それは、きっと五月雨のせい

木瓜

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それは、きっと五月雨のせい

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「終わりにしようって、言ったんだ」

雨で濡れる、青紫陽花の姿が好きで、

涙で濡れた、君の姿が好きなんだ。

「ああ、そう。今更、あの恋人が、大事になったって訳?」

「薄紅の紫陽花は、雨に濡れると滲んでしまう。雨が似合うのは、線香花火のような、青い額紫陽花だけだ」

「何、それ」

「君が泣いても、僕は悲しむだけだけど、あの人が泣いてくれたら、きっと僕は、嬉しい。その事に、今、気付いたんだよ」

「意味、分かんないけど。まあ、あなたが、相当頭可笑しいって事は、分かった」

「そうだね。自分でも、今、何を言っているのか、よく分かってない」

私の言葉に、女は大きな声で、笑った。

「馬鹿らしい。それで納得しろって?」

「…強いて言うなら、僕は、雨と紫陽花と、線香花火が好きなんだ」

「なるほど、ね。分かった。私も、好みが合わない男は御免だし、陰鬱同士、お似合いじゃない?」

呆れた表情で、女は肩を竦めながら、

「でもさ、ずっと逃げ続けて、都合良く生きてきたあなたが、幸せになれるなんて、思わないでよね。私も、あの女の事も、結局全部、あなたは失う事になるよ」

と最後に、吐き捨てるように言葉を残し、私の元を去っていった。
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