3 / 10
一章
一話 一重おばちゃん転生する。
しおりを挟む
「う、うーん……」
目が覚めて身体を伸ばす。何だか身体が軽い、若いころに戻ったようだ。
手術成功したのね、もしかしたら二重になってたりして、とほのかな期待を抱いたけれどその期待はすぐにへし折られる。
「……えっ、ここ何処?」
レンガ造りの温もりのある建物。私の住んでいた世界では見た事のない植物が飾られている。
ベッドから身体を起こすと、大分年期の入ったくすんだ木製の床で何やらモフモフした生き物が右往左往していた。
その生き物は、私の顔を見るなり飛びついてくる。
「きゃっ!? ちょっと何、どうしたのよあんた、うふふっ」
ペロペロと顔を舐めてくる。小型犬のようにも見えなくはないけれど犬とは違って顔はまん丸だ。
フワフワとしていて意外と軽い。ぺちゃっと潰れた鼻に、どんぐりのようにまん丸な瞳をテカテカと輝かせている。
お尻についた尻尾を振っている様は犬のようなんだけど、どちらかというと顔は狸っぽい。
その見知らぬ獣は興奮気味に私の膝の上で何やら鳴いている。
「ククククッー、クルックルッククー」
聞いた事がない鳴き声だ、そして何処か野性的。
ここは何処で、私は誰? 記憶喪失状態でぼんやりとしているとガバッと扉が開く。
「ラベル、いつまで寝てるんだい!! あんたって子は、薬師学校を卒業したと思ったら婆ちゃんの薬屋を継ぐんじゃなくて、フラフラ遊び歩いてばっかりで、今日もお得意のお昼迄寝かい!」
威勢の良い白髪の女性が大声で私にそう言う。ラベル? 薬師学校? 何のことかしら、理解が追い付かない。
「あの、ここはどちらで?」
「こんの、馬鹿孫娘が!!」
部屋に罵声が轟く。凄いパワフルなお婆さんだなとたじろいでしまう。
「あんた自分の部屋も解らないのかい! ったく、遊び歩いてばっかりいるもんで。ほらいつまでも寝てないで、とっとと起きな!」
そう言ってお婆さんは掛布団をはぎ取ると、階段を駆け下りていく。
一体何が起こったか解らない私は呆然としながら、謎のモフモフ生物の頭を撫でる。
「クククッ、キュククッ」
と、嬉しそう? に鳴いている。ふと、ピピッと何かの効果音がなる。
私の視界にステータスの文字が浮かび上がる。
――何これ、異世界転生みたい。
私は好奇心で空間に浮いている"ステータス"の文字をタッチする。
ピピッと効果音が鳴って画面が切り替わる。
名前 ラベル・リリカル
年齢 18歳
職業 薬師(見習い)
学歴 ムールンベルク薬師育成学校卒業
ラベル・リリカル……。これが転生後の私の名前。しかも年齢は18歳、どうりで起きた時に身体が軽かったわけだわ。
さらに、ステーテス画面をスクロールしていく。
レベル1
HP 12
MP 10
腕力 2
守備力 3
知性 50
運 1
この子、運と腕力と守備力は低いけれど、知性はかなり高い。
確かこういう異世界物の薬師が薬の材料とする植物は数万と種類があるはずだから、知性は高いに越した事がない。
私は、気分が高揚している事に気づく。まさか、自分が転生するなんて、しかも薬師として。
そもそも私が薬剤師になったのは漢方マニアだったからだ。もう少し頭が良ければ本当は漢方専門の医者になりたかった。
薬剤師でも漢方を扱う事があるのでそれはそれで楽しかったのだけれど……。
しかし、薬師に転生するなんて私としてはかなりの幸運だ。
これが女戦士とかに生まれ変わっても、前世の記憶と知識は全く役に立たなかっただろう。
そして肝心のスキルね。私は更にステータス画面をスクロールしていく。
創薬 LV1
素材鑑定 LV1
キター! 創薬スキル。これよこれ、やっぱ薬師には創薬ね。親切な事にスキルレベルの横に?マークがある。これは恐らくヘルプ機能だなと思い、目の前に浮かんでいる?を指でタッチする。
ピピッ、と画面が切り替わって創薬スキルの詳細が表示される。
※創薬 この世界のあらゆる植物を用いて薬を作る事が出来るスキル。スキルレベルによって製造出来る薬が増えます。またスキルレベルによって未知の追加効果が! こちらは後程のお楽しみに! ちなみに、レベル1のあなたはまずレギュラーポーションから挑戦してみましょう!
