紫式部と揶揄された一重の薬剤師(38)が薬師に転生してスライムアイプチで成功を試みるお話。

猫野御飯

文字の大きさ
上 下
2 / 10

プロローグ2

しおりを挟む
「あ、早速メール便が来てる」

 今日も近藤守と都築理沙に一重ネタでディスられ、更に客の子供に泣かれ、と散々な一日だった……。いや、いつものルーティーンと呼ぶべきか……。しかし一日の安息はやはり家だ。
 マンションの入り口の集合ポストで長方形の厚みのないダンボールを発見し心の中でガッツポーズする。
 
 ――送料無料の割には、届くのが早いじゃない。

 私はお宝手に入れた盗賊のごとく、ダンボールを小脇に抱え口笛を吹きながらエレベーターに乗る。
 チン、と私の住む4階でエレベーターが止まる。
 405号室に向かい、猫のキーホルダーが付いた鍵を鍵穴に差して回す。
 チャコちゃん、今日も元気かな、ママのお帰りだよん♪
 ガチャッとノブを掴んで回す。鉄扉を開くとみゃぁ、っとチャコちゃんの鳴き声が聞こえてくる。

「ママのお帰りだよん。今日も自宅警備ご苦労様」

 みゃあっ! と元気の良いお返事が返ってくる。けれど、これは多分……腹減った早く飯! と言っているのだと思う。
 はいはい、ちょっとお待ちを。
 カバンとアイプチが入っているであろうメール便を机に置いて、チャコちゃんの御飯作りに取り掛かる。
 冷蔵庫からオーガニックキャットフードの袋と、海外から取り寄せたラム肉の缶詰を取り出す。
 猫は魚が好きだと思う人が多いけれど肉食だ。ネコ科の動物で有名なのはライオンだけど、何を食べるかお考え頂ければおのずと答えが出てくる。
 私がキャットフードを冷蔵庫で保管しているのには訳があって、酸化を防ぐ為だ。勿論空気に触れた時点で酸化していくので完全に酸化を防ぐ事は出来ないけれど、手を打たないよりはマシである。
 少しでも新鮮な御飯を口にしてもらいたい。そして長生きしてもらいたい。この子だけが私の生きる理由になっているから……。
 チャコちゃんのいない生活を思うとゾッとする。ディスられ否定される日々……そんな地獄の日々に存在する清涼剤、それがチャコちゃんなのである。
 キッチンの流し台の上で、トラ柄、黒白柄、サビ柄と様々な柄の猫がプリントされた陶器の御飯皿にオーガニックキャットフードを流し込む。
 そこに、スープ状になっている羊肉の缶詰めをスプーンで流し入れる。それを混ぜ混ぜしてチャコちゃんの御飯は完成だ。
 チャコちゃんが流し台の下から背伸びして、今か今かと御飯を待っている。

「はい、チャコちゃんお待ちどう様」

 6畳のダイニングの隅っこがチャコちゃんの食事スペースになっている。
 そこにお皿をそっと置いて、猫の顔を象った陶器のお皿を持ち上げ再びキッチンに向かう。
 これはお水を入れるお皿で、毎日帰って来るたびに残りの水を捨て、撫でるようにして水洗いする。
 新しい水を注ぎ、再びダイニングに戻るとチャコちゃんが凄い勢いで私の特製『オーガニックキャットフードの羊肉添え』にがっついていた。

「美味しそうに食べておるねぇ。良く食べるのだぞチャコちゃん」

 チャコちゃんにそう声をかけて、私は自分の夕食をそっちのけで例のメール便に手を伸ばす。
 ダンボール箱は思っていたよりも軽く、降ってみるけど何も音はしない。

 ――ほんとに中身入ってんのかしらこれ?

