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一章

四話 初めてのポーション製造

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 素材屋から帰ってきた私は早速工房へ。
 レギュラーポーション(標準ポーション)の製造に取り掛かる。
 けれど問題はどうやって作るのかだけど……。
 ふと、頭の中にレギュラーポーションの作り方のイメージが浮かぶ。
 そして工房にある見た事がないはずの器具の数々の使い方が手に取るように解る。
 
 ――創薬スキルの効果なのかしら、頭が冴えて不思議な気分だわ。

 まるで科学の実験室のような工房内の棚から丸形の大き目のフラスコを取り出す。
 そこに先ほど素材屋で購入した湿草しっそうを入れる。
 鉄製の四脚台の上に同じく鉄製の網を載せ、更にその上に湿草が入った丸形フラスコを乗せる。その丁度真下にアルコールランプを置き火をつける。
 ゆっくりとアルコールランプの火がフラスコを熱していく。
 湿り草からじわじわと水分がフラスコ内部に流れだして溜まっていく。
 そして、何故かその水分が蒸発しない事を私は頭で理解していて、そのままの状態で放置し次の作業に取り掛かる。
 小型のすり鉢に鮮度Cのアスピ草を入れて、すりこ木棒でゴリゴリとアスピ草を砕いていく。
 アスピ草は水分を含んでいないのですり鉢の中で粉状になった。
 なんというか牧草を雨で蒸したような緑臭さが工房内に漂う。
 ポーション製造してる感あるな、微笑ましい気持ちになる。
 そして、先ほどのフラスコから水が溢れそうになっている事に気づく。

「いけない!」

 私は手袋をはめて慌ててフラスコを網から下ろす。
 湿草はこの体積の中に一体どうやってこんなに水分を貯めれるのというぐらいに貯蔵出来る。
 それは勿論無限ではないけれど、10束の湿り草で1リットルぐらいの水分を余裕で賄えるのだという事実を私は何故か知っている。
 そして、レギュラーポーション製造の最終段階【融合】湿草の新鮮な水分と、先ほど粉上にしたアスピ草を混ぜ合わせ一つの液体にする作業だ。
 これは、ミキサー的なものがあるのかしら? と期待したけれど、私が迷いなく取り出したものはかなり大きめの鉄製のシェイカーだった。
 容量が結構あり、先ほどの湿草の水分1リットル程度は十分に収まりそうだった。
 私は、充分に冷めた自然の力でろ過された水をシェイカーに注ぎ込み、粉上にしたアスピ草粉末を投入する。
 そして――。

「シェイクじゃぁー!!」

 一重おばちゃん、まるでバーテンダー気分。勿論バーテンダーが扱うシェイカーより大きいし、絵的にちょっと怖いし腕は疲れるけど……。
 思いっきり上下に振る。
 勢い良く振っていると、シェイカーの中でボンッと小さな破裂音がしてびびる……。
 シェイカーの蓋を開けるとモワモワと煙が立ち上ってくる。
 先ほどの牧草臭は和らいでいて、どちらかというハーブっぽい匂いが漂ってくる。

「あら、結構良い匂いじゃない」

 私は出来上がった液体を棚から取り出した小瓶に漏斗を通して流し込む。
 薄い緑色の、青汁を薄めたような液体が入った小瓶が完成する。
 そしてチャラララーンと効果音が鳴り出来上がったポーション付近にメッセージが浮かび上がる。

 ※レギュラーポーション☆が出来上がりました! 効果:体力回復(微)

 私は☆の意味を知りたくて、ヘルプ画面を開く。

 ヘルプ――☆は出来上がったポーションの完成度を示しています。☆の数は素材の鮮度やスキルレベルによって変化します。☆の数によって回復量に変化があり、追加効果が発生します。
 ☆一つは体力回復(微)。☆☆二つは体力回復(小)☆☆☆3つは体力回復(中)・止血効果(小)☆☆☆☆4つは体力回復(大)・止血効果(中)。☆☆☆☆☆5つは体力回復(全)・止血効果(大)。
 ☆5つになればあなたも立派な薬師☆5つを目指しましょう!
 
 ありがとうヘルプ画面。とても解りやすい解説よ。
 そうか、私はまだスキルレベルが低く経験が浅いのと、素材の鮮度が良くないから☆1つのポーションしか作る事が出来ないのね。精進せねば。
 初のポーション製造を終えて一息ついていると、チャラララン♪ と効果音が鳴って目の前に文字が浮かび上がる。

 ――創薬のスキルレベルが2に上がりました。毒消しポーションを創薬出来るようになりました

 ――素材鑑定のスキルレベルが2に上がりました。追加効果【モンスターの心得】を取得しました。

 あら、レベルが上がったのね。ん、待てよ【モンスターの心得】って何よ?
 ステータス画面を開く。
 ステータス画面の創薬の文字の横に赤字で【モンスターの心得】と追加で表示されている。
 私は【モンスターの心得】の横の?マークを押してヘルプを開く。

 ヘルプ――素材鑑定スキルレベル2の追加効果【モンスターの心得】について。創薬スキルレベル2で取得可能。モンスターを創薬の素材として利用出来るか判別する事が出来る。

 モンスターを創薬の素材に出来るか判別する事が出来るですって!! 何よそれ、めっちゃ面白スキルじゃない。
 そう言えば、私ずっと思ってたのよね……。あのプニプニしたスライムって奴、何かこう肌に優しそうというか浸透しそうというかジェル? みたいにも使えそうだし、接着効果もありそうな……。
 待って、するってーと……!? 私は突然閃いた。そうだ、どうして今の今まで気づかなかったんだろう、スライムってまさに"あれ"の素材になる為に存在しているような生き物じゃない!

「ふっふっふっふっふ」

 面白くなってきたわよ。一重おばちゃん大逆転への序章よ!
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