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【小話2】
しおりを挟む「ねぇ、兄さん」
「ん?」
俺と兄さんは今、テレビを付けてホラー番組を楽しんでいる。
夏にはよくある[心霊写真特集]というものだ。
明らかに合成であったり、本物っぽいものがあったりと割と楽しめる為俺は好きで見ているが兄さんは他の事に夢中らしい。
それはお母さんが買ってきたパジャマが原因だ。
この前急遽日本に帰ってきた父さんとお母さんはいつものような余裕はないようで慌ただしく帰ってきてはそのままお土産を手渡しそのままの勢いで会社へ向かいその足でまた飛行機で飛び立った。
どんなに忙しくても俺達へのお土産は絶対に忘れない2人に擽ったさを感じながらも兄さんとお土産を開封してると、俺と兄それぞれへパジャマが入っている事に気が付く。
透明な袋に入っていてどんなデザインかはわからないが、俺のは灰色で兄さんのは白だった。
普段スウェットで寝ている為パジャマなんて小学生の時以来だ、と少しワクワクしながら開けてみる、と…
「…げ」
それは灰色のつなぎのような服で、フードが付いている。
お尻の部分には丸い尻尾。
フードの部分には長い耳。
明らかに兎のパジャマである。
ハッとして兄さんの方を見てみると真っ白のパジャマ、お尻には長細い尻尾がついておりフードには猫耳が付いていた。
とても可愛らしいが兄さんももうすぐで高校生、俺だって思春期真っ只中の中学生だ。
何故これをお土産に選んだのか、いやあのお母さんだ…ただ見たかった、これに尽きるだろう。
流石に着ようとは思えず、お母さんに催促されるまではタンスにしまっておこう…と綺麗に畳んでまた袋にしまおうとすると兄さんに肩をポンっと叩かれる。
嫌な予感がし、兄さんを見てみるととてもいい笑顔で俺を見つめてくる。
「…な、に」
「お風呂の後、これ着ようか」
素敵な笑顔で俺にとんでもない提案をしてきた兄さんに俺は項垂れながら頷く。
そして、今だ。
風呂に入り終わり、俺と兄さんは母さんが買ってきた兎と猫のパジャマを着ている。
兄さんはやる気満々で俺が風呂に入る前からパジャマを洗濯し、乾燥機に入れて風呂に入る時にはいい匂いでふわふわなパジャマが用意されていた。
なんで兄さんがここまでやる気満々なのかわからないが、もう楽しそうだからいいや…と心霊写真を眺めながらにこやかにスマホを構える兄さんを放っておく。
「唯兎、こっち見て」
「さっき見たじゃん」
「もう一回、お母さんも唯兎の写真沢山欲しいだろうから」
パシャっ、パシャっと俺の写真を撮りながら満足そうにニコニコと俺を見つめてくる兄さんに自然と俺も嬉しくなってくるから困ったものだ。
「もうこれ着ないから」
「えぇ、また着てほしいな。似合ってて可愛いよ」
「絶対いや」
兄さんからパジャマの写真を受け取ったお母さんからテンションMAXの電話がかかってきて別の意味で困ったのはまた別の日の話。
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