 まぁ、いいや。開けてみよう。
 バリバリッとガムテープを豪快に剥がす。
 小ぶりなダンボールを開くと中にはプチプチに包まれた細長い箱が入っていた。
 箱の表面には金色の文字でデカデカと"スーパー二重DX"と書かれている。
 その文字の下には"強力接着成分配合""一塗りでくっきり二重に!"の文字。
 まぁ、よくあるアイプチ(二重まぶた接着剤)の触れ込みが書いてある。
 でも、今回は私の分厚い一重瞼に良い変化が現れるかも、と期待してしまう。
 その度に裏切られる結果になるのだが、期待してしまうのはやはり私の中にも乙女が存在しているのだろう。
 箱を開け説明書を見る。

「どれどれ、フムフム」

 やっぱり従来のアイプチと同じ仕様か。
 私は早速プラスチック制の容器を確認する。蓋を開けると、中には接着液が入っている。
 蓋の先には蓋と一体型になっている細い筆が取り付けられていて、この筆に付着した液体を二重にしたいラインに沿って塗る。
 箱の中にはプッシャーと呼ばれる先が枝分かれしたプラスチック製の棒が入っている。
 爪楊枝より気持ち大きいその棒を、接着液を塗った瞼に押し当てて瞼を織り込む。
 アイプチ(二重瞼接着剤)とはそういう原理で出来ている。
 早速やってみるかとアイプチの蓋を開ける前に、念のために説明書の注意事項に目を通してみる。

――瞼のかぶれや、目の腫れが生じた場合は直ちに係りつけの医師にご相談下さい。また本液は強力な為、塗りすぎると瞼がくっついて目が開かなくなる恐れがあります、過度な使用はお控え下さい――

 んな馬鹿な。目が開かなくなるって、瞬間強力接着剤じゃあるまいし。
 極重一重女は三倍量が基本なのよ。そんな、普通の瞼の子と同じ量じゃ二重なんかになるまじきよ。
 極重一重女舐めるなよ、とアイプチの蓋を開け蓋と一体になった筆にたっぷりと接着液を染み込ませ、薄目を開けながらお得意の欲張りラインに塗る。
 あんまり二重の幅をとりすぎると失敗するのよね、それはもう殴られたみたいに瞼がめくりあがったりかなり悲惨な状況になるんだけど幅があるほど夢が広がるという事で、これでばっちり二重瞼ゲットだぜ!
 接着液を3重に塗ってほんの少し乾かした後プッシャーを瞼に押し込む。そうする事で瞼が織り込まれて憧れの二重が――。
 グキッと音をたてて、プッシャーが折れる……。

 ――ちょ、ちょっとどうゆう事!?

 今、なんか固い膜のようなものに刺さった気がしたけど……。
 私は驚き目を開けようと――。

 ――嘘でしょう!?

 目が開かない、どうして!?
 私は大慌てで、トイレに駆け込み鏡に映る自分の姿を確認しゾッとする。
 右目の二重ライン周辺が瞬間接着剤を塗ったかのごとく白い膜で覆われている。指で触れてみるとその感覚は二重瞼専用の接着成分とは明らかに異なる強固な接着成分だった。

 ――これ、ただの接着剤じゃね?

 私は慌ててダイニングに戻り、説明書を確認する。販売元に『インチキ商事』という文字を見つけ愕然とする。
 インチキ商事は二重瞼関係の化粧品を販売している会社で、その評判は著しく悪い。インチキで買うなら100均で買った方が1000倍マシと言われているぐらいに品質が悪い。
 確か、数年前に摘発されたはずじゃ……。
 大慌てで、説明書に記載されている電話番号に電話をかける。只今お掛けになっている電話番号は現在使われていません、ピーというアナウンスが流れる。

 ――騙された!?

 一重おばちゃん大ピンチ! しかし……私はどうしてこうも安直なんだろう。御飯を食べ終わったチャコちゃんが驚いた表情で私を見ている。

「チャコちゃん、ママ大ピンチなのよ。ちょっと病院に――」
 
 そう言ってチャコちゃんをケージに入れようとした所

「フシャーッ!!」

 と、まるで別猫のような表情で威嚇される。
 もはや別人認定!? 私は悲しい気持ちでチャコちゃんに声をかける。

「チャコちゃん酷い……。そんな威嚇せんでも。でも確かにママ怖い顔してるね。病院に行ってくるからいい子に待っててね」

 そう声をかけるけど、チャコちゃんは凄まじい形相で私を見てくるのだった。

))

「きゃっ、どうされたんですか!?」

 受付の若い医療事務の女性が小さな悲鳴を上げる。
 近くの行きつけの眼科は閉まっている時間だったし、仕方なしに近所の大学病院の時間外受付に一重おばちゃんはやってきた。
 受付の女の子は、パッチリ二重でとても可愛らしかった。

「あの、今流行りのDIYをしていて、愛猫の為にキャットタワーを作っていたら、接着剤的なものが顔面に飛んできてしまって……」

 と大嘘をつく。おばちゃんが夜にウキウキしながらアイプチしていたなんて、もはやホラーなので口が裂けても言えない。

「それは大変! お待ち下さい、今先生呼んできます!」

 受付の医療事務の女の子は可愛いだけじゃなくて、いい子だった。
 もし転生なんて事が出来たらあんな子に転生したいもんだわ、と夢想する。
 私の趣味はいわゆるネット小説を乱読する事だ。今流行りの転生ものを休みの日にチャコちゃんをお腹の上に載せながら、スマホで見るのが日課になっていた。

 ――私が転生するとしたら、薬師になるのかしら。薬剤師が薬師なんてギャグみたいだけれど。

「だ、大丈夫ですか! わっ、大変だ! すぐに診察室に!!」

 慌てた様子で出てきた先生は、色白でサラサラヘアーの若くてイケメンな先生だった。勿論くっきり二重。こんなお恥ずかしい姿をと思いながら、私は先生の後を付いて診察室に向かう。

「ちょっとよろしいですか」

 診察室に着き椅子に座ると、イケメン先生が私の右目付近を触る。

「瞬間接着剤ですね。しかもかなり強力な奴だ」

 イカリ商事の野郎!! と心の中で毒づく。

「今すぐ切開手術をしないと大変な事になります。緊急手術です」

「えぇぇー! そんなに大ごとなんですか」

「ボクも正直、ここまでの量の瞬間強力接着剤を瞼に付着させた患者さんを見るのは初めてなんです。でも、これは明らかにマズい状況です、最悪目が開かなくなる恐れがありますし最悪命の危険も……」

「そ、そこまでなんですか!?」

 アイプチおばちゃん悲しい。まさかのアイプチで命を落とすなんてシャレにならないわ……。
 しかも、ただでさえ目が開いていない状況なのに、この期に及んで目が開かなくなるなんて……。
 私は絶望した。
 ガラガラっと診察室のドアが開いて、移動式のベッドを押しながら看護師が2人が入室する。

「すまない、緊急手術だ。今すぐにICUへ!」

「解りました! さっ急いで!」
 
 看護師に促されてベッドに寝転がる。
 私そこまで重篤!? アイプチだよ、目に付ける糊だよ? という私の突っ込みは聞こえるはずもなく移動式ベッドが勢い良く動き出す。
 一重おばちゃんどうなっちゃうの!?

))

「では、古里香さんこれから緊急手術を始めます」

 頭上からイケメン先生の声がする。

「は、はい……」

 いきなりの急展開に頭が追い付かない。私はアイプチしただけなのに……。

「この手術は大変危険な手術です。先ほども説明したように瞼の開閉が出来なくなってしまう恐れがあります。最悪、切開中に切り所が悪ければ瞼もろとも死にます」

 そこまで!? そこまでの大手術なのね……。
 アイプチだからと言って侮ってはいけないわ。全国のJCやJKに声を大にして伝えたい、アイプチ危険、瞼大事。

「それでは、今から全身麻酔をかけます。リラックスして目を閉じて下さい」

 私の口元に酸素マスクが装着される。
 なんとか無事生還出来ますように、一重おばちゃんファイト! と自分で自分を励ましていた所、急な眠気に襲われる。
 私はそのまま深い眠りへと落ちていく。
しおりを挟む
感想 0

あなたにおすすめの小説

婚約者は、今月もお茶会に来ないらしい。

白雪なこ
恋愛
婚約時に両家で決めた、毎月1回の婚約者同士の交流を深める為のお茶会。だけど、私の婚約者は「彼が認めるお茶会日和」にしかやってこない。そして、数ヶ月に一度、参加したかと思えば、無言。短時間で帰り、手紙を置いていく。そんな彼を……許せる?  *6/21続編公開。「幼馴染の王女殿下は私の元婚約者に激おこだったらしい。次期女王を舐めんなよ!ですって。」 *外部サイトにも掲載しています。(1日だけですが総合日間1位)

【完結】悪役令嬢に転生したけど、王太子妃にならない方が幸せじゃない?

みちこ
ファンタジー
12歳の時に前世の記憶を思い出し、自分が悪役令嬢なのに気が付いた主人公。 ずっと王太子に片思いしていて、将来は王太子妃になることしか頭になかった主人公だけど、前世の記憶を思い出したことで、王太子の何が良かったのか疑問に思うようになる 色々としがらみがある王太子妃になるより、このまま公爵家の娘として暮らす方が幸せだと気が付く

【完結】もう…我慢しなくても良いですよね?

アノマロカリス
ファンタジー
マーテルリア・フローレンス公爵令嬢は、幼い頃から自国の第一王子との婚約が決まっていて幼少の頃から厳しい教育を施されていた。 泣き言は許されず、笑みを浮かべる事も許されず、お茶会にすら参加させて貰えずに常に完璧な淑女を求められて教育をされて来た。 16歳の成人の義を過ぎてから王子との婚約発表の場で、事あろうことか王子は聖女に選ばれたという男爵令嬢を連れて来て私との婚約を破棄して、男爵令嬢と婚約する事を選んだ。 マーテルリアの幼少からの血の滲むような努力は、一瞬で崩壊してしまった。 あぁ、今迄の苦労は一体なんの為に… もう…我慢しなくても良いですよね? この物語は、「虐げられる生活を曽祖母の秘術でざまぁして差し上げますわ!」の続編です。 前作の登場人物達も多数登場する予定です。 マーテルリアのイラストを変更致しました。

もう死んでしまった私へ

ツカノ
恋愛
私には前世の記憶がある。 幼い頃に母と死別すれば最愛の妻が短命になった原因だとして父から厭われ、婚約者には初対面から冷遇された挙げ句に彼の最愛の聖女を虐げたと断罪されて塵のように捨てられてしまった彼女の悲しい記憶。それなのに、今世の世界で聖女も元婚約者も存在が煙のように消えているのは、何故なのでしょうか? 今世で幸せに暮らしているのに、聖女のそっくりさんや謎の婚約者候補が現れて大変です!! ゆるゆる設定です。

「不細工なお前とは婚約破棄したい」と言ってみたら、秒で破棄されました。

桜乃
ファンタジー
ロイ王子の婚約者は、不細工と言われているテレーゼ・ハイウォール公爵令嬢。彼女からの愛を確かめたくて、思ってもいない事を言ってしまう。 「不細工なお前とは婚約破棄したい」 この一言が重要な言葉だなんて思いもよらずに。 ※約4000文字のショートショートです。11/21に完結いたします。 ※1回の投稿文字数は少な目です。 ※前半と後半はストーリーの雰囲気が変わります。 表紙は「かんたん表紙メーカー2」にて作成いたしました。 ❇❇❇❇❇❇❇❇❇ 2024年10月追記 お読みいただき、ありがとうございます。 こちらの作品は完結しておりますが、10月20日より「番外編 バストリー・アルマンの事情」を追加投稿致しますので、一旦、表記が連載中になります。ご了承ください。 1ページの文字数は少な目です。 約4500文字程度の番外編です。 バストリー・アルマンって誰やねん……という読者様のお声が聞こえてきそう……(;´∀`) ロイ王子の側近です。(←言っちゃう作者 笑) ※番外編投稿後は完結表記に致します。再び、番外編等を投稿する際には連載表記となりますこと、ご容赦いただけますと幸いです。

