幼女からスタートした侯爵令嬢は騎士団参謀に溺愛される~神獣は私を選んだようです~

桜もふ

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番外編 ⑥ (フェールント国) 10歳

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    この【フェールント国】は真っ白な雪国だ。息するだけで白い息が出るくらい極寒の地。人々が住む村や町、大きな街や王都では結界が張られており暖かい春の気候だ。

「……ふぅ……」

    不意識にため息をついていた私に声をかけて来たのはパパだった。ママの前に座っている私の頭を大きな手で撫でてくれ、後ろに座っているママはギュッと抱きしめてくれた。

「ルナ。俺は口下手だから気が利いたことが言えないが、ルークが戻るまでは俺達がいるんだ。甘えていいんだからな?」

「そうよ。私達はルナのパパとママなのだから、いっぱい甘えてほしいな」

『ワレもいるからな』

    少しの間離れるだけなのに、落ち込んでちゃいけないわ。笑顔でいなきゃね。

(今気付いたけど、スオウが結界を張ってくれたのか暖かい)

「この国は平和そうだね」

『うむ、フェーンルントでは王族や貴族、平民などと身分など関係なく助け合っている国だ。

    ワレの結界が張られているが、強化しておこう』

(身分関係なく助け合えるのはいいことだわ)

    スオウは影になっている場所へ降り、宿を探し歩いた。スオウとパパが先頭を歩き、私とママは手を繋いで後ろからついて行くが……(クンクン)……何だか懐かしい匂いがする。

「ママ、あのお店に行きたい!!」

    ママの手を引いて走り出した私をスオウとパパも後からついて来た。私の目線に合わせて「この食べ物が欲しいのか?」と聞かれ、大きく頭をブンブンと縦に振り、欲しいアピールをした。

「この【焼き鳥】のような食べ物が欲しい!  今直ぐ食べたい!!」

    手を拳にしてブンブンと上下を振り、鼻息まで荒くして訴えた。

(特殊想像生成で出せるけど、この世界での焼き鳥のような物を食べてみたいのよね!)

    ギラギラした瞳で出店を見ていたのだが、興奮している私を見たパパとママは驚き。出店のオヤジに「オヤジ、4本くれ!」と注文してくれた。

「はいよ。4本で銅貨8枚だ!」

    パパが銅貨8枚を渡し、4本の串に刺さった焼き鳥を手渡されベンチに座って1本貰った。

    見た目は大きな焼き鳥。香ばしくて甘いタレの匂いが鼻をくすぐる。「フーフー」してかぶりつき、口の中に入れひと噛みすると甘いタレが口内で広がっていく。私の知っている焼き鳥も美味しいけど、この焼き鳥も美味しい。

「これ美味いなぁ!」

「えぇ。香ばしくて甘いタレが癖になりそうだわ!」

    横目でパパとスオウを見ると食べ終わってた。早すぎでしょ!  私とママは味と食感を感じながらゆっくりと食べている。

「あぁーー、美味しかったぁ!」

『うむ、100本は食えるぞ!』

    100本って、スオウらしい発言だ。私は「クスリ」と笑い、宿屋へと移動した。

    翌日はこの国でしか出来ない遊びや買い物を楽しんだ。

    フェールント国では雪を丸めて的に当てる遊びや雪だるまやかまくらを作って遊んでいた。雪の的当ては初めてだけど雪だるまやかまくらは地球と同じなのね。

    でさぁ、なぜ雪ゾリや雪合戦がないのだろう?  ソリを出して1人で遊ぼうかしら。

「スオウも一緒に来る?」

『うむ。ルナと行く』

    そうだなぁ、危険がない(落ちない)ように両端に氷で壁を作り。その中に雪を入れ、緩やかな坂を作った。両端に階段も作って……。

「出来た!  スオウ、上までいくよ!」

    ソリに乗り、両足の間にスオウを乗せ手で雪を押すとソリが動き出し、私とスオウは笑い声を上げて滑り降りた。

「きゃはははは!  楽しいぃぃぃ!!」

『おぉぉぉ!  このような遊びは初めてだが、楽しいではないか!!』

    周りの子供達が集まって来て、自分も遊びたいとせがんでくるので、ソリを数個出し「順番に滑る」ことと「前の子が滑り終わってから滑る」ことを約束し、今日は宿屋へと移動した。

「あのソリはルナの世界の遊びなのか?」

「うん、そうだよ。

    明日は雪合戦して遊ぼうよ」

「雪合戦って何?

    私でも出来る遊びなのかしら?」

    私はニコニコと笑い。何度も頭を大きく縦に振って頷いた。

「うん。こうやって雪を丸めて投げて当てるの。

    投げては避けて、投げては避けての繰り返し。簡単に言うと雪当て遊び。

    固く丸めすぎると怪我をするから、そこだけは気をつけてね!」

(地球ではスポーツとしてあるけど、私達は遊びでするからルールはいらない)



    そして翌日になり。

    昨日の子達も交えて雪合戦を楽しんだ。

    夕方前に私とスオウでこの国の偵察へと出かけた。このフェールント国は平和で差別もなく、住み心地が本当に良かった。

『ルナ。10歳の誕生日おめでとう!』

「スオウ。ありがとう!!」

    スオウの背中に抱きつき、モフモフな毛を撫でながら提案した。

「……ルーク様を待ちたい気持ちもあるけど、私は役目を優先して、次の国へ行こうと思う」

『そうだな、明日の早朝に出発だ』

    宿屋へと帰って来た私とスオウは、役目を優先し次の国へ移動することを告げた。

    反対はされなかったが「本当に良いんだな?」と念押しして聞かれた。

「ルーク様なら、立ち止まらず前に進めって言ってくれる。

    私はルーク様を信じているから立ち止まらずに前に進むことに決めたの!」

「偉い!  さすが俺の自慢の娘だ!!」

「強くなったわね。

    ルナ、10歳の誕生日」

「「『おめでとう!!』」」

「ありがとう!」

    みんなと笑い合ったあと、明日に備えて眠った。

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