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第110話「黒いフードの少女」
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剣状に変化させたカニィナーレを構えながら、シャルルは改めて眼前の少女を観察する。
前が開いた黒いローブから覗く肢体は、人族の少女のように華奢に見える。フードから伸びた大きな耳袋があり獣人だと思われるが、正面からは尻尾が確認できないので尻尾が無いか短い種族だ。そもそもハンサムを蹴り飛ばした力は人族のそれではなかった。
大きな耳袋があるせいで分かりにくいが、背丈はカイルより小柄だ。黒いローブは手元に向かって袖が広がっており、手元がまったく見えないので何かを隠し持っていても分からない。
そして一際目に付くのは、少女の顔を隠している黒い仮面だった。赤い瞳を覗かせるそれは、表情が読み取れないので不安な気分にさせられる。
「貴女、何者なの? ゴルティアス号に小さい子が乗ってるなんて話、聞いたことないんだけど。それに……たぶん海賊じゃないでしょ?」
「…………」
シャルルの問い掛けに、少女は何も答えなかった。ただ、その雰囲気や動き方が海に生きる者とは違うと、シャルルの直感が囁いていた。
シャルルは今回の海戦に挑むにあたって、ゼロン=ゴルダ大海賊団について調べ上げていた。船の数や性能はもちろん、船乗りたちの質や構成など、作戦を立てる上で不安要素は一つずつ潰したのだ。
しかし、この少女の情報はどこにもなかったのである。これほど強く目立つ存在なら、秘匿されていても噂ぐらい聞きそうなものだ。
「無口な子ね……小さい子と戦うのは気が引けるんだけど……なっ!」
シャルルが踏み込むと甲板に衝撃が走る。そして一足で少女との間合いを潰すと、一撃で気絶させるつもりでカニィナーレの持ち手を少女に振り下ろした。しかし少女は身を低くして、その攻撃を潜ると手を甲板に付いて、逆立ちの要領でシャルルを蹴り上げた。
咄嗟に左手でガードしながら、自らも跳んで衝撃を逃がしたシャルルだったが、少女の蹴りの威力は予想以上で、威力を完全に殺し切ることはできなかった。
「痛ぁぁ……折れてはないけど、ヒビぐらいは入ってるかも?」
攻撃を受けた左手は、痙攣して力が入らなくなっている。これ以上カニィナーレを持っていられないと感じたシャルルは、左手のカニィナーレを腰に納めた。
その場でゆっくりと左右に揺れた少女は、お返しだと言わんばかりにシャルルに突撃してきた。袖口からチラッと見えた鈍い光に、シャルルは上空に跳んでマストから横に伸びているヤードに逃れた。
しかし、少女も同じように跳躍して追いかけてくる。
「しつこいっ!」
シャルルはそう叫びながら、再び跳んで別のヤードに飛び移って距離を取る。自分の動きについて来れる存在に、今まで出会ったことがなかったので、彼女も少なからず動揺しているようだ。
そのまま何度かヤード間を飛び移りながら空中で斬り結び、やがて二人は同じヤードの上に着地した。何度か刃を合わせて分かったのは、少女が隠し持っている武器は分厚い両刃のダガーのようだった。
お互い武器を構えたまま睨みあう。シャルルは小さく息を吐きながら、カニィナーレを持つ手に力を込めた。
「これは……子供が相手とか言ってられないな」
シャルルの赤い瞳がさらに深い色に輝くと、彼女は少女に向かって駆け出した。狭いヤードを一気に駆け抜け、突き出されたダガーを飛んで躱しながら右廻し蹴りを少女に叩き込む。
吹き飛んだ少女はいくつかの帆を突き破りながら、船首にある貯蔵庫の扉に激突した。貯蔵庫には小麦粉でも積んでいたのか、モクモクと白い煙が立ち昇った。
「さすがに無事ってことは無いと思うけど……」
シャルルはヤードの上から目を凝らすが、少女の姿を確認しようにも白煙が邪魔だった。仕方なくヴァル爺たちの状況を確認しようと視線を動かす。
彼らはゼロン=ゴルダの海賊たちと乱戦になっており、寡兵ながら互角以上の戦いを見せていた。その中には少女にやられたハンサムが復活して参戦していたが、先程のダメージが残っているのか右手だけで槍を振り回している。
「わたしも参戦しなくちゃ……っ!?」
シャルルが助けに向かおうとした瞬間、白い煙の中から鈍い光が飛び出してきた。激しい悪寒を感じた彼女は、咄嗟にカニィナーレで飛んで来た物を弾き飛ばしたが、足を滑らせてバランスを崩してしまう。そこに白煙から飛び出してきた少女が、猛然とシャルルに襲い掛かってきた。
「がはぁ!?」
まるで弾丸のような少女の蹴りが見事に腹に突き刺さり、吹き飛ばされたシャルルはメインマストまで吹き飛んだ。背中からマストに強打したシャルルは一瞬呼吸が止まったが、何とかしがみ付くようにヤードを掴んで落下だけは阻止した。
その後、何とかヤードをよじ登ると、少女もシャルルにトドメを刺そうと、ヤードに飛び乗ってきた。少女は多少汚れていたが、ダメージがあるのか無いのか、黒い仮面に遮られて窺い知れなかった。
意識がはっきりしない中、シャルルはヴァル爺に教えの一つを思い出していた。
「く、苦しい時こそ……前に出るっ!」
シャルルが思いっきり踏み出すと、彼女たちが乗っているヤードが激しく揺れて少女がバランスを崩した。その隙を逃さず駆け出したシャルルが、下から上に掛けてカニィナーレを振り抜く。
その切っ先が、仰け反った少女の仮面に当たると、滑りながらフードを跳ね上げた。
「っ!?」
予想外の攻撃を喰らった少女は、後ろに跳びシャルルから距離を取る。そのお陰で一呼吸入れることができたシャルルは、何とか意識と視界を回復させようと努めた。
シャルルの視界が定まってきたタイミングで、ダメージを受けた少女の仮面が、真ん中から割れて下に落ちる。そして彼女の素顔が白日の下に晒されることになった。それを見たシャルルは息を飲む。
「あ……貴女、まさか兎人族なの?」
少女の素顔はシャルルと同じ綺麗な銀髪に赤い瞳で、とても整った顔立ちをしている。そして銀髪からは同じ色の長い兎の耳が伸びていた。それは幻の種族、兎人族の特徴に合致したものだったのだ。
「……あなたも同じ?」
初めて聞いた少女の声は、あまり抑揚がなかったが、とても可愛らしい声をしていた。声だけ聴けば年相応に感じる。彼女の問いかけにシャルルは少し悩んだあと首を横に振った。
「たぶんね……赤ん坊の時に奴隷船に乗ってるところを、パパに拾われたから詳しくわからないの」
「ふぅん、そう……あなたは運が良かったのね」
少女はあまり興味なさそうにそう呟くと、一気に間合いを詰めてきた。虚を突かれたと言っても、ヤードの上なので動きは直線である。ダメージが残っていても、シャルルなら反応できる速度だった。
突っ込んできた少女に対して、シャルルは反射的に右上から剣状のカニィナーレを振り下ろす。その攻撃に対して少女は左手のダガーで受けると、腰を捻ってシャルルの脇腹に右廻し蹴りを放った。
シャルルは咄嗟に痛めた左手で受けて直撃は避けたが、ヤードから蹴り出されてしまった。彼女は重力に従い、そのまま甲板に落下していく。さすがのシャルルも、無防備なまま甲板に激突すれば無事では済まない。
「くぅ! 伸びろっ!」
シャルルはカニィナーレの剣身を鞭状に変化させると、先程までいたヤードに巻き付かせた。そして振り子のように、勢いをつけて空を舞うと再びヤードまで戻ってくる。
シャルルは痛む左手を押さえながら呟く。
「この子、かなり強い……早くみんなのところに行かなきゃならないのに」
シャルルの総合的な戦闘力はかなり高い。力自慢のハンサムや師であるヴァル爺であっても、本気で当たれば良い勝負はできると思っている。それでも彼女が素直に負けを認めている人物は二人いた。
一人はサラマンデル族の族長ドーラ・サラマンデル。もう一人はゼフィールの懐刀であるノット・ソーである。
この目の前の少女からは、その二人と同等のプレッシャーを感じていた。おそらく同族であり素の身体能力はほぼ互角だろうが、殺すことに慣れているのか、攻撃に一切の躊躇を感じないのだ。
この少女が今までどんな人生を過ごしてきたのかはわからない。しかし、少なくともシャルルよりは辛く厳しい人生だったのを感じさせた。彼女の強さは普通に生きてきた者には辿りつけないものだ。そう考えると、シャルルの胸は少しだけ痛んだ。
「なかなかしぶといね。今まで、こんなに手こずったことはなかった」
「それは褒めてくれてるのかな? 見ての通りボロボロだけどね。せっかく話してくれるようになったんだから、名前ぐらいは教えてくれないかしら?」
シャルルはウインクをしながら尋ねる。純粋な興味と、少しでも息を整える時間が欲しかったのだ。
「名前なんてない……仕事上は黒兎と呼ばれていた」
「仕事? キャプテンゼルスに雇われたの?」
黒兎と名乗った少女は首を横に振った後、首を隠している布を少し下げて無骨な首輪を見せてきた。それは奴隷商などが使う契約の首輪という魔導具で、契約した主人を裏切らないようにする効果がある。
その首輪の存在に、シャルルは顔を顰める。
「それ……キャプテンゼルスに付けられたの?」
「答えても意味はない。お前らの排除を命じられている……悪いけど死んでくれる?」
少女から殺気が溢れだすと、再びゆっくりと近付いてくる。シャルルは手にしたカニィナーレをギュッと握りしめた。
「悪いけど……たった今、死ねない理由が増えたの。キャプテンゼルスをぶん殴って、キミを助けてあげないとね」
前が開いた黒いローブから覗く肢体は、人族の少女のように華奢に見える。フードから伸びた大きな耳袋があり獣人だと思われるが、正面からは尻尾が確認できないので尻尾が無いか短い種族だ。そもそもハンサムを蹴り飛ばした力は人族のそれではなかった。
大きな耳袋があるせいで分かりにくいが、背丈はカイルより小柄だ。黒いローブは手元に向かって袖が広がっており、手元がまったく見えないので何かを隠し持っていても分からない。
そして一際目に付くのは、少女の顔を隠している黒い仮面だった。赤い瞳を覗かせるそれは、表情が読み取れないので不安な気分にさせられる。
「貴女、何者なの? ゴルティアス号に小さい子が乗ってるなんて話、聞いたことないんだけど。それに……たぶん海賊じゃないでしょ?」
「…………」
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シャルルは今回の海戦に挑むにあたって、ゼロン=ゴルダ大海賊団について調べ上げていた。船の数や性能はもちろん、船乗りたちの質や構成など、作戦を立てる上で不安要素は一つずつ潰したのだ。
しかし、この少女の情報はどこにもなかったのである。これほど強く目立つ存在なら、秘匿されていても噂ぐらい聞きそうなものだ。
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シャルルが踏み込むと甲板に衝撃が走る。そして一足で少女との間合いを潰すと、一撃で気絶させるつもりでカニィナーレの持ち手を少女に振り下ろした。しかし少女は身を低くして、その攻撃を潜ると手を甲板に付いて、逆立ちの要領でシャルルを蹴り上げた。
咄嗟に左手でガードしながら、自らも跳んで衝撃を逃がしたシャルルだったが、少女の蹴りの威力は予想以上で、威力を完全に殺し切ることはできなかった。
「痛ぁぁ……折れてはないけど、ヒビぐらいは入ってるかも?」
攻撃を受けた左手は、痙攣して力が入らなくなっている。これ以上カニィナーレを持っていられないと感じたシャルルは、左手のカニィナーレを腰に納めた。
その場でゆっくりと左右に揺れた少女は、お返しだと言わんばかりにシャルルに突撃してきた。袖口からチラッと見えた鈍い光に、シャルルは上空に跳んでマストから横に伸びているヤードに逃れた。
しかし、少女も同じように跳躍して追いかけてくる。
「しつこいっ!」
シャルルはそう叫びながら、再び跳んで別のヤードに飛び移って距離を取る。自分の動きについて来れる存在に、今まで出会ったことがなかったので、彼女も少なからず動揺しているようだ。
そのまま何度かヤード間を飛び移りながら空中で斬り結び、やがて二人は同じヤードの上に着地した。何度か刃を合わせて分かったのは、少女が隠し持っている武器は分厚い両刃のダガーのようだった。
お互い武器を構えたまま睨みあう。シャルルは小さく息を吐きながら、カニィナーレを持つ手に力を込めた。
「これは……子供が相手とか言ってられないな」
シャルルの赤い瞳がさらに深い色に輝くと、彼女は少女に向かって駆け出した。狭いヤードを一気に駆け抜け、突き出されたダガーを飛んで躱しながら右廻し蹴りを少女に叩き込む。
吹き飛んだ少女はいくつかの帆を突き破りながら、船首にある貯蔵庫の扉に激突した。貯蔵庫には小麦粉でも積んでいたのか、モクモクと白い煙が立ち昇った。
「さすがに無事ってことは無いと思うけど……」
シャルルはヤードの上から目を凝らすが、少女の姿を確認しようにも白煙が邪魔だった。仕方なくヴァル爺たちの状況を確認しようと視線を動かす。
彼らはゼロン=ゴルダの海賊たちと乱戦になっており、寡兵ながら互角以上の戦いを見せていた。その中には少女にやられたハンサムが復活して参戦していたが、先程のダメージが残っているのか右手だけで槍を振り回している。
「わたしも参戦しなくちゃ……っ!?」
シャルルが助けに向かおうとした瞬間、白い煙の中から鈍い光が飛び出してきた。激しい悪寒を感じた彼女は、咄嗟にカニィナーレで飛んで来た物を弾き飛ばしたが、足を滑らせてバランスを崩してしまう。そこに白煙から飛び出してきた少女が、猛然とシャルルに襲い掛かってきた。
「がはぁ!?」
まるで弾丸のような少女の蹴りが見事に腹に突き刺さり、吹き飛ばされたシャルルはメインマストまで吹き飛んだ。背中からマストに強打したシャルルは一瞬呼吸が止まったが、何とかしがみ付くようにヤードを掴んで落下だけは阻止した。
その後、何とかヤードをよじ登ると、少女もシャルルにトドメを刺そうと、ヤードに飛び乗ってきた。少女は多少汚れていたが、ダメージがあるのか無いのか、黒い仮面に遮られて窺い知れなかった。
意識がはっきりしない中、シャルルはヴァル爺に教えの一つを思い出していた。
「く、苦しい時こそ……前に出るっ!」
シャルルが思いっきり踏み出すと、彼女たちが乗っているヤードが激しく揺れて少女がバランスを崩した。その隙を逃さず駆け出したシャルルが、下から上に掛けてカニィナーレを振り抜く。
その切っ先が、仰け反った少女の仮面に当たると、滑りながらフードを跳ね上げた。
「っ!?」
予想外の攻撃を喰らった少女は、後ろに跳びシャルルから距離を取る。そのお陰で一呼吸入れることができたシャルルは、何とか意識と視界を回復させようと努めた。
シャルルの視界が定まってきたタイミングで、ダメージを受けた少女の仮面が、真ん中から割れて下に落ちる。そして彼女の素顔が白日の下に晒されることになった。それを見たシャルルは息を飲む。
「あ……貴女、まさか兎人族なの?」
少女の素顔はシャルルと同じ綺麗な銀髪に赤い瞳で、とても整った顔立ちをしている。そして銀髪からは同じ色の長い兎の耳が伸びていた。それは幻の種族、兎人族の特徴に合致したものだったのだ。
「……あなたも同じ?」
初めて聞いた少女の声は、あまり抑揚がなかったが、とても可愛らしい声をしていた。声だけ聴けば年相応に感じる。彼女の問いかけにシャルルは少し悩んだあと首を横に振った。
「たぶんね……赤ん坊の時に奴隷船に乗ってるところを、パパに拾われたから詳しくわからないの」
「ふぅん、そう……あなたは運が良かったのね」
少女はあまり興味なさそうにそう呟くと、一気に間合いを詰めてきた。虚を突かれたと言っても、ヤードの上なので動きは直線である。ダメージが残っていても、シャルルなら反応できる速度だった。
突っ込んできた少女に対して、シャルルは反射的に右上から剣状のカニィナーレを振り下ろす。その攻撃に対して少女は左手のダガーで受けると、腰を捻ってシャルルの脇腹に右廻し蹴りを放った。
シャルルは咄嗟に痛めた左手で受けて直撃は避けたが、ヤードから蹴り出されてしまった。彼女は重力に従い、そのまま甲板に落下していく。さすがのシャルルも、無防備なまま甲板に激突すれば無事では済まない。
「くぅ! 伸びろっ!」
シャルルはカニィナーレの剣身を鞭状に変化させると、先程までいたヤードに巻き付かせた。そして振り子のように、勢いをつけて空を舞うと再びヤードまで戻ってくる。
シャルルは痛む左手を押さえながら呟く。
「この子、かなり強い……早くみんなのところに行かなきゃならないのに」
シャルルの総合的な戦闘力はかなり高い。力自慢のハンサムや師であるヴァル爺であっても、本気で当たれば良い勝負はできると思っている。それでも彼女が素直に負けを認めている人物は二人いた。
一人はサラマンデル族の族長ドーラ・サラマンデル。もう一人はゼフィールの懐刀であるノット・ソーである。
この目の前の少女からは、その二人と同等のプレッシャーを感じていた。おそらく同族であり素の身体能力はほぼ互角だろうが、殺すことに慣れているのか、攻撃に一切の躊躇を感じないのだ。
この少女が今までどんな人生を過ごしてきたのかはわからない。しかし、少なくともシャルルよりは辛く厳しい人生だったのを感じさせた。彼女の強さは普通に生きてきた者には辿りつけないものだ。そう考えると、シャルルの胸は少しだけ痛んだ。
「なかなかしぶといね。今まで、こんなに手こずったことはなかった」
「それは褒めてくれてるのかな? 見ての通りボロボロだけどね。せっかく話してくれるようになったんだから、名前ぐらいは教えてくれないかしら?」
シャルルはウインクをしながら尋ねる。純粋な興味と、少しでも息を整える時間が欲しかったのだ。
「名前なんてない……仕事上は黒兎と呼ばれていた」
「仕事? キャプテンゼルスに雇われたの?」
黒兎と名乗った少女は首を横に振った後、首を隠している布を少し下げて無骨な首輪を見せてきた。それは奴隷商などが使う契約の首輪という魔導具で、契約した主人を裏切らないようにする効果がある。
その首輪の存在に、シャルルは顔を顰める。
「それ……キャプテンゼルスに付けられたの?」
「答えても意味はない。お前らの排除を命じられている……悪いけど死んでくれる?」
少女から殺気が溢れだすと、再びゆっくりと近付いてくる。シャルルは手にしたカニィナーレをギュッと握りしめた。
「悪いけど……たった今、死ねない理由が増えたの。キャプテンゼルスをぶん殴って、キミを助けてあげないとね」
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