なるほど、私はまだレギュラーポーションしか製造出来ないんだ。それにしても未知の追加効果ってなんなのかしら、匂わせ女みたいな匂わせぶりね。気になるわ。
そして気になっていた、素材鑑定のヘルプ画面を開いてみる。
※素材鑑定 この世界に存在するあらゆる植物の効果・効能を見極める事が出来る。またその植物が良質な素材なのかも一目で解る。加えて、その素材がどんな薬になるかの情報も知る事が出来ます。
更にスキルレベルが上がる事で未知の追加効果が増えていきます。こちらは後程のお楽しみに!
やはり匂わせ女解説なのね。まぁお楽しみはとっとく派だから、こういうノリは嫌いではないけれど。
それにしても、めっちゃ良スキルじゃない。一重おばちゃん大勝利ね。
「ふふふふっ」
思わず笑いが漏れる。めでたいではないか。いや、でも転生したって事は私死んでるのか……。それは決してめでたくはないな。
それにしてもあのイケメン医師め、手術を失敗したって事だな。
「ラベル!! あんたいい加減に降りてきなさい!」
お祖母さんの怒声が下から聞こえてくる。
「はーい!」
私は膝の上でウトウトしていたモフモフ生物を床に降ろすと、階段を駆け下りたのだった。
目が覚めて身体を伸ばす。何だか身体が軽い、若いころに戻ったようだ。
手術成功したのね、もしかしたら二重になってたりして、とほのかな期待を抱いたけれどその期待はすぐにへし折られる。
「……えっ、ここ何処?」
レンガ造りの温もりのある建物。私の住んでいた世界では見た事のない植物が飾られている。
ベッドから身体を起こすと、大分年期の入ったくすんだ木製の床で何やらモフモフした生き物が右往左往していた。
その生き物は、私の顔を見るなり飛びついてくる。
「きゃっ!? ちょっと何、どうしたのよあんた、うふふっ」
ペロペロと顔を舐めてくる。小型犬のようにも見えなくはないけれど犬とは違って顔はまん丸だ。
フワフワとしていて意外と軽い。ぺちゃっと潰れた鼻に、どんぐりのようにまん丸な瞳をテカテカと輝かせている。
お尻についた尻尾を振っている様は犬のようなんだけど、どちらかというと顔は狸っぽい。
その見知らぬ獣は興奮気味に私の膝の上で何やら鳴いている。
「ククククッー、クルックルッククー」
聞いた事がない鳴き声だ、そして何処か野性的。
ここは何処で、私は誰? 記憶喪失状態でぼんやりとしているとガバッと扉が開く。
「ラベル、いつまで寝てるんだい!! あんたって子は、薬師学校を卒業したと思ったら婆ちゃんの薬屋を継ぐんじゃなくて、フラフラ遊び歩いてばっかりで、今日もお得意のお昼迄寝かい!」
威勢の良い白髪の女性が大声で私にそう言う。ラベル? 薬師学校? 何のことかしら、理解が追い付かない。
「あの、ここはどちらで?」
「こんの、馬鹿孫娘が!!」
部屋に罵声が轟く。凄いパワフルなお婆さんだなとたじろいでしまう。
「あんた自分の部屋も解らないのかい! ったく、遊び歩いてばっかりいるもんで。ほらいつまでも寝てないで、とっとと起きな!」
そう言ってお婆さんは掛布団をはぎ取ると、階段を駆け下りていく。
一体何が起こったか解らない私は呆然としながら、謎のモフモフ生物の頭を撫でる。
「クククッ、キュククッ」
と、嬉しそう? に鳴いている。ふと、ピピッと何かの効果音がなる。
私の視界にステータスの文字が浮かび上がる。
――何これ、異世界転生みたい。
私は好奇心で空間に浮いている"ステータス"の文字をタッチする。
ピピッと効果音が鳴って画面が切り替わる。
名前 ラベル・リリカル
年齢 18歳
職業 薬師(見習い)
学歴 ムールンベルク薬師育成学校卒業
ラベル・リリカル……。これが転生後の私の名前。しかも年齢は18歳、どうりで起きた時に身体が軽かったわけだわ。
さらに、ステーテス画面をスクロールしていく。
レベル1
HP 12
MP 10
腕力 2
守備力 3
知性 50
運 1
この子、運と腕力と守備力は低いけれど、知性はかなり高い。
確かこういう異世界物の薬師が薬の材料とする植物は数万と種類があるはずだから、知性は高いに越した事がない。
私は、気分が高揚している事に気づく。まさか、自分が転生するなんて、しかも薬師として。
そもそも私が薬剤師になったのは漢方マニアだったからだ。もう少し頭が良ければ本当は漢方専門の医者になりたかった。
薬剤師でも漢方を扱う事があるのでそれはそれで楽しかったのだけれど……。
しかし、薬師に転生するなんて私としてはかなりの幸運だ。
これが女戦士とかに生まれ変わっても、前世の記憶と知識は全く役に立たなかっただろう。
そして肝心のスキルね。私は更にステータス画面をスクロールしていく。
創薬 LV1
素材鑑定 LV1
キター! 創薬スキル。これよこれ、やっぱ薬師には創薬ね。親切な事にスキルレベルの横に?マークがある。これは恐らくヘルプ機能だなと思い、目の前に浮かんでいる?を指でタッチする。
ピピッ、と画面が切り替わって創薬スキルの詳細が表示される。
※創薬 この世界のあらゆる植物を用いて薬を作る事が出来るスキル。スキルレベルによって製造出来る薬が増えます。またスキルレベルによって未知の追加効果が! こちらは後程のお楽しみに! ちなみに、レベル1のあなたはまずレギュラーポーションから挑戦してみましょう!
