木瓜

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少女は白い菫に夢を見る

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どっどっどっ、と煩いぐらいに、心臓の鐘が、耳元で響き渡って、

ずっしりと、重くて、黒い何かが、私の胸を、押しつぶしている。

―やらなくちゃ。

落ち着かせようとしてみても、耳元で鳴り響く音は、その激しさを増していく。

―やらなくちゃ。

口を開けて、どうにか空気を吸い込んでみても、いつもの三分の一も取り込めず、どんどん、息苦しさだけが、増していく。

―やらなくちゃ!

震える右手に、必死に力を込める。

体は火照って、脳みそが、煮えたぎるぐらいに沸騰しているのに、左手から伝わってくる冷たさで、心はあり得ないぐらいに、冷めている。

それでも、力を込める。

左手に、ちくりとした痛みが、刺し始めて、

どっどっどっ、と鐘が鳴り、

はっはっはっ、と息が喘ぐ。

私は、左手首を凝視する。

小さな痛みが、少しずつ、大きくなって、

刃が、ゆっくりと、肌に沈んでいく。

その様を、瞬きをする事すら忘れて、ただ、見つめる。

ぷつりと、小さな血だまりが、浮き上がってきて、鐘の音と、息の喘ぎが最高潮に達した、その時、

糸が切れたかのように、私はナイフを放り投げた。
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