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第86話「商売再開」
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魔剣型動力炉の試運転が終わり、問題点が浮き彫りになった後、シャルル、ガディンク、マギの三人は、今後の対策について話し合うことになった。
暴走した魔剣型動力炉は工房内に運び込まれ、現在ガディンクが各種のチェックをしている。
「やっぱり配管関係を中心に、完全に溶けちまってるな」
「直せそうなの?」
「いや、ここまで溶けてちゃどうすることもできねぇ。一回バラして交換しなきゃダメだな」
動力炉から降りてきたガディンクが顔を顰めながら答える。それを聞いたマギは呆れた様子で肩を竦めた。
「鉱人のくせに強度計算間違えたんじゃない?」
「うるせぇ、素人は黙っとれ! こうなるのも計算の上だぜ。その魔剣がどれだけヤバいか見せるためにやってやったんだ」
シャルルは手にした魔剣を見つめて首を傾げる。マギはその魔剣を受け取ると、指差しながら解説を始めた。
「まぁ、この剣はちょっと特殊よねぇ。このガード部分に施された呪術で周辺の魔力を吸収、嵌め込まれた魔石に蓄積して剣身に流し、さらに剣身がそれを増幅して放出している。どれをとっても、今は失われた高度な技術が使われているわ」
この魔剣は武器としても一級品だが、カニィナーレを愛用しているシャルルは、あまり興味を示していなかった。今はそれよりこの魔剣が持つ力を、何とか船に転用できないかと考えているのだ。
「それでどうすればいいの?」
「さっきも言ったが、まずは配管の強化だ。強度を上げなきゃ話にならねぇ」
「強度か……それなら帝国製の鉄鋼を積んできたから、それを使えばいけるかな?」
「そいつぁいい、あそこのは品質が良いからな」
ガディンクは指を鳴らして肯定した。この近隣では、ヴィーシャス共和国の北にあるドワーフの国がもっとも高品質だが輸出量が少なく、次いで高品質なのが帝国製の鉄鋼なのだ。
「だが、それでもコーティング処理をしなきゃいけねぇな」
「コーディング?」
「魔導コーティングでしょ? 呪術的な処理をすることで、魔力を通せるようにするのよ」
普通の鉄鋼では魔力に反発するため、呪術的な処理をしなければならない。ドワーフたちはそれを魔導コーティングと呼んでいるのだった。
「仕方ないわね、それは私がやってあげるわ」
「ほぅ、腐ってもエルフか」
「誰が腐ってるですってぇ!?」
隙あらば争いになるドワーフとエルフを宥めながら、シャルルは話を進めようと質問する。
「配管だけで大丈夫なの?」
「いや、全体的な改修が必要だな、設計からやり直さなきゃならねぇ。そもそも魔力を蓄積するタンクが小さすぎる。正直なところ、どれだけ大きくしても足りる気がしねぇがな。もったいねぇが、魔力放出を抑制するために出力を絞る封印したほうがいいだろう。まぁ色々考えてみるから少し時間をくれ」
つらつらと説明するガディンクに、シャルルは鉄鋼の他に運んできた最新型の魔導動力炉の提供も決めた。
「わかったわ、それじゃ鉄鋼は後で届けさせる。あと最新型魔導動力炉も預けておくから使えるようなら使って」
「おぉ、そいつぁ助かるぜ! 正直用意した動力炉じゃパワー不足だと思ってたんだ」
ガディンクは、新しいおもちゃを貰った子供のように手を叩いて喜んでいた。現状ではガディンクに任せるしかないシャルルたちは、そのまま彼に任せ工房を後にするのだった。
◇◇◆◇◇
海都にある宿屋『海龍亭』――
ガディンクの工房を出たシャルルとマギは、海龍亭という宿屋に訪れていた。
この海竜亭は主に交易商人用の宿屋だが、食事処としても利用できる店だ。シャルルたちは、ここでハンサムたちと合流する予定になっていた。
海龍亭に入ると、店の半数以上はホワイトラビット号の乗組員たちが占めていた。すでに食事を始めているようで、黒猫たちなどは酒を飲んで騒いでいる。それを呆れた様子で見ていたシャルルに、料理を運んでいた女性が声を掛けてきた。
「あら、いらっしゃい、お嬢ちゃん!」
「おばちゃん、お久しぶり! ごめんね、うちのが占拠しちゃって」
「あはは、客は客さ。それに他の船の荒くれどもに比べれば大人しいさね」
その時、仲間に押された黒猫が女将のところに倒れ込んできた。彼女はその黒猫の頭をガシッと掴むと、適当に後ろに向かって放り投げる。空中で回転しながら着地した黒猫は、何事もないように仲間たちの輪の中に消えていった。
「あんたたち、おばちゃんに迷惑かけないのっ!」
「にゃ~」
文句を言いながら椅子に腰掛けるシャルルに対して、黒猫たちは生返事を返しながら手にしたジョッキを掲げる。シャルルの前に座っていたヴァル爺は目を細めながら尋ねてきた。
「フォフォフォ、それでどうでしたかな?」
「う~ん、もう少し時間がかかるみたい」
シャルルは少し困った様子でそう答えながら、ガディンクの造船所での話をヴァル爺たちに聞かせた。
「ふむ、なるほど……まぁ動力炉に関しては親方に任せるしかないでしょうな」
「ハンサム、悪いけど積んできた鉄鋼と魔道動力炉をガディ親方に届けてくれる?」
シャルルが隣のハンサムに頼むと、彼は肉を噛みながらコクリと頷いている。ヴァル爺はそのまま次の予定の話を始めた。
「それでワシらはどうしますかな?」
「そうだな~、そろそろ商会のほうも心配だから、ローニャ公国へ寄ってからシンフォニルスに戻りたいかな」
「しかし、頭領が近付くなと言っておりましたが……」
シャルルたちはアルニオス帝国へ長期遠征に向かっていたので、その間の海運業務はアクセルに頼んで船団の船を出して貰っていた。ローニャ公国からの仕入れはシャルルで無ければ出来ないことだが、シンフォニルスから白兎印の服を公都イタリスの支部に届けることはできるからだ。
白兎印の服の名も売れつつあるが、シンフォニルスではまだまだローニャ産の服が人気がある。父に止められようが、いつまでも商売を止めておくわけにはいかないのだ。
「ローニャ公国に寄って行くなら、それなりに時間が掛かるからその間に終わってないかな?
「ちいと仕入れた情報だと、まだ時間が掛かるんじゃねぇか?」
肉を噛み切ったハンサムがそう口を挟むと、シャルルは微妙な表情を浮かべた。所謂グラン狩りが開始してからすでにふた月ほど経過している。シャルルとしてはそれなりの進展があるのではと考えていたが、どうやらそうではなかったようだ。
「俺が聞いた話だとゼフィールが海上封鎖しつつ、ハルヴァーの野郎が決戦用に船団を集結させているらしいぜ」
「決戦するにしても、他の海賊団との連携もありますからなぁ」
いくら海賊たちでも広大な海上での連携を取ることは難しい。連絡を取り合うのでも数日掛かるのだから当たり前だ。そもそも各地の海から集結するだけでも大仕事である。
「まぁパパは怒るかもしれないけど、仕入れて来ないとアイナさんが困るからね」
「お嬢がそう言うなら仕方ありませんな。では次は公都イタリスということで……出航はどうしますかな?」
「それじゃ、三日後にする。ヴァル爺は黒猫たちと補給を進めておいて」
「わかりました、何か仕入れて行きますか?」
ヴァル爺がそう尋ねると、シャルルは少し考え込む。この海都は交易の中継地なので、それなりに色々な物が仕入れることが出来る。積んできた鉄鋼と魔道動力炉は降ろしてしまうので、ここで何かを仕入れていきたいところだ。空船で航海するなど無駄以外の何物でもない。
「そうだな……まぁ今回は無難に行こうか、南方中心の香辛料にしよう。種類と量は任せるよ」
「了解ですじゃ、では適当に仕入れておきますわ」
服以外の仕入れならヴァル爺に任せておけば問題ない。彼は様々な場所で顔が利くし、目利きも間違いないからだ。逆に黒猫やカイルに任せると、下に見られてまともに仕入れれない可能性もある。
そんな話をしていると、女将がジョッキを二つテーブルに置いた。
「はいよ、ワインだよ。シャルル嬢ちゃんのは、かなり薄めてあるからねっ!」
「ありがと~、おばちゃん」
シャルルはそのジョッキを掴むと椅子の上に立ち、左右に首を振って乗組員たちの顔を見て回る。
「お前たち、出航は三日後だよ。それまでにちゃんと準備しときなっ!」
「ニャー!」
シャルルの宣言に合わせて、黒猫たちは手にしたジョッキを掲げるのだった。
暴走した魔剣型動力炉は工房内に運び込まれ、現在ガディンクが各種のチェックをしている。
「やっぱり配管関係を中心に、完全に溶けちまってるな」
「直せそうなの?」
「いや、ここまで溶けてちゃどうすることもできねぇ。一回バラして交換しなきゃダメだな」
動力炉から降りてきたガディンクが顔を顰めながら答える。それを聞いたマギは呆れた様子で肩を竦めた。
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シャルルは手にした魔剣を見つめて首を傾げる。マギはその魔剣を受け取ると、指差しながら解説を始めた。
「まぁ、この剣はちょっと特殊よねぇ。このガード部分に施された呪術で周辺の魔力を吸収、嵌め込まれた魔石に蓄積して剣身に流し、さらに剣身がそれを増幅して放出している。どれをとっても、今は失われた高度な技術が使われているわ」
この魔剣は武器としても一級品だが、カニィナーレを愛用しているシャルルは、あまり興味を示していなかった。今はそれよりこの魔剣が持つ力を、何とか船に転用できないかと考えているのだ。
「それでどうすればいいの?」
「さっきも言ったが、まずは配管の強化だ。強度を上げなきゃ話にならねぇ」
「強度か……それなら帝国製の鉄鋼を積んできたから、それを使えばいけるかな?」
「そいつぁいい、あそこのは品質が良いからな」
ガディンクは指を鳴らして肯定した。この近隣では、ヴィーシャス共和国の北にあるドワーフの国がもっとも高品質だが輸出量が少なく、次いで高品質なのが帝国製の鉄鋼なのだ。
「だが、それでもコーティング処理をしなきゃいけねぇな」
「コーディング?」
「魔導コーティングでしょ? 呪術的な処理をすることで、魔力を通せるようにするのよ」
普通の鉄鋼では魔力に反発するため、呪術的な処理をしなければならない。ドワーフたちはそれを魔導コーティングと呼んでいるのだった。
「仕方ないわね、それは私がやってあげるわ」
「ほぅ、腐ってもエルフか」
「誰が腐ってるですってぇ!?」
隙あらば争いになるドワーフとエルフを宥めながら、シャルルは話を進めようと質問する。
「配管だけで大丈夫なの?」
「いや、全体的な改修が必要だな、設計からやり直さなきゃならねぇ。そもそも魔力を蓄積するタンクが小さすぎる。正直なところ、どれだけ大きくしても足りる気がしねぇがな。もったいねぇが、魔力放出を抑制するために出力を絞る封印したほうがいいだろう。まぁ色々考えてみるから少し時間をくれ」
つらつらと説明するガディンクに、シャルルは鉄鋼の他に運んできた最新型の魔導動力炉の提供も決めた。
「わかったわ、それじゃ鉄鋼は後で届けさせる。あと最新型魔導動力炉も預けておくから使えるようなら使って」
「おぉ、そいつぁ助かるぜ! 正直用意した動力炉じゃパワー不足だと思ってたんだ」
ガディンクは、新しいおもちゃを貰った子供のように手を叩いて喜んでいた。現状ではガディンクに任せるしかないシャルルたちは、そのまま彼に任せ工房を後にするのだった。
◇◇◆◇◇
海都にある宿屋『海龍亭』――
ガディンクの工房を出たシャルルとマギは、海龍亭という宿屋に訪れていた。
この海竜亭は主に交易商人用の宿屋だが、食事処としても利用できる店だ。シャルルたちは、ここでハンサムたちと合流する予定になっていた。
海龍亭に入ると、店の半数以上はホワイトラビット号の乗組員たちが占めていた。すでに食事を始めているようで、黒猫たちなどは酒を飲んで騒いでいる。それを呆れた様子で見ていたシャルルに、料理を運んでいた女性が声を掛けてきた。
「あら、いらっしゃい、お嬢ちゃん!」
「おばちゃん、お久しぶり! ごめんね、うちのが占拠しちゃって」
「あはは、客は客さ。それに他の船の荒くれどもに比べれば大人しいさね」
その時、仲間に押された黒猫が女将のところに倒れ込んできた。彼女はその黒猫の頭をガシッと掴むと、適当に後ろに向かって放り投げる。空中で回転しながら着地した黒猫は、何事もないように仲間たちの輪の中に消えていった。
「あんたたち、おばちゃんに迷惑かけないのっ!」
「にゃ~」
文句を言いながら椅子に腰掛けるシャルルに対して、黒猫たちは生返事を返しながら手にしたジョッキを掲げる。シャルルの前に座っていたヴァル爺は目を細めながら尋ねてきた。
「フォフォフォ、それでどうでしたかな?」
「う~ん、もう少し時間がかかるみたい」
シャルルは少し困った様子でそう答えながら、ガディンクの造船所での話をヴァル爺たちに聞かせた。
「ふむ、なるほど……まぁ動力炉に関しては親方に任せるしかないでしょうな」
「ハンサム、悪いけど積んできた鉄鋼と魔道動力炉をガディ親方に届けてくれる?」
シャルルが隣のハンサムに頼むと、彼は肉を噛みながらコクリと頷いている。ヴァル爺はそのまま次の予定の話を始めた。
「それでワシらはどうしますかな?」
「そうだな~、そろそろ商会のほうも心配だから、ローニャ公国へ寄ってからシンフォニルスに戻りたいかな」
「しかし、頭領が近付くなと言っておりましたが……」
シャルルたちはアルニオス帝国へ長期遠征に向かっていたので、その間の海運業務はアクセルに頼んで船団の船を出して貰っていた。ローニャ公国からの仕入れはシャルルで無ければ出来ないことだが、シンフォニルスから白兎印の服を公都イタリスの支部に届けることはできるからだ。
白兎印の服の名も売れつつあるが、シンフォニルスではまだまだローニャ産の服が人気がある。父に止められようが、いつまでも商売を止めておくわけにはいかないのだ。
「ローニャ公国に寄って行くなら、それなりに時間が掛かるからその間に終わってないかな?
「ちいと仕入れた情報だと、まだ時間が掛かるんじゃねぇか?」
肉を噛み切ったハンサムがそう口を挟むと、シャルルは微妙な表情を浮かべた。所謂グラン狩りが開始してからすでにふた月ほど経過している。シャルルとしてはそれなりの進展があるのではと考えていたが、どうやらそうではなかったようだ。
「俺が聞いた話だとゼフィールが海上封鎖しつつ、ハルヴァーの野郎が決戦用に船団を集結させているらしいぜ」
「決戦するにしても、他の海賊団との連携もありますからなぁ」
いくら海賊たちでも広大な海上での連携を取ることは難しい。連絡を取り合うのでも数日掛かるのだから当たり前だ。そもそも各地の海から集結するだけでも大仕事である。
「まぁパパは怒るかもしれないけど、仕入れて来ないとアイナさんが困るからね」
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「それじゃ、三日後にする。ヴァル爺は黒猫たちと補給を進めておいて」
「わかりました、何か仕入れて行きますか?」
ヴァル爺がそう尋ねると、シャルルは少し考え込む。この海都は交易の中継地なので、それなりに色々な物が仕入れることが出来る。積んできた鉄鋼と魔道動力炉は降ろしてしまうので、ここで何かを仕入れていきたいところだ。空船で航海するなど無駄以外の何物でもない。
「そうだな……まぁ今回は無難に行こうか、南方中心の香辛料にしよう。種類と量は任せるよ」
「了解ですじゃ、では適当に仕入れておきますわ」
服以外の仕入れならヴァル爺に任せておけば問題ない。彼は様々な場所で顔が利くし、目利きも間違いないからだ。逆に黒猫やカイルに任せると、下に見られてまともに仕入れれない可能性もある。
そんな話をしていると、女将がジョッキを二つテーブルに置いた。
「はいよ、ワインだよ。シャルル嬢ちゃんのは、かなり薄めてあるからねっ!」
「ありがと~、おばちゃん」
シャルルはそのジョッキを掴むと椅子の上に立ち、左右に首を振って乗組員たちの顔を見て回る。
「お前たち、出航は三日後だよ。それまでにちゃんと準備しときなっ!」
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