なるほど、私はまだレギュラーポーションしか製造出来ないんだ。それにしても未知の追加効果ってなんなのかしら、匂わせ女みたいな匂わせぶりね。気になるわ。
そして気になっていた、素材鑑定のヘルプ画面を開いてみる。
※素材鑑定 この世界に存在するあらゆる植物の効果・効能を見極める事が出来る。またその植物が良質な素材なのかも一目で解る。加えて、その素材がどんな薬になるかの情報も知る事が出来ます。
更にスキルレベルが上がる事で未知の追加効果が増えていきます。こちらは後程のお楽しみに!
やはり匂わせ女解説なのね。まぁお楽しみはとっとく派だから、こういうノリは嫌いではないけれど。
それにしても、めっちゃ良スキルじゃない。一重おばちゃん大勝利ね。
「ふふふふっ」
思わず笑いが漏れる。めでたいではないか。いや、でも転生したって事は私死んでるのか……。それは決してめでたくはないな。
それにしてもあのイケメン医師め、手術を失敗したって事だな。
「ラベル!! あんたいい加減に降りてきなさい!」
お祖母さんの怒声が下から聞こえてくる。
「はーい!」
私は膝の上でウトウトしていたモフモフ生物を床に降ろすと、階段を駆け下りたのだった。
0
お気に入りに追加
10
あなたにおすすめの小説

婚約者は、今月もお茶会に来ないらしい。
白雪なこ
恋愛
婚約時に両家で決めた、毎月1回の婚約者同士の交流を深める為のお茶会。だけど、私の婚約者は「彼が認めるお茶会日和」にしかやってこない。そして、数ヶ月に一度、参加したかと思えば、無言。短時間で帰り、手紙を置いていく。そんな彼を……許せる?
*6/21続編公開。「幼馴染の王女殿下は私の元婚約者に激おこだったらしい。次期女王を舐めんなよ!ですって。」
*外部サイトにも掲載しています。(1日だけですが総合日間1位)

【完結】悪役令嬢に転生したけど、王太子妃にならない方が幸せじゃない?
みちこ
ファンタジー
12歳の時に前世の記憶を思い出し、自分が悪役令嬢なのに気が付いた主人公。
ずっと王太子に片思いしていて、将来は王太子妃になることしか頭になかった主人公だけど、前世の記憶を思い出したことで、王太子の何が良かったのか疑問に思うようになる
色々としがらみがある王太子妃になるより、このまま公爵家の娘として暮らす方が幸せだと気が付く
【完結】もう…我慢しなくても良いですよね?
アノマロカリス
ファンタジー
マーテルリア・フローレンス公爵令嬢は、幼い頃から自国の第一王子との婚約が決まっていて幼少の頃から厳しい教育を施されていた。
泣き言は許されず、笑みを浮かべる事も許されず、お茶会にすら参加させて貰えずに常に完璧な淑女を求められて教育をされて来た。
16歳の成人の義を過ぎてから王子との婚約発表の場で、事あろうことか王子は聖女に選ばれたという男爵令嬢を連れて来て私との婚約を破棄して、男爵令嬢と婚約する事を選んだ。
マーテルリアの幼少からの血の滲むような努力は、一瞬で崩壊してしまった。
あぁ、今迄の苦労は一体なんの為に…
もう…我慢しなくても良いですよね?
