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第53話「洞穴探索」
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ザクーディ砦の監視塔にいた兵士ハンスは、三十代後半ぐらい男性で、無精ひげを生やし、病気かと思えるほど顔色もあまり良くなかった。
「もう一度聞くけど、第四分隊分隊長なんだよね? 他の隊員さんはいないの?」
「はっ、第四分隊は俺……いえ、私だけであります」
詳しく話を聞くと討伐に失敗した公国は、放棄した砦を重視しておらず、彼は一人でこの砦を監視しているらしい。当初は閑職ながら頑張ろうとしていたハンスも、特に何も起きない日々が続くと次第に腐っていき、昼間から飲みつぶれるような生活を続けるようなったのだった。
「ハンスさんは中にいる魔物を見たことはある? どんな姿なの?」
「はっ、私も討伐隊にも参加していました。奴は屋根に付きそうな巨体で、荒々しい鬣を持った獅子のような姿をしてました。そして、その巨大な腕で騎士たちも一薙ぎに! あの爪の前には鎧などまるで薄布のよう……」
その時の惨劇を思い出したのか、ハンスはガタガタと身震いしている。話を聞いたシャルルは少し考えたあと、マギに感想を尋ねてみる。
「マギ、どう思う?」
「そうねぇ、そんなに危険な魔物なのに、ここを守っているのは貴方だけなの?」
「はい、討伐隊が撤退してからしばらくは厳重体勢でしたが、奴は何かを守っているようにあそこから出てこないので、次第に縮小されてしました。現在は私が一人で監視任務についております」
「まぁ精霊種は、食事をしなくても良いらしいからねぇ。ずっと引き籠ることも可能でしょうけど……」
「ご飯を食べないの?」
シャルルが小首を傾げながら尋ねると、マギは小さく頷いた。
「えぇ、伝承によると空気中に漂う魔力を食べてるらしいわ。ひょっとしたら、あそこに大量の魔力を発する何かがあるのかもしれないわね」
「ふむ、お宝のニオイがするね。ハンスさん、砦の地図とかってある?」
「はっ、捜してきます!」
ハンスはそう言うと、壊れたドアから塔の中に駆け込んでいった。しかし部屋の汚れっぷりから考えても、すぐに見つかるとはとても思えなかった。待っている間にシャルルは改めて仲間に尋ねる。
「とりあえず地図が来たら、入ってみるつもりだけど何か意見はある?」
「精霊種ってのは、そもそも倒せるのか?」
ハンサムが尋ねると、マギが微妙な表情を浮かべながら肩を竦めた。
「たぶん倒せるとは思うわよ。殺せるかと言われると無理でしょうけど」
「どういう意味だ?」
「精霊種って、そもそも生物か微妙な存在なのよ。倒すと体を構成する魔力が分散するから消えるけど、しばらくすると元の姿に戻るらしいわ」
「それ、不死身じゃねぇか」
「まぁ、そうとも言うわね。それでも一度倒せば少なくとも数か月、大抵の場合は年単位で時間がかかるらしいわ」
「それなら倒しちゃえば、今回の調査には問題ないね」
シャルルが楽観的に結論付けると、ハンサムとマギは少し呆れた様子で笑う。しばらくしてハンスが地図を持って戻ってきたので、差し出された地図を受け取ったシャルルは、さっそく地面に広げた。
「思ったより広いね」
見えている砦部分の他に、後ろの絶壁に向かって洞穴が広場のような場所まで伸びおり、そこからさらに細かい道が伸びているようだ。
「その精霊種ってどこで見たの?」
「前回の討伐隊の戦闘はこの広場でした」
「ここに陣取られると面倒だな、奇襲もできそうもねぇし」
地図の寸法は定かではないが建物部分と比較しても、洞穴内にあるかなり大きな広場のようだ。
「とりあえず地道に調査かな? この広場は確認しておきたいよね」
「姫さんが決めたなら、それで構わねぇぜ」
「さっさと行くにゃ~!」
黒猫たちはやる気満々のようで、すでに荷物を背負っている。
「ハンスさん、鍵は掛かってるんでしょ?」
「はっ、こちらの鍵が砦の物になります!」
ハンスはそう言うと自分の腰を叩いて、鍵束をガチャリと鳴らす。シャルルはニッコリと微笑むと手をハンスに差し出した。
「わたしたちは、中を調べてくるから鍵を頂戴」
「ど……どうぞ」
有無を言わさない雰囲気にハンスは腰から鍵束を外すと、それをシャルルに手渡した。シャルルは満足そうにそれを掲げる。
「よーし、行こうか!」
「ニャー!」
こうしてシャルル一行は、ザクーディ砦の調査に取り掛かるのだった。
◇◇◆◇◇
ザクーディ砦は前面と側面を石で出来た城壁に囲われている。後方には切り立った崖があり、まさに鉄壁の要塞である。しかし、それも昔の話で以前は鉄扉が守っていた正門もぽっかりと開いており、地面には錆びた扉が横たわっていた。
それを乗り越えたシャルルたちは、正門内の広場に足を踏み入れた。ここは補給基地だったらしいので、以前は多くの馬車や兵士が行き来したのだろうが、今では置き去りにされた物資の残骸があるだけだ。
広場から見て正面に大きな石造りの門があり、地図によるとそこから洞穴に続いているようだ。その壁面には鋭い爪跡のような傷跡が残っていた。他の建物もだいぶ劣化が進んでおり崩壊が進んでいた。
「外から見るとそうでもなかったけど、こうして見ると結構ボロボロだね」
「もう何年も前に放棄したらしいからな。これじゃ、鍵なんぞいらなかったな」
「あの爪跡が精霊種の物だとすると、相当大きいわね」
シャルルたちはそれぞれ感想を述べているが、黒猫たちは適当に探索を始めていた。そしてボロボロの建物に入ろうとして、崩れてきた瓦礫に押し潰れそうになっている。
「うにゃ!? 危ないにゃ~!」
「ちょっと勝手に動かないでよ」
黒猫たちが戻ってくると、シャルルは今後のことを確認し始める。
「まずは獅子型の精霊種……長いから、精霊獅子と呼ぼうか。その精霊獅子を確認しておきたいんだけど、やっぱり洞穴の方かな?」
「まぁそうなんじゃねぇか?」
「まずは前回の討伐隊が戦ったらしい広場を探すべきよね」
ハンサムとマギの言葉にシャルルが頷く。
「それじゃ、洞穴内から確認してこう。お前たちは灯りの準備をお願い」
「わかったにゃ~」
カバンの中からカンテラを取り出して、灯りの準備を始める黒猫たち。
「ハンサムが前衛、わたしとマギは後衛、黒猫たちは周辺を警戒して」
「おぅ!」
「了解ニャー」
準備と隊列が完了した調査隊は、さっそく洞穴内に進入を始めた。洞穴内の通路はかなり広く、地面は整えられていたが壁は岩が向き出しのままである。所々に灯りのための仕掛け跡があったが、長年放置されているので動くわけもない。
しばらく先に進むと、マギが開いた肩を擦りながら呟く。
「少し寒いわね」
「そうなの?」
温度調整が付与されているシャルルは気が付かなかったが、薄着のマギには肌寒いと感じたようだ。ハンサムは納得したように頷く。
「保管庫として都合がよかったってわけだ」
「どういうこと?」
「これだけ涼しきゃ、食品だって腐り難いだろ?」
「あぁ、なるほど氷室のような感じか……砦が洞穴に繋がっているのも納得だね」
ずっと洞穴があることに疑問を持っていたシャルルはようやく納得したようだ。この洞穴が掘ったものか自然に出来た物なのかはわからなかったが、物資を保管するには都合が良かったのだろう。
そんな話をしながら奥に進むと、かなり大きな空間まで辿り着いた。おそらく地図にあった広場なのだろう。しかし黒猫たちが持っているカンテラの灯りでは、明らかな光源不足で奥まではまったく見えない。
「真っ暗だね」
「ここで戦うのは無理じゃねぇか?」
「ファイアーボールでも撃ち込んでみる?」
「そんなことしたら、窒息しちゃうじゃない!?」
マギの発言にシャルルは慌てて止める。しかしマギは軽く笑うと、立てた人差し指を振りながら答える。
「大丈夫よ、うさぎちゃん。これだけの規模の洞穴だもの、必ず入口以外の空気穴があるわ」
「確かに微かな風を感じるな」
ハンサムも肌で風を感じたのか頷いて肯定する。シャルルにはわからなかったが、黒猫たちも頷いている。
「精霊獅子はいるのかな?」
「匂いがしねぇな」
「生物とは違うから、匂いはないんじゃないかしら? 代わりにかなり濃い魔力を感じるわ」
「う~ん、まずは確認してみたいから灯りをつけてみようか。マギ、お願い」
少し考えたシャルルがそう決断すると、頷いたマギが杖を回して構える。
「火よ、火よ、火の精霊よ。目覚めて立ち上がれ……ファイアウォール!」
杖の先から発せられた炎は壁沿いを沿うように広がり、広範囲に渡って炎の壁を創り出した。その灯りで広間の全容が明らかになる。その中央には半透明の塊があり、空間が歪んで見えた。
「何なの、アレ?」
「あれが精霊種よ、具現化するわ!」
マギがそう言って杖を構え直すと、中心にあった半透明の歪みが、徐々に巨大な獅子の姿に具現化していく。
「こいつぁ、やべぇぜ! どうする姫さん、一旦退くか?」
「ここまで来て、それはないでしょ! 総員、戦闘体勢!」
シャルルが腰からカニィナーレを抜き放つと、ハンサムや黒猫たちもそれぞれ武器を構える。それに合わせるように具現化を完了した精霊獅子が威嚇するように咆哮を上げた。
「グガァァァァァ!」
「もう一度聞くけど、第四分隊分隊長なんだよね? 他の隊員さんはいないの?」
「はっ、第四分隊は俺……いえ、私だけであります」
詳しく話を聞くと討伐に失敗した公国は、放棄した砦を重視しておらず、彼は一人でこの砦を監視しているらしい。当初は閑職ながら頑張ろうとしていたハンスも、特に何も起きない日々が続くと次第に腐っていき、昼間から飲みつぶれるような生活を続けるようなったのだった。
「ハンスさんは中にいる魔物を見たことはある? どんな姿なの?」
「はっ、私も討伐隊にも参加していました。奴は屋根に付きそうな巨体で、荒々しい鬣を持った獅子のような姿をしてました。そして、その巨大な腕で騎士たちも一薙ぎに! あの爪の前には鎧などまるで薄布のよう……」
その時の惨劇を思い出したのか、ハンスはガタガタと身震いしている。話を聞いたシャルルは少し考えたあと、マギに感想を尋ねてみる。
「マギ、どう思う?」
「そうねぇ、そんなに危険な魔物なのに、ここを守っているのは貴方だけなの?」
「はい、討伐隊が撤退してからしばらくは厳重体勢でしたが、奴は何かを守っているようにあそこから出てこないので、次第に縮小されてしました。現在は私が一人で監視任務についております」
「まぁ精霊種は、食事をしなくても良いらしいからねぇ。ずっと引き籠ることも可能でしょうけど……」
「ご飯を食べないの?」
シャルルが小首を傾げながら尋ねると、マギは小さく頷いた。
「えぇ、伝承によると空気中に漂う魔力を食べてるらしいわ。ひょっとしたら、あそこに大量の魔力を発する何かがあるのかもしれないわね」
「ふむ、お宝のニオイがするね。ハンスさん、砦の地図とかってある?」
「はっ、捜してきます!」
ハンスはそう言うと、壊れたドアから塔の中に駆け込んでいった。しかし部屋の汚れっぷりから考えても、すぐに見つかるとはとても思えなかった。待っている間にシャルルは改めて仲間に尋ねる。
「とりあえず地図が来たら、入ってみるつもりだけど何か意見はある?」
「精霊種ってのは、そもそも倒せるのか?」
ハンサムが尋ねると、マギが微妙な表情を浮かべながら肩を竦めた。
「たぶん倒せるとは思うわよ。殺せるかと言われると無理でしょうけど」
「どういう意味だ?」
「精霊種って、そもそも生物か微妙な存在なのよ。倒すと体を構成する魔力が分散するから消えるけど、しばらくすると元の姿に戻るらしいわ」
「それ、不死身じゃねぇか」
「まぁ、そうとも言うわね。それでも一度倒せば少なくとも数か月、大抵の場合は年単位で時間がかかるらしいわ」
「それなら倒しちゃえば、今回の調査には問題ないね」
シャルルが楽観的に結論付けると、ハンサムとマギは少し呆れた様子で笑う。しばらくしてハンスが地図を持って戻ってきたので、差し出された地図を受け取ったシャルルは、さっそく地面に広げた。
「思ったより広いね」
見えている砦部分の他に、後ろの絶壁に向かって洞穴が広場のような場所まで伸びおり、そこからさらに細かい道が伸びているようだ。
「その精霊種ってどこで見たの?」
「前回の討伐隊の戦闘はこの広場でした」
「ここに陣取られると面倒だな、奇襲もできそうもねぇし」
地図の寸法は定かではないが建物部分と比較しても、洞穴内にあるかなり大きな広場のようだ。
「とりあえず地道に調査かな? この広場は確認しておきたいよね」
「姫さんが決めたなら、それで構わねぇぜ」
「さっさと行くにゃ~!」
黒猫たちはやる気満々のようで、すでに荷物を背負っている。
「ハンスさん、鍵は掛かってるんでしょ?」
「はっ、こちらの鍵が砦の物になります!」
ハンスはそう言うと自分の腰を叩いて、鍵束をガチャリと鳴らす。シャルルはニッコリと微笑むと手をハンスに差し出した。
「わたしたちは、中を調べてくるから鍵を頂戴」
「ど……どうぞ」
有無を言わさない雰囲気にハンスは腰から鍵束を外すと、それをシャルルに手渡した。シャルルは満足そうにそれを掲げる。
「よーし、行こうか!」
「ニャー!」
こうしてシャルル一行は、ザクーディ砦の調査に取り掛かるのだった。
◇◇◆◇◇
ザクーディ砦は前面と側面を石で出来た城壁に囲われている。後方には切り立った崖があり、まさに鉄壁の要塞である。しかし、それも昔の話で以前は鉄扉が守っていた正門もぽっかりと開いており、地面には錆びた扉が横たわっていた。
それを乗り越えたシャルルたちは、正門内の広場に足を踏み入れた。ここは補給基地だったらしいので、以前は多くの馬車や兵士が行き来したのだろうが、今では置き去りにされた物資の残骸があるだけだ。
広場から見て正面に大きな石造りの門があり、地図によるとそこから洞穴に続いているようだ。その壁面には鋭い爪跡のような傷跡が残っていた。他の建物もだいぶ劣化が進んでおり崩壊が進んでいた。
「外から見るとそうでもなかったけど、こうして見ると結構ボロボロだね」
「もう何年も前に放棄したらしいからな。これじゃ、鍵なんぞいらなかったな」
「あの爪跡が精霊種の物だとすると、相当大きいわね」
シャルルたちはそれぞれ感想を述べているが、黒猫たちは適当に探索を始めていた。そしてボロボロの建物に入ろうとして、崩れてきた瓦礫に押し潰れそうになっている。
「うにゃ!? 危ないにゃ~!」
「ちょっと勝手に動かないでよ」
黒猫たちが戻ってくると、シャルルは今後のことを確認し始める。
「まずは獅子型の精霊種……長いから、精霊獅子と呼ぼうか。その精霊獅子を確認しておきたいんだけど、やっぱり洞穴の方かな?」
「まぁそうなんじゃねぇか?」
「まずは前回の討伐隊が戦ったらしい広場を探すべきよね」
ハンサムとマギの言葉にシャルルが頷く。
「それじゃ、洞穴内から確認してこう。お前たちは灯りの準備をお願い」
「わかったにゃ~」
カバンの中からカンテラを取り出して、灯りの準備を始める黒猫たち。
「ハンサムが前衛、わたしとマギは後衛、黒猫たちは周辺を警戒して」
「おぅ!」
「了解ニャー」
準備と隊列が完了した調査隊は、さっそく洞穴内に進入を始めた。洞穴内の通路はかなり広く、地面は整えられていたが壁は岩が向き出しのままである。所々に灯りのための仕掛け跡があったが、長年放置されているので動くわけもない。
しばらく先に進むと、マギが開いた肩を擦りながら呟く。
「少し寒いわね」
「そうなの?」
温度調整が付与されているシャルルは気が付かなかったが、薄着のマギには肌寒いと感じたようだ。ハンサムは納得したように頷く。
「保管庫として都合がよかったってわけだ」
「どういうこと?」
「これだけ涼しきゃ、食品だって腐り難いだろ?」
「あぁ、なるほど氷室のような感じか……砦が洞穴に繋がっているのも納得だね」
ずっと洞穴があることに疑問を持っていたシャルルはようやく納得したようだ。この洞穴が掘ったものか自然に出来た物なのかはわからなかったが、物資を保管するには都合が良かったのだろう。
そんな話をしながら奥に進むと、かなり大きな空間まで辿り着いた。おそらく地図にあった広場なのだろう。しかし黒猫たちが持っているカンテラの灯りでは、明らかな光源不足で奥まではまったく見えない。
「真っ暗だね」
「ここで戦うのは無理じゃねぇか?」
「ファイアーボールでも撃ち込んでみる?」
「そんなことしたら、窒息しちゃうじゃない!?」
マギの発言にシャルルは慌てて止める。しかしマギは軽く笑うと、立てた人差し指を振りながら答える。
「大丈夫よ、うさぎちゃん。これだけの規模の洞穴だもの、必ず入口以外の空気穴があるわ」
「確かに微かな風を感じるな」
ハンサムも肌で風を感じたのか頷いて肯定する。シャルルにはわからなかったが、黒猫たちも頷いている。
「精霊獅子はいるのかな?」
「匂いがしねぇな」
「生物とは違うから、匂いはないんじゃないかしら? 代わりにかなり濃い魔力を感じるわ」
「う~ん、まずは確認してみたいから灯りをつけてみようか。マギ、お願い」
少し考えたシャルルがそう決断すると、頷いたマギが杖を回して構える。
「火よ、火よ、火の精霊よ。目覚めて立ち上がれ……ファイアウォール!」
杖の先から発せられた炎は壁沿いを沿うように広がり、広範囲に渡って炎の壁を創り出した。その灯りで広間の全容が明らかになる。その中央には半透明の塊があり、空間が歪んで見えた。
「何なの、アレ?」
「あれが精霊種よ、具現化するわ!」
マギがそう言って杖を構え直すと、中心にあった半透明の歪みが、徐々に巨大な獅子の姿に具現化していく。
「こいつぁ、やべぇぜ! どうする姫さん、一旦退くか?」
「ここまで来て、それはないでしょ! 総員、戦闘体勢!」
シャルルが腰からカニィナーレを抜き放つと、ハンサムや黒猫たちもそれぞれ武器を構える。それに合わせるように具現化を完了した精霊獅子が威嚇するように咆哮を上げた。
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