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さくら狼
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囲炉裏の日がパチンとはじける・・。
私と妻は晩飯のやまもちとゼンマイとウドをかじっていた
「大分春めいてきたけどまだ寒いねゃ。」 妻は呟いた。
「んだねや、今年の春は寝坊助だねぇ、桜も蕾のままさがね。」私は答えた。
高田藩 中郷村の片隅、武士の血なまぐさい仕事が嫌で刀を鋤に変えてから5年目の春。
妻と出会って4年目になり、お互いやっと普通の会話ができるようになった。
というのも私は武士言葉、妻は遠くからやってきた渡りのものだったので言葉が合わず
最初のころは獣じみた咆哮を聞いているようだった。
「おめえさの、最初の出会いは尻込みついたけぇ、えらい美人さんが山から来たと思ったら、なーに言ってんだが分からんもんだったねぇ」私は懐かしくなって呟いた。
「あんたこそ、今より格式ばったお行儀いいお言葉使いでしたよぉ、かっこよかったのに・・今じゃすっかり中郷弁でねやねやないてぇ」っと妻は笑う。
「いやいや、おめえさの方こそ、獣みたいにシュルシュル口鳴らして、まるで怒った狐か山犬か・・」
この時私はふと、地元のむかし話を思い出した。「さくら狼」という狼の話だ。
高田藩は他藩の例に漏れず、山犬つまり狼の話が多く点在する。「さくら狼」というのもその狼の一つ話だ。
この狼は桜が咲くころに人里に現れて悪戯をする狼で、世にいう「おさんきつね」とか「分服茶釜」とかの類の妖術を使う獣だ。中郷村の人達に聞けば幾つもの悪戯話を話してくれる。
「あすこのお寺の住職さんは桜の花見に関山いったんだけんでもな、花見用の弁当全部馬の糞に詰め替えられとったのよ」
「山にいった男衆が桜の木と相撲をとらされいたんだよ、あれはさくら狼だねゃ」と軽い話から
「かの戦国大名 軍神 謙信公はねゃ ある時領地見回りしとったの、こわーい侍衆引き連れての、そんで妙高山近く参った時にな天が金色に輝いてな、侍衆も謙信公も驚いて目を点にしたのよぉするとな妙高山の方から美しい天女が雲に乗ってやってきてなぁ、「お控えなさい、よは妙高山の神の使いなるぞ!不識庵頭を下げよ。神力を授ける」と叫んだ。謙信公驚いて頭下げると頭に温かいものがヒタヒタと感じる、謙信公は「御神力を授かっている」とニコニコしながら頭を下げていると急に人の呼ぶ声がする。ハッと頭を上げると草原のど真ん中で狩人たちが指をさして笑っている。何がおかしいと怒る侍衆だが狩人たちの話だと、謙信公たちはさくら狼の前に畏まって頭を下げ小便をかけられていたという。真実を知った謙信公は泡を吹いて倒れて春日山城に送られた。狼の小便をくらうと目が見えなくなるという言い伝えがあるので、謙信公はそれから毎日滝を浴びて小便を洗ったというそうな。」
と有名人をつかまえた大話もあった。
私は急にさくら狼が懐かしくなり
「なぁ、さくら狼ってしっとるかねゃ?ここらへんで有名な狼なんだけど」と妻に話した。
「さあ?私ぃ昔話嫌いなのよ…辛気臭いしかび臭いし。」っと妻の反応は冷たい
しかし、地元の話を嫌がられるとむっとしてしまい、郷土愛も相まってさらに「さくら狼」の
話をつづけた。
「いやぁ聞いてくれんねぇ、「さくら狼」つーのはな。ここらへんじゃ有名な狼での人化かすのがうまくて、よくお寺さんの飯を馬糞にかえたったんだって・・」
「やめてやぁ!そんな狼の話聞きたくない!!」
