。
サルエルが痺れを切らした様子で私に囁きます。
「まずいです。ミカエル様どうします」
「勿論どうもしませんよ」
「はぁ?」
呆れた様子でサルエルが顔をしかめます。
そもそも何かしたくても、チート能力のない私達には助ける術等ないのです。
爺さんを信じるしかありません。
「お主ら……」
フルフルと爺さんが震えています。
「ヘッヘッヘッヘッ。どうした、じじい怖くて震えが止まらないのか?」
一番タチの悪そうな顔をした野党が爺さんに言い放ちます。
「怖くて震えてなどいない。ワシは怒っておるんじゃぁ!」
その瞬間でした。
爺さんの身体から眩い光が放たれると、その光は天に向かって伸びます。
瞬く間に爺さんの頭上にドス黒い雲が集まり、ビリリッ、バチバチッという音がして、ドス黒い雲間に雷が激しく蠢いている様子が見えました。
その刹那
「ぎゃぁあああああああああ!!」
激しく叫ぶ野盗の声をかき消すかのように、雷鳴が轟き爺さんの周囲に大地を焦がすような物凄い量の雷が落ちました。
野盗の服は一瞬にして燃え上がり、皮膚の表面は黒く焼け焦げ、その場にいた大勢の野党が次から次に地面に向かって倒れていきました。
――裁きの雷ですね。
ミカエルは気づいたようで「あれは、ミノフスのスキルのようですね」と私に呟きます。
ミノフスはまだ子供の天使ですが、母親が雷を守護している神なので雷に関するスキルは突出しています。
「な、なにが起こったんじゃあー!」
地面に倒れている野盗達を揺さぶりながら、爺さんが叫びます。
「スキルですよ。石頭さんの」
「スキル?」
首を傾げ、聞き返す爺さんにやんわりと説明します。
「まぁ、魔法のようなものです」
「ま、魔法じゃと!? ワシは魔法が使えるお爺ちゃんという事か!」
自分でも信じられないといった顔で辺りを見回し、自分の手を不思議そうに見ています。
――スキルの使い方を知られては困るので、これ以上は秘密ですけどね。
意識を失っている野盗が眼を覚まさないうちにその場を去ろう、そう提案をしようとした時後ろの山からゴゴゴゴゴゴ、と地鳴りのような音が聞こえてきました。
後ろを振り返ると山の窪みにはまっている大きな岩が、地鳴りと共に土煙を巻き上げながらゆっくりと横にスライドしているようでした。
「な、なな、なんじゃぁー! 今度は何が起こるんじゃあ!」
夜の冷たい風が吹き抜ける中、慌てふためく爺さんの声が夜空に響き渡ったのです。
0
お気に入りに追加
62
あなたにおすすめの小説
異世界転生!ハイハイからの倍人生
カムイイムカ(神威異夢華)
ファンタジー
僕は死んでしまった。
まさか野球観戦で死ぬとは思わなかった。
ホームランボールによって頭を打ち死んでしまった僕は異世界に転生する事になった。
転生する時に女神様がいくら何でも可哀そうという事で特殊な能力を与えてくれた。
それはレベルを減らすことでステータスを無制限に倍にしていける能力だった...
貴族家三男の成り上がりライフ 生まれてすぐに人外認定された少年は異世界を満喫する
美原風香
ファンタジー
「残念ながらあなたはお亡くなりになりました」
御山聖夜はトラックに轢かれそうになった少女を助け、代わりに死んでしまう。しかし、聖夜の心の内の一言を聴いた女神から気に入られ、多くの能力を貰って異世界へ転生した。
ーけれども、彼は知らなかった。数多の神から愛された彼は生まれた時点で人外の能力を持っていたことを。表では貴族として、裏では神々の使徒として、異世界のヒエラルキーを駆け上っていく!これは生まれてすぐに人外認定された少年の最強に無双していく、そんなお話。
✳︎不定期更新です。
21/12/17 1巻発売!
22/05/25 2巻発売!
コミカライズ決定!
20/11/19 HOTランキング1位
ありがとうございます!
