80 / 129
少女は白い菫に夢を見る
18
しおりを挟む
どっどっどっ、と煩いぐらいに、心臓の鐘が、耳元で響き渡って、
ずっしりと、重くて、黒い何かが、私の胸を、押しつぶしている。
―やらなくちゃ。
落ち着かせようとしてみても、耳元で鳴り響く音は、その激しさを増していく。
―やらなくちゃ。
口を開けて、どうにか空気を吸い込んでみても、いつもの三分の一も取り込めず、どんどん、息苦しさだけが、増していく。
―やらなくちゃ!
震える右手に、必死に力を込める。
体は火照って、脳みそが、煮えたぎるぐらいに沸騰しているのに、左手から伝わってくる冷たさで、心はあり得ないぐらいに、冷めている。
それでも、力を込める。
左手に、ちくりとした痛みが、刺し始めて、
どっどっどっ、と鐘が鳴り、
はっはっはっ、と息が喘ぐ。
私は、左手首を凝視する。
小さな痛みが、少しずつ、大きくなって、
刃が、ゆっくりと、肌に沈んでいく。
その様を、瞬きをする事すら忘れて、ただ、見つめる。
ぷつりと、小さな血だまりが、浮き上がってきて、鐘の音と、息の喘ぎが最高潮に達した、その時、
糸が切れたかのように、私はナイフを放り投げた。
ずっしりと、重くて、黒い何かが、私の胸を、押しつぶしている。
―やらなくちゃ。
落ち着かせようとしてみても、耳元で鳴り響く音は、その激しさを増していく。
―やらなくちゃ。
口を開けて、どうにか空気を吸い込んでみても、いつもの三分の一も取り込めず、どんどん、息苦しさだけが、増していく。
―やらなくちゃ!
震える右手に、必死に力を込める。
体は火照って、脳みそが、煮えたぎるぐらいに沸騰しているのに、左手から伝わってくる冷たさで、心はあり得ないぐらいに、冷めている。
それでも、力を込める。
左手に、ちくりとした痛みが、刺し始めて、
どっどっどっ、と鐘が鳴り、
はっはっはっ、と息が喘ぐ。
私は、左手首を凝視する。
小さな痛みが、少しずつ、大きくなって、
刃が、ゆっくりと、肌に沈んでいく。
その様を、瞬きをする事すら忘れて、ただ、見つめる。
ぷつりと、小さな血だまりが、浮き上がってきて、鐘の音と、息の喘ぎが最高潮に達した、その時、
糸が切れたかのように、私はナイフを放り投げた。
0
お気に入りに追加
0
あなたにおすすめの小説
彼女たちは爛れたい ~性に積極的すぎる彼女たちと普通の青春を送りたい俺がオトナになってしまうまで~
邑樹 政典
青春
【ちょっとエッチな青春ラブコメディ】(EP2以降はちょっとではないかも……)
EP1.
高校一年生の春、俺は中学生時代からの同級生である塚本深雪から告白された。
だが、俺にはもうすでに綾小路優那という恋人がいた。
しかし、優那は自分などに構わずどんどん恋人を増やせと言ってきて……。
EP2.
すっかり爛れた生活を送る俺たちだったが、中間テストの結果発表や生徒会会長選の案内の折り、優那に不穏な態度をとるクラスメイト服部香澄の存在に気づく。
また、服部の周辺を調べているうちに、どうやら彼女が優那の虐めに加担していた姫宮繭佳と同じ中学校の出身であることが判明する……。
◇ ◆ ◇ ◆ ◇
本作は学生としてごく普通の青春を謳歌したい『俺』ことセトセイジロウくんと、その周りに集まる性にアグレッシブすぎる少女たちによるドタバタ『性春』ラブコメディです。
時にはトラブルに巻き込まれることもありますが、陰湿な展開には一切なりませんので安心して読み進めていただければと思います。
エッチなことに興味津々な女の子たちに囲まれて、それでも普通の青春を送りたいと願う『俺』はいったいどこまで正気を保っていられるのでしょうか……?
※今作は直接的な性描写はこそありませんが、それに近い描写やそれを匂わせる描写は出てきます。とくにEP2以降は本気で爛れてきますので、そういったものに不快に感じられる方はあらかじめご注意ください。
ショートドラマ劇場
小木田十(おぎたみつる)
現代文学
さまざまな人生の局面を描いた、ヒューマンドラマのショートショート集です。
/ 小木田十(おぎたみつる)フリーライター。映画ノベライズ『ALWAIS 続・三丁目の夕日 完全ノベライズ版』『小説 土竜の唄』『小説 土竜の唄 チャイニーズマフィア編』『闇金ウシジマくん』などを担当。2023年、掌編『限界集落の引きこもり』で第4回引きこもり文学大賞 三席入選。2024年、掌編『鳥もつ煮』で山梨日日新聞新春文芸 一席入選(元旦紙面に掲載)。
彼女に振られた俺の転生先が高校生だった。それはいいけどなんで元カノ達まで居るんだろう。
遊。
青春
主人公、三澄悠太35才。
彼女にフラれ、現実にうんざりしていた彼は、事故にあって転生。
……した先はまるで俺がこうだったら良かったと思っていた世界を絵に書いたような学生時代。
でも何故か俺をフッた筈の元カノ達も居て!?
もう恋愛したくないリベンジ主人公❌そんな主人公がどこか気になる元カノ、他多数のドタバタラブコメディー!
ちょっとずつちょっとずつの更新になります!(主に土日。)
略称はフラれろう(色とりどりのラブコメに精一杯の呪いを添えて、、笑)
余命一年と言われたギャルの話
白川ちさと
青春
高校生の渉(あゆむ)はある日、肺がんだと診断されてしまう。ギャルである渉は彼氏の陽介と付き合い始めたばかり。いつも彼氏のことばかり考えている。
しかし、父の再婚で家族になった継母と妹・聖(ひじり)とは敵対してばかりだ。そんなとき、同じクラスの山崎に病気のことが知られてしまう。
【R15】【第一作目完結】最強の妹・樹里の愛が僕に凄すぎる件
木村 サイダー
青春
中学時代のいじめをきっかけに非モテ・ボッチを決め込むようになった高校2年生・御堂雅樹。素人ながら地域や雑誌などを賑わすほどの美しさとスタイルを持ち、成績も優秀で運動神経も発達し、中でもケンカは負け知らずでめっぽう強く学内で男女問わずのモテモテの高校1年生の妹、御堂樹里。親元から離れ二人で学園の近くで同居・・・・というか樹里が雅樹をナチュラル召使的に扱っていたのだが、雅樹に好きな人が現れてから、樹里の心境に変化が起きて行く。雅樹の恋模様は?樹里とは本当に兄妹なのか?美しく解き放たれて、自由になれるというのは本当に良いことだけなのだろうか?
■場所 関西のとある地方都市
■登場人物
●御堂雅樹
本作の主人公。身長約百七十六センチと高めの細マッチョ。ボサボサ頭の目隠れ男子。趣味は釣りとエロゲー。スポーツは特にしないが妹と筋トレには励んでいる。
●御堂樹里
本作のヒロイン。身長百七十センチにIカップのバストを持ち、腹筋はエイトパックに分かれる絶世の美少女。芸能界からのスカウト多数。天性の格闘センスと身体能力でケンカ最強。強烈な人間不信&兄妹コンプレックス。素直ではなく、兄の前で自分はモテまくりアピールをしまくったり、わざと夜に出かけてヤキモチを焼かせている。今回新たな癖に目覚める。
●田中真理
雅樹の同級生で同じ特進科のクラス。肌質や髪の毛の性質のせいで不細工扱い。『オッペケペーズ』と呼ばれてスクールカースト最下層の女子三人組の一人。持っている素質は美人であると雅樹が見抜く。あまり思慮深くなく、先の先を読まないで行動してしまうところがある。
ダニエルとロジィ〈翼を見つけた少年たち〉 ~アカシック・ギフト・ストーリー~
花房こはる
青春
「アカシック・ギフト・ストーリー」シリーズ第6弾。
これは、実際の人の過去世(前世)を一つのストーリーとして綴った物語です。
ロジィが10歳を迎えた年、長年、病いのため臥せっていた母親が天に召された。
父親は町の有名な貴族の執事の一人として働いており、家に帰れない日も多々あった。
そのため、父親が執事として仕えている貴族から、ロジィを知り合いの所で住み込みで働かせてみないか?しっかりした侯爵の家系なので安心だ。という誘いにロジィを一人っきりにさせるよりはと、その提案を受け入れた。
数日後、色とりどりのはなふぁ咲き誇るイングリッシュガーデンのその先にある大きな屋敷の扉の前にいた。
ここで、ロジィの新たな生活、そして、かけがえのない人物との新たな出会いが始まった。
【完結】ツインクロス
龍野ゆうき
青春
冬樹と夏樹はそっくりな双子の兄妹。入れ替わって遊ぶのも日常茶飯事。だが、ある日…入れ替わったまま両親と兄が事故に遭い行方不明に。夏樹は兄に代わり男として生きていくことになってしまう。家族を失い傷付き、己を責める日々の中、心を閉ざしていた『少年』の周囲が高校入学を機に動き出す。幼馴染みとの再会に友情と恋愛の狭間で揺れ動く心。そして陰ではある陰謀が渦を巻いていて?友情、恋愛、サスペンスありのお話。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる