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第66話「狐堂とシーロード商会」
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シーロード邸に一泊した翌日、シャルルのもとに約束通りファムが会いに来ていた。使用人たちには事前に狐耳の女の子が尋ねてくると、報せてあったので応接室に通されている。
応接室は海賊の屋敷とは思えないほど、豪華で洗練されたものになっており、壁に掛けられた絵画などは、それ一つで一生遊んで暮らせそうな価値があるものだ。あまりに高価な調度品の数々を見て、ファムは興奮した様子で尻尾をバサバサと振っている。
「フォォォォォ! この花瓶一個チョロまかすだけで、目標額に届くんちゃうやろか? いや、あかんあかん……ウチは商人であって泥棒やないんや! それにバレたら、この一帯の海賊どもに追い掛け回されそうやし」
そんな葛藤をしていたファムだったが、ドアが開く気配を感じるとすぐにソファーに戻って姿勢を正す。そして何も盗んでいませんよ? という澄ました顔をした。
部屋に入ってきたのは、シャルルとその義母のカティスだった。シャルルはソファーに座っているファムを見つけると軽く手を振る。
「お待たせ、ファム」
「な、何も盗んでへんよ?」
キョドって聞かれてもないことを答えるファムに、カティスはクスッと笑う。
「フフッ、面白い子ね」
「まぁ、ちょっと変わった子ではあるかな。改めて紹介するね、この子が狐堂のファムよ。そして、こちらがカティス・シーロード。シーロード商会の会頭で、わたしのママね」
シーロード商会とはカティスがハルヴァーに嫁いでから立ち上げた商会で、この海都を中心に様々な都市に支店を持つ大商会だ。交易を中心に様々な商品を扱っており、シーロード家の地位と財政の確保を一手に担っている。
カティスを紹介されたファムは、慌ててソファーから立ちあがると彼女に駆け寄って握手を求める。
「狐堂というケチな商会やっとります。ファム=ファーナいいます」
「カティス・シーロードよ。そんなに硬くならなくても大丈夫よ、シャルルのお友達なんでしょ? とりあえず座って寛いで」
握手を交わしたカティスとファムは、そのまま二人はソファーに腰を下ろした。シャルルはカティスの隣に座る。
「狐堂さんとは取引はなかったけど、現会長はこんな小さい子なのね。以前ファム=フィルナさんとお会いしたことがあったんだけど、貴女は彼女からファムの名を引き継いだのかしら?」
「伯母を御存知で!? 伯母は先々代になりますわぁ、先代はウチのかぁちゃんや」
「先々代? いやね、歳を取ったのを感じちゃうわ」
カティスが穏やかに笑うと、ファムは大笑いしながら手をパタパタと振る。
「あははは、何を言うとりますのぉ? 会長はんと並ぶと姉妹にしか見えヘんよ」
「あら、お上手ね。シャルルと姉妹だって、ママもまだまだいけるかしら?」
カティスは満更でもない様子でシャルルに話を振る。実際カティスは四十代だが、とても綺麗な顔立ちをしており若々しい、シャルルと姉妹と言われても然程違和感はない。
「カティスママの年齢って、確かわたしの倍以上……」
「あら……何か言ったかしら、シャルル?」
「いいえ、ママはいつ見ても綺麗だなって思って」
シャルルはお世辞を言って誤魔化しているが、微かに盛れ出た殺気でファムの尻尾がブワッと大きくなる。その瞬間、やはり大商会の会頭はただ者ではないと直感するのだった。
「さて、そろそろ本題に入りましょうか。シャルルから聞いたけど、この街で商売がしたいって?」
「そうや、口利きをして貰えたら嬉しいんやけど」
「口利きねぇ。まぁこの子からも頼まれているし、それ自体は構わないのだけど……いったい何を売るつもりなの?」
カティスの鋭い視線がファムを射抜く、その目はまるで商品を品確めするような目付きだった。
「そうやな、街を見た感じやと……」
昨日一日で街を見て回ったファムは、街で不足がちな商品をツラツラとあげていく。その話をカティスは興味深そうに聞いていた。
「……っと、まぁこんな感じやな」
「なるほど、さすが狐堂さんって感じかしらね? その歳でいい眼をしているわ」
「カティスママに褒められるなんて凄いわね」
シャルルは軽く拍手をしながらファムを褒める。ファムは自慢げに胸を張って頷いてみせた。
「当然や、ウチは生まれながらして商人やで! それでどないやろ、口利きして貰えるやろか?」
「そうね、口利きしてあげてもいいけど……それなら、うちの商会と取引しない? その方が手っ取り早いと思うけど」
「ほんまでっか? そりゃ助かりますわ~」
ファムからすれば、まさに渡りに船だった。現在の狐堂は一人で運営している商会だ。この町に商会を持つことは現実的ではないし、品物ごとに商人と取引しては煩雑になりすぎる。
その点、様々な商品を扱っているシーロード商会なら一括で取引ができる上に、新参者として他の商人に恨まれるリスクも少ない。
カティスとしても目鼻が利く商人が、商品を卸してくれるなら商売的にうま味がある話なのだ。
「ハルヴァーが帰ってくるまでは、まだ時間がかかるだろうから、何が協力できるか話を進めましょう」
「もちろんや! いや~夢が広がるわ~」
カティスと握手を交わすしたファムは、嬉しそうに尻尾をバサバサと振るのだった。
◇◇◆◇◇
ファムとカティスの話し合いはまだまだ続きそうだったので、シャルルは一足先に部屋を出ることにした。特に予定がないので自分の部屋に戻ろうと考えていると、何か良い香りが漂ってきた。
「美味しそうな匂い……」
フラフラと匂いがしてくる通路に入っていくと厨房に辿り着いた。そして入口から厨房の中を覗き込むと、そこにはカイルと中年男性が話をしている。
「ゴメルさんとカイル、何をしてるんだろ?」
カイルと一緒にいる中年男性はゴメルという名前で、以前はエクスディアス号のコックをやっていた人物である。現在は膝を悪くして揺れる船内で働くのは難しくなり、シーロード邸の専属コックとして働いていた。
シャルルが中に入らずこっそりと覗いていると、カイルが料理の下準備を始めた。ゴメルはそれを監視するように後ろで腕を組んでいる。
「まず塩と黒胡椒だ。下味は重要だが、あまりかけすぎるなよ」
「はいっ!」
骨付きのラム肉を並べ、そこに塩と黒湖沼をペッパーミルを回してかけていく。そしてハーブ、ガーリック、オリーブオイルなどに漬け込む。
「よし、これで三時間ほど漬け込むんだ。次は焼き方の練習だ、今回は俺が作っといたのを使う。この時、フライパンは十分熱するんだぞ」
「わかりました」
カイルはそう返事をすると、フライパンに渡されたラム肉を投下していく。ジョワッと心地よい音と共に肉が焼ける良い香りが厨房全体に広がっていく。シャルルも思わず匂いに誘われて厨房内に入っていった。
「美味しそうだね?」
「あっ、船長さん!」
「調理中は集中しろっ!」
ゴメルが軽くカイルの頭を叩くと、カイルは謝罪をしてフライパンに集中する。ゴメルはチラッとシャルルを見ると会釈をする。
「すまんな、お嬢。今、重要なところだからちょっと待っててくれ」
「はーい、そこに座ってるね」
シャルルは少し離れたところにある椅子に腰かけながら、彼らを眺めることにした。
「よし、もういいぞ。ラムチョップは焼き色が付くぐらいで十分だ」
「は、はいっ!」
コンロの火を止めたカイルは、焼いたラム肉をフライパンから取り出して皿に並べていく。それだけでもすでに美味しそうだったが、ゴメルは次の指示を出し始めた。
「よし、その肉汁でソースも作っちまおう。小麦とバター……あとはブイヨンを入れてる」
「わかりました」
カイルは言われた通りに材料を入れて混ぜていくと、フライパンに余った肉汁がソースへと姿を変えていく。そして完成したソースを皿に並べたラムチョップにかけて完成だ。
「出来ましたっ!」
「よし食ってみるか、お嬢も食うだろ?」
「当然っ!」
いつの間にか近くまで来ていたシャルルが、さも当然と言わんばかりにニカッと笑う。ゴメルは受け取った皿をテーブルに置き、三人は立ったまま一片ずつ摘まむとそれを口に運んだ。
「んんっ……美味しいっ!」
柔らかくジューシーな食感で、軽めに利いた塩胡椒が適度に乗った脂身の旨味を引き出している。かけられたグレービーソースともよく合っており、十分満足いく美味しさだった。
「ふむ、まぁ悪かねぇ。だが、ちょいと焼きすぎたな」
「ご、ごめんなさい」
「ちょっとゴメルさん、十分美味しいじゃない! うちのカイルを虐めないでよね」
シャルルが文句を言うと、ゴメルは苦笑いを浮かべて肩を竦めてみせる。
「別に虐めちゃいねぇぜ。まぁこの年にしちゃ筋はいい、また教えてやってもいいぜ」
「ありがとうございます!」
「そう言えば、何でうちの厨房にいるの?」
シャルルがそう尋ねると、カイルは少し恥ずかしそうに笑いながら答える。
「昨日食べたご飯が美味しかったので、ゴメルさんに教えて貰おうと思って」
「何言ってんだ、確か船長さんに美味しい物を食べて欲しいって……」
「わぁぁぁ! ちょっと、言わないでくださいよ。ゴメルさんっ!」
ゴメルの言葉を遮るように慌てるカイルに、シャルルは思わず笑ってしまう。
「あははは」
「船長さんまで! 笑わないでくださいよ~」
一頻り笑ったシャルルは「ありがとね」と言いながら、恥ずかしそうにしているカイルの頭を優しく撫でるのだった。
応接室は海賊の屋敷とは思えないほど、豪華で洗練されたものになっており、壁に掛けられた絵画などは、それ一つで一生遊んで暮らせそうな価値があるものだ。あまりに高価な調度品の数々を見て、ファムは興奮した様子で尻尾をバサバサと振っている。
「フォォォォォ! この花瓶一個チョロまかすだけで、目標額に届くんちゃうやろか? いや、あかんあかん……ウチは商人であって泥棒やないんや! それにバレたら、この一帯の海賊どもに追い掛け回されそうやし」
そんな葛藤をしていたファムだったが、ドアが開く気配を感じるとすぐにソファーに戻って姿勢を正す。そして何も盗んでいませんよ? という澄ました顔をした。
部屋に入ってきたのは、シャルルとその義母のカティスだった。シャルルはソファーに座っているファムを見つけると軽く手を振る。
「お待たせ、ファム」
「な、何も盗んでへんよ?」
キョドって聞かれてもないことを答えるファムに、カティスはクスッと笑う。
「フフッ、面白い子ね」
「まぁ、ちょっと変わった子ではあるかな。改めて紹介するね、この子が狐堂のファムよ。そして、こちらがカティス・シーロード。シーロード商会の会頭で、わたしのママね」
シーロード商会とはカティスがハルヴァーに嫁いでから立ち上げた商会で、この海都を中心に様々な都市に支店を持つ大商会だ。交易を中心に様々な商品を扱っており、シーロード家の地位と財政の確保を一手に担っている。
カティスを紹介されたファムは、慌ててソファーから立ちあがると彼女に駆け寄って握手を求める。
「狐堂というケチな商会やっとります。ファム=ファーナいいます」
「カティス・シーロードよ。そんなに硬くならなくても大丈夫よ、シャルルのお友達なんでしょ? とりあえず座って寛いで」
握手を交わしたカティスとファムは、そのまま二人はソファーに腰を下ろした。シャルルはカティスの隣に座る。
「狐堂さんとは取引はなかったけど、現会長はこんな小さい子なのね。以前ファム=フィルナさんとお会いしたことがあったんだけど、貴女は彼女からファムの名を引き継いだのかしら?」
「伯母を御存知で!? 伯母は先々代になりますわぁ、先代はウチのかぁちゃんや」
「先々代? いやね、歳を取ったのを感じちゃうわ」
カティスが穏やかに笑うと、ファムは大笑いしながら手をパタパタと振る。
「あははは、何を言うとりますのぉ? 会長はんと並ぶと姉妹にしか見えヘんよ」
「あら、お上手ね。シャルルと姉妹だって、ママもまだまだいけるかしら?」
カティスは満更でもない様子でシャルルに話を振る。実際カティスは四十代だが、とても綺麗な顔立ちをしており若々しい、シャルルと姉妹と言われても然程違和感はない。
「カティスママの年齢って、確かわたしの倍以上……」
「あら……何か言ったかしら、シャルル?」
「いいえ、ママはいつ見ても綺麗だなって思って」
シャルルはお世辞を言って誤魔化しているが、微かに盛れ出た殺気でファムの尻尾がブワッと大きくなる。その瞬間、やはり大商会の会頭はただ者ではないと直感するのだった。
「さて、そろそろ本題に入りましょうか。シャルルから聞いたけど、この街で商売がしたいって?」
「そうや、口利きをして貰えたら嬉しいんやけど」
「口利きねぇ。まぁこの子からも頼まれているし、それ自体は構わないのだけど……いったい何を売るつもりなの?」
カティスの鋭い視線がファムを射抜く、その目はまるで商品を品確めするような目付きだった。
「そうやな、街を見た感じやと……」
昨日一日で街を見て回ったファムは、街で不足がちな商品をツラツラとあげていく。その話をカティスは興味深そうに聞いていた。
「……っと、まぁこんな感じやな」
「なるほど、さすが狐堂さんって感じかしらね? その歳でいい眼をしているわ」
「カティスママに褒められるなんて凄いわね」
シャルルは軽く拍手をしながらファムを褒める。ファムは自慢げに胸を張って頷いてみせた。
「当然や、ウチは生まれながらして商人やで! それでどないやろ、口利きして貰えるやろか?」
「そうね、口利きしてあげてもいいけど……それなら、うちの商会と取引しない? その方が手っ取り早いと思うけど」
「ほんまでっか? そりゃ助かりますわ~」
ファムからすれば、まさに渡りに船だった。現在の狐堂は一人で運営している商会だ。この町に商会を持つことは現実的ではないし、品物ごとに商人と取引しては煩雑になりすぎる。
その点、様々な商品を扱っているシーロード商会なら一括で取引ができる上に、新参者として他の商人に恨まれるリスクも少ない。
カティスとしても目鼻が利く商人が、商品を卸してくれるなら商売的にうま味がある話なのだ。
「ハルヴァーが帰ってくるまでは、まだ時間がかかるだろうから、何が協力できるか話を進めましょう」
「もちろんや! いや~夢が広がるわ~」
カティスと握手を交わすしたファムは、嬉しそうに尻尾をバサバサと振るのだった。
◇◇◆◇◇
ファムとカティスの話し合いはまだまだ続きそうだったので、シャルルは一足先に部屋を出ることにした。特に予定がないので自分の部屋に戻ろうと考えていると、何か良い香りが漂ってきた。
「美味しそうな匂い……」
フラフラと匂いがしてくる通路に入っていくと厨房に辿り着いた。そして入口から厨房の中を覗き込むと、そこにはカイルと中年男性が話をしている。
「ゴメルさんとカイル、何をしてるんだろ?」
カイルと一緒にいる中年男性はゴメルという名前で、以前はエクスディアス号のコックをやっていた人物である。現在は膝を悪くして揺れる船内で働くのは難しくなり、シーロード邸の専属コックとして働いていた。
シャルルが中に入らずこっそりと覗いていると、カイルが料理の下準備を始めた。ゴメルはそれを監視するように後ろで腕を組んでいる。
「まず塩と黒胡椒だ。下味は重要だが、あまりかけすぎるなよ」
「はいっ!」
骨付きのラム肉を並べ、そこに塩と黒湖沼をペッパーミルを回してかけていく。そしてハーブ、ガーリック、オリーブオイルなどに漬け込む。
「よし、これで三時間ほど漬け込むんだ。次は焼き方の練習だ、今回は俺が作っといたのを使う。この時、フライパンは十分熱するんだぞ」
「わかりました」
カイルはそう返事をすると、フライパンに渡されたラム肉を投下していく。ジョワッと心地よい音と共に肉が焼ける良い香りが厨房全体に広がっていく。シャルルも思わず匂いに誘われて厨房内に入っていった。
「美味しそうだね?」
「あっ、船長さん!」
「調理中は集中しろっ!」
ゴメルが軽くカイルの頭を叩くと、カイルは謝罪をしてフライパンに集中する。ゴメルはチラッとシャルルを見ると会釈をする。
「すまんな、お嬢。今、重要なところだからちょっと待っててくれ」
「はーい、そこに座ってるね」
シャルルは少し離れたところにある椅子に腰かけながら、彼らを眺めることにした。
「よし、もういいぞ。ラムチョップは焼き色が付くぐらいで十分だ」
「は、はいっ!」
コンロの火を止めたカイルは、焼いたラム肉をフライパンから取り出して皿に並べていく。それだけでもすでに美味しそうだったが、ゴメルは次の指示を出し始めた。
「よし、その肉汁でソースも作っちまおう。小麦とバター……あとはブイヨンを入れてる」
「わかりました」
カイルは言われた通りに材料を入れて混ぜていくと、フライパンに余った肉汁がソースへと姿を変えていく。そして完成したソースを皿に並べたラムチョップにかけて完成だ。
「出来ましたっ!」
「よし食ってみるか、お嬢も食うだろ?」
「当然っ!」
いつの間にか近くまで来ていたシャルルが、さも当然と言わんばかりにニカッと笑う。ゴメルは受け取った皿をテーブルに置き、三人は立ったまま一片ずつ摘まむとそれを口に運んだ。
「んんっ……美味しいっ!」
柔らかくジューシーな食感で、軽めに利いた塩胡椒が適度に乗った脂身の旨味を引き出している。かけられたグレービーソースともよく合っており、十分満足いく美味しさだった。
「ふむ、まぁ悪かねぇ。だが、ちょいと焼きすぎたな」
「ご、ごめんなさい」
「ちょっとゴメルさん、十分美味しいじゃない! うちのカイルを虐めないでよね」
シャルルが文句を言うと、ゴメルは苦笑いを浮かべて肩を竦めてみせる。
「別に虐めちゃいねぇぜ。まぁこの年にしちゃ筋はいい、また教えてやってもいいぜ」
「ありがとうございます!」
「そう言えば、何でうちの厨房にいるの?」
シャルルがそう尋ねると、カイルは少し恥ずかしそうに笑いながら答える。
「昨日食べたご飯が美味しかったので、ゴメルさんに教えて貰おうと思って」
「何言ってんだ、確か船長さんに美味しい物を食べて欲しいって……」
「わぁぁぁ! ちょっと、言わないでくださいよ。ゴメルさんっ!」
ゴメルの言葉を遮るように慌てるカイルに、シャルルは思わず笑ってしまう。
「あははは」
「船長さんまで! 笑わないでくださいよ~」
一頻り笑ったシャルルは「ありがとね」と言いながら、恥ずかしそうにしているカイルの頭を優しく撫でるのだった。
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