異世界転生した俺は平和に暮らしたいと願ったのだが
倉田 フラト
ファンタジー
「異世界に転生か再び地球に転生、
どちらが良い?……ですか。」
「異世界転生で。」
即答。
転生の際に何か能力を上げると提案された彼。強大な力を手に入れ英雄になるのも可能、勇者や英雄、ハーレムなんだって可能だったが、彼は「平和に暮らしたい」と言った。何の力も欲しない彼に神様は『コール』と言った念話の様な能力を授け、彼の願いの通り平和に生活が出来る様に転生をしたのだが……そんな彼の願いとは裏腹に家庭の事情で知らぬ間に最強になり……そんなファンタジー大好きな少年が異世界で平和に暮らして――行けたらいいな。ブラコンの姉をもったり、神様に気に入られたりして今日も一日頑張って生きていく物語です。基本的に主人公は強いです、それよりも姉の方が強いです。難しい話は書けないので書きません。軽い気持ちで呼んでくれたら幸いです。
なろうにも数話遅れてますが投稿しております。
誤字脱字など多いと思うので指摘してくれれば即直します。
自分でも見直しますが、ご協力お願いします。
感想の返信はあまりできませんが、しっかりと目を通してます。
45歳のおっさん、異世界召喚に巻き込まれる
よっしぃ
ファンタジー
2月26日から29日現在まで4日間、アルファポリスのファンタジー部門1位達成!感謝です!
小説家になろうでも10位獲得しました!
そして、カクヨムでもランクイン中です!
●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●
スキルを強奪する為に異世界召喚を実行した欲望まみれの権力者から逃げるおっさん。
いつものように電車通勤をしていたわけだが、気が付けばまさかの異世界召喚に巻き込まれる。
欲望者から逃げ切って反撃をするか、隠れて地味に暮らすか・・・・
●●●●●●●●●●●●●●●
小説家になろうで執筆中の作品です。
アルファポリス、、カクヨムでも公開中です。
現在見直し作業中です。
変換ミス、打ちミス等が多い作品です。申し訳ありません。
転生貴族のハーレムチート生活 【400万ポイント突破】
ゼクト
ファンタジー
ファンタジー大賞に応募中です。 ぜひ投票お願いします
ある日、神崎優斗は川でおぼれているおばあちゃんを助けようとして川の中にある岩にあたりおばあちゃんは助けられたが死んでしまったそれをたまたま地球を見ていた創造神が転生をさせてくれることになりいろいろな神の加護をもらい今貴族の子として転生するのであった
【不定期になると思います まだはじめたばかりなのでアドバイスなどどんどんコメントしてください。ノベルバ、小説家になろう、カクヨムにも同じ作品を投稿しているので、気が向いたら、そちらもお願いします。
累計400万ポイント突破しました。
応援ありがとうございます。】
ツイッター始めました→ゼクト @VEUu26CiB0OpjtL
元おっさんの俺、公爵家嫡男に転生~普通にしてるだけなのに、次々と問題が降りかかってくる~
おとら@ 書籍発売中
ファンタジー
アルカディア王国の公爵家嫡男であるアレク(十六歳)はある日突然、前触れもなく前世の記憶を蘇らせる。
どうやら、それまでの自分はグータラ生活を送っていて、ろくでもない評判のようだ。
そんな中、アラフォー社畜だった前世の記憶が蘇り混乱しつつも、今の生活に慣れようとするが……。
その行動は以前とは違く見え、色々と勘違いをされる羽目に。
その結果、様々な女性に迫られることになる。
元婚約者にしてツンデレ王女、専属メイドのお調子者エルフ、決闘を仕掛けてくるクーデレ竜人姫、世話をすることなったドジっ子犬耳娘など……。
「ハーレムは嫌だァァァァ! どうしてこうなった!?」
今日も、そんな彼の悲鳴が響き渡る。
チートがちと強すぎるが、異世界を満喫できればそれでいい
616號
ファンタジー
不慮の事故に遭い異世界に転移した主人公アキトは、強さや魔法を思い通り設定できるチートを手に入れた。ダンジョンや迷宮などが数多く存在し、それに加えて異世界からの侵略も日常的にある世界でチートすぎる魔法を次々と編み出して、自由にそして気ままに生きていく冒険物語。
成長チートと全能神
ハーフ
ファンタジー
居眠り運転の車から20人の命を救った主人公,神代弘樹は実は全能神と魂が一緒だった。人々の命を救った彼は全能神の弟の全智神に成長チートをもらって伯爵の3男として転生する。成長チートと努力と知識と加護で最速で進化し無双する。
戦い、商業、政治、全てで彼は無双する!!
____________________________
質問、誤字脱字など感想で教えてくださると嬉しいです。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる