3 / 23
第三話
しおりを挟む
俺の兄さんは、正直言ってかなりの美人だ。
その反対に俺は、かなりの平凡顔だ。
俺の父と兄さんの母が再婚し、俺と照史は兄弟に…そして父と母が海外へ出張してから2年が過ぎた。
父と母は1ヶ月に1度は帰ってきて俺達の様子を見に来てくれる。
そのおかげもあり、兄さんも俺も安定して2人で暮らせていた。
俺は小学4年、兄さんが小学6年…登校時は必ず一緒に学校へ向かい、帰りはそれぞれで寄り道せずに帰る。この繰り返しだ。
しかし、最初に言った通り兄さんは美人だ。
流石はBLゲームの主人公というべきか、男にも女にも好まれる顔をしている。
そして物腰の柔らかい性格もあり、兄さんの周りには人が沢山いた。
男友達、女友達、兄さん目当てでわざわざ寄り道してきた中学生やその兄弟。
帰り道ではいろんな人が兄さんに声をかけて帰っていく。
「照史くん、また明日ー!」
「照史、またな!」
「照史くん偶然だね!来年から中学だよね、いろいろ教えてあげる!」
「照史くん、家まで送ってあげようか?」
みんながみんな兄さんに声をかける。
まるで俺が見えていないかのように。
「ありがとうございます、でも弟もいるので大丈夫です」
人当たりの良い笑顔で断りの言葉を伝える兄さんに、送ると言った中学生の女子が俺に目を向ける。
「あぁ、全然似てない弟くんかぁ。本当似てないねぇ…くすくす、可哀想」
明らかに馬鹿にした目を向けてくる。
似てない。
普通。
これが弟か。
可哀想。
毎日俺に降りかかる言葉。
ーーーーもやっーーーー
聞くたびに
ーーーーもやっーーーー
聞くたびに
ーーーーもやっーーーー
兄さんに対するこの「弟の嫉妬心」が溜まっていく。
こんな感情、知りたくなかった。
どうして俺が、好きでこんな顔に産まれたわけじゃない。
俺だって兄さんみたいな…。
「確かに弟とは似てないけど、僕の可愛い弟ですよ」
俺の肩を抱き寄せてくすくすと笑っていた女子達微笑みながら言う兄さん。
兄さんは本当に俺を大事にしてくれてる。
原作でも、今でも。
原作でもトラウマを植え付けられながらも「全く恨んでなんていない」と悪役である弟を抱きしめる場面がある。
今でも、こうして守ってくれる。
良いやつなんだ。
良いやつなのはわかってるんだ。
でも、この「嫉妬心」が素直に兄さんを認めない。
きっとこの「嫉妬心」がストーリーの補正をかけてくる。
もやもやするこの気持ちを落ち着かせないと…俺はきっと原作と同じように兄さんに嫌なことをする。
「唯兎、今日のご飯はなに作る?」
この2年、ご飯は一緒に作っている。
流石は主人公、最初は全然料理なんてできなかったのに今では俺以上に料理ができてしまう。
…俺とは、全ての出来が違う。
「…にいさんにまかせる」
「…ん、わかった。じゃあ煮物にする?昨日は野菜炒めだったし、その前はシチューつくったもんね」
「…それでいい」
最低限のことしか口に出さない俺に、おそらく思うところはあると思う。
それでも無理に聞いてこないあたり、俺のことをしっかり考えてくれているんだ。
俺も…元々は高校生だったんだ、嫉妬心になんかに負けてなんていられない…。
小さく息を吐いて兄さんの手を握ればそれに驚いた兄さんがこちらを向いてくる。
「唯兎…」
「…なに…」
「…なんでもないよ」
心底嬉しそうに
愛おしそうに
こちらを見て微笑むその姿
壊さない努力は続けようと思う。
その反対に俺は、かなりの平凡顔だ。
俺の父と兄さんの母が再婚し、俺と照史は兄弟に…そして父と母が海外へ出張してから2年が過ぎた。
父と母は1ヶ月に1度は帰ってきて俺達の様子を見に来てくれる。
そのおかげもあり、兄さんも俺も安定して2人で暮らせていた。
俺は小学4年、兄さんが小学6年…登校時は必ず一緒に学校へ向かい、帰りはそれぞれで寄り道せずに帰る。この繰り返しだ。
しかし、最初に言った通り兄さんは美人だ。
流石はBLゲームの主人公というべきか、男にも女にも好まれる顔をしている。
そして物腰の柔らかい性格もあり、兄さんの周りには人が沢山いた。
男友達、女友達、兄さん目当てでわざわざ寄り道してきた中学生やその兄弟。
帰り道ではいろんな人が兄さんに声をかけて帰っていく。
「照史くん、また明日ー!」
「照史、またな!」
「照史くん偶然だね!来年から中学だよね、いろいろ教えてあげる!」
「照史くん、家まで送ってあげようか?」
みんながみんな兄さんに声をかける。
まるで俺が見えていないかのように。
「ありがとうございます、でも弟もいるので大丈夫です」
人当たりの良い笑顔で断りの言葉を伝える兄さんに、送ると言った中学生の女子が俺に目を向ける。
「あぁ、全然似てない弟くんかぁ。本当似てないねぇ…くすくす、可哀想」
明らかに馬鹿にした目を向けてくる。
似てない。
普通。
これが弟か。
可哀想。
毎日俺に降りかかる言葉。
ーーーーもやっーーーー
聞くたびに
ーーーーもやっーーーー
聞くたびに
ーーーーもやっーーーー
兄さんに対するこの「弟の嫉妬心」が溜まっていく。
こんな感情、知りたくなかった。
どうして俺が、好きでこんな顔に産まれたわけじゃない。
俺だって兄さんみたいな…。
「確かに弟とは似てないけど、僕の可愛い弟ですよ」
俺の肩を抱き寄せてくすくすと笑っていた女子達微笑みながら言う兄さん。
兄さんは本当に俺を大事にしてくれてる。
原作でも、今でも。
原作でもトラウマを植え付けられながらも「全く恨んでなんていない」と悪役である弟を抱きしめる場面がある。
今でも、こうして守ってくれる。
良いやつなんだ。
良いやつなのはわかってるんだ。
でも、この「嫉妬心」が素直に兄さんを認めない。
きっとこの「嫉妬心」がストーリーの補正をかけてくる。
もやもやするこの気持ちを落ち着かせないと…俺はきっと原作と同じように兄さんに嫌なことをする。
「唯兎、今日のご飯はなに作る?」
この2年、ご飯は一緒に作っている。
流石は主人公、最初は全然料理なんてできなかったのに今では俺以上に料理ができてしまう。
…俺とは、全ての出来が違う。
「…にいさんにまかせる」
「…ん、わかった。じゃあ煮物にする?昨日は野菜炒めだったし、その前はシチューつくったもんね」
「…それでいい」
最低限のことしか口に出さない俺に、おそらく思うところはあると思う。
それでも無理に聞いてこないあたり、俺のことをしっかり考えてくれているんだ。
俺も…元々は高校生だったんだ、嫉妬心になんかに負けてなんていられない…。
小さく息を吐いて兄さんの手を握ればそれに驚いた兄さんがこちらを向いてくる。
「唯兎…」
「…なに…」
「…なんでもないよ」
心底嬉しそうに
愛おしそうに
こちらを見て微笑むその姿
壊さない努力は続けようと思う。
340
お気に入りに追加
771
あなたにおすすめの小説
乙女ゲームのモブに転生したようですが、何故かBLの世界になってます~逆ハーなんて狙ってないのに攻略対象達が僕を溺愛してきます
syouki
BL
学校の階段から落ちていく瞬間、走馬灯のように僕の知らない記憶が流れ込んできた。そして、ここが乙女ゲーム「ハイスクールメモリー~あなたと過ごすスクールライフ」通称「ハイメモ」の世界だということに気が付いた。前世の僕は、色々なゲームの攻略を紹介する会社に勤めていてこの「ハイメモ」を攻略中だったが、帰宅途中で事故に遇い、はやりの異世界転生をしてしまったようだ。と言っても、僕は攻略対象でもなければ、対象者とは何の接点も無い一般人。いわゆるモブキャラだ。なので、ヒロインと攻略対象の恋愛を見届けようとしていたのだが、何故か攻略対象が僕に絡んでくる。待って!ここって乙女ゲームの世界ですよね???