「いやいやすごいんだってぇ、さくら狼はさぁ 村の男衆化かして桜と相撲とらしてからかったりぃ」
「やだやだ、やめてやぁ・・・・」
「でもよ、謙信公をさ、小便をひっかけたって話もあってな!面白いのよ。鬼小島弥太郎にも明王に化けて一騎打ちしたとか・・・」
「ホントに、やめてってば!」 妻はえらい剣幕に怒った。目はギラリと銀色に、瞳は茶色く輝き。口元は歯茎をむき出しにしたような剣幕である。4年間連れ添ってここまで怒った顔を見たことがなかった・・。
妻の怖い顔を見て私は冷や汗をかきながら口を閉じた。「何もただの狼話あそこまで怒らんくていいのに」
おっかない妻を背中で感じながらボソッと呟き・・・呟きながらフッと思った
考えてみや・・・・妻が怒った所・・久しぶりに見たな・・・・・
妻と出会ったのは畑仕事をしていた時だった。妻は旅芸人で身振り手振りで宿を聞いてきて・・
「片田舎ゆえ宿は数百里先にござる、日も暮れた故長者のところまで案内いたそう」と返したら武士訛りに驚いて、お武家様が百姓仕事をなさって大丈夫なのですか?と逆に心配したみたいに寄ってきたなぁ、耕したばかりの畑ふまれて参ったし・・・あの後長者様が説明してくれた時も「よくもだましてくれたわね」と怒ったみたいで腕をかまれたんだっけ、自分で勝手に勘違いしたくせに・・えらい女が来たもんだと・・思ったもんだよなあ あの時の怒り方は厄介だったなぁ
「今も昔もお前は犬みたいな怒り方をするなぁ、いや狼だなぁ」 と思わずぽっと言った
するとゼンマイを齧る妻の口が裂け、恐ろしい狼の姿になった。
訳が分からなかった、目の前の狼に呆然とすると
「バレとうなかった・・・・」
狼から妻の声が聞こえた、妻の声だ!
「おめえなのか?!」 私は叫んだ
「四年前・・畑でアンタの事を誑かそうと思った「さくら狼」だよ。あの時アンタを武士と勘違いした時に私の方が化かされたと思ったんだよ。すごい腹が立ったね「謙信公すら化かすさくら狼様」が侍崩れのぼーとした水飲み百姓なんかに騙されるなんて!ってさ、だからあんたに近づいて今度こそ化かそうって息まいてたのさ!」
私は妻の発言に驚いた、自分の夫婦生活はさくら狼の化かしだったのかと…
あまりにもの発言に頭がくらくらする・・夢を見ているような、夢でいたいような・・・・
「そっ・・!」 これしか声が出ない というより理解が追い付いていない・・・
「そっ・・!そうよアンタを化かそうとして、近づいてたのよ!近づいて・・お世話んなって・・・ 一月かけて・・・アンタをしって・・ 半月かけて・・・・恋心・・・・・一年かけて・・・・嫁心・・・・・・居心地がいい…夫婦の温みに出れなくなって・・・化かすことも忘れて今日まで妻をやってたんだねゃ」
「・・・夫婦はうそじゃないのか?」 中郷訛りの妻の言葉にめまいが少し失せて声が出た
「ウ・・嘘で夫婦四年間もやっとられるわけなかろうね!金持ちならともかく貧乏小作に!」
一番めまいがした、情けなくて目頭が熱くなる・・・
「私はアンタを好きになったし、後悔はなぃ・・・!このまま一緒に墓に入る覚悟もあった。でもアンタは私の事を狼と言ってしまった、アンタが千里眼で私の事を狼と確信をもって言った訳じゃなくても、化生のものは本性を言い当てられると姿を化かすことが出来なくなる・・・一緒にいることが出来なくなるんだよ・・・」
一緒にいられないっ!?くらくらしながらその言葉をはっきりと聞き取った、そんなのは嫌だ!私は妻を愛しているし狼の姿でも離れる気なんて毛頭なかった、いつものたわいない会話をして笑い合う和やかな夫婦生活を送りたかった・・・!
「ドっどうしようもないのか?不用意な発言を言ったことは謝る、一緒にいてくれ!愛してるんだ!」
妻のギラギラした狼の目が潤んでいるのを感じた・・・
「残念だけど・・どうしようもないよ・・けど嬉しいね。アンタに愛してるなんて初めていわれたよ。いつもはにかんで、たわいない話しかできないアンタにさ・・・・。」
確かに・・言ってない・・告白の言葉も「嫁に来てはくれないか」だったし、そもそも武士の出だから
歯の浮いた言葉を言う事を忌避してしまう・・・・いや、何を考えてるんだ私は・・混乱している・・・
「嬉しいなら何度でも言ってやる!だから!」
「言葉もいいけどさ…一つ頼みごとを聞いてくれないか?私はもうこれから山に帰り「さくら狼」として生きていかなきゃならない、だからさ・・今晩最後に一緒に寝てくれないか?」
「え?」
「最後に夫婦のぬくもりが欲しいんだよ、アンタ。それとも狼の姿じゃあ怖くて近寄れないってか?」
妻の言葉にかなり落胆を感じた・・・もう夫婦として一緒にいられないんだ、今日がもう最後なのか・・
私がつまらんことを口走ったばかりに・・・
その後 私は妻と床をともにした。白い肌も滑らかな黒髪もなく、灰色の毛だけが目の前に広がっている
これで別れてしまうのかと思うと寝ることはできない・・・しかし、頭が混乱から抜け出せず
瞼が思い・・気が遠くなる・・・・・・・・
朝の日差しのまぶしさを感じる・・・
ああ・・・朝になってしまった…床に妻がいない・・本当にいない・・・
「あら?今起きたんかねゃ!お寝坊だね ご飯できてるよ」
はっ!と耳を疑った。がばっと起き上がり、声のする方に目をやる! 妻がいる!!人の姿で!!!
「朝飯ぃさめるよ?」 妻がいつもの調子で話している・・・夢を見てるのか
「おまえ・・山に帰るんじゃ。。?」 私は思わず尋ねた
「山ぁ?いやぁお不動さん(神社)には今日は用はないねやぁ、何で急に?」妻は首をかしげて答える
「だって…さくら…」
私はその瞬間口を閉じた、妻の顔が一瞬寂しい目をしたような気がしたのだ。
昨日の夜は只の夢か、それとも昨日さくら狼が妻に化けて私を誑かしたのか
それともさくら狼がまだ私と夫婦でいたくて昨日の事がなかったかのよう
今の私を化かしてくれているのか‥‥
いや、何を考えてるんだ私は「さくら狼」なんて只の昔話、それにさくら狼は桜の咲くころにやってくる狼だ
今年の桜はまだ蕾、人を化かす時期じゃない…っとふいに近くの桜に目をやると
一つ蕾が花を咲かせていた。
私と妻は晩飯のやまもちとゼンマイとウドをかじっていた
「大分春めいてきたけどまだ寒いねゃ。」 妻は呟いた。
「んだねや、今年の春は寝坊助だねぇ、桜も蕾のままさがね。」私は答えた。
高田藩 中郷村の片隅、武士の血なまぐさい仕事が嫌で刀を鋤に変えてから5年目の春。
妻と出会って4年目になり、お互いやっと普通の会話ができるようになった。
というのも私は武士言葉、妻は遠くからやってきた渡りのものだったので言葉が合わず
最初のころは獣じみた咆哮を聞いているようだった。
「おめえさの、最初の出会いは尻込みついたけぇ、えらい美人さんが山から来たと思ったら、なーに言ってんだが分からんもんだったねぇ」私は懐かしくなって呟いた。
「あんたこそ、今より格式ばったお行儀いいお言葉使いでしたよぉ、かっこよかったのに・・今じゃすっかり中郷弁でねやねやないてぇ」っと妻は笑う。
「いやいや、おめえさの方こそ、獣みたいにシュルシュル口鳴らして、まるで怒った狐か山犬か・・」
この時私はふと、地元のむかし話を思い出した。「さくら狼」という狼の話だ。
高田藩は他藩の例に漏れず、山犬つまり狼の話が多く点在する。「さくら狼」というのもその狼の一つ話だ。
この狼は桜が咲くころに人里に現れて悪戯をする狼で、世にいう「おさんきつね」とか「分服茶釜」とかの類の妖術を使う獣だ。中郷村の人達に聞けば幾つもの悪戯話を話してくれる。
「あすこのお寺の住職さんは桜の花見に関山いったんだけんでもな、花見用の弁当全部馬の糞に詰め替えられとったのよ」
「山にいった男衆が桜の木と相撲をとらされいたんだよ、あれはさくら狼だねゃ」と軽い話から
「かの戦国大名 軍神 謙信公はねゃ ある時領地見回りしとったの、こわーい侍衆引き連れての、そんで妙高山近く参った時にな天が金色に輝いてな、侍衆も謙信公も驚いて目を点にしたのよぉするとな妙高山の方から美しい天女が雲に乗ってやってきてなぁ、「お控えなさい、よは妙高山の神の使いなるぞ!不識庵頭を下げよ。神力を授ける」と叫んだ。謙信公驚いて頭下げると頭に温かいものがヒタヒタと感じる、謙信公は「御神力を授かっている」とニコニコしながら頭を下げていると急に人の呼ぶ声がする。ハッと頭を上げると草原のど真ん中で狩人たちが指をさして笑っている。何がおかしいと怒る侍衆だが狩人たちの話だと、謙信公たちはさくら狼の前に畏まって頭を下げ小便をかけられていたという。真実を知った謙信公は泡を吹いて倒れて春日山城に送られた。狼の小便をくらうと目が見えなくなるという言い伝えがあるので、謙信公はそれから毎日滝を浴びて小便を洗ったというそうな。」
と有名人をつかまえた大話もあった。
私は急にさくら狼が懐かしくなり
「なぁ、さくら狼ってしっとるかねゃ?ここらへんで有名な狼なんだけど」と妻に話した。
「さあ?私ぃ昔話嫌いなのよ…辛気臭いしかび臭いし。」っと妻の反応は冷たい
しかし、地元の話を嫌がられるとむっとしてしまい、郷土愛も相まってさらに「さくら狼」の
話をつづけた。
「いやぁ聞いてくれんねぇ、「さくら狼」つーのはな。ここらへんじゃ有名な狼での人化かすのがうまくて、よくお寺さんの飯を馬糞にかえたったんだって・・」
「やめてやぁ!そんな狼の話聞きたくない!!」
「いやいやすごいんだってぇ、さくら狼はさぁ 村の男衆化かして桜と相撲とらしてからかったりぃ」
「やだやだ、やめてやぁ・・・・」
「でもよ、謙信公をさ、小便をひっかけたって話もあってな!面白いのよ。鬼小島弥太郎にも明王に化けて一騎打ちしたとか・・・」
「ホントに、やめてってば!」 妻はえらい剣幕に怒った。目はギラリと銀色に、瞳は茶色く輝き。口元は歯茎をむき出しにしたような剣幕である。4年間連れ添ってここまで怒った顔を見たことがなかった・・。
妻の怖い顔を見て私は冷や汗をかきながら口を閉じた。「何もただの狼話あそこまで怒らんくていいのに」
おっかない妻を背中で感じながらボソッと呟き・・・呟きながらフッと思った
考えてみや・・・・妻が怒った所・・久しぶりに見たな・・・・・
妻と出会ったのは畑仕事をしていた時だった。妻は旅芸人で身振り手振りで宿を聞いてきて・・
「片田舎ゆえ宿は数百里先にござる、日も暮れた故長者のところまで案内いたそう」と返したら武士訛りに驚いて、お武家様が百姓仕事をなさって大丈夫なのですか?と逆に心配したみたいに寄ってきたなぁ、耕したばかりの畑ふまれて参ったし・・・あの後長者様が説明してくれた時も「よくもだましてくれたわね」と怒ったみたいで腕をかまれたんだっけ、自分で勝手に勘違いしたくせに・・えらい女が来たもんだと・・思ったもんだよなあ あの時の怒り方は厄介だったなぁ
「今も昔もお前は犬みたいな怒り方をするなぁ、いや狼だなぁ」 と思わずぽっと言った
するとゼンマイを齧る妻の口が裂け、恐ろしい狼の姿になった。
訳が分からなかった、目の前の狼に呆然とすると
「バレとうなかった・・・・」
狼から妻の声が聞こえた、妻の声だ!
「おめえなのか?!」 私は叫んだ
「四年前・・畑でアンタの事を誑かそうと思った「さくら狼」だよ。あの時アンタを武士と勘違いした時に私の方が化かされたと思ったんだよ。すごい腹が立ったね「謙信公すら化かすさくら狼様」が侍崩れのぼーとした水飲み百姓なんかに騙されるなんて!ってさ、だからあんたに近づいて今度こそ化かそうって息まいてたのさ!」
私は妻の発言に驚いた、自分の夫婦生活はさくら狼の化かしだったのかと…
あまりにもの発言に頭がくらくらする・・夢を見ているような、夢でいたいような・・・・
「そっ・・!」 これしか声が出ない というより理解が追い付いていない・・・
「そっ・・!そうよアンタを化かそうとして、近づいてたのよ!近づいて・・お世話んなって・・・ 一月かけて・・・アンタをしって・・ 半月かけて・・・・恋心・・・・・一年かけて・・・・嫁心・・・・・・居心地がいい…夫婦の温みに出れなくなって・・・化かすことも忘れて今日まで妻をやってたんだねゃ」
「・・・夫婦はうそじゃないのか?」 中郷訛りの妻の言葉にめまいが少し失せて声が出た
「ウ・・嘘で夫婦四年間もやっとられるわけなかろうね!金持ちならともかく貧乏小作に!」
一番めまいがした、情けなくて目頭が熱くなる・・・
「私はアンタを好きになったし、後悔はなぃ・・・!このまま一緒に墓に入る覚悟もあった。でもアンタは私の事を狼と言ってしまった、アンタが千里眼で私の事を狼と確信をもって言った訳じゃなくても、化生のものは本性を言い当てられると姿を化かすことが出来なくなる・・・一緒にいることが出来なくなるんだよ・・・」
一緒にいられないっ!?くらくらしながらその言葉をはっきりと聞き取った、そんなのは嫌だ!私は妻を愛しているし狼の姿でも離れる気なんて毛頭なかった、いつものたわいない会話をして笑い合う和やかな夫婦生活を送りたかった・・・!
「ドっどうしようもないのか?不用意な発言を言ったことは謝る、一緒にいてくれ!愛してるんだ!」
妻のギラギラした狼の目が潤んでいるのを感じた・・・
「残念だけど・・どうしようもないよ・・けど嬉しいね。アンタに愛してるなんて初めていわれたよ。いつもはにかんで、たわいない話しかできないアンタにさ・・・・。」
確かに・・言ってない・・告白の言葉も「嫁に来てはくれないか」だったし、そもそも武士の出だから
歯の浮いた言葉を言う事を忌避してしまう・・・・いや、何を考えてるんだ私は・・混乱している・・・
「嬉しいなら何度でも言ってやる!だから!」
「言葉もいいけどさ…一つ頼みごとを聞いてくれないか?私はもうこれから山に帰り「さくら狼」として生きていかなきゃならない、だからさ・・今晩最後に一緒に寝てくれないか?」
「え?」
「最後に夫婦のぬくもりが欲しいんだよ、アンタ。それとも狼の姿じゃあ怖くて近寄れないってか?」
妻の言葉にかなり落胆を感じた・・・もう夫婦として一緒にいられないんだ、今日がもう最後なのか・・
私がつまらんことを口走ったばかりに・・・
その後 私は妻と床をともにした。白い肌も滑らかな黒髪もなく、灰色の毛だけが目の前に広がっている
これで別れてしまうのかと思うと寝ることはできない・・・しかし、頭が混乱から抜け出せず
瞼が思い・・気が遠くなる・・・・・・・・
朝の日差しのまぶしさを感じる・・・
ああ・・・朝になってしまった…床に妻がいない・・本当にいない・・・
「あら?今起きたんかねゃ!お寝坊だね ご飯できてるよ」
はっ!と耳を疑った。がばっと起き上がり、声のする方に目をやる! 妻がいる!!人の姿で!!!
「朝飯ぃさめるよ?」 妻がいつもの調子で話している・・・夢を見てるのか
「おまえ・・山に帰るんじゃ。。?」 私は思わず尋ねた
「山ぁ?いやぁお不動さん(神社)には今日は用はないねやぁ、何で急に?」妻は首をかしげて答える
「だって…さくら…」
私はその瞬間口を閉じた、妻の顔が一瞬寂しい目をしたような気がしたのだ。
昨日の夜は只の夢か、それとも昨日さくら狼が妻に化けて私を誑かしたのか
それともさくら狼がまだ私と夫婦でいたくて昨日の事がなかったかのよう
今の私を化かしてくれているのか‥‥
いや、何を考えてるんだ私は「さくら狼」なんて只の昔話、それにさくら狼は桜の咲くころにやってくる狼だ
今年の桜はまだ蕾、人を化かす時期じゃない…っとふいに近くの桜に目をやると
一つ蕾が花を咲かせていた。
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