元おっさんの俺、公爵家嫡男に転生~普通にしてるだけなのに、次々と問題が降りかかってくる~

おとら@ 書籍発売中
ファンタジー
アルカディア王国の公爵家嫡男であるアレク(十六歳)はある日突然、前触れもなく前世の記憶を蘇らせる。 どうやら、それまでの自分はグータラ生活を送っていて、ろくでもない評判のようだ。 そんな中、アラフォー社畜だった前世の記憶が蘇り混乱しつつも、今の生活に慣れようとするが……。 その行動は以前とは違く見え、色々と勘違いをされる羽目に。 その結果、様々な女性に迫られることになる。 元婚約者にしてツンデレ王女、専属メイドのお調子者エルフ、決闘を仕掛けてくるクーデレ竜人姫、世話をすることなったドジっ子犬耳娘など……。 「ハーレムは嫌だァァァァ! どうしてこうなった!?」 今日も、そんな彼の悲鳴が響き渡る。

どうも、死んだはずの悪役令嬢です。

西藤島 みや
ファンタジー
ある夏の夜。公爵令嬢のアシュレイは王宮殿の舞踏会で、婚約者のルディ皇子にいつも通り罵声を浴びせられていた。 皇子の罵声のせいで、男にだらしなく浪費家と思われて王宮殿の使用人どころか通っている学園でも遠巻きにされているアシュレイ。 アシュレイの誕生日だというのに、エスコートすら放棄して、皇子づきのメイドのミュシャに気を遣うよう求めてくる皇子と取り巻き達に、呆れるばかり。 「幼馴染みだかなんだかしらないけれど、もう限界だわ。あの人達に罰があたればいいのに」 こっそり呟いた瞬間、 《願いを聞き届けてあげるよ!》 何故か全くの別人になってしまっていたアシュレイ。目の前で、アシュレイが倒れて意識不明になるのを見ることになる。 「よくも、義妹にこんなことを!皇子、婚約はなかったことにしてもらいます!」 義父と義兄はアシュレイが状況を理解する前に、アシュレイの体を持ち去ってしまう。 今までミュシャを崇めてアシュレイを冷遇してきた取り巻き達は、次々と不幸に巻き込まれてゆき…ついには、ミュシャや皇子まで… ひたすら一人づつざまあされていくのを、呆然と見守ることになってしまった公爵令嬢と、怒り心頭の義父と義兄の物語。 はたしてアシュレイは元に戻れるのか? 剣と魔法と妖精の住む世界の、まあまあよくあるざまあメインの物語です。 ざまあが書きたかった。それだけです。

結婚30年、契約満了したので離婚しませんか?

おもちのかたまり
恋愛
恋愛・小説 11位になりました! 皆様ありがとうございます。 「私、旦那様とお付き合いも甘いやり取りもしたことが無いから…ごめんなさい、ちょっと他人事なのかも。もちろん、貴方達の事は心から愛しているし、命より大事よ。」 眉根を下げて笑う母様に、一発じゃあ足りないなこれは。と確信した。幸い僕も姉さん達も祝福持ちだ。父様のような力極振りではないけれど、三対一なら勝ち目はある。 「じゃあ母様は、父様が嫌で離婚するわけではないんですか?」 ケーキを幸せそうに頬張っている母様は、僕の言葉にきょとん。と目を見開いて。…もしかすると、母様にとって父様は、関心を向ける程の相手ではないのかもしれない。嫌な予感に、今日一番の寒気がする。 ◇◇◇◇◇◇◇◇◇ 20年前に攻略対象だった父親と、悪役令嬢の取り巻きだった母親の現在のお話。 ハッピーエンド・バットエンド・メリーバットエンド・女性軽視・女性蔑視 上記に当てはまりますので、苦手な方、ご不快に感じる方はお気を付けください。

処理中です...