この物語は、「虐げられる生活を曽祖母の秘術でざまぁして差し上げますわ!」の続編です。
前作の登場人物達も多数登場する予定です。
マーテルリアのイラストを変更致しました。
「不細工なお前とは婚約破棄したい」と言ってみたら、秒で破棄されました。
桜乃
ファンタジー
ロイ王子の婚約者は、不細工と言われているテレーゼ・ハイウォール公爵令嬢。彼女からの愛を確かめたくて、思ってもいない事を言ってしまう。
「不細工なお前とは婚約破棄したい」
この一言が重要な言葉だなんて思いもよらずに。
※約4000文字のショートショートです。11/21に完結いたします。
※1回の投稿文字数は少な目です。
※前半と後半はストーリーの雰囲気が変わります。
表紙は「かんたん表紙メーカー2」にて作成いたしました。
❇❇❇❇❇❇❇❇❇
2024年10月追記
お読みいただき、ありがとうございます。
こちらの作品は完結しておりますが、10月20日より「番外編 バストリー・アルマンの事情」を追加投稿致しますので、一旦、表記が連載中になります。ご了承ください。
1ページの文字数は少な目です。
約4500文字程度の番外編です。
バストリー・アルマンって誰やねん……という読者様のお声が聞こえてきそう……(;´∀`)
ロイ王子の側近です。(←言っちゃう作者 笑)
※番外編投稿後は完結表記に致します。再び、番外編等を投稿する際には連載表記となりますこと、ご容赦いただけますと幸いです。

もう死んでしまった私へ
ツカノ
恋愛
私には前世の記憶がある。
幼い頃に母と死別すれば最愛の妻が短命になった原因だとして父から厭われ、婚約者には初対面から冷遇された挙げ句に彼の最愛の聖女を虐げたと断罪されて塵のように捨てられてしまった彼女の悲しい記憶。それなのに、今世の世界で聖女も元婚約者も存在が煙のように消えているのは、何故なのでしょうか?
今世で幸せに暮らしているのに、聖女のそっくりさんや謎の婚約者候補が現れて大変です!!
ゆるゆる設定です。

元おっさんの俺、公爵家嫡男に転生~普通にしてるだけなのに、次々と問題が降りかかってくる~
おとら@ 書籍発売中
ファンタジー
アルカディア王国の公爵家嫡男であるアレク(十六歳)はある日突然、前触れもなく前世の記憶を蘇らせる。
どうやら、それまでの自分はグータラ生活を送っていて、ろくでもない評判のようだ。
そんな中、アラフォー社畜だった前世の記憶が蘇り混乱しつつも、今の生活に慣れようとするが……。
その行動は以前とは違く見え、色々と勘違いをされる羽目に。
その結果、様々な女性に迫られることになる。
元婚約者にしてツンデレ王女、専属メイドのお調子者エルフ、決闘を仕掛けてくるクーデレ竜人姫、世話をすることなったドジっ子犬耳娘など……。
「ハーレムは嫌だァァァァ! どうしてこうなった!?」
今日も、そんな彼の悲鳴が響き渡る。
どうも、死んだはずの悪役令嬢です。
西藤島 みや
ファンタジー
ある夏の夜。公爵令嬢のアシュレイは王宮殿の舞踏会で、婚約者のルディ皇子にいつも通り罵声を浴びせられていた。
皇子の罵声のせいで、男にだらしなく浪費家と思われて王宮殿の使用人どころか通っている学園でも遠巻きにされているアシュレイ。
アシュレイの誕生日だというのに、エスコートすら放棄して、皇子づきのメイドのミュシャに気を遣うよう求めてくる皇子と取り巻き達に、呆れるばかり。
「幼馴染みだかなんだかしらないけれど、もう限界だわ。あの人達に罰があたればいいのに」
こっそり呟いた瞬間、
《願いを聞き届けてあげるよ!》
何故か全くの別人になってしまっていたアシュレイ。目の前で、アシュレイが倒れて意識不明になるのを見ることになる。
「よくも、義妹にこんなことを!皇子、婚約はなかったことにしてもらいます!」
義父と義兄はアシュレイが状況を理解する前に、アシュレイの体を持ち去ってしまう。
今までミュシャを崇めてアシュレイを冷遇してきた取り巻き達は、次々と不幸に巻き込まれてゆき…ついには、ミュシャや皇子まで…
ひたすら一人づつざまあされていくのを、呆然と見守ることになってしまった公爵令嬢と、怒り心頭の義父と義兄の物語。
はたしてアシュレイは元に戻れるのか?
剣と魔法と妖精の住む世界の、まあまあよくあるざまあメインの物語です。
ざまあが書きたかった。それだけです。

王が気づいたのはあれから十年後
基本二度寝
恋愛
王太子は妃の肩を抱き、反対の手には息子の手を握る。
妃はまだ小さい娘を抱えて、夫に寄り添っていた。
仲睦まじいその王族家族の姿は、国民にも評判がよかった。
側室を取ることもなく、子に恵まれた王家。
王太子は妃を優しく見つめ、妃も王太子を愛しく見つめ返す。
王太子は今日、父から王の座を譲り受けた。
新たな国王の誕生だった。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる