木瓜

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歓談はほろ苦い珈琲と共に

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「でも、そこに彼女は居ないと思います。いつだったか、そこに連れて行こうとしたときに、『もう行かない』って、茉莉が言っていましたから。
それに、庭園があった商業施設はもう廃業していて、ビルにも立ち入れないと思います」

「茉莉さんが、『行かない』と言ったことに心当たりは?」

「んー、どうでしょう。そういえば、その頃は良く、母親の事を知りたがっていました。一回、あの女の居場所を尋ねられた事がありましたが、もう連絡も取っていないので、私には分からない、とだけ返しましたけど」

「そうでしたか」

そこまで聞いて、これ以上の収穫は望めないと判断した私は、露草家を後にすることにした。

「急な訪問にも関わらず、お時間を作って下さり、ありがとうございました」

「いえ、こちらも、大したおもてなしも出来ませんで」

そのまま、帰ろうとした私の背中に、誠二が何か、言いかける。

「何か?」

「いや、その…」

口ごもりながら、誠二が言葉を続ける。

「もし、茉莉が見つかったら、家に帰ってくるよう伝えて頂けませんか。私には、もう、彼女しか居ないんです…」

「…善処します」

そうとだけ言い残し、私は足早に、露草家から離れた。
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