BL世界に転生したけど主人公の弟で悪役だったのでほっといてください

わさび

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第十話

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「それじゃ、空の道でリーリクルまで向かおう!」
「そうだね」

 ほうきにまたがり、ぎゅっとにぎる。ラルフもほうきを取り出してまたがり、ひゅんっと音を立てて空の道へ向かう。

 アシュリンもラルフを追いかけるように空を飛ぶ。

 良い天気だから、見晴らしも良くて思わず笑顔を浮かべてしまう。

「いい天気ー!」

 空気もんでいて、アシュリンは思わず大きく空気を吸い込んだ。

「空の道は……こっちだね!」

 リーリクルに行く空の道を選び、ラルフの姿を探す。彼はアシュリンのことを待っていたようで、分かれ道で待っていてくれた。ルプトゥムも一緒に。

「この道を真っ直ぐ進めば、リーリクルはすぐだよ!」
「そうなんだ。じゃあ、早速行こうか」
「うん!」

 分かれ道には小さな箱が置いてあり、その箱に手を入れて「リーリクルに行きます」とつぶやくと、手首にシュルンと赤いひもが巻き付く。

 これは空の道を使うために必要なもので、必ず小さな箱に手を入れないといけない。

 ラルフも箱に手を入れて、赤いひもを巻き付けた。

「おじいちゃんたちに会ったら、どんなことを話そうかなぁ」

「いろんなお話ができるね、お土産話、たくさんでしょ?」
「……あっ、お星さまでおどろかせるのも良いかも!」

 良いことを思いついた! とばかりに目を輝かせるアシュリンに、ラルフはくすりと口角を上げてルプトゥムを呼ぶ。

 使い魔たちは自由に空を飛べるが、大体は主人と一緒に飛んでいる。

「リーリクルに行く道、結構混んでいるね」
「そうだねー。陸路りくろが使えないなら、仕方ないのかな」

 アシュリンは飛んでいるスピードを落として、邪魔にならないようにはじに移動した。

 ラルフを呼んで端っこを飛んでいると、急いでいるのかピューンと音がするくらい、いきおいよく飛んでいる人がいて、「こらー! 空の道の速度を守りなさーい!」と空の道を警備けいびしている人が追いかけている。

「……空の道ってにぎやかだよね」
「……本当にね」

 陸路よりも空の道を通ったほうが、移動は楽だ。

 楽だが、こうしてたまに速度を守らない人がいて、そのたびに警備員が追いかけるというレースが始まってしまうことがある。

「今日はレースの日かぁ」
「なにをそんなに急いでいるんだろうねぇ」

 のんびりと飛んでいるアシュリンとラルフは、やれやれとばかりに両肩を上げて、視線をわしてくすくすと笑い合った。

 そのうちにスピードを出していた人が警備員につかまり、しょんぼりとしているところを追いしていく。

「みんなが速度を守れば、誰かにぶつかっちゃうこともないよね」

「うん、安全に飛ぶことって大事だね」

 空の道は魔法でできていて、もしもほうきから落ちてもぽよよんとした雲が受け止めてくれる。なので、たまにいるのだ。わざとスピードを出して、飛んでいる人にぶつかり、雲に落とす人が。
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