※設定はゆるゆるです。
※主人公は流されやすいです。
※R15は念のため
※不定期更新です。
※BL小説大賞エントリーしてます。よろしくお願いしますm(_ _)m
孤独なまま異世界転生したら過保護な兄ができた話
かし子
BL
養子として迎えられた家に弟が生まれた事により孤独になった僕。18歳を迎える誕生日の夜、絶望のまま外へ飛び出し、トラックに轢かれて死んだ...はずが、目が覚めると赤ん坊になっていた?
転生先には優しい母と優しい父。そして...
おや?何やらこちらを見つめる赤目の少年が、
え!?兄様!?あれ僕の兄様ですか!?
優しい!綺麗!仲良くなりたいです!!!!
▼▼▼▼
『アステル、おはよう。今日も可愛いな。』
ん?
仲良くなるはずが、それ以上な気が...。
...まあ兄様が嬉しそうだからいいか!
またBLとは名ばかりのほのぼの兄弟イチャラブ物語です。
実は俺、悪役なんだけど周りの人達から溺愛されている件について…
彩ノ華
BL
あのぅ、、おれ一応悪役なんですけど〜??
ひょんな事からこの世界に転生したオレは、自分が悪役だと思い出した。そんな俺は…!!ヒロイン(男)と攻略対象者達の恋愛を全力で応援します!断罪されない程度に悪役としての責務を全うします_。
みんなから嫌われるはずの悪役。
そ・れ・な・の・に…
どうしてみんなから構われるの?!溺愛されるの?!
もしもーし・・・ヒロインあっちだよ?!どうぞヒロインとイチャついちゃってくださいよぉ…(泣)
そんなオレの物語が今始まる___。
ちょっとアレなやつには✾←このマークを付けておきます。読む際にお気を付けください☺️
第12回BL小説大賞に参加中!
よろしくお願いします🙇♀️
異世界に転生してもゲイだった俺、この世界でも隠しつつ推しを眺めながら生きていきます~推しが婚約したら、出家(自由に生きる)します~
kurimomo
BL
俺がゲイだと自覚したのは、高校生の時だった。中学生までは女性と付き合っていたのだが、高校生になると、「なんか違うな」と感じ始めた。ネットで調べた結果、自分がいわゆるゲイなのではないかとの結論に至った。同級生や友人のことを好きになるも、それを伝える勇気が出なかった。
そうこうしているうちに、俺にはカミングアウトをする勇気がなく、こうして三十歳までゲイであることを隠しながら独身のままである。周りからはなぜ結婚しないのかと聞かれるが、その追及を気持ちを押し殺しながら躱していく日々。俺は幸せになれるのだろうか………。
そんな日々の中、襲われている女性を助けようとして、腹部を刺されてしまった。そして、同性婚が認められる、そんな幸せな世界への転生を祈り静かに息を引き取った。
気が付くと、病弱だが高スペックな身体、アース・ジーマルの体に転生した。病弱が理由で思うような生活は送れなかった。しかし、それには理由があって………。
それから、偶然一人の少年の出会った。一目見た瞬間から恋に落ちてしまった。その少年は、この国王子でそして、俺は側近になることができて………。
魔法と剣、そして貴族院など王道ファンタジーの中にBL要素を詰め込んだ作品となっております。R指定は本当の最後に書く予定なので、純粋にファンタジーの世界のBL恋愛(両片思い)を楽しみたい方向けの作品となっております。この様な作品でよければ、少しだけでも目を通していただければ幸いです。
GW明けからは、週末に投稿予定です。よろしくお願いいたします。
謎の死を遂げる予定の我儘悪役令息ですが、義兄が離してくれません
柴傘
BL
ミーシャ・ルリアン、4歳。
父が連れてきた僕の義兄になる人を見た瞬間、突然前世の記憶を思い出した。
あれ、僕ってばBL小説の悪役令息じゃない?
前世での愛読書だったBL小説の悪役令息であるミーシャは、義兄である主人公を出会った頃から蛇蝎のように嫌いイジメを繰り返し最終的には謎の死を遂げる。
そんなの絶対に嫌だ!そう思ったけれど、なぜか僕は理性が非常によわよわで直ぐにキレてしまう困った体質だった。
「おまえもクビ!おまえもだ!あしたから顔をみせるなー!」
今日も今日とて理不尽な理由で使用人を解雇しまくり。けれどそんな僕を見ても、主人公はずっとニコニコしている。
「おはようミーシャ、今日も元気だね」
あまつさえ僕を抱き上げ頬擦りして、可愛い可愛いと連呼する。あれれ?お兄様、全然キャラ違くない?
義弟が色々な意味で可愛くて仕方ない溺愛執着攻め×怒りの沸点ド底辺理性よわよわショタ受け
9/2以降不定期更新
転生先がハードモードで笑ってます。
夏里黒絵
BL
周りに劣等感を抱く春乃は事故に会いテンプレな転生を果たす。
目を開けると転生と言えばいかにも!な、剣と魔法の世界に飛ばされていた。とりあえず容姿を確認しようと鏡を見て絶句、丸々と肉ずいたその幼体。白豚と言われても否定できないほど醜い姿だった。それに横腹を始めとした全身が痛い、痣だらけなのだ。その痣を見て幼体の7年間の記憶が蘇ってきた。どうやら公爵家の横暴訳アリ白豚令息に転生したようだ。
人間として底辺なリンシャに強い精神的ショックを受け、春乃改めリンシャ アルマディカは引きこもりになってしまう。
しかしとあるきっかけで前世の思い出せていなかった記憶を思い出し、ここはBLゲームの世界で自分は主人公を虐める言わば悪役令息だと思い出し、ストーリーを終わらせれば望み薄だが元の世界に戻れる可能性を感じ動き出す。しかし動くのが遅かったようで…
色々と無自覚な主人公が、最悪な悪役令息として(いるつもりで)ストーリーのエンディングを目指すも、気づくのが遅く、手遅れだったので思うようにストーリーが進まないお話。
R15は保険です。不定期更新。小説なんて書くの初めてな作者の行き当たりばったりなご都合主義ストーリーになりそうです。
【完】ゲームの世界で美人すぎる兄が狙われているが
咲
BL
俺には大好きな兄がいる。3つ年上の高校生の兄。美人で優しいけどおっちょこちょいな可愛い兄だ。
ある日、そんな兄に話題のゲームを進めるとありえない事が起こった。
「あれ?ここってまさか……ゲームの中!?」
モンスターが闊歩する森の中で出会った警備隊に保護されたが、そいつは兄を狙っていたようで………?
重度のブラコン弟が兄を守ろうとしたり、壊れたブラコンの兄が一線越えちゃったりします。高確率でえろです。
※近親相姦です。バッチリ血の繋がった兄弟です。
※第三者×兄(弟)描写があります。
※ヤンデレの闇属性でビッチです。
※兄の方が優位です。
※男性向けの表現を含みます。
※左右非固定なのでコロコロ変わります。固定厨の方は推奨しません。
お気に入り登録、感想などはお気軽にしていただけると嬉